ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第弐拾伍話「加速する運命」
純「・・・・くっ!やはり・・・俺は甘いって事なのか・・・!!」
純は、智から受け取った刀を持って女ハンター『ライン』の後を追った。恐らく、彼女が行く場所と言ったらあそこしか無い。
純は、何とか部屋に辿り着くと一気に中へ駆け込んだ。そこには・・・。
ライン「・・・・・遅かったわね。坊や・・・。」
純「!!」
部屋の中には既に意識を失って倒れている美帆と美幸の姿があった。
純「寿さん!白雪さん!・・・・二人に何をした!?」
ライン「ふふふ・・・。安心しなさい、彼女たちにはただ眠ってもらっているだけよ。・・・でも、坊やの行動次第では・・・。」
そう言うと、ラインは倒れている二人を指差した。
純「・・・!」
ライン「気が付いたみたいね・・。そうよ、この二人の身体には特殊なワイヤーが巻きついているの・・。私がちょっとその気になれば、二人の身体はバラバラに切り刻まれる・・・・ってコトよ。」
純「くっ・・・!!」
ライン「さあ、私に大人しく切り刻まれればこの二人の命は助けてあげるけど・・・?どうする・・・?」
純「・・・・・・。(何とか二人を助けないと・・・!でも、どうすれば・・・・!?)」
純は何とかいい方法はないものかと考えたが、美帆と美幸が人質になっている以上手出しが出来ない。
純「・・・・・分かった。俺の命はお前にやる・・・。だが、二人の命だけは絶対に助けると約束しろ!いいな!?」
ライン「ふふ・・。聞き分けがいいわね・・・。いいわ、この二人は助けてあげるけど、坊やとさっきの智って子にも私の髪を切り落とした罪をその命で償ってもらうわよ・・・。」
純「何っ!?」
ライン「でも、まぁ今頃出血多量で死んでいるかもしれないけどね・・・。ふふふ・・・、それは後で確かめさせてもらうけど・・・。」
純「くそっ・・・!」
純は仕方なく刀を持った手を下げた。
『ライン』はそれを見ると、ワイヤーを手に構えた。
ライン「・・・・ふふ、それじゃあね・・・坊や・・・・。」
純「(・・・・すまん・・・・みんな・・・。俺はここまでみたいだ・・・・・。)」
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一方、純が『ライン』と対峙する10分ほど前・・・・。
竹内「・・・・・花桜梨さん。今、だいたいどの辺りなんだろうね・・・。」
花桜梨「階段を二回昇ったから、上の方には来ているはずなんだけど・・・。」
竹内と花桜梨は、水路を流されて地下四階まで落とされていた。現在は地下二階まで昇って来た事になる。
花桜梨「地図を見ても、今いる場所までは分からないものね・・・。どうしよう・・・。」
竹内「・・・・とにかく、上に続く階段を探す事を考えて移動しよう。地下にいることだけは間違いなさそうだからね・・・。」
花桜梨「そうだね・・・。(竹内君・・。大分落ち着いたみたいだけど・・・・、どうして・・・?まだ何か嫌な予感がする・・。)」
花桜梨は自分の中に湧き上がる不安を振り払うように頭を振ると、竹内の手をしっかりと握り直した。
竹内「(・・・・上では一体どうなっているんだろう・・・・。純や智たちの事が気になるな・・。)」
竹内もまた、花桜梨の手をしっかりと握りながら、上にいるはずの仲間たちの事を考えていた。
あれからかなりの時間が過ぎてしまっている。状況に変化が起きていても不思議ではない。
その不安によって、竹内の心に焦りが表れ始めていた。花桜梨もそれは同じであったが・・・。
二人は、とにかく上の階に進むべく階段を探して歩き回るのであった。
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キング「さて・・・ここを下に降りればもうすぐ上陸艇だな・・・。一旦本部に戻ってあと3人ばかり他のハンターを連れて来なければ・・・・。『ライン』と『マインド』だけでは多少不安が残るからな・・・・。」
『キング』は薄暗い地下通路を進んでいた。現在地下二階にいる。不幸にも竹内と花桜梨がいる階に『キング』は来ていたのだ。
更に運が悪い事に、『キング』の進んでいる通路は二人がいる通路と同じであり、このまま進めば10分後には鉢合わせとなってしまう事になっていた。
一方、涼は・・・。
涼「・・一体、あいつはどこにいるんだ・・・・。確かにこっちに進んでいるはずなんだが・・・・。一度上に戻るべきか・・・。
だが、このままあいつを逃がしたら何か恐ろしい事になる気がする・・・。・・・くそっ、どこに行けば・・・!?」
涼は『キング』の行方を捜して地下一階まで来ていた。しかし、地下二階に続く階段が見つからずに先へ進めずにいた。
涼「仕方ない・・・。こうなったらとにかく歩き回って階段を探して下の方に降りていくしかないな・・・。」
涼はそう決めると通路を小走りに進み始めた。階段を探す事を第一として行動した方が、合理的だからだ。
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そして、純と『ライン』は・・・。
ライン「じゃあ・・・・覚悟はいいわね・・・。」
純「・・・!!」
ラインが今まさに純の首にワイヤーを投げつけようとした時!
