ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第弐拾参話「強襲」
智と純が喧嘩をして、智は匠の所へ戻ってしまった。
純はその事を皆に告げたのは、それからすぐの事であった・・・。
美幸「えぇ〜っ!!さとぽん、一人で戻っちゃったの〜・・・?」
純「・・・・ああ、あいつの考え方は危険過ぎる・・・。だから、俺はこのまま一緒に行動するのは危険と判断して、智には戻ってもらったんだ・・・・。」
美帆「そうですか・・・。」
美幸「でも〜・・・、さとぽん、一人で大丈夫かな〜・・・。ちゃんと戻れるのかな〜・・・。」
純「・・・あいつも地図は持っているし、今来た道を引き返すだけなんだから大丈夫さ・・。」
美幸「・・・・さとぽん、きっと美幸たちを守ろうと必死なんだと思うよ〜・・・。」
純「・・・。」
美幸「誰だって人殺しなんかしたくないに決まってるよ〜・・・。でも、さとぽんはたけぴーと同じように美幸たちを守りたくて・・・、きっと・・・きっと、本当は辛くて仕方ないと思うんだ〜・・・。」
美幸は悲しそうな顔をして、うつむきがちにそう呟く。純も黙り込んで美幸の言う事を聞いている。
誰だって好きで人を殺したくは無い。だが、向こうが自分たちを殺そうとする以上、こっちもそれなりに抵抗しないといけない。それは純自身分かっていた・・。しかし、彼は自分の中にある正義感からそれを割り切れないでいたのだ。
その分、美幸の言葉は純の心に深く突き刺さるものがあった。
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一方、管制室では・・・。
匠「・・・あれ?おかしいなぁ・・・。」
光「どうしたの?」
琴子「何か様子が変わったの?」
匠「いや・・・・、そう言う訳じゃないんだけど・・・。ほら、ここ見てよ。『Security System』ってあるよね。ここをいくら操作しようとしても動かせないんだ。」
光「セキュリティーシステム?・・・・これを操作しないと何かまずいの?」
匠「・・・・いや、何て言うのかな・・・。侵入者迎撃システムってのがあるんだけど、ONになっているんだよ・・。」
光「え・・・・?」
匠「これって、放っておいたらかなりやばそうだよね・・・?だから、何とかしてOFFにしようとしているんだけど、反応が無いんだ・・・。」
琴子「ちょっと!進入者って私たちの事よね!?このままじゃ、私たち全員が迎撃装置によって攻撃されるって事なんじゃないの!?」
匠「あ・・・・・・それって・・・。」
光「・・・・・すごく・・・・。」
琴子「まずいわよ!!」
三人は真っ青になって、何とかセキュリティーシステムをOFFにしょうとするが、まったく反応が見られない。
匠「とにかく、このパネルの使い方はある程度は覚えたから、何とかしてみるよ!」
SecuritySystem |
WatchCamera |
AutoLock |
WaterGate |
Mail |
ON |
ON |
OFF |
OPEN |
Lock |
光「この、Mailって言うのは何かな?」
匠「恐らく、電子メールをここから送受信出きるみたいなんだけど・・・、パスワードが分からないから外部にメールで助けを求める事は無理みたいだね・・・。」
琴子「もし、合言葉が分かっていれば、すぐに助けを呼んでいるわよね・・・。」
匠「そういう事だね・・・。(合言葉・・・・パスワードの事か・・・。)」
光「このWatch Cameraってのが、監視カメラの事を意味しているんだよね。でも、WaterGateって・・。水門なんてこの施設内にあったっけ・・・?」
琴子「水路があるって事は、必ずどこかに水門があるはずよ。多分・・・地下のどこかにあるんじゃないかしら?」
匠「上陸艇も水路にあったし、水門を閉めたら脱出出来なくなるってことだから・・・ここは触らないでおこう。」
光「それより、何とかしてこのセキュリティーシステムをOFFにしないと・・・。」
匠「そうだった!・・・・でもどうすれば・・・。」
三人は頭を必死で回転させて、セキュリティーシステムの解除方法を考えていた。
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しかし、その間に純たちにハンターの魔の手が迫っているとは三人には知る由もなかった・・・。
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モノローグ・・・穂刈純一郎の場合・・・。
・・・俺は智があんな奴だとは思わなかった・・・。ここに来てから、次々と皆がおかしくなっていく・・・・。
竹内から始まって、智・・・・。次は一体誰が・・・・?
