ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第弐拾八話「黒い八重桜」
キング「『マインド』・・・聞こえるか?こちら『キング』・・現時刻でサンプルの処理は完了した。以後はお前の指揮下にあたらせる。奴を与えるのだから、必ずガキどもを殲滅しろ・・・。」
マインド「了解しました・・・。で、サンプルの施設内到着時刻は・・・?」
キング「およそ二時間半後だ・・・。それまでお前はガキどものいる管制室から目を離すな。」
マインド「はっ、確かに・・・!」
キング「・・・それとサンプルにはアレを与えてある。我が組織が造り出した武器のモニターとしても利用価値があるからな・・。
仮にサンプルがアレを使いこなす事が出来ればそれで良し・・・。使いこなせずに戦闘不能に陥ったとしたらサンプルの力はそれまででと言う事だ。」
マインド「・・・・なるほど。精神操作は私の得意分野ですが、あえて『キング』自らが手を下したのはそういう事ですか・・・。」
キング「・・・それと『トラップ』の動きにも目を光らせておけ。あいつは俺の知らない所で何か妙な動きをしているようだからな・・・。」
マインド「『トラップ』を・・・ですか?」
キング「そうだ・・・。奴の仕事ぶりは過去の演習を含め、今まででもトップクラスだが今回は竹内との接触の理由といい、真意が分からん・・。」
マインド「・・・・・・。」
キング「場合によっては、アレとサンプルを使ってガキどもと一緒に始末しても構わん・・。いいな・・・。」
マインド「了解・・。それでは、二時間後にサンプルと合流します・・。」
『マインド』と『キング』はそれぞれ最後の仕事に取りかかろうとしていた。しかし、この会話を盗聴している者がいた・・・。
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トラップ「(・・・・なるほどね・・・。俺を始末する気か・・・。だが、あんたたちの会話を盗聴する事など容易い事なんだよ・・・。
それに・・・、あいつを手に入れるのはこの俺だ・・・。それを二時間半後に見せてやる・・・。くっくっくっ・・・!!)」
その頃、涼と花桜梨は管制室にいる匠たちのところまで戻っていた。
匠「秋口!八重さん!」
美帆「良かった・・・。無事だったんですね・・・。でも・・・竹内さんは・・・?」
美帆の質問に涼と花桜梨は顔を曇らせる。
美帆「・・・そうですか・・。」
涼「そう言えば智は・・・?」
純「・・・・あいつは今眠っている。ハンターとの戦いで重傷を負っていたところを『トラップ』とか言うハンターに一時的に助けられたんだ・・・。」
涼「あいつが・・・!?」
純「だが・・、智に飲ませた薬の効果もあと三時間半で切れる・・・。そうなったら・・・。」
匠「・・・・30分と持たないと思う・・・。」
花桜梨「!!・・・そ・・そんな・・。竹内君だけじゃなく、小倉君まで・・・。」
純「とにかく、何とかして外部との連絡を取ろうとしているんだ。ここの正確な場所さえ知らせる事が出来れば・・・!」
涼「上陸艇で二時間くらいで移動できるって事は、ここが日本からそんなに遠い訳じゃないって事だと思うんだが・・・。」
美帆「今、大切な事は最後まで諦めてはいけない事だと思います。何とかいい方法を考えましょう。」
一同は、その場で必死になってここからの脱出方法と外部との連絡方法を考えた。
話し合いは二時間にも及んだ。
その結果、花桜梨と竹内が見つけたハンターの上陸艇まで移動する事になった。
カードキーが無いと上陸艇は動かす事が出来ない事は分かっていたが、もしもの時の事を考えて・・・と言う事だ。
そして、いよいよ移動しようとしたその時・・・。
マインド「・・・・お前たちが上陸艇に行く必要はない・・・・。」
一同「!!!!」
