ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第弐拾四話「美しき狩人」
純「・・・・そろそろこの辺で休憩しよう。寿さんたちも疲れただろうし。」
美幸「うん、美幸〜ちょっと疲れちゃったかな〜。」
美帆「そうですね、それではあの部屋で一休みにましょう。」
美帆は一つのドアを指差した。丁度、いいところに部屋があったものだ。
純「よし、俺が中の様子を見て安全だと分かったらここで休憩に入ろう。ちょっと、待ってて・・・。」
純は用心深くドアを開けて、中の様子を窺ってみる。
とりあえず、今の所部屋には誰もいる様子は無い。
純「よし・・・・、大丈夫みたいだな・・・・。」
こうして、四人は部屋の中に入ると床に座り込んで一休みする。
美幸「そう言えば〜、美月さんは〜ひびきの市のどこの大学に通っているの〜?」
美月「私は、ひびきの女子短期大学に通っているんですよ。」
美幸「そうなんだ〜。美月さんって何か大人びているし〜かっこいいなぁ〜。」
美月「ふふ・・・。そんな事有りませんよ・・・。」
美帆「いえ、本当に落ち着いていますし、寿さんが憧れるのも無理は無いですわ。」
純「・・・・・・。(参ったな・・・・。匠じゃ有るまいし、女性同士の会話に入るのは俺には出来ないな・・。)」
美幸「あれ〜?ほかりん、何か顔が赤いよ〜?」
純「えっ!?・・・あ!いや・・!・・・俺は、ちょっとこの部屋の外を見回ってくるよ!」
純は赤面している事を指摘されて、真っ赤になったまま部屋を出て行った。
美月「穂刈さんって・・・・面白い方ですね。」
美幸「うん!ほかりんは〜、いつも女の子と話すと顔が赤くなっちゃうんだ〜。」
美帆「真面目な方ですからね。きっと照れていらっしゃるんでしょう。」
一方、部屋の外では・・・。
純「ふぅ〜・・・。やれやれ・・・。やっぱり俺には女の子の集団に一人でいる事は出来ないな・・・。とりあえず、辺りを見回っておくか・・・。」
純はそう呟くと、辺りを見回りに出かけた。
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再び室内では・・・。
美帆「・・・・そう言えば小倉さんは無事に坂城さんたちの所に戻れたのでしょうか・・・?」
美幸「うん・・・。」
美月「・・・智さんはどんな方なんですか?」
美幸「とっても、頼りがいがある男の子だよ〜。ほかりんと同じ剣道部に入っているんだ〜。」
美帆「ええ、二人はいいライバルとしてお互いに競い合っているみたいですね。剣道でも・・それに・・・。」
美帆はそこまで言うと、美幸の方をみてにっこりと微笑んだ。
美月もその様子を見て、美帆の考えを察した様でくすりと微笑んだ。
美幸「え?え?美帆ぴょん、どういう事なの〜?」
どうやら、気が付いていないのは美幸本人だけの様である。
美帆「寿さん、それはあなたが自分で気が付かなければいけませんよ。」
美幸「???」
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そんな感じで談笑していたが・・・。
美帆「・・・穂刈さん遅いですね・・・。そろそろ30分になりますよ・・。」
美幸「どうしたのかな〜・・・?まさか、道に迷ったのかな〜・・。」
美月「心配ですね・・・・。私が様子を見てきますわ。」
美幸「美月さんだけじゃ危ないよ〜。美幸も行くよ〜。」
美帆「私もご一緒します。」
美月「いえ、私だけで大丈夫です。もしもまたあのハンターに遭遇してしまったら、皆さんまで危険に巻き込むことになってしまいますから・・・。」
美幸「で、でも〜・・・。」
美月「私が出て行ってから20分しても戻らなかったらすぐに、どこかに隠れて下さい。」
美帆「・・・・分かりました・・・。それでは、くれぐれもお気を付けて・・・・。」
美月「ええ・・・、あなたたちも・・・。」
美月は二人ににっこりと笑いかけると部屋を出て行った。
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一方、純は・・・。
純「・・・・まずいな・・。道を間違えたかな・・・?この辺りのはずなんだけど・・・。」
美幸の予想通り、純は道に迷ってしまっていた。
純「確か、この通路を左に曲がって・・・。くそっ!俺が行かないと寿さんたちを守る人が誰もいなくなっちまう!」
純は必死になって最初の部屋に戻ろうとしていたが、どこをどう歩いても部屋が見つからない。
純「・・・・何てこった・・・!!」
純が半ば呆然として立ち尽くしていると・・・。
美月「・・・・!そこにいるのは穂刈さんですか?」
純「!!・・・美月さん!何故ここに・・・!?」
美月「あまりにも帰ってくるのが遅いから、心配で様子を見に来たんですよ。私が歩き回っている所にたまたま穂刈さんがいましたので・・・。」
純「そうだったんですか・・・。美月さん、道は分かるんですか?」
美月「いえ・・、ですが壁に目印を付けておきましたので・・・。」
純が壁を見ると、小さい傷が付けてあった。
純「・・・・良かった。これでみんなの所に戻れる・・。」
美月「それでは、早く戻りましょう。」
こうして、純と美月は目印を見ながら美幸たちのいる部屋に向かって歩き出した。
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だが、その後ろには二人の後をつける人影があった・・・。
???「・・・・・・・。」
謎の人影は、二人に気が付かれない様に距離を置きつつ、確実に尾行をしていた。
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純「・・・大分見覚えがある所まで来たみたいだな・・・。もう少しであの部屋まで戻れるぞ・・・!」
美月「ええ・・・。もう少しですね。」
純は、嬉しそうに笑いながら美月の前を進んでいる。
???「・・・今から目標を始末する・・・。」
そんな純に後ろからゆっくりと近寄る影が・・・。
???「死ね!!」
純「・・・!!?」
ザシュッ!!