・・・・いや、誰がそうなったっておかしくないか・・。俺は竹内や智に言われた様に甘いかもしれない・・。だが、それでも俺には割り切る事が出来ない・・。寿さんに言われた事も判る・・。だけど・・・。
人は死んでしまったら何もかも終わる。例え相手が殺人集団だとしても、そこで俺たちまでが奴らと同じように相手を殺す事で対処したら、それでは殺人集団と同じになってしまうのではないか・・・?
だが・・・それでは俺たちが殺されると、あいつらは言った・・・。
・・・・俺は・・・、俺の考えは間違っているのか・・・・?殺さずに戦うなんて甘い考えなんだろうか・・・・?
・・・・判らない・・・・。
だが、これだけは判る。今、俺がやるべき事・・・・。それは寿さんたちを守らなくてはいけないって事だ!
智がいなくても・・・、俺一人で守ってみせる・・・!
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涼の場合・・・。
はぁ、はぁ・・・!はぁ・・・!!
俺はあのハンターを追いかけて狭い通路を走っている。通路の奥にはまだハンターの姿は見えてこない。
ひょっとしたら、もうずっと先にまで行ってしまったのかもしれない・・・。
それか、別の道に行ってしまった事も考えられる。早く奴を見つけなければ・・・!
・・・俺は、ハンターを追って走りながらふと、昼間の事を思い返していた。
・・・・俺は何であの時八重さんにあんな事を言ったんだろう・・・。
『竹内の事を本当に想うんだったら・・・・,それだけで諦めんな!!拒絶されたらもう一度説得してみればいい!!
それでも駄目だったら再び説得すればいい!!何回失敗してもその度にあいつに心からぶち当たってみるんだよ!!』
『まだ何もしていないのに諦めんな!!行動する前から駄目だって決め付けるな!!』
・・・考えよりも先に言葉が・・・自然と口から言葉が出てきた気がする・・・。
考えてみると不思議なものだ・・・・。竹内は俺にとって恋敵でもありライバルでもある・・・。
部活の時だってほとんど口を聞く事も無い。常に俺はあいつに勝つことだけを考えていた・・・。
八重さんは竹内しか見ていないと言う事を自分でもはっきりと分かった時から、その気持ちは更に強まっていった・・・・。
俺は八重さんを振り向かせる事が出来なかった・・・。だが、あいつにはそれが出来た・・。
俺には出来なかった事をあいつはやってのけたんだ・・・。だから・・・、俺はせめて部活や勉強だけでもあいつに勝ちたかった・・・。
八重さんを振り向かせられなかったのは俺の力不足だったから・・・。でも、部活や勉強ならあいつと同じくらいだ。
きっと追い抜かすことは出来るはずだ!そうだ・・・!俺は竹内に二度は負けない!!
・・・・・ははは・・、何だよ・・・・。結局、俺は竹内の事になるとむきになってるじゃないか・・・。
まだあいつに劣等感を持っている事を自分で証明してしまっている・・・・・。
俺は・・・知らず知らずのうちに竹内の実力を・・・認めているのかもしれないな・・・・。
まあ、いいさ・・・。ここでいろいろ考えても仕方の無い事だ。
・・・・今は、あのハンターを追う事が先決だ!
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竹内の場合・・・
・・・・何故だろう?さっきから身体がざわざわする・・・。
誰かに呼ばれているような・・・・そんな不思議な感じがする・・・。不快ではないけど・・・・、何だか落ち着かない。
花桜梨さんは俺の横でしっかりと手を繋ぎながら歩いている。肩の痛みは少しは治まってきた・・・。
どうやら『ナイト』の神経毒が、麻酔のような影響を俺の傷にもたらしている様だ。さっきまでは一人では歩けなかったけど、
今ではこうして歩く事が出来ている。
何かが妙だ・・・。普通だったら歩く事はおろか、身動きすら絶対に出来ないくらいの傷なのに・・・?