管制室に一人のハンターが入ってきた。一同はすぐに一つになって身構える。
涼「お前は何者だ!」
マインド「私の名は『マインド』・・・。増援部隊の一人だ。お前たちにはこの場で死んでもらう。」
純「やれるものならやってみろ!お前一人で俺たちに勝てるとでも思うか!?」
マインド「・・・・あいにくだが、何も私一人だとは言ってはいない。もう一人ここに到着した・・・。」
涼「何だと・・・?」
マインド「さあ、出て来るがいい!最強の武器を持った新たな同志よ!!」
『マインド』は大声で叫ぶと、懐から取り出したリモコンのスイッチを押した。
その途端、突然コントロールパネルが勝手に操作される。
匠「な・・何だ・・・?パネルが勝手に・・・!」
見ると、パネルには次の様に記されていく。
・・・非常用ゲート開放・・・施設内の全ての扉のロックを解除・・・東から西までの直通ルート、並びに地下施設から管制室までの直通ルートを開放する・・・。
匠「直通ルートだって・・・?まさか・・・隠し通路があったって事なのか・・・?」
光「見て!!あそこの壁が・・・!」
美幸「は・・はにゃ〜!壁が・・・開いていくよ〜!!?」
管制室に不気味な機械音が響き渡る。
涼「何が始まるんだ・・・?」
花桜梨「何かが・・・・来る!」
グオォォォン・・・・・!ガコン・・・・!
マインド「ふふふ・・・・!とくと見るがいい!お前たちを殺す奴がどんな姿をしているか!!」
やがて壁が左右に分かれて奥からはエレベーターのような物が姿を現した。一同は中に乗っている人物に注目する。
そして・・・、中から一人のハンターが登場した・・・。
手には美しい桜色でありながら、何故か黒い光を放つ刀を持ち、身体には漆黒のジャケットを身に着けている。
だが、それとは対照的に髪の毛は老人のごとく真っ白である。
そして、その顔はその場に居る誰もが知っている者の顔であった・・・。
そう・・・・そのハンターとは・・・。
竹内「・・・・・・。」
涼「なっ・・お前は・・・!!」
花桜梨「竹内君!!」
美幸「た・・・たけぴー・・・!?」
美帆「!!!」
光「その姿は・・・!?」
琴子「・・・・人は極限まで恐怖を味わうと髪が真っ白になるって聞いた事があるけど・・・・。あそこまで真っ白になるなんて・・・。
まさか・・・それ程の恐怖を彼は受けたと言うの・・・?」
エレベーターから出てきたのは、紛れもない竹内であった。
だが、その瞳には生気が感じられず、何も映してはいない・・・人形の眼となっていた・・・。
しかし、眼つきとは裏腹に、身体つきは以前よりも明らかに良くなっている。一回りは筋肉が大きくなっているようだ。
マインド「驚いたようだな・・・。こいつは我々ハンターの一員として生まれ変わったのだ。お前たちを殺す存在としてな!!」
花桜梨「・・・竹内君に何をしたの!!」
花桜梨の詰問を無視するかのように、『マインド』は竹内に命令を下す。
マインド「さあ!竹内・・・いや!『バニシング』よ!!我が組織が開発した殺人刀『黒桜花』で奴らを皆殺しにしろ!!」
竹内「・・・・。」
竹内は返事をする事はなく、無言のまま刀を構えた。以前眼つきは変わらないが、竹内からは凄まじい殺気が溢れ出していた。
純「竹内!しっかりしろ!!」
竹内「・・・・・・。」
純「あの時、お前は目を覚ましたんじゃなかったのか!?」
竹内「・・・・・・・。」
純の呼びかけにも竹内は全く答えようとしない。
マインド「無駄だ!こいつはお前たちが知っている竹内ではない!もうお前らの事など微塵も覚えてはいない!」
花桜梨「竹内君!!私があなたと交わした約束を忘れちゃったの・・・!?あなたが私に言ってくれた事も忘れちゃったの!!?」
竹内「・・・・・・。」
竹内は返事の代わりにゆっくりと身を低くすると、ぐっと足に力をためる。そして、次の瞬間!!!
