ときメモ2バトルロワイヤル風SS・最終話(Another
Version)
「日常とその影・・・」
純「・・・・あれから八重さんは学校に来ていないみたいなんだ・・・。」
匠「確かに・・・八重さんの気持ちを考えれば無理も無いだろうね・・・。」
涼「・・・・。」
昼休み、ひびきの高校の屋上で涼と純と匠は食事を取り終えて空を見上げながら話していた。
あの地獄の様な施設から脱出してもう一週間が過ぎていた。あれ以来、竹内の姿は見かけてはいない。
伊集院家が施設に突入して施設内をくまなく探し回ったが、竹内も『トラップ』も・・・。
そして『キング』の姿も管制室からは消えていた。
彼らの生死が全く分からない以上、このまま無視する訳にもいかないので捜査は警察に引き継がれたようである。
ガチャ・・・
不意に屋上から階段へ続く扉が開いた。
入ってきたのは光と琴子、そして智だった。
純「・・・智、陽ノ下さんに水無月さんも・・・。どうしたんだ?」
智「・・・・いや、ちょっとな・・・。」
匠「・・・・・・あれから竹内は見つかっていないんだよな・・・。」
智「・・・・ああ。竹内は行方不明・・・、八重さんもあれ以来すっかり元気を無くしてしまって休学中・・・。」
純「・・・確かに、何か大事な物が欠けてしまったみたいだな・・。」
光「・・・・あの施設はどうなったのかな・・・。」
琴子「・・・あの施設は捜査が終わってから重要な物を押収した後封鎖されるみたいよ・・・。」
光「そうなんだ・・・。」
その時・・・。
美帆「あ・・・皆さんもここに来ていたのですか・・。」
美幸「何か・・みんなも考えていることは〜同じみたいだね〜・・・。」
一同「・・・・。」
美帆と美幸も屋上に上がってきた。結局、あの施設から生き残った者全員が集まった事になる。花桜梨を除いて・・・・。
涼「・・・・なあ、今日の放課後に伊集院さんのところに行ってあの施設について聞いてみないか・・・?」
智「・・・そうだな、このままじゃ何も分からないまま終わっちまいそうだからな・・・。」
純「俺は行くぞ。うやむやにはしたくないからな。」
光「私も行く。真実を知りたいから・・・!」
琴子「このまま何もしないって言うのも、気分が悪いものね・・・・。」
皆の気持ちは同じであった。早速放課後になってから伊集院家に行く事になった。
智「けど・・・八重さんはどうするんだ・・・?」
美帆「・・・あれから一度も学校にも来ていらっしゃらないみたいですし・・・。一度家に行ってみた方がいいかもしれませんね。」
美幸「うん、美幸もそう思う。きっと八重さんはすご〜く落ち込んでいると思うし〜・・・。」
純「よし、伊集院さんの家に行く前に、八重さんの家を訪ねてみよう。」
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放課後・・・。
純「ここが八重さんのマンションだな・・。」
智「割と大きなところなんだな・・・・。」
涼「とにかく、行ってみよう。」
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ピーンポーン・・・
チャイムを鳴らしてみるが反応が無い。
光「八重さん・・・いないのかな・・・。」
美幸「どうしよう・・。」
純「・・・・もう一度チャイムを押してみよう。」
純が再びチャイムを押してみる。しかし、結果は同じだった。
純「仕方ない・・・。俺たちだけで行こう・・。」
皆が諦めて立ち去ろうとした時、インターホンから声が聞こえた。
花桜梨「どなたですか・・・?」
一同「!!」
智「あ、八重さん!?小倉だけど、今から伊集院さんの家にあの施設のことについて聞きに行くんだ。
だから、八重さんも誘おうと思って・・・。」
花桜梨「・・・・・。」
花桜梨はドアの向こうで黙り込んだまま返事をしない。
智「・・・・。(やっぱり、無理かな・・・。)」
智を含む、皆がそう思って答えを予想していたが・・・。
