ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第弐拾話「告白」
施設内管制室・・・
キング「・・・ちっ!あのガキ・・・まさか白刃取りをするとは・・・!」
中では、『キング』が舌打ちしながらコントロールパネルを操作していた。それと同時に『トラップ』へ連絡するべく無線を使う。
キング「・・・おい、聞こえるか?『キング』だ。『トラップ』、応答せよ。」
だが、いくら『トラップ』を呼び出しても応答が無い。
キング「繰り返す、『トラップ』応答せよ!・・・・・ちっ!あいつ・・・・・何をやっているんだ?」
キングが無線で『トラップ』に連絡をしようとしても、結局『トラップ』からの応答はなかった。
その頃、『トラップ』は・・・。
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涼「おい、本当に管制室に向かっているんだろうな・・・?」
トラップ「本当に疑い深い奴だな・・・。全く・・・さっきも休憩している間中ずっと、身動き出来ないように人を柱に縛り付けるわ、今だって後ろから銃を突き付けるわ・・・・少しは俺を信用してくれたっていいだろ?」
涼「悪いが、俺は用心深いんでね。そう簡単にお前を信用する程甘くは無いんだよ。」
トラップ「・・・・竹内はもっと素直だったがなぁ・・・。同じ高校生とは思えないよ・・・。」
涼「お前があいつの心につけ込んでそそのかしたんだろうが!」
トラップ「そそのかしただなんて随分な言い方だな・・・。俺はあいつの手助けをしてやっただけだぜ?」
匠「竹内の手助けだって・・・?」
光「それってどう言う意味なの・・・?」
トラップ「言葉どおりの意味さ。ま、詳しくは直接本人から聞いた方がいいんじゃないの?」
涼「おしゃべりはそこまでだ。さっさと管制室に案内しろ。」
涼が『トラップ』の背中を左手で押す。
トラップ「やれやれ・・・。分かりました・・・・っと。(参ったな・・・・『キング』から無線が入っているけど、この状態では・・・。)」
一方、純たちは・・・。
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純「おい、どうする?あいつ、中からカギをかけたみたいだぞ。」
智「どうするもこうするも無いだろ。折角見つけた外部との連絡場所だ!ドアをぶち破っても中に入ってみせる!」
そう言うと、智はドアに刀を突き立てると、何度も何度もそれを繰り返してドアを破壊しようとした。
純「よし、俺も手伝おう!」
純も加わって二人がかりでドアを破壊する。
ガッ!ガッ!ガッ・・・!!
バキッ!!
何とかドアを破壊すると、純と智は急いで管制室に飛び込む!
しかし・・・・。
純「・・・・誰もいないな・・。」
智「ああ、どうやらもう逃げられちまったみたいだな・・・。けど、これで外部との連絡を取る事が出来るな。」
智はそう言って、管制室のコントロールパネルの所に歩み寄った。
だが、パネルを見た途端、彼の顔色が変わる。
コントロールパネルの使い方が全く分からないのだ。
智「なぁ・・・・、これってどうやって使うんだ・・・?」
純「・・・・・・・・俺に聞くなよ。」
智・純「・・・・・・・。」
二人が困り果てていると、後ろから美帆と美幸も近づいてきた。
美帆「あの・・・・、どうしたんですか?」
美幸「はにゃ〜、な〜んだか難しい機械みたいだね〜・・・。美幸、全然わかんないよ〜・・・。」
美帆「これは・・・。」
智「どうやら、専門的な知識が無いと操作出来ないみたいだな・・・。」
智の言葉に純も考え込む。しかし、その時・・・。
キキッ!!