バシュッ!!
花桜梨「!?」
竹内はまるで空を飛ぶかのように大きく飛び上がると、花桜梨に向かって一気に圧し掛かってきた。
竹内「・・・・。」
ズダァァン!!
花桜梨「きゃあっ!!」
突然の事に、花桜梨は回避出来ずにそのまま押し倒される。
竹内は表情一つ変えずに、右手の刀・・・『黒桜花』を花桜梨の首に突き立てようとした。
純「止めろ!!」
花桜梨の首に刀が突き立てられる瞬間に、純が刀を抜いて竹内を止めに入った。
竹内「・・・・。」
竹内は純を見ると、花桜梨から弾かれるように後方にジャンプして離れると、四つん這いになって床に着陸(?)した。
涼「・・・何なんだ!?竹内の身のこなし・・・明らかに普通じゃない!!」
マインド「その通り・・・、奴には筋肉増強剤・・・精神操作薬・・・その他何種類もの薬物を合成した複合物質が投与されている。
更に、我々の処置により普段人間が使う事のない力を引き出し、100%の状態を維持できる・・・。」
純「!!まずい・・・!竹内を早く止めないと・・・!」
美幸「・・・止めないと・・・?」
美幸の疑問に涼が口を開いた。
涼「・・・確実に死ぬ・・。」
美幸だけではなく、光も信じられないと言った表情で涼に聞いた。
光「ど、どうして!?」
涼「・・・普段人間と言うものは筋肉を全体の役30%しか使っていないんだ。100%を常に使っていたら、筋肉細胞や骨がその負荷に耐え切れずに損傷してしまうからだ・・・。だから、普通は必ず身体にリミッターのようなものがかかっているはずなんだが、今の竹内にはそれが無い・・・。しかも、筋肉増強剤によって通常よりも筋肉は増強されている・・。
その分、100%の状態が長く続けば筋肉や骨にかかる負担は段違いに増加してしまう・・・!」
琴子「!!・・・それじゃあ・・・。」
純「ああ・・・、あいつの身体はやがて蓄積される負荷に耐え切れず、自ら崩壊してしまうだろう・・・。」
マインド「・・・くっくっく!よく知っているな・・・。だが、そいつの代わりはまたいくらでも造れる。
それに、お前たちとの戦いの様子をデータとして委員会に送れば、このBR計画の演習は充分成功と言える・・・。
さあ、楽しませてもらおうか!『バニシング』やれ!!」
竹内「・・・・・・。」
竹内・・・『バニシング』は刀を前に構えると、一つに集まっている涼たちに向かって物凄い速さで走り出した。
純が咄嗟に前に出て、竹内の攻撃を受け止める!
ガキイィィン!!
刀と刀がぶつかり合い、火花が散る!
純「(・・・まずい・・・!竹内の力が大きすぎる・・・!!)」
バニシング「・・・・・。」
純は一度間合いを取るべく、『バニシング』の持つ黒桜花を横に受け流した。
純「竹内・・・!お前は本当に俺たちの事を忘れちまったのか!?」
バニシング「・・・・・・・。」
純が何を言おうとも、『バニシング』は全く反応を見せない。無表情のままで純に襲い掛かってくる。
花桜梨「竹内君!もう止めて!!こんなのって・・・・こんなのって無いよ!!」
純と竹内=『バニシング』の戦いを見ていられなくなった花桜梨が後ろから竹内にしがみついた。
純「八重さん!危ない!!離れるんだ!!」
純が慌てて駆け寄ろうとしたが、竹内はそれを計算していたかのように、花桜梨を軽々と自分から引き離すと純に向かって放り投げた。
花桜梨「きゃあっ!!」
純「ぐっ!」
純は花桜梨を何とか受け止めるが、体勢を大きく崩してしまう。そこへ間髪入れずに『バニシング』は二人まとめて斬り殺そうと大きく刀を振り上げる!!