花桜梨さんはその事は気付いてはいないみたいだが・・・・。まあ、彼女には心配をかけたくないし余計な事は言わないでおこう。
・・・・さっき、花桜梨さんの胸で泣いている時・・・・人前で泣くなんて小学生の頃以来だけど・・・。
彼女は優しかった・・・。暖かかった・・・。とても安らいだ気持ちになれた・・・。
だから・・・、俺は心から落ち着く事が出来たって言うのに・・・・、今では何かが俺に作用している気がしてならない。
誰かが俺を見ている?いや・・・、ここは暗い地下通路だ。見ているはずが無い。
でも、やはりおかしい・・・・・。『トラップ』・・・・?
あいつは俺たちを狩るハンターでありながら、ターゲットでもある俺を助けた。
あいつと初めて会った時、何故か親しみを覚えた・・・・。
何故あんなにも信用できたんだろうか・・・?俺が単純で騙されやすいだけなのか・・・?
『トラップ』は何を考えて俺に接触してきたんだろうか・・・?最初から俺を騙すつもりで近づいたのか?そう言えば、あいつは俺の事をハンターにしたがっていたっけ・・・。単にそれだけが狙いで俺に近づいたのか・・・?
いや・・・、そうは思えない。少なくとも、あの時のあいつの目は俺を騙すつもりで近づいたような目でなかった・・・。
・・・・・・・だとしたら、一体あいつの目的は・・・?
俺に武器の在り処を教え、地図を与え、俺の命を救い・・・・、俺にはどうしてもあいつの事をハンターとして思えない・・・。
・・・まずい・・・、頭がズキズキしてきた・・・。もう、考えるのはよそう・・・。
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花桜梨の場合・・・
竹内君がやっと以前の彼に戻ってくれた。その事が私にはとても嬉しかった・・・。
でも・・・。
今、隣を歩いている竹内君の様子は明らかにおかしい・・・。何かに怯えているような・・・・、肉食動物に狙われた小動物のような目をしている・・・。何も言わずに黙ってはいるけど、私の手を握っている彼の手に力が少し入っているから、何となく分かる・・・。
きっと、私に何も言わないのは心配をかけたくないからだと思う・・・。
今、ここで竹内君にどうしたのか聞いてもきっと笑って『なんでもないよ。』って言うだろうから、私もあえて何も聞かないでいるけど・・・。何を考えているんだろう・・・。
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『・・・・何もしない、何も聞かないでくれる事がとても優しく感じる事があるの・・・・。』
以前、この言葉を竹内君に言ったことがあった・・・。
今の竹内君にはその言葉が当てはまるのかもしれない・・・。
でも・・・・、私には竹内君が何を考えているのかとても気になる・・・。彼が何を考えて何に怯えているのかが知りたい。
もっと竹内君の事を知りたい・・・、そう思い始めている。
・・・・・私って、勝手なのかな・・・。自分が竹内君にあんなこと言ったくせに、立場が逆になったらこんな事思うなんて・・・。
ふと、私は視線を感じて後ろを振り返って見た。
もちろん、そこには誰もいない。・・・・気のせいよね・・・、ここは私たち以外誰もいない地下通路なんだし・・・。
・・・・・でも、私にも何となくだけど、誰かが私たちに接触しようとしている事を感じ始めている・・・。
まさか・・・・、あの『トラップ』って言うハンター・・・!?ううん!そんな訳が無い!だって、私たちがここにいる事を知っているのは誰もいないはずなんだし・・・。
・・・・監視カメラか何かが仕掛けてあったら別だけど・・・。・・・・とにかく、今は早くみんなと合流しないと・・・!
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各自、それぞれいろんな思惑を胸に秘めながら、それぞれ施設内を移動していた。
しかし、彼らの思惑がどうであれ、望まない結果が現実であろうと確実にその時はやってくる・・・。
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ライン「(・・・時間は・・・そろそろね・・・。強襲作戦を開始する・・・。)」
<第弐拾参話・完>