ぼたっ。
美幸「はにゃ?」
突然、天井の隙間から何かが落下してくると、美幸の背中に上手く入り込んでしまった。
美幸「あれ〜?何か美幸の背中に何かが・・・?」
智「おい、美幸?どうしたんだ?」
美幸「何か美幸の背中に入ったみたい〜?ねぇねぇ、さとぽん、ちょっと見てくれな〜い?」
美幸は自分の背中を智に向けて気になっている所を指差した。
そこには・・・。
智「!!(おい・・・、純!ちょっと見てくれ・・・。)」
純「ん?どうしたんだ?」
智「(美幸の背中に何かいるみたいなんだ・・・。ちょっと、ここを見てみろ・・・。)」
純「!?(な、なんだこりゃ!?おい智、お前取ってやれよ。)」
智「(お・・・俺はこの手の生き物はだめなんだよ・・・!純、お前が取ってくれよ・・・!)」
純「(俺だって苦手だよ・・・!)」
美幸「ねぇねぇ?どうしたの〜?何が美幸の背中に入ったの〜?」
智「!!!・・・いいか美幸・・・?動くんじゃ・・・・ないぞ?」
美幸「えっ?えっ?何なの〜?」
純「(ほら、早く取ってやれって・・・!)」
智「(わ・・・・分かったよ・・・。いくぞ・・・・。)」
智と純のあまりにも不自然な様子に、気になった美帆が美幸の背中を覗き込む。
美帆「お二人ともどうなさったんですか?・・・・ああっ!!」
智・純「!!!」
美帆「寿さん!せ、背・・背中に・・・!」
美幸「はにゃ〜?みほぴょん、どうしたの〜?背中に何がいるの〜?」
美帆「せ・・・せ・・背中に・・・ネ・・ネズミが!!!」
智・純「白雪さん!それを言っちゃ・・・!!」
美幸「きゃ〜〜〜〜!!ネ、ネズミ〜!!誰か取って〜〜!!」
美帆の余計な一言で美幸は一気にパニックとなり、辺りを走り回る。
美幸「誰か〜!!取って〜〜!!・・・きゃ!!」
ガッ!・・・ゴッ!!
美幸は散々走り回った挙句、足がもつれて派手に転倒してしまった。
キキッ!!
ネズミは美幸が転んだ表紙に彼女の背中から飛び出ると、部屋の隅に逃げ出した。
しかし、美幸は・・・。
智・純・美帆「ああっ!!」
美幸「はにゃにゃにゃにゃ・・・・。(きゅ〜・・・。)」
運悪く、転んだところがコントロールパネルの近くだったため、美幸はパネルの上に頭をぶつけてしまった。
勢いよく頭をぶつけた美幸はそのままのびてしまう。
智「おい!美幸!(頭の中身は)大丈夫か!?」
純「随分と派手に頭をぶつけたな・・・・。何か鈍い音もしたが・・・・。」
美幸「はにゃ〜・・・・。」
美帆「しばらく目を覚ましそうも無いですね・・・・。どうしましょう・・・?」
智「どうすると言っても・・・・、このままほっとく訳にいかないからな・・・。」
智はそう言って、美幸を背中に背負うとコントロールパネルの方に向き直った。
智「仕方ない・・・・一応管制室の場所だけ地図にメモしておこう。俺たちじゃ操作できないみたいだからな・・・・。」
純「そうだな・・・・。」
美帆「それでは、そこの通路から先に進みましょう。どうやら奥に続いているみたいですし・・・。」
智「本当だ・・・。ここからまだ奥に進めるみたいだな・・・。あいつもそこの通路から逃げたのかもしれないな・・・・。」
純「とりあえず、行ってみよう。」
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一向は、管制室から通路を通って奥へと進む事にした。
・・・・・しかし、四人が部屋を出た直後に、コントロールパネルに変化が起きていた・・・。
・・・管理システム作動・・・セキュリティレベル・・・高・・・・ガードシステム・・・ON・・・
・・・オートドアロック・・・ON・・・外敵迎撃システム・・・作動・・・。
無人となった管制室には、コンピューターの無機質で不気味な音だけが鳴り響くのであった・・・。
そして、竹内と花桜梨は・・・・。
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竹内「・・・・まさか、こんな所にこんな物があるなんて・・・・。」
花桜梨「ええ・・・、これが・・・上陸艇ね。」
二人は水路を通って流れ着いた地下室から一階上に昇ったところで上陸艇を発見していた。