だが・・・。
ビュッ!
ドスッ!!
純「!!」
マインド「何だと!?」
バニシング「・・・!」
突然、『バニシング』の背後からナイフが飛んで来て、そのまま彼の背中に突き刺さる!
しかし、特殊ジャケットのせいで大した傷ではないようだった。
トラップ「・・・・・やっと見つけたぜ・・・。竹内・・・。」
ナイフを投げたのは『トラップ』だった。
『トラップ』はゆっくりと一同の所に歩いて来ると、『バニシング』と『マインド』、そして純と花桜梨を見渡した。
マインド「『トラップ』!!何のつもりだ!貴様何故邪魔をする!!」
トラップ「・・・・さあね。むしろ俺の邪魔をしているのはお前らの方だよ・・・。
『キング』の奴が俺から竹内を横取りしたかと思えば、今度はお前のような能無しに竹内を使わせるとはね・・。
しかも、竹内を使って俺を始末するつもりとはいい度胸してるな・・・、『マインド』・・・。」
マインド「!!・・・一体どこでそんな事を聞いた!」
トラップ「くくく・・・!能無しに教えるつもりはさらさら無いんでね・・・。俺がここに来た理由はたった一つだ・・・。
そいつを返してもらいに来たんだよ・・・。竹内・・・確かハンターコードネーム『バニシング』・・・・『抹消されし者』か・・・。
まったく・・・センスの無いコードネームをつけやがって・・・・。」
『トラップ』はそう言って、腰からナイフを二本取り出してゆっくりと構えた。
マインド「貴様・・・やはり我々を裏切る気か!?」
純「(・・・・どういう事だ!?仲間割れ・・・なのか・・・?)」
バニシング「・・・・・・。」
突然の『トラップ』の乱入により、『バニシング』はどうしたらいいのか分からずに、様子を伺っている。
トラップ「ふふふ・・・!同じ組織にもいろいろと派閥があってね・・・。俺は『キング』の属している派閥へスパイとして配属されたんだよ・・・。このBR計画に関して、俺を配属させた委員会は少し難色を示していてね・・・。
最初からこの計画を妨害するのが目的だったんだよ・・・。お前らを信用させるのには苦労したよ・・・。」
マインド「この計画を妨害・・・だと!?」
トラップ「そして、俺の所属する委員会がBR計画の妨害の他に与えた任務・・・それは優秀なハンターとなる人物の選択と、そいつを連れ帰ること・・・。更に、別の派閥の所有するハンターの能力をデータとしてリークする事・・。」
花桜梨「(・・・・最初から・・・私たちを殺す気は無かった・・・・!?)」
マインド「何だと・・・!?」
トラップ「と、言う訳でお前と『キング』には死んでもらう事にするよ・・・。覚悟するんだね・・・。」
『マインド』はしばしあっけに取られた顔をしていたが、すぐに気を取り直すとせせら笑った。
マインド「ふん!お前が俺と『キング』を殺すだと・・・!?やれるものならやってみるがいい!!
こちらには『バニシング』と『黒桜花』があるのだぞ!?」
バニシング「・・・・・・・・。」
トラップ「・・・へぇ、その刀があんたらの委員会が開発させていたと言うハンター専用の新兵器か・・・。
確か・・・、刀身に特殊合金を使う事により、色が黒味のかかった桜色となり、強度も抜群・・・。」
マインド「それだけではないぞ!切れ味も最高のものとなる!これで『バニシング』に貴様を斬り殺させてやる!!」
トラップ「・・・くっくっく・・・!いいだろう・・・試してみろよ・・・。」
マインド「言われずともやってやる!!『バニシング』よ、こいつを斬り殺せ!!」
バニシング「・・・・・。」
『バニシング』は黒桜花を構えて『トラップ』の方に向き直る。しかし・・・・。
トラップ「おい、竹内!お前に命令したそのバカを早く始末しちまえよ。・・・・『カウンターハンター』の名の元にな・・・。」
バニシング「・・!!・・・・・・了解した。」
マインド「・・・・なっ!!?」
ズシャッ!!
