ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第弐拾弐話「人の甘さ」

ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第弐拾弐話「人の甘さ」

管制室を出て30分後、智たちは施設の地下を移動していた。

匠の携帯電話のサポートにより、道に迷う事無く竹内と花桜梨の所に着実に近づいていたのだ。

純「智、そっちに誰かいたか?」

智「いや、こっちは特に誰もいないみたいだな・・・。」

美幸「う〜ん・・・、どこにたけぴーと八重さんはいるのかな〜・・・?」

涼「とりあえず今分かっているのは、二人ともこの地下のどこかにいると言う事だ。だから、俺たちがこうやって探し回っていれば必ずいつかは見つかるはずさ。」

美幸「そうだといいんだけど・・・。美幸、さっきからな〜んか嫌な予感がするんだ〜・・・。」

智「嫌な予感?」

美幸「うん・・・、何て言うのかな・・・・。何か、身体がざわざわするって言うか・・・落ち着かないんだよ〜・・・。」

涼「・・・・・今の所、付近に人の気配は無いし・・・、気のせいだろ・・・。」

美幸「そうかな〜・・・。」

智「・・・・・・・。(美幸がこんなこと言うなんて珍しいな・・・。一応、警戒しておくか・・・。)」

美帆「・・・・あっ、あそこにドアがありますよ。あの中に二人ともいるかもしれません。見てみましょう。」

純「よし、俺が行って見て来るよ。」

純はそう言って、ドアに近づいた。

だが、ドアを開けようとした瞬間、純は何かに気付いたのかドアに耳を当てて中の様子をうかがいだした。

智「おい、純。どうしたんだ・・・・?」

純「・・・・・・・中に誰かがいる・・・。」

涼「何だって?竹内たちか?」

純「いや!違う・・・。これは・・・・女の声と男の声がする・・・。」

智「何て言っているか分かるか?」

純は黙って中の会話を聞いていたが、突然慌てたようにドアを開けて室内に飛び込んだ。

そこには・・。

キング「・・・・・!!また、お前らか・・・・・。」

女性「た・・・助けて下さい!!」

キングが若い女性の襟首を掴んで、今まさに右手に持った刀で切り裂こうとしているところであった!

純「その人を放せ!!」

智「・・・こいつ!あの時の刀野郎か!?」

美帆「大変!女性が襲われています!」

涼「・・・・このまま放っておくわけにもいかないな。助けるぞ!!」

涼はそう言って拳銃を抜いた。純と智も刀を構える。

キング「おっと!そこまでだ!!動くとこの女の頭と胴体がなき別れになるぞ?」

純「くっ!」

女性を人質に取られていては手も足も出ない。純たちは武器を構えたまま悔しげに『キング』を睨む。

キング「まさかここまで来るとはな・・・。だが、そろそろ俺は撤退させてもらうとしよう。」

智「逃げる気か!?」

キング「くくく・・・!逃げる訳では無い・・・。あくまでも体勢を整えてくるだけだ。お前らの仲間に三人も部下が殺られてしまったからな・・・。」

純「・・・・・。(竹内の事か・・。)」

キング「だが、心配するな・・・。お前らの相手はここに新たに増援として送り込まれたハンターがしてくれるだろうからな。

ちなみに、その増援部隊のハンターは既にここへ到着しているぞ。お前らを殺すために今頃、施設内を探しまわっているぞ!」

純「増援部隊だと・・・!?」

涼「・・・・・くそ!」

智「・・・三人倒されてもまだ代わりはいくらでも来るってことかよ・・・。」

純「最初俺たちが受けた説明ではハンターは五人のはずだぞ!!」

キング「・・・・くくく!そうだな・・・・確かにそう説明を受けたはずだ・・・・。だが、ハンターが五人で終わりなどと誰が言った?」

純「何だと!?」

智「汚ねえぞ!」

キング「ふん、何とでも言うがいい!俺は増援部隊と落ち合ってから一度本部に戻らせてもらう。俺が帰ってくるのはせいぜい24時間後の事だ。それまで生き残っていたら、お前らの相手をしてやろう。」

純「!!待て!!逃がすものか!」

キング「・・・・・邪魔をするな!!」

『キング』は左手で軽々と持ち上げていた女性を純目掛けて思いっきり投げつけてきた!

女性「きゃああぁっっ!!」

純「!!危ない!!」

純は腰を落として身体の重心を下げると、投げ飛ばされた女性を真正面からがっちりと受け止めた。

純「ぐっ!!」

だが、女性を受け止めたのはいいが、あまりの勢いで純は女性を受け止めたまま、派手に吹っ飛んでしまう!!

しかし、その間に『キング』は部屋を飛び出すと何処へと走って行ってしまった。しかし『キング』を見失う前に、涼がその後を追撃する!