竹内「でも、これを動かすにはあと二枚のカードキーが必要だ・・・。何とかしてカードキーを手に入れないと・・・。」
竹内は自分の携帯を使って電話をしてきたあの声が言っていた事を思い出していた。
花桜梨「それと、この場所を何とかしてみんなに教えないといけないわね・・・。地図はびしょ濡れでうかつに触ると破れちゃいそうだから、メモのしようが無いし・・・どうしよう・・。」
竹内「仕方ない・・・。一休みも兼ねて、しばらくこの場所で待機していよう・・・。みんなもここに来るかもしれないし・・・。」
花桜梨「そうだね・・・。」
竹内「・・・・・・。」
花桜梨「・・・・・・・。」
竹内「・・・・・・・・・・・・。」
花桜梨「・・・・・・・・・・・・。」
竹内・花桜梨「・・・・・・あの。」
竹内と花桜梨はお互いに、同時に声をかけようとして顔を見合わせる。
竹内「あ・・・・・何?花桜梨さん。」
花桜梨「ううん、竹内君の方からいいよ・・・。」
竹内「・・・えっと・・・変な事聞くけど、花桜梨さんは・・・・・自分の中にもう一人の自分が見えることって無い?」
花桜梨「もう一人の自分・・・?」
竹内「うん・・・、俺は『トラップ』に出会ってから目覚めた「カウンターハンター」としての存在で行動している時に、何か妙に落ち着いていたのを覚えているんだ・・・。傍目から見たら、きっとあの時の俺は尋常じゃないはずなんだ。
けど・・・、自分の中では気持ちが悪くなるくらいに冷静だったんだ・・・。」
花桜梨「・・・・・・。」
竹内「それで・・・、『ウェポン』を撃っている時もそうだった・・・。ショットガンの引き金を引きながら、どこかで俺は客観的に自分のやっている行動を見ていた様な気がするんだ・・・。」
花桜梨「・・・・・・・。」
竹内「自分で自分を冷静に見るなんて、今までに一度だって無かった。だから、いろんな意味で不思議な気分だったよ・・・。
でも、今になって何となくだけどあの時の心境が判る様な気がするんだ・・・・。」
花桜梨「・・・・・。」
花桜梨は黙って竹内の言葉を聞いている。
竹内「俺は、ひびきのにいる時は毎日が退屈でつまらないって思っていた・・・。
何も変わらない・・・・何も変化の無い・・・・そんな日常の中で、俺自信の中に平和という物に対して不満はどんどん蓄積していった・・・。その蓄積された不満が集まった結果、『カウンターハンター』としての、もう一人の残酷な自分が生まれたんじゃないかって・・・そう感じるんだ。」
花桜梨「・・・・竹内君・・・。」
竹内「『カウンターハンター』も俺の中にいる自分なんだよ・・・。たとえ行動がまともじゃなくても、立派な俺の人格なんだよ・・・。だからこそ、あそこまで落ち着いて相手を殺す事が出来たんだと思う・・。」
竹内はそこまで言うと、思い詰めた顔でこう言い出した。
「花桜梨さん・・・、もしも・・・もしも俺が再び『カウンターハンター』になってしまったら・・・もう一人の自分に今の俺が支配される様な事になってしまったら・・・その時は・・・・。」
花桜梨「変な事言わないで!!」
花桜梨はたまりかねて竹内の肩を掴むと言葉を遮るようにして、彼の身体を強引に自分の方に向かせる。
しかし、竹内は真剣な顔で逆に花桜梨の両腕をしっかりと掴んで言い聞かせるようにこう言った。
竹内「真剣に君に頼みたいんだ!!・・・もし俺がおかしくなったその時は・・・君が俺を殺してくれ・・・!!」
花桜梨「!!!」
竹内「・・・・こんな事を頼めるのは君しかいないんだ・・・!だから・・・・!」
花桜梨「・・・・・・・。」
花桜梨は真剣な眼差しで竹内の顔を見つめる。その様子を見た竹内は、少し寂しげな笑みを浮かべながらこう言った。
竹内「・・・・約束したよ・・・花桜梨さん・・・。」
しばらく二人の間に沈黙が流れる・・・・・だが、やがて花桜梨はきっと竹内を睨んできっぱりとこう答えた。
花桜梨「・・・嫌よ・・・!」
竹内「!」
花桜梨「私はそんな約束は絶対に嫌・・・!!あなたを殺すなんて・・・そんな約束は出来ない!・・・出来るはずがない!!」
竹内「・・・・・花桜梨さん・・・。」