一同「!!!!」
今まで一言も喋らなかった『バニシング』が急に返事をしたかと思うと、振り向きざまに『マインド』に斬り付けた!!
『マインド』は突然の事に斬撃を避けることが出来ずに、そのまま肩口からわき腹付近まで切り裂かれる!
マインド「が・・はっ・・・!?」
血煙が舞い上がり、辺りの床と壁に大量の血が飛び散る!!
バニシング「・・・・・・。」
『バニシング』は黒桜花を勢いよく一振りして血を払うと、すっと鞘に納めた。
純「・・・・い、一体何が・・・・。」
純を始めとする一同は突然の出来事に訳が分からず唖然としてしまう。
マインド「・・・ぐっ・・・何故だ・・・何故・・・私の命令・・に逆・・・らって・・・お前の言う事を・・・奴は・・聞いた・・・・・んだ・・・?」
『マインド』は床に倒れて息も絶え絶えになりながら、『トラップ』に尋ねる。
トラップ「・・・・精神操作にもいろいろあってね・・・。『キング』が竹内に処置を施す前に、俺は最初に竹内を発見した際にある暗示をかけておいたんだよ・・。もちろん、薬も使ったがね・・・。」
マインド「そん・・・な事は・・・一言も・・聞かな・・かった・・・ぞ・・・!?」
トラップ「そりゃそうだろうな。お前らにはおろか、『キング』にすら言わなかったからね。」
『トラップ』は苦笑しながらゆっくりと『マインド』に歩み寄った。
マインド「全て・・・は・・・お前の・・・シナリオ通りだと・・・言う事なの・・・か・・・?」
トラップ「まあ、そういう事だね・・・。じゃ、そろそろ楽にしてやるとするかな・・・。」
マインド「・・・!!」
グサッ・・・!
『トラップ』はナイフを何の前触れも無く、『マインド』の心臓に突き立てた。
マインド「・・がっ・・・!!」
『マインド』は口から血を吐くと、そのまま息絶えてしまった。
『バニシング』はその様子を無表情で見つめていたが、やがて花桜梨たちの方に向き直った。
花桜梨「!」
トラップ「竹内、そいつらに構う必要は無いぜ。もう、充分にデータは取れた。『黒桜花』と言うオマケも付いたしな・・・。
それに、お前に下手くそな精神操作を施した『キング』の属する委員会にはもうすぐ裁きが下されるだろうしね・・・。」
涼「・・・!」
竹内「・・・・裁き・・・?」
トラップ「ああ、俺の仲間が委員会の中にスパイとして潜入しているんだよ。もうすぐ、抑止力として委員会の頭を始末する頃だろうぜ・・・。」
竹内「・・・・。」
『トラップ』はそこまで言うと、花桜梨に自分のカードキーを投げてよこした。
花桜梨「!・・・これは・・。」
トラップ「俺のカードキーさ。そいつにはちょっとした仕掛けがしてあってね・・・。
もしもの時は俺だけでもここを脱出可能にするために、それ一つで上陸艇を動かせるようになっているんだよ。
ちなみに、『キング』の持っているカードキーも同様だけどね。」
花桜梨「じゃあ・・・、最初に私たちが受けた説明って言うのは・・・。」
トラップ「あれは、半分本当で半分がウソだよ。」
花桜梨「・・・・。」
トラップ「そのカードキーで早い所ここを脱出しな。早くしないと智って奴・・、死んじまうぜ。」
純「!!!」
純ははっとして、智の方を見る。すると、今まで汗一つかいていなかった智の顔が次第に汗で濡れていくのが分かった。
トラップ「薬の効果が切れかかっているみたいだな。あと1時間半ってところか・・・。」
純「こうしてはいられない!急いで上陸艇に行こう!!」