涼「俺はあいつを追う!!純たちはその女の人を頼む!!」

涼も『キング』を追って、そのまま走り去ってしまった。

智「秋口!!」

純「待て!あいつは・・・秋口は拳銃を持っているはずだ・・・。あのハンターは重火器などの飛び道具は持っていないはずだから、よほど油断さえしなければ、恐らく大丈夫だろう・・・。それに、いざとなれば匠に連絡して涼の居場所を教えてもらえばいいさ・・・・。」

智「・・・・・そうだな・・・。」

純「それに、今はこの人を・・・あっ!!!」

純は、そこで初めて自分が助けた女性の胸を掴んでいる事に気が付くと顔を真っ赤にして女性から離れた。

しかし、女性はそんな事を気にもしていない・・・・と言うよりも、助かった嬉しさにより気が付いていなかったようだが・・・。

女性「・・・・・あの、危ない所をありがとうございました・・・。」

美帆「あの・・・、あなたはどうしてこんな所に・・・・?」

女性「私はひびきの市に住んでいる大学生です・・・。昨日、突然、帰り道で黒い服の男の人たちに捕まってここまで連れてこられたんです・・・。」

純「・・・!俺たちと同じか・・・。」

女性「!!・・・あなたたちもここに連れ去られて来たのですか?」

美帆「はい・・・。私たちは同じひびきの市にある高校の同級生なんです・・・。」

純「・・・・俺たちは、いきなりここに連れて来られてきたと思ったら、何か訳の分からない計画に選ばれたとかどうとか言われて、さっきの男・・・・ハンターに狙われているんだ・・・。」

女性「・・・・私を襲ったあの男も・・・?」

純「ああ・・・・、あいつはハンターのリーダー格さ。・・・・しかし、本当に危ない所だったな・・・。もう少し気付くのが遅ければ・・・・。」

女性「はい・・・、本当に感謝しています。あなたたちは私の命の恩人です。・・・あの、お名前を聞かせて頂けないでしょうか?」

純「俺は、穂刈純一郎って言うんだ。よろしく。」

美帆「私は白雪美帆と申します。」

美幸「美幸は〜・・・じゃなくって、私は寿美幸〜。よろしく〜。」

智「俺は、小倉って言うんだ。・・・ところで君の名前は?」

女性「私は、白水美月(はくすいみつき)って言います。」

美帆「白水・・・美月さんですか・・。神秘的なお名前なんですね。」

美月「そんな・・・。白雪さんの方こそ可愛らしいお名前じゃないですか・・・。」

美幸「ねぇねぇ、せっかくだし白水さんも私たちと一緒に行こうよ〜。」

美月「え?ええ・・・、私としても、そうして頂けるとありがたいのですが・・・。あなた方と一緒なら心強いですし・・・。」

純「ああ、俺たちも別に構わないし、白水さんも一緒に連れて行こうぜ。・・・じゃあ、これから一緒に行動するって事でよろしく。」

美月「ありがとうございます。良かった・・・。私もご一緒出来て嬉しいですわ。・・・えっと、穂刈純一郎さんに、白雪美帆さんに寿美幸さん・・・。そして、そちらが小倉智さんですね。どうかよろしくお願いしますね。」