花桜梨「だって・・・竹内君は・・・・竹内君はもう一人の自分に勝ったんでしょう!!だから今、こうして話していられるんじゃない!!もう、あの冷たい竹内君に戻るはずが無いよ!!」
竹内「・・・・・・・。」
花桜梨「もしも、あなたが残酷な自分に負けていたら、今頃竹内君はハンターとして私たちに襲い掛かっていたはずよ。
そうなっていないって事は、あなたは自分のマイナスの感情が生み出した「カウンターハンター」としての自分に打ち勝った証拠じゃない!!」
竹内「・・・・!」
花桜梨「だから・・・もう二度と自分がおかしくなったら・・・とか、自分を殺してくれ・・・なんて言わないで・・・・!」
花桜梨は泣いていた。涙を流しながら必死になって竹内に自分の気持ちを訴えかけるのであった。
竹内の肩を掴んでいる手にぐっと力がこもり、竹内の傷を刺激する。
しかし、竹内は肩の痛みを気にしようともせず、黙って花桜梨の顔を見つめながら彼女の話を聞いていた・・・。
花桜梨「それに・・・あなたは私を何度も助けてくれた・・・・。助けてくれたのはここに連れて来られた時もそうだし、それより前もいつも優しい笑顔で私の心を救ってくれた・・・。だから・・・・私にはあんな冷たい目になっている竹内君の姿なんて・・・・もう見たくない・・・!」
竹内「花桜梨さん・・・。」
花桜梨「・・・・・・最初、私と竹内君が出会った時の事・・・覚えてる?」
竹内「・・・ああ、今でも良く覚えているよ。花桜梨さん・・・最初はなかなか話しかけても相手にしてもらえなくて、俺・・・、必死だったよ・・・。」
花桜梨「うん・・・。そうやって、いつもあなたは私に声をかけ続けてくれたよね・・・。来る日も・・・来る日も・・・。私がどんなに素っ気ない素振りをしても、それでも私に話しかけてきてくれたよね・・・。」
竹内「・・・・・。」
花桜梨「一緒にスキーに行って、私が足を挫いた時も嫌な顔一つしないで下まで背負っていってくれた・・・。
私、あの時素直になれなかったけど・・・・本当はとても嬉しかった・・・。
『スキーにはまた来ればいい。君の身体の方が大事だ。』あなたが迷惑だって言わずにそう言ってくれた事にも、私はとてもほっとしたの・・・。修学旅行で・・・、沖縄に行った時にも一緒に行こうって誘ってくれて・・・・。
もしも、あなたが誘ってくれなかったら・・・、私はきっと一人きりで修学旅行を終えていたと思う・・。
でも、竹内君が一緒に居てくれたおかげで本当に最高の思い出になった・・・。」
竹内「花桜梨さん・・・、俺は・・・。」
花桜梨「待って・・・。・・・・・今年の春、私が初めてあなたを中央公園に誘った時の事、覚えてる?」
竹内「ああ、覚えてるよ。その時は内心ちょっと驚いていたんだよ。今までそういう事は無かったからね・・・。」
花桜梨「・・・あの桜の樹の下で私が過去の事を告白して・・・その後であなたが私に言ってくれた事は覚えてる?」
竹内「えっ?・・・・『焦って無理に咲こうとしなくてもいい。花桜梨さんは花桜梨さんのペースで咲けばいい。』・・・だっけ?」
花桜梨「うん・・・。そう・・・。その言葉で私はどんなに癒された事か・・・・どんなに勇気付けられた事か・・・・。
本当に今でも感謝してるんだよ・・・・。」
竹内「感謝だなんて・・・・花桜梨さんが勇気を出して生まれ変わろうと頑張ったから、今の花桜梨さんになれたんだよ。
別に俺のせいなんかじゃないよ・・・。」
竹内はそう言って苦笑する。しかし、そんな竹内の言葉に花桜梨は顔を横に振って言葉を続けた。
花桜梨「ううん・・・、私一人じゃ駄目だった・・・・。何もかも消極的に・・・後ろ向きに考えていた私の背中を後ろから後押ししてくれたあなたの存在なしじゃ・・・きっと今の私はいなかったと思う。」
竹内「・・・・・・。」
花桜梨「・・・あなたに励まされながら何とか前に進む事が出来た私にとって、竹内君・・・。あなたは私にとって絶対にかけがえのない人なの・・・。」
竹内「花桜梨さん・・・、俺だってそれは同じだよ・・・。」
花桜梨「竹内君にはいつもいろんな人が周りに居て・・・。私ね・・・最初は見ていても、
『何であんなに騒がしい人たちと一緒に居られるんだろう。一緒にいて疲れないのかな?』ってひねくれた考えをしていた・・・・・。