涼「『トラップ』・・・信用して・・・いいんだな?」
トラップ「信用するかどうかはあんたらの勝手だが、俺を信用するしか道は無いはずだぜ・・・?」
美帆「ここはあの方のおっしゃる事を信じるしかないようですよ・・・。」
琴子「そうね・・・!行きましょう!!」
皆はお互い顔を見合わせると大きく頷いて、管制室を出ようとした。しかし・・・。
花桜梨「・・・!竹内君・・・・あなたも早く・・・!」
竹内「・・・・・・・。」
花桜梨「どうしたの・・・!?正気に戻ったんでしょう!?早く私と一緒に来て・・・!」
花桜梨が竹内に一緒に来るように呼びかけるが、竹内は何も答えない。その場から一歩も動こうとはしなかった。
純「おい!竹内、どうしたって言うんだ!!」
トラップ「・・・・無駄だよ。いくら『キング』のかけた精神操作が解除されたとは言え、竹内はあんたたちの知っている竹内じゃないんだよ。」
花桜梨「どういう事なの!?」
トラップ「・・・それに、勘違いしてもらっては困るね・・。俺はあんたたちの味方でも何でもない。
あくまでも俺の計画に邪魔になったから『マインド』を始末してやって、『キング』の施した洗脳を解いただけさ。」
花桜梨「・・・・!」
トラップ「竹内には、俺が最初に施した精神的暗示がしっかりとかかっている。俺は竹内を本部に連れて帰り、更にその戦闘データを報告しないといけないんだよ。」
花桜梨「その後で竹内君をどうするつもりなの・・・!?」
トラップ「それ以上は機密事項なんで言えないね。ま、どちらにせよ、これからの人生を竹内は俺と同じ世界で生きる事になる。だから、あんたたちと一緒に帰ることは出来ないし、同じ世界で生活する事も出来ないって事は確実かな・・・。」
純「そうはさせるか・・・!智を助けてもらった借りがあるが、力ずくでも竹内を返してもらう!!」
純は涼に智を預けると刀を抜いた。
トラップ「・・・力ずく・・・・か。ま、好きなだけやってみなよ・・。どうせ無駄だと思うけどね・・。」
純「そんな事、やってみないと分かるものか!!」
トラップ「・・・竹内は俺がある特定のキーワードを言う事により、それを聞いて初めて行動するように暗示をかけてある・・。
俺以外の奴がキーワードを言ったって、竹内は動かない。」
純「・・・・・キーワード?」
トラップ「今から、それを見せてやるよ・・・。・・・竹内!こいつの相手をしてやれよ。『カウンターハンター』としてのお前でな・・・。ただし・・・殺すなよ。・・・せいぜい痛めつけるくらいにしておきな・・・。」
竹内「分かった・・。」
竹内は黒桜花を鞘から抜くと、刃を逆にして構えた。
純「・・・・八重さん、すまない・・・。多少荒っぽくなるかもしれないけど、本気でいかせてもらうよ・・・。」
花桜梨「穂刈君・・・!」
竹内「・・・・・・・。」
『トラップ』は二人を見ながら、静かに笑っているだけであった・・。
<第弐拾八話・完>
次回予告
対峙する二人をどうする事も出来ずに見ているしかない一同。
そんな中、『トラップ』の計画は最終段階へと進もうとしていた。
そして、『マインド』が『トラップ』と竹内によって殺された事を知った『キング』は、思わぬ行動に出る。
物語の終末は、もう目の前にまで迫っていた。長かったこの五日間が終わる時・・・、花桜梨たちは・・・『トラップ』は・・・、
そして竹内は・・・?果たして花桜梨の想いは竹内に届くのか・・・?
次回、『脱出』・・・。