ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第弐拾壱話「合流と到着」

ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第弐拾壱話「合流と到着」

竹内と花桜梨が地下水路で上陸艇を発見する少し前・・・・。

涼「おい、さっきから大分歩いているがまだ管制室とやらには着かないのか?」

トラップ「そんなに慌てんなって。この通路をまっすぐに直進していれば必ず辿り着けるはずだよ。」

涼「嘘をついて、俺たちを騙していたら・・・・ただじゃ済まさないからな・・・!」

トラップ「へいへい・・・!怖い事で・・・。」

涼たちは『トラップ』を先頭に、管制室に向かって歩き続けていた。『トラップ』は途中、特に妙な事をする訳でもなく大人しく道案内をしている。

だが彼の頭は非常に悪賢く、既に涼たちから逃走する機会をうかがっているとは、まだ誰も気が付いていなかった。

光「でも・・・何でこの計画に私たちが選ばれたのかな・・・・。最初は悪性因子を見分けるとか、極限状況の行動を見るとか言っていたけど、私たちは別に悪い事なんかしていないしメンバーに選ばれる理由が分からないんだよね・・・。」

琴子「私だって、いきなりこんな所に連れてこられたと思ったらこの状況ですもの・・・。選ばれた理由が分からない分、余計に不愉快だわ・・・。」

匠「・・・・今考えてみたんだけど、このメンバー選抜の理由は意外と身近にあるんじゃないのかな?」

光「えっ?どういう事なの?」

匠「最初、僕らは光ちゃんが言った通り悪性因子の発見とそれを狩るハンターの演習、そして極限状態で表れる人間の本性をリサーチするのが今回の計画の目的だって聞かされた。でも、人員選抜の理由はあいまいだったよね。でも、それは考えてみればある程度予想がつくような気がするんだ。」

琴子「と、言うと?」

匠「つまり、今回のメンバーはみなひびきの市に住んでいて、なおかつ同じ高校に通っている。更に僕たちみんな顔見知りだ。」

光「うんうん。確かにそうだよ。クラスは違っていても、みんな一度や二度は絶対に話したりしている人ばかりだよね。」

匠「即ち、同じ環境に住んでいる者同士であり、知人、あるいは友人関係にあたる者たちが今回選ばれたメンバーなんじゃないかな?」

琴子「そう言えば、私と光、坂城君と穂刈君は親友同士よね。」

光「それに、寿さんと白雪さん、小倉くんと穂刈君もよく一緒に遊んだりとか、同じ部活の仲間だったりするよね。」

匠「うん、それに竹内と秋口に八重さんも全員バレー部って言う共通点がある。」

琴子「なるほど・・・。赤の他人を適当に集めて極限状況を作り出すよりも、親しい者同士を集めて極限状況に追い込んだ方が普通とは違った心理状態になるし、行動も違ってくる・・・。

それらを調べて観察する事の方が私たちを拉致した連中にとって、いろいろと都合が良かったり役立つって事ね。」

匠「その通り!」

匠たちの話を『トラップ』は歩きながら聞いていた。

口には出さないが、心の中では正直驚いていた。

トラップ「(・・・・なるほどね・・・。なかなか鋭いじゃないか、この坂城匠って奴・・・・・。ここまで察するとは大したものだ・・・・。)」

涼「・・・それで確実に一つ分かったことがある。」

匠「え?」

涼「・・・・・・俺たちをここに連れてきた奴らは最高のイカレ野郎って事さ・・・・!」

トラップ「(・・・・イカレ野郎・・・か。・・・ふふ、確かに否定は出来ないね・・・・。・・・・さて、こいつらの能力もある程度分かったし、そろそろここらでトンズラさせてもらいますか・・・。)」

トラップは、突然立ち止まるとちらりと足元に目をやった。

涼「おい、どうしたんだ?」

涼は『トラップ』が急に立ち止まったので慌てて銃を構える。

トラップ「ちょっと、靴紐がほどけちまってね・・・・。結び直させてくれないか?」

見ると、確かに『トラップ』の靴紐がほどけている。

涼「・・・・ああ、靴紐を結び直すくらいならいいだろう。」

涼はそう言って、銃を下げた。しかし、それが間違いだった。

トラップ「どうも・・・・。」

『トラップ』はしゃがみ込むと、素早く靴の踵に仕込まれていたスイッチを涼に気付かれる事無く押した。

彼の履いている靴のかかとには特殊な仕掛けがしてあったのだ。

カチッ!