でも、あなたと過ごすうちに、その考えは間違っていたんだって気付いたの・・・。」
竹内「・・・・人は個人個人、親しみやすいタイプとそうでないタイプが居るからね・・・。それは仕方のないことだよ。
だから、あんまり無理に考えない方がいいと思うよ・・・。」
花桜梨「違うの・・・。私は半分嫉妬していたんだと思う・・・。竹内君と楽しそうに話しているみんなに・・・それに、楽しくしている竹内君自身にも・・・。」
竹内「嫉妬・・・?」
花桜梨「うん・・・。後で自分は嫌な人間だなって、そんなこと考えちゃいけないってそう思ったけど・・・・でも・・・。
日増しにあなたに対する気持ちだけは消える事無く募っていくばかりだった・・・・。」
その言葉を聞いて、竹内は花桜梨が自分のことを考えていてくれていた事を知り、にわかには信じられないと言った様子で花桜梨の方を見る。
花桜梨「竹内君・・・私にはあなただけが心の支えだから・・・・・・私にはあなただけしかいないの・・・!」
竹内「・・・・・・花桜梨さん・・。」
花桜梨「・・・・私は・・・私はあなたの事が好きです・・・。」
竹内「!!!」
花桜梨「今まで一緒に過ごして来た時の楽しい思い出はいつもあなたがそばに居てくれたから・・・。私・・・いつのまにかあなたの優しさ・・・全てを包み込んでくれるような優しい笑顔に惹かれていった・・・。」
竹内「・・・・・。」
花桜梨「・・・でも、私はあなたをひどく傷つけてしまった・・・・。だから、この想いは届かなくても仕方ないって思ってる・・・。
迷惑だって思われるって分かってる!・・・でも!今までの私のままじゃ嫌だから・・・本当に昔の私と決別する為にも・・・自分の気持ちだけは絶対に伝えようと思って・・・。」
竹内「・・・・・花桜梨さん。迷惑だなんてとんでもないよ・・・。俺も花桜梨さんの事が好きだよ・・・・。ずっと前から・・・。」
花桜梨「えっ・・・!?」
花桜梨は竹内の言葉が自分の予想と反していたのか、唖然とした顔で絶句してしまう。
まるで狐につままれた様な感じで目をぱちくりさせている。
竹内「むしろ、迷惑だと思われてるって考えていたのは俺の方なんだ・・・。花桜梨さんに迷惑がられていないかって、ずっと不安だったんだ・・・。」
花桜梨「・・・・・竹内君・・・。」
竹内「花桜梨さん、改めて俺の方から言わせてくれないか?」
花桜梨「えっ・・?」
竹内「俺も君の事が好きなんだ。だから・・・もしも、ここからひびきのに帰る事が出来て・・・卒業したら・・・俺と付き合ってくれないか?花桜梨さんに俺の恋人になって欲しいんだ。」
まさか逆に竹内から告白されるとは思っていなかった花桜梨は、顔を赤らめて思わず下を向いてしまう。
竹内「・・・・やっぱり駄目・・・だよね・・・。あんな事があった後に今更って感じだよね・・・。
ごめん・・・、今言った事は忘れていいよ・・・。ただ、俺も自分の気持ちだけは伝えておきたくて・・・。
・・・そろそろ行こうか。これ以上ここにいても、みんな来る様子は無いし・・・。」
竹内はそう言ってその場からすっと立ち上がった。そして、花桜梨に背を向けて歩き出そうとした・・・・が。
花桜梨「・・・・駄目な訳無いじゃない・・・。」
竹内「!」
竹内は、不意に後ろから花桜梨に抱きすくめられて、びくっと身体を振るわせる。
そして、竹内がゆっくりと花桜梨の方を向き直ると・・・。
花桜梨「・・・・・私なんかで良ければ・・・・いいよ・・・・。その為にも・・・絶対に生きて帰ろうね・・・。だって・・・生きて帰らなきゃ・・・・。」
竹内「・・・・・?」
花桜梨「一緒に卒業できないし・・・。・・・・・・それに卒業しなきゃ、あなたと恋人同士になれないから・・・・。」
そこまで言って、花桜梨は正面から竹内に抱きつくと、竹内の背中に回した手にしっかりと力を込める。
花桜梨の目は嬉し涙で濡れていた。
竹内「・・・・・花桜梨さん・・・。そうだね・・・・、みんなで帰ろう・・・いや、絶対に帰れるさ・・・・。」
花桜梨の想いに答えるように、竹内も花桜梨の背中に手を回すと優しく抱きしめるのだった・・・・。
<第弐拾話・完>