花桜梨「・・・・少し待ってて・・・。今着替えてそっちに行くから・・・。」
智「!!・・あ、ああ・・・。慌てなくてもいいから。」
智は予想外の答えに驚きながらも、それだけ返事をするとドアの前で花桜梨を待った。
それから五分ほどして・・・。
花桜梨「・・・・ごめんなさい・・。待たせちゃって・・・・。」
花桜梨が中から出てきた。
一同「・・・・!!」
しかし、花桜梨の変わりように一同は驚きを隠せなかった。
花桜梨の眼は充血して赤く、目の下にはクマが出来ている。恐らくほとんど眠る事が出来ていないのだろう。
顔色もお世辞にもいいとは言えなかった。
純「や・・八重さん・・、その目は・・・。」
花桜梨「・・・・あ・・・、これ・・・?あれからほとんど眠れなくて・・・・。」
美帆「お身体は大丈夫なんですか・・・?一度お医者さんに診てもらった方が・・・・。」
花桜梨「ううん・・・、いいの・・・。生きて帰ることが出来た分、ここに戻ってこられなかった竹内君の事を考えたら・・・私なんかまだ幸せな方だから・・・・。」
美帆「・・・・・。」
花桜梨「・・・それよりも伊集院さんの所に行くんでしょう・・・?早く行きましょう・・・。」
智「あ、ああ・・・。そうだね・・・。じゃ、行こうか・・。」
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純「(おい・・・、八重さんのあの顔色見たか・・・?あれじゃ、まるで一年生の頃の八重さんと同じじゃないか・・。)」
智「(いや・・・、それよりも更にヤバいだろ・・・。竹内が帰って来なかったことが相当ショックみたいだな・・・。)」
匠「(・・・・八重さん、このままじゃいつか倒れてしまうんじゃないか・・・?何か、身体つきも施設に連れて来られる前と比べて、比べ物にならない位に痩せているみたいだし・・・。)」
三人は、前を歩いている花桜梨を見ながら、心配そうに小声で話していた。
確かに、花桜梨の身体はかなり痩せ細っていて、均等の取れていた頬はこけて、顔色もどこか青ざめているように見える。
竹内によって明るさを取り戻した4月からの面影はどこにも残っていなかった・・・。
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光「・・・・ここが伊集院さんの家か・・。流石に大きいお屋敷だね・・。」
智「呼び鈴がある。押してみよう。」
咲乃進「・・・・どちら様でしょうか?」
智「あ、この前助けてもらった小倉と言います。伊集院さんはご在宅でしょうか?」
咲乃進「少々お待ち下さい。」
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しばらく間があって、智たちはメイの部屋に通された。
メイ「よく来たのだ。で、今日は皆で何の用なのだ?」
純「・・・単刀直入に聞きたいんだ。・・・俺たちが脱出したあの施設と俺たちをさらって来た連中の事なんだが・・・。」
メイは、純の率直な質問に顔を少し曇らせた。
メイ「うむ・・・。実はあの施設を建てたと思われる企業はいくつかに絞り込む事は出来たのだが、我が伊集院家の者が捜査に行った時には既にもぬけの殻だったのだ・・・。だが、ある一つの組織の中枢とされる人物が何者かによって殺害されたそうなのだ。」
純「まさか・・・証拠隠滅を図った・・・って事か・・。」
メイ「恐らくは、そう言う事だと思うのだ・・・。それと、竹内と言ったな・・・。そいつの事も全力で捜索したのだが、施設内はおろか、付近一帯の海からも有力な手がかりは見つからなかったのだ・・。」
花桜梨「・・・・・そうなんですか・・。」
花桜梨が暗い表情を更に暗くしてがっくりと肩を落とす。
メイ「すまないのだ・・・。今までに消息を断った者の捜索は何度かしてきたが、今回ほど手がかりが少ない事は今までになかったのでな・・・。」
涼「俺たちを襲ったハンター・・・敵に関しては何か情報はあったのか?」