美幸「・・・・う〜ん・・・。」
美幸が目を覚ました。しかも、その瞬間に不幸が起きる。
・・・メキメキメキ・・・!!
・・・・バキッ!!
ライン「死ね・・・・っ!?」
グシャッ!ガッシャーン!!
何と、天井の照明が突然金具から外れて落下して来た!
しかも照明は美幸と『ライン』目掛けて真っすぐに落下してしまった。
ライン「なっ!?・・・・くっ!」
『ライン』は瞬間的に身をかわして難を逃れた。しかし、その際に美帆と美幸を縛っているワイヤーを手から離してしまう!
一方、美幸は純がとっさに抱きかかえて照明から逃れたために命拾いした。
美幸「はにゃっ!?・・・一体何がどうなってるの〜!?何で美幸縛られているの〜!?」
美幸は訳がわからずにパニックになりかける。
純「寿さん、今は説明している時間が無いんだ!出来るだけ俺から離れているんだ!」
純はそれだけ言うと、美幸の身体に絡み付いているワイヤーを外すと『ライン』のいる方に素早く移動する。
ライン「・・・・・しまった!ワイヤーを・・・!」
純は二人の身体を縛っているワイヤーが『ライン』の手から離れた事を見て取ると、素早く刀を拾うと逆刃にして中段に構えた。
純「・・・・これで正々堂々と戦えるな!」
ライン「・・・・くっ、・・・・まあいいわ。まともに戦っても坊やが私には敵わないって事を教えてあげる・・・・。」
『ライン』は胸元から予備のワイヤーを取り出すと身構えた。
純「俺は坊やじゃない!!俺は純一郎だ!!!」
純は先手を取って、『ライン』に挑みかかった。
『ライン』はそれを先読みしていたかのごとく、無駄の無い動きで純の攻撃をかわす。
ライン「・・・・その程度の攻撃じゃ、私を捉えられないわよ!」
そして、そのまま回避行動を取りながら純に向かってワイヤーを放つ!
シュッ!
純「・・・!」
ギャン!バシュッ!!
純もまた、寸でのところでワイヤーを交わすと後ろに下がって体勢を整える。
目標を失ったワイヤーは、純の後ろにあった支柱に音を立てて絡みつくとそのまま真っ二つに切り裂いてしまった!
切り裂かれた支柱からは、スチームが噴出して、支柱の周りを白い霧が染めていく。
純「何て切れ味だ・・・!」
ライン「ふふふ・・・、よく避けられたわね。でも・・・いつまで逃げられるかしら・・・・?」
『ライン』は更に懐からワイヤーを取り出すと左右の手に構えて、じわじわと近づいてくる。
純も左右のワイヤーに警戒しながら距離をじわじわと縮めていく。
やがて、二人の距離がある一定の場所まで接近した時!
ライン「!!」
『ライン』は左手のワイヤーを純目掛けて放つ!しかし、純はそのワイヤーを上手く避けると一気に『ライン』に斬りかかった!