涼「ん?今何か音がしなかったか?」

涼が『トラップ』を見下ろした瞬間!!

バシュッ!!!

『トラップ』の靴の踵から大量の煙幕が噴き出して辺りを包み込む!

涼「うわっ!!何だこれは!?」

光「ゲホッ!!ゲホッ!!」

匠「煙幕だ!何も見えない!!」

琴子「ちょっと!!どうなっているの!?」

涼たちは煙幕に包まれてしまい、何も見えずにむせるばかりだ。

その間に、煙幕を出した張本人はと言うと・・・。

トラップ「(くくく・・・!ここまで道案内をしてやればもう充分だろう・・・。俺は早く竹内を探さないといけないんでね・・・!)」

煙幕が消えて、ようやく周りが見える頃には、『トラップ』の姿は影も形も無くなっていた。

涼「ゴホッ!ゴホッ!・・・くそっ!!あいつの仕業か!!」

琴子「まさか、・・・ゲホッ!煙幕を使って逃げるとはね・・・ゴホッ!やられたわね・・・!ゴホン!」

光「ゲホッ!ゲホッ!みんなは無事!?ゴホッ!ゴホッ!」

匠「あいつは既に逃げたみたいだよ・・・。ゲホッ!ゲホッ!・・・全く・・、文字通り歩く罠って感じだね・・・。」

涼「だから、名前が『トラップ』なんだろう・・・!」

匠「仕方ない・・・。ここからは僕たちだけで進もう。」

涼「そうするしかないみたいだな・・・・。」

ようやく咳が治まった涼たちは、先に進み始めた。

そして、純たちは・・・・。

純「駄目だ・・・。ここも鍵がかかっているみたいだ・・・・。」

智「おかしいな・・・。今までは鍵がかかっているドアなんて無かったのに・・・。」

美帆「ええ、何かおかしいですわね・・・・。」

美幸「はにゃ〜・・・、やっぱり・・・さっき美幸がパネルに頭をぶつけたせいかな〜・・・?」

純「あ・・・そんな事は・・・。(有るかも・・・。)」

智「・・・・考え過ぎだよ、美幸。(十二分に有りうるな・・・・。美幸には悪いが・・・。)」

美帆「そうですよ。この辺りは重要な場所が多いからだと思いますよ。(・・・やっぱり、さっきの事が原因なのでしょうか・・・。)」

三人共、本音と建前はまるで正反対だった。実際、現実は三人の想像通りだったりする・・・。

哀れにも美幸だけはその事を知らずに、自分のせいでは無いと思い込んで(勘違いして)ほっとするのであった・・・。

智「仕方ない、ここは一度あの管制室まで戻ろう。そこでどうするか考えてからまた行動しよう。」

純「そうだな。それが一番確かな考えだ。」

残る二人もそれに頷くと、四人は今まで歩いてきた道を引き返し始めた。

その頃・・・・、竹内と花桜梨が見つけた上陸艇のある水路とはまた別の所に、もう一隻の小型上陸艇が入ってきた。

中に乗っているのは・・・・。

???「・・・着いたわね。まさか、三人もプロのハンターが殺られるとは思わなかったわ・・・。」

そう言って、上陸艇の甲板に立っているのは金髪のロングヘアーが美しい若い女性だった。

???「ああ、我々までが派遣されるとは予想だにしていなかったな。・・・まあ、我らも丁度暇を持て余していた所だ。楽しませて貰おうじゃないか。」

???「そうね。でも相手はたかだか、ただの高校生の坊やたちなんでしょ?さっさと終わらせて帰りましょう、『マインド』。」

『マインド』と呼ばれた小柄で面長の男は冷たい笑みを浮かべながら、上陸艇を水路の脇に停泊させた。

マインド「ああ、だが油断だけはするなよ。『ライン』。『キング』が少々てこずる様な相手みたいだからな。」

ライン「ふふ、分かっているわよ・・・。私たちは殺られた三人とは違うと言う事を、坊やたちに思い知らせてあげましょう・・・。」

そう言って、『ライン』と呼ばれた女性は金髪を掻き揚げると甲板から通路に飛び移った。

そう、彼らは委員会によって急遽増援部隊として送り込まれたハンターの二人組であった!