メイ「それも現在操作中なのだ。表立っては厄介な事なので、表面上では警察に捜査を引き継いだと言う事にはしているが、実際は伊集院家も操作を継続して行っているのだ。」
涼「そうか・・・。」
メイ「だが、一つだけ不思議な痕跡が施設内から見つかったのだ。」
一同「!!」
メイ「あの施設の管制室からはお前たちから説明を受けた通り、ハンターとか言う者の死体が見つかったが、そいつの血痕とは別に、何者かの血液が発見されたのだ。見つかった血液の型はO型とAB型・・・、二人分の血痕だったのだ。」
智「二人分?」
花桜梨「・・・竹内君の血液型は・・・確かO型だって聞いてる・・。そんな・・・まさか・・!」
美帆「八重さん、落ち着いて下さい、まだ竹内さんの物と決まった訳ではありませんわ。」
花桜梨「う・・・うん・・・。そう・・・だよね・・。」
メイ「そして、管制室からは珍しい物が発見された。・・・咲乃進!アレをここへ持ってくるのだ!」
咲乃進「はっ、かしこまりました。」
メイは咲乃進に何かを持ってくるように言った。
数分後、咲乃進は布に包まれた何か長いものを運んできた。
メイ「これが、その発見された物なのだ。」
メイは運ばれてきた物を包んでいる布をばさっと取り払った。
一同「!!!」
メイ「・・・・これに見覚えがあるみたいだな。」
智「見覚えがあるも何も・・・。」
純「これはあのハンターのリーダーが持っていた刀じゃないか!!」
メイが咲乃進に持って来させた物・・・それは『キング』の使っていた大型の刀であった。
涼「これが管制室に残っていたと言う事は・・・少なくとも『キング』の方はただで済んでいるとは思えないな・・・。」
純「ああ・・、あれからどうなったのかは知らないが、竹内と『キング』の間に何かがあった事は間違い無いな。」
花桜梨「・・・・竹内君は・・自分を苦しめる存在である『キング』を殺すって言っていたわ・・・・。
だから・・・、あの後で竹内君は『キング』と戦ったのよ・・・。」
光「・・・でも、管制室には誰もいなかったんだよね・・・。竹内君は何処へ・・・?」
花桜梨「それは分からない・・・・。でも、私は竹内君はどこかできっと生きているって信じたい・・・・。」
光「うん、そうだね・・・。」
純「でも、こんな重要な物を持っていてもいいのかな・・・。」
メイ「それは問題無いのだ。伊集院家が警察関係者に根回ししておいたのだ。」
純「あ・・、そうなんだ・・・。(警察を動かすなんて、伊集院家って・・・本当に凄いよな・・・。)」
メイ「一応、お前たちの安全を考えて、しばらくは我が伊集院家専属のSPを護衛として付けさせるのだ。
だから、安全面では心配しなくとも良いぞ。・・・・だが、この事は他言しないようにして欲しいのだ。
事が事なだけに、出来るだけ騒ぎにはしたくは無いのでな・・・。」
一同はメイから緘口令を受けた事によって、この事件がいかに危険な物だと言う事を再認識させられた。
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数ヶ月後、『キング』の所属していた委員会の後を引き継ぐ形で別の委員会の手により極秘にBR計画は実行に移されることになった。この計画は表沙汰にはならないため、真実は闇の中に葬り去られる事となっている。
そして、悪性因子を狩るハンターの中に黒いジャケットを身にまとい、黒く輝く刀を持った白髪のハンターの姿があったらしい。しかし、そのハンターの正体を知る者は皆無であった・・・。
ただ、分かっている事はそのハンタ―の隣には常に同い年くらいの青年ハンターの姿があったと言う・・・。
BR計画は、普段の日常の裏に隠された闇を狩るために発動される事になった。
当初の目的とは大きく異なる事になったが、それは計画を引き継いだ委員会の方針によるものとされている。
<最終話・完>
(エピローグ for Another
Versionへ続く・・・)