純「ぐっ!」
純は紙一重で謎の襲撃者の攻撃をかわす!しかし、着ている上着の裾がばっさりと切断されてしまう。
純は顔を起こすと、自分を襲った者の姿を確認する。純の目に映ったものは・・・・。
美月「・・・・・・・。」
何と、襲撃者は美月だった。両手に銀色のワイヤーを持って身構えている。
純「なっ!!?美月さん!?これは一体・・・!?」
純は訳が分からないといった様子で美月に問い掛けた。
美月「・・・・ふふふ・・・。まだ分からないの?私は坊やたちを始末する為に増援として送り込まれたハンターよ。」
純「何だって・・!?美月さんが・・・・ハンター!?」
美月「私は美月なんて名前じゃないわ。ハンターコードネーム『ライン』。・・・女と思って油断したみたいだけど、その甘さが命取りになったわね・・・。」
純は刀を抜こうと腰に手を当てるが・・・。
純「(しまった!慌てて出てきたせいで刀を部屋に置きっぱなしにしちまったんだ!!)」
ライン「・・・坊やはなかなかいい男だから殺すには惜しいけど・・・、これも任務なのよ。悪く思わないでね・・。」
ラインは冷たく微笑むと、手にしたワイヤーを構えて一気に純に襲い掛かった!!
純「うっ、うわああぁぁっ!!!」
ズバッ!!
切り裂かれた箇所からボタボタと血が流れ落ちて、床を真っ赤に染める。しかし、床を染めたのは純の血液ではなかった・・・。
純「・・・・・!!さ、智!!」
智「・・・・・純、だから言っただろ・・・!甘さは命取りになるってな・・・!」
純の首にワイヤーが巻きつく瞬間に前に飛び出て身代わりになったのは、既に匠たちの所に戻ったはずの智であった。
ライン「!!・・・ちっ、邪魔が入ったわね・・!でも、これで智とか言う坊やはお終いね・・。」
智は左腕を盾にしてワイヤーを止めたせいで、彼の左腕はズタズタに切り裂かれてしまっていた。
細く、丈夫なワイヤーは、智の左腕の皮膚を切り裂き、筋肉を断ち、骨にまで達していた。
智「お終い・・・?へへへ・・。そいつはどうかな・・・?」
智は残った右腕で刀を抜くと、『ライン』に向かってなぎ払った!
ヒュン!!
ライン「!!」
『ライン』は間一髪のところでかわしたが、自慢の美しい金髪の髪が切り飛ばされる!!
ライン「わ、私の髪が・・・!!・・・・おのれ!!覚えているがいいわ!!」
『ライン』は素早くワイヤーを回収すると、通路を走り去った。
智「・・・・ぐっ・・・うううう・・・・!!」
『ライン』が去った後で、智はがくっと片膝をついて屈み込む。
純「おい!智!大丈夫か!!しっかりしろ!!」
智の左腕は、もはや使い物にならなくなってしまっていた。
おびただしい出血が、傷の深さを物語っている・・・・。
智「純・・・、お前は怪我は無いか・・・?」
純「俺は大丈夫だ!それよりも、何でお前がここに・・・匠の所に戻ったんじゃないのか・・・!?」
智「バカ野郎・・・・、お前たちを置いて戻る訳がねぇだろ・・・!」
純「バカはお前だ・・・!俺なんかをかばうから・・・!!」
純は自分の上着を破ると、包帯代わりにして智の左腕の付け根を固く縛った。
この状況ではあくまでも応急処置くらいしか出来ないので、気休め程度にしかならないが・・。
智「・・・やっぱり、あの女は敵だったみたいだな・・・・。」
智は痛みで顔を苦痛に歪めながら呟いた。
純「ああ・・・、だがお前は何で彼女がハンターだって分かったんだ・・・?」
智「・・・最初に怪しいと思ったのは自己紹介の時さ・・・。あの女ハンターは・・・・俺の下の名前が智だって誰に聞いたんだ?」
純「!!」
智「俺は最初に、小倉としか名乗らなかった。なのに、あいつは下の名前まで知っていた・・・。
美幸も白雪さんも、お前だって、あの女の前では智って言わなかっただろ・・・?」
純「そう言えば・・・!だが、何で早く教えてくれなかったんだ・・・!」
智「俺がいきなり単独行動をしたら怪しまれるだろ・・・・?だから、あえてお前には黙っていたんだよ・・・。」
純「・・・・・・・。」
智「それよりも・・・、早くあいつを・・・・『ライン』とか言う女ハンターを追いかけろ・・・!美幸たちが心配だ・・・!」
純「だが・・・お前を残しては・・・・。」
智「俺なら大丈夫だ・・・・。この刀を持って、早く行け・・・!」
純「・・・・分かった!」
純は智から刀を受け取ると、『ライン』の後を追って通路の奥に走っていった。
智「・・・・・・ぐっ、・・・・ちくしょう!・・・左腕が動かねぇ・・・・!」
智の左腕はもはや自分の意志で動かすことさえ出来なくなっていた・・・。腕の神経を傷付けられてしまったからだ。
智は痛みをこらえながらも何とか立ち上がると、自分も純の後を追うようにゆっくりと歩き出した・・・・。
<第弐拾四話・完>