ついに、補充ハンターがこの施設内に到着したのだ。

匠「・・・・!おい、涼見てみろよ!」

涼「あ、あれは!!」

光「あれが管制室かもしれない!・・・・でも、何か様子がおかしいよ・・・。」

琴子「そうね・・・。扉がボロボロで・・・何かで壊されたみたいね・・・・。」

匠「ハンターの仕業かな・・・。」

涼「さあな・・・、とりあえず中に入ってみようぜ。」

四人が注意深く中に入ってみると・・・・。

涼「ここは・・・。」

匠「・・・・どうやら本当に管制室みたいだね・・・。」

光「あのハンターが言ってた事は本当だったんだ・・・。」

琴子「そのようね・・・。でも・・・、何で私たちにこんな事を教えたのかしら・・・?」

匠「あいつは僕たちにも同じハンターにも、何か隠し事をしているに違いないよ・・・・。」

涼「・・・・『トラップ』か・・・。(おかしい・・・・、何か胸騒ぎがする・・。八重さんと竹内に何も起こらなければいいんだが・・・。)」

光「見て!何かここにパネルがあるよ!」

光に呼ばれて三人が来てみると・・・。

涼「ここの施設を制御したりする機械のようだな・・・。」

光「・・・・う〜ん・・・。私にはどうやって使うのか分からないなぁ・・・。」

琴子「私もよ・・・。これをどうすればいいのかしら・・・・?」

涼「俺もこの手の物はイマイチよく分からないんだよな・・・。」

三人が困り果てていると・・・。

匠「こう言うのは僕に任せてよ。・・・え〜と、何々・・・。このパネルに直接指で触って操作するみたいだね・・・。」

光「す、すご〜い!!坂城君、使い方が分かるの!?」

匠「えへへ・・・、まあね。僕はパソコンを持っているから、これくらいの奴だったら簡単な使い方程度なら分かるよ。」

涼「へぇ〜・・・、凄いな・・・・。でも、お前パソコンなんか何に使っているんだ?電脳部に所属している訳でもないのに・・・。」

匠「そりゃ〜、勿論、今の時代はパソコンくらい使えないといろいろ後で困るからね。・・・あと、女の子の情報を保存するのにとても便利だしね・・・って、何言わせるんだよ・・・!」

涼「・・・・お前が勝手に言ったんじゃないか・・・。」

光「と、とにかく何か分かる事が無いか調べてみてよ。」

匠「了解、・・・・・・・あれ?これって・・・・。」

涼「何か分かったのか?」

匠「いや、このスイッチで監視カメラの切り替えが出来るみたいなんだけど・・・・この画面に映っているのって純たちじゃないか?」

琴子「あっ、本当だわ!どこにいるか分からないの?」

匠「ちょっと待って・・・。え〜と・・・、このスイッチで監視カメラの位置が分かるな・・・。・・・・分かった!ここからしばらく先に進んだ所に居るみたいだね。真っすぐこっちに向かっているみたいだから、この様子ならすぐに合流出来そうだよ。」

涼「よし、俺たちはここで待っていよう。」

そして、数分後・・・。

純「・・・・あっ!匠じゃないか!!」

智「みんなもここに来たのか。」

匠「まあね、ちょっと色々あってね・・・。」

涼「みんな無事か?」

美帆「ええ、私たちは大丈夫です。でも・・・、まだ竹内さんと八重さんが・・・。」

光「そうなんだ・・・・。実は私たちも・・・・・。」

美帆の言葉に光も残念そうに肩を落とす。

匠「この先には何かあったの?」

智「いや、俺たちはすぐそこでハンターのリーダー格と思われる奴と戦ったんだけど、この管制室に逃げ込まれちまってな・・・。」

純「それで、ドアを刀で破壊して中に入ったんだが,もう逃げられてしまった後だったよ・・・。」

涼「そうか・・・。だからドアがあんなに壊れていたのか・・・。」

美帆「それから私たちはそこの通路から奥に進んだのですが、全てのドアに鍵がかかっているみたいで・・。今まではどこのドアも鍵なんてかかっていなかったのですが・・・・。」