美帆「ええ、こちらこそよろしくお願いします。私のことは美帆って呼んで下さって結構ですよ。」

美幸「私の事は〜美幸でいいよ〜!」

純「俺も純って呼んでくれても構わないよ。」

美月「はい。それじゃあ・・・美帆さん、美幸さん、純さん・・・で宜しいですね?それでは、私のことも美月って呼んで下さい。」

こうして、『キング』に襲われていた女性を助けた純たちは、白水美月と言う女子大学生をグループに入れて行動をする事にした。

しかし、そんな中で事件は起きてしまった。・・・・。

純「・・・・それにしても、美月さんだけどうして一人きりで施設に連れてこられたんだろう・・・?」

美月「え?どういう事なんですか?」

美帆「私たちは二人一組でここに連れてこられたんですよ。私たちの他にも別の所で何人か待機しているんですよ。」

美月「そうだったんですか・・・。」

純「そう言えば、あいつは増援を呼んだとか言っていたから、ハンターが増える分ターゲットも急遽増やしたって事かもしれないな。」

美帆「そうかもしれませんね・・・。でも、もしも本当に増援部隊がここに来ているとしたら、管制室にいる坂城さんたちの事が心配ですね・・・。」

純「ああ・・・、それにあいつを追いかけていった秋口の奴もあまり深追いしていなければいいんだが・・・。」

美帆「一度、坂城さんに連絡をした方がいいかもしれませんね・・・。」

美幸「さっきゃん、今頃美幸たちの事を見てくれているのかな〜・・・。」

美帆「きっと、大丈夫ですよ・・。坂城さんたちを信じましょう。」

そんな中、智が真剣な顔で純に小声で話し掛けた。

智「(・・・・おい、純。)」

純「(ん?どうしたんだ?)」

智「(・・・・俺は、どうしてもあの美月って娘が気になるんだ・・・。)」

純「(・・・・お前、美月さんみたいな人がタイプなのか・・・?)」

智「(・・・そう言う意味じゃない・・・。何か、嫌な予感がするんだ・・・。)」

純「(・・・どういう意味だ?)」

智「(・・・・何て言うか、信用出来ないんだよ・・・・。)」

純「(・・・お前、美月さんがハンターだとでも言うのか?)」

智「(・・・・いや、そういう事じゃないんだが・・・。初対面の人間をこんなに簡単に仲間に入れていいのかって事だよ・・。)」

純「(何言っているんだ!それじゃあ、お前はこんな危険な場所に彼女を置いていくつもりだったのか?)」

智「(・・・・・。)」

純は智の考えが理解出来ないと言うように、智を睨む。

純「(・・・・お前、少しおかしいぞ?・・・そんなに冷たい奴だったのか・・・?)」

智「(・・・・俺たちが今置かれている状況を考えてみろ。普通の日常では考えられないような事が平然と起きているんだ。だから、そう簡単に人を信じていいのかってことだよ・・・。)」

純「(・・・・・・。)」

智「(竹内だって、ハンターを三人殺している・・・。あいつ・・・、相当の覚悟をして人殺しをやったんだぞ・・?俺たちも竹内みたいに覚悟を決めないといけないんじゃないのか?)」

純「(・・・・それじゃあ、お前はどうしろって言うんだ?)」

智「(俺たちは・・・少なくとも俺は、ここで死ぬつもりは無い。竹内だってむざむざ殺されるのが嫌でハンターを三人殺したんじゃ無いのか・・?だから、俺も場合によっては竹内みたいに人を殺すのも仕方の無い事だと思うんだ。)」

智の言葉に、純は少し黙り込んでからこう答えた。

純「(俺は・・・俺だって死ぬのはごめんだ。だが、それでも人を殺す考えには賛成出来ない・・。甘いと分かっていても、俺は出来るだけ人を殺したくは無いんだ・・・。)」

智「(・・・純、お前は甘いよ・・・。さっきだって『トラップ』とか言うハンターに言われたように、俺たちがすぐにもう一人のハンターを殺さなかったせいで、逆に俺たちが殺されそうになっちまったんだぞ・・・。

もしも、止むを得ない状況になったら、ハンターがたとえ俺たちと同じ人間だとしても・・・・おれはそいつらを殺すつもりだ・・・。)」

純「(・・・・智、俺はお前がハンターを殺すと言うのなら・・・・。)」

智「(・・・言うのなら・・・・・?)」

純「(俺はお前を絶対に止めてやる。お前に人殺しをさせる訳にはいかない。俺も人殺しをするつもりは無い。)」

智「(純・・・、本気で言っているのか・・・?それに、この先ハンターを殺さないで済むとでも思っているのか!?)」

純「(・・・・・・・。)」

智「(・・・・・・そうか、お前がそう思うならそれでもいい。だけどな!これだけは言っておくぞ。

俺はお前みたいに敵に甘さを見せる事はしない。この状況で生き残るには、殺しをする事だって立派な手段だ!)」

純「(!!!・・・・お前はハンターと同じ存在になるつもりか!?)」

智「(・・・何だと?)」

純「(竹内も一時はお前みたいに殺しをしたって構わないようなことを言っていたが、それは自分の意志では無かった。

ハンターの一人にそそのかされておかしくなっちまったんだ。だが、俺と・・・いや、ほとんど八重さんの説得のおかげで、あいつは目を覚ました。だが、お前は自分の意志で人殺しをするつもりでいる。もし、お前が本気だと言うのなら・・・・そんな危険な考えをする奴とは寿さんや白雪さん・・・それに、美月さんと一緒に行動させる訳にはいかない。

お前の危険な考えで行動して皆が危険な目に遭うのは困るからな・・・!)」

純の言葉に、智は吐き捨てるようにこう言った。

智「(・・・・・分かったよ。そんなに言うのならお前一人で彼女たちを守ってみろよ!俺は坂城たちの所へ戻らせてもらうぜ。)」

純「(・・・勝手にしろ。)」

智「(ああ、勝手にさせてもらうさ!)」

智は匠たちの所へ戻ると言い残すと、そのまま一度も振り返る事もなく立ち去ってしまった。智と純は、お互いの考え方の相違から口論となり、美幸や美帆、それに美月の知らないところで喧嘩別れとなってしまったのだ。

この状況では一番危険な事態だ・・・。

その頃、『キング』は竹内と花桜梨がさっきまで居た上陸艇の所へと向かっているところであった・・・・。

 

<第弐拾弐話・完> 

                             (第弐拾参話へ続く・・・)

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