純「くらえっ!!」
純は的確に相手の鳩尾を狙って胴を放つ!
しかし・・・。
ライン「ふふ・・・!ひっかかったわね!」
純「!!?」
『ライン』は純が自分の懐に入って来るのを待っていたかのように、残る右手を横に振る。
その瞬間、純の刀は『ライン』の鳩尾に当たる数センチ前でしっかりと止められてしまった。
純「何だと!?」
純がよくよく刀を見ると、ワイヤーがしっかりと刀に絡み付いている。
純「(そんな・・・!いつの間に・・・!?)」
ライン「隙有り!」
純の動きが止まったのを『ライン』は見逃さなかった。
避けられた左手のワイヤーをすぐに手元に回収すると、そのまま純の首を狙って放ってきた。
純「!!!」
ビシュッ!!
純の首筋をワイヤーがかすめる!その瞬間、純の首筋から血が僅かに流れ始めた。
ライン「・・・!(避けられた・・・!?なかなかしぶといわね・・・。)」
純は首の皮一枚を傷つけられた程度で済んだが、あと一秒かわすのが遅れていたら純の首と胴体は寸断されていただろう。
純は、一気に後方へジャンプすると、再び『ライン』から間合いを取って、今度は下段に構えた。
ライン「・・・構えを変えたって結果は同じよ。今度こそ切り裂いてあげるわ・・・!」
純「(・・・・・ここまでの三年間、俺が剣道部で覚えた技術・・・信念・・・俺の命運・・・寿さんと白雪さんの命を助ける為にも!
・・・・全てをこの一撃にかける!!)」
純は静かに目を閉じると意識を集中させ始めた。
『ライン』にも、周りの雰囲気が一瞬で変わったことがすぐに分かる。
ライン「・・・・!!(何なの・・・?この部屋全体の雰囲気が変わった・・・!?一体、何をする気・・・・!?)」
純「・・・・・・・。」
純は静かに呼吸を整えると、刀を下段から上段に構えなおした。その途端、純の刀が激しい炎に包まれる!!
少なくとも、美幸と『ライン』にはそう見えた。
ライン「な・・な・・・刀が・・・・!?」
純「・・・・・・・。」
純は更に意識を集中して気合を高めていく。
ライン「・・・・一体この坊やは・・・何者なの・・・!?刀が炎を放ち・・・それに、後ろに見えるのは・・・・不動明王・・!?」
美幸「(・・・・ほ・・・ほかりん・・・・凄い・・・・!)」
美幸と『ライン』はあっけに取られた様子で純の姿に見入ってしまった。
純「!」
純はかっと目を開くと、呆然としている『ライン』に一気に走り出した。
ライン「・・・・・!はっ・・・!?」
純「真・不動明王唐竹割りぃっっ!!!!」
純は上段の構えのまま攻撃射程内に入ると、『ライン』目掛けて一気に刀を振り下ろす!!
ライン「くっ・・・!」
『ライン』は慌てて左右のワイヤーを一つにして純の刀を止めようとする・・・・が。
純「無駄だ!!」
ジュッ!!
ワイヤーはまるで溶岩に投げ込まれた氷のように、刀が触れた瞬間に一瞬で焼き切られてしまった!!
ライン「そ・・・!そんな・・・・!?」
『ライン』の表情が恐怖の色に染まる。
ズバッ!!!
純の刀が見事に『ライン』を捉える!
・・・次の瞬間、『ライン』はがくっと崩れるようにしてその場に倒れ込む。
ライン「・・・・そん・・な・・・はず・・・は・・・・!」
純「・・・・・・・。」
純は、刀を一度横に振ると再び中段に構え直した。刀が横に振られた際に、炎が尾を引いて美しく後を残す・・・。
美幸「・・・・・・・・・・・。」
美幸はその美しさと力強さに言葉を失ってしまう。
純は刀を納めると一言呟いた。
純「・・・・・安心しろ・・・。俺は人は殺さない・・・・。」
<第弐拾五話・完>
(第弐拾六話へ続く