美幸「・・・・。(美幸が頭をぶつけたせいじゃ・・・・ないよね・・・・?)」

涼「・・・そのドアの鍵なら・・・そこのパネルから解除出来るんじゃないのか?」

智「えっ!?お前、操作できるのか?」

涼「俺じゃないよ、坂城が使えるみたいなんだ。」

匠「へへへ・・・。少しは見直しただろ?」

純「お手柄じゃないか、匠!!じゃ、早速ドアのロックを解除してみてくれよ!」

匠「まあそんなに急かすなって。・・・・え〜と、これだな・・。」

匠が『Auto Lock System』と記されたパネルのスイッチを押すと現在の状況がパネルに出てきた。

匠「何々・・・。『オートロックシステム作動中・・・・。』やっぱり、ここからロックされていたみたいだね。

・・・オートロック解除っと。これでOKだよ。」

智「よし!これで先に進めるな!」

匠「・・・・・・でもおかしいなあ・・・。この手のシステムは絶対に触らなければ勝手にロックされることなんてないはずなのに・・。」

智・純・美帆「!!!!」

匠が何気なく口にした疑問に心当たりのある三人(四人)は、どきっとする。

美幸「・・・・。(え?え?何の事〜?・・・ひょっとして・・・やっぱり・・・?)」

匠「なあ、純。お前このパネルに触ったりした?」

純「い、いや・・・、俺は触ってないよ・・・。(俺はな・・・・。)」

智「あ、ああ・・・。俺も触ってはいないよ・・・。(そう・・・、あくまでも俺と純と白雪さんはな・・・。)」

美帆「わ、私も触ってはいませんよ・・・。(・・・・・・・・。)」

涼「・・・・・となると・・・。」

涼や匠、そして光と琴子は美幸の方に顔を向ける。

美幸「・・・・・・え?・・・あ、いや〜・・・その〜・・・・、美幸は〜・・・。」

一同「・・・・・・・。」

美幸「あ〜・・・、え〜と・・・。触ったと言うか〜・・・・、頭をぶつけちゃったと言うか・・・。(やっぱり、美幸のせいだったんだ〜!!どうしよう〜!!)」

一同「・・・・・。(やっぱり・・・・。)」

管制室に気まずい雰囲気が漂う・・・。

匠「・・・・まぁ、こうしてロックも解除したんだし、何はともあれ良かったね!あはは・・・!」

匠が流石に美幸に同情したのか、そこで話題を終わらせた。一同もそれに素直に従う。

光「そ、そうだね・・・!」

琴子「そうね・・。(どうせいつもの事なんだし・・・。)

美幸「えっ・・・?水無月さん、今何か言った〜・・・?」

琴子「あ・・・・、・・・何でもないわ。」

美幸「あ〜・・・、それならいいけど〜・・・。(気のせいかな・・・・今、小声で『いつもの事なんだし。』って言った様な気がしたんだけど・・・。ううん、水無月さんは平気でそんな事言う人じゃないよね・・・・。)」

・・・・・さりげなく・・・だが、平気でそんな事を言う人だったりする・・・・。

純「じゃ、じゃあ、これでロックが解除されたんなら、もう一度俺はこの通路を先に進んでみるよ。」

智「俺もそうさせてもらうよ。」

涼「俺も行こう。坂城はここで俺たちのサポートをしてくれよ。唯一、このパネルを操作できるのはお前だけなんだしな。」

匠「分かった。そうするよ。・・・じゃあ、今から幾つかの監視カメラを使ってハンターの位置を探したり竹内と八重さんの位置を探してみるから。」

匠はそう言って、監視カメラ切り替えのスイッチを幾つか押してみた。

画面に次々と施設内の様子がモニターされる。しかし、その中に一つだけとんでもないモノを映している画面があった。

匠「・・・・あっ!!」

智「あ、あいつら・・・。」

琴子「あら・・・・。」

美帆「まあ・・・・!」

何とそこには、とある地下水路の前で竹内と花桜梨が抱き合っている姿が画面に・・・・。

純「・・・・・・・ゴフッ。(赤面&鼻血&失神)

純は、名前に恥じない様な相変わらずの純情ぶりで・・・、見事に失神してしまう。

そこへ・・・。

美幸「ねぇねぇ、みんなで何を見ているの〜?美幸にも見せて〜。・・・きゃ!!」

ゴン!!

一同「!!!!(またか!?)」

タイミングの悪い事に、画面を覗き込もうとした美幸が足を滑らせて再びパネルに頭を・・・・。

美幸「はにゃにゃにゃにゃ・・・。(きゅ〜・・・。)」

こうなる事は、もはや宿命(さだめ)だったのか・・・・。さっきと同様にパネルに頭をぶつけた美幸はまたもや気絶してしまう。

更にその上!!

ヴンッ・・・・!

美幸が頭をぶつけた衝撃で、パネルにあった全画面スイッチがONになり、抱き合う竹内と花桜梨の姿が画面いっぱいに・・・。

一同「!!!!!!!!!

美幸「・・・・・・・・。」(気絶中)

純「・・・・・・・。」(失神中・鼻血有り)

光「ねぇ、一体どうしたの?みんなして画面見て固まっちゃったけど・・。何が映っているの?」

不幸中の幸いとでも言うのだろうか・・・・・・。

たまたま(運良く)靴紐を結び直していた光は、まだ画面に映し出されている凄まじい現場(ヤマ場)を見てはいなかった。

実際、ヤマ場の真実は違うのだが・・・・。

そんな事は露とも知らない匠たちは、竹内と花桜梨が人気の無いところで、しかも二人きりで、今まさに大人への階段を揃って踏み出そうとしていると勘違い(早合点)していた。

匠「!!!!(まずい!!こんなシーン・・・あるいはこれから始まるであろう、羨ましい現場(ヤマ場)を光ちゃんが見たら・・・!)」

智「!!!!(ああ!!間違い無く泣き叫ぶ・・・いや!!発狂しちまうぞ!!)」

匠「(水無月さん!光ちゃんに画面を見させないようにして!!)」

琴子「(分かったわ!!その間に早く画面を切り替えて!!!)」

【この間、全てアイコンタクト。そして、ここまで会話(意思疎通)が終わるまで約1.5秒】

美幸「・・・・・・・・。」(気絶中)

光「あっ!ちょ、ちょっと琴子〜!!何するの!?」

琴子「いいから!光!あなたの為なのよ!!大人しくして!!」

純「・・・・・・・。」(失神中・鼻血、乾燥中・・・)

智「(おい!坂城!急げ!!)」

匠「(分かってるよ!!こっちだって必死にやっているよ!!)」

美帆「(早くしないと陽ノ下さんが・・・・!)」

光「琴子〜!もう、何なの!この手を離してってば〜!」

水無月「いいえ!!絶対に離すものですか!!たとえ世界が終わろうとも、この手だけは絶対に離さないわ!!」

光「ちょっと、琴子!!何を訳の分からない事言っているのよ〜!」

純「・・・・・・・。」(気絶中・鼻血・既に乾燥済み)

智「(おい!!何やっているんだ!早くしないと陽ノ下さんが・・・!!)」

匠「(さっきから何回も切り替えスイッチを押しているんだけど、全然反応しないんだよ!

多分、さっき美幸ちゃんが頭をぶつけたせいで壊れちゃったかもしれない!!)」

智「(な、な、な、なにいぃぃぃぃっ!!!?)」

美帆「(そ、それではこの画面はずっとこのままなんですか・・・!?)

匠「(・・・・・最悪そうなるかも・・・。)」

画面には相変わらず、竹内と花桜梨の二人の姿が映し出されている。

匠たちが画面を切り替えるのに手間取っている間にも、琴子はもはや限界まで達しようとしていた。

琴子「(ちょっと!坂城君たちは何をぐずぐずしているのよ!!早くしないと光があの恐ろしいヤマ場を・・・!!)」

智「(ええ〜い!!かくなる上は、俺がこの画面をぶっ壊して・・・・!!)」

痺れを切らした智がそう言って刀を抜く!

匠「(ば、馬鹿!!落ち着けって!!この画面を壊したら折角見つけた竹内たちのヤマ場・・・じゃない!居場所が見れなくなってしまうだろ!!?)」

智「(そ、そりゃそうだけど、こんなシーンを陽ノ下さんに見せるなんて、ある意味ハンターに遭遇すると同じくらい厄介な事なんだぞ!?それだけは、人として絶対に阻止しなくてはいけないだろ!!)」

美帆「(お二人とも落ち着いて下さい!私にいい考えがあります。・・・・ぼそぼそ・・・ぼそぼそ・・・。)」

美帆は二人を落ち着かせると、二人に何やら耳打ちする。

智・匠「(うんうん・・・、なるほど・・・!よし、それでいこう!)」

二人もそれに納得して行動に出ようとした・・・・が。

匠「(!?おい、ちょっと待てよ・・・。二人が動き出したよ。どこかに歩いていくみたいだ・・・。)」

智「(えっ!?・・・本当だ・・。どこに行くつもりだろう・・・。まさか、安全な場所で二人きりになるために、どこかの部屋にでも入る気なんじゃ・・・。)」

匠「(何をバカな事言ってんだよ!・・・あの様子じゃそれは無いよ。・・・見ろよ、今初めて気が付いたんだけど、竹内の奴・・・相当ひどい傷を肩に負っているみたいだよ・・・。一人じゃまともに歩く事すら出来ないみたいだからね・・。)」

智「(あっ!!本当だ・・・!左肩をざっくりと切り裂かれていやがる・・・。)」

美帆「・・・・・水無月さん、もう大丈夫ですよ。」

琴子「!!やっと・・・・終わったのね・・・。こんなに疲れたのは・・・久しぶりだわ・・・・。」

琴子はそう言うと、そのまま床に倒れてしまった。

光「・・・・もう、一体なんだったの!?・・・・・あっ!!竹内君と八重さん!!」

とりあえず、匠たちは光に事の経緯を説明した。(勿論、最初のヤマ場だけは話さなかったが・・・。)

光「ねぇ、今二人が居る所は分かるの?」

匠「う〜ん・・・、地下にいる事は確かなんだけど、詳しくは分からないんだ・・・。」

光「そうなんだ・・・。」

智「でも、これで探す範囲が少しは絞れたじゃないか。丁度、そこの通路から地下に続く階段のある部屋にも行けるし・・・。

早速行こうぜ!」

純「・・・う・・・・うう・・・。」

そこでやっと純が目を覚ました。

鼻の下には乾いた鼻血が固まってこびり付いている。

智「やっと起きたか・・・・。お前、鼻の下に付いている鼻血を取れよ・・。」

純はあまりのショックにより、さっきのヤマ場の事が彼の記憶から消えていた。

涼「さてと・・・、じゃあ俺と小倉、穂刈、そして白雪さん、寿さんが奥に進むから、坂城と陽ノ下さん、それに水無月さんはここでバックアップを頼む。」

匠「うん、任せてよ。ハンターが近づいてきたらすぐに携帯で知らせるから。」

智「頼んだぜ。お前のサポートが俺たちの命綱なんだからな!」

美幸「・・・・はにゃ〜・・・?美幸は一体・・・・。」

智「ほら、美幸。行くぞ。」

美幸「えっ?あ〜?まあ〜・・・、いいか〜・・・。」

美幸は訳の分からないまま、智たちについて管制室を出て行った。

これから彼らを待ち受ける厳しい現実がすぐそこまで近づいているとも知らずに・・・。

 

<第弐拾壱話・完>

                            (第弐拾弐話へ続く・・・)

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