ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第拾七話(Another Version)「突入」

ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第拾七話(Another Version)「突入」

花桜梨と竹内は水路をどんどん奥の方へ流されていった。途中で何度か水を飲んでしまい激しくむせ返ったが、それでも必死で顔を水より上に出すようにしていた。

だが、身体に麻痺毒を受けた竹内は浮かぶ事もままならず、流されているうちに波に呑まれてしまい、意識を失ってしまった.

花桜梨「う・・・ううん・・・・。」

気がつくと,花桜梨はどこかの暗い部屋に流れ着いていた。どうやら地下だと言う事は分かるのだが、全く見た事の無いところだった。

花桜梨「・・・・!竹内君は!?」

花桜梨は竹内がいない事に気付くと,慌てて周りを探してみた。すると、自分が流れ着いた場所から少し離れた所に竹内の姿を見つけ,急いで駆け寄った。だが・・・・。

花桜梨「竹内君!!」

竹内「・・・・・・・。」

既に竹内の呼吸は停止していた・・・。

花桜梨は竹内の胸に耳をあてて心拍音を確認しようとするが、心臓の鼓動も完全に途絶えているのが分かった。

花桜梨「そんな・・・!!そうだ!心臓マッサージをすれば・・・!」

花桜梨は急いで竹内の顎を掴むと、ぐっと上にあげて気道を確保すると竹内の心臓の位置を推測して、両手をしっかり組んで心臓マッサージを行った。

花桜梨「(お願い・・・・!!息を吹き返して!!)」

花桜梨は竹内の意識が戻るまで必死に心臓マッサージを繰り返した。何回か心臓マッサージを行った後で,再び胸に耳を当てて心臓が動き始めたか確認してみる。

しかし、竹内の心臓はいまだ停止したままだ・・・。

花桜梨「どうしよう・・・!このままじゃ・・・竹内君が死んじゃう!・・・・・・心臓マッサージだけで駄目なら!」

花桜梨は竹内の口を開けて思いっきり息を吸い込むと、自分の唇を竹内の唇に重ねて一気に竹内の口の中に息を吹き込んだ。

それを何回か繰り返してから、再び心臓マッサージを繰り返す。

しかし、竹内は全く反応が見られない。既に彼の顔色は真っ青で、唇は紫色に変色している。

体温もみるみるうちに低下していくのが分かった。

花桜梨は半泣きになりながらも、諦める事無く人工呼吸と心臓マッサージを一人で何度も何度も繰り返した。

花桜梨「お願い・・・!目を開けて・・・!息をしてよ・・・!もう一度息を吹き返してよ・・・!!」

祈りを込めてひたすらに蘇生処置を行うが、もう竹内の呼吸と心臓が停止してから10分近くが過ぎようとしていた。

普通,人間と言うものは呼吸と心臓が停止してから10分を過ぎてしまうと,蘇生する確率は格段に落ちる。最初の10分が経過する前に息を吹き返さないと,蘇生は難しくなってしまうのだ。

竹内はその10分を超えようとしていた・・・。

花桜梨「竹内君!お願いだから目を開けてぇぇっ!!」

花桜梨は泣き叫びながら竹内の心臓に刺激を与え続けた。しかし一向に竹内の反応は無く、もうこれまでかと思われたその時・・・。

竹内「・・・・・ゲホッ!!ゲホッ!!ゴホッ!!」

竹内は突然激しくむせ返ると大量の水を吐き出して息を吹き返した!

花桜梨「!!!良かった・・・・!!竹内君・・・・!息を吹き返したのね!」

竹内「うぅ・・・・、花桜梨さん・・・・。」

花桜梨は竹内が息を吹き返した事を涙を流して喜んだ。

花桜梨「良かった・・・!本当に良かった・・・!もう駄目かと思ったんだからね・・・!」

竹内「俺・・・・水の中で溺れて・・・・そっか・・・・。花桜梨さんが助けてくれたのか・・・。何か、迷惑かけっぱなしだね・・・・。ごめんね・・・・花桜梨さん・・。」

花桜梨「ううん・・・!私を助けようとして怪我をして水路に落ちちゃったんだから、謝るのは私の方だよ・・・。」

竹内「・・・・ここは?」

花桜梨「分からない・・・。どこかの地下室だと思うんだけど・・・。随分下の方まで流されちゃったみたいなの・・・。」

竹内「そうか・・・。じゃあ、早くみんなの所へ戻ろう・・・・うぐっ!!」

竹内は身体を起こそうとして、右肩に鋭い痛みを感じて思わず悲鳴を上げた。

花桜梨「あっ!駄目よ動いちゃ・・!肩にひどい怪我をしているんだから・・・!!まだしばらくそのまま横になっていて。」

竹内の右肩は『ナイト』に突進した際に深く切り裂かれて、ざっくりと裂けていた。出血はほとんど止まっているものの、まだ身体を動かそうとすると、途端に激しい痛みが襲ってくるのであった。

携帯電話で助けを呼ぼうとしたが、電話は水路に落ちた際に水浸しとなって使い物にならなくなってしまっていた。

花桜梨「どうしよう・・・・。助けを呼ぶことも出来ないし,移動しようにも竹内君がこんなひどい怪我じゃ・・・・。」

花桜梨はひとまず竹内の命が助かったから良かったものの、これからどうすればいいのか分からずに途方に暮れてしまった。

その頃,某委員会・会議室では、竹内がハンターと戦う様子を監視カメラで撮影したビデオ映像を何人かの役員が興味深そうに見ていた。

委員長「ふむ・・・・。これは予想とは大きく違った結果になったな・・・。」

役員A「はい、まさか普通の高校生がハンターを・・・それも全て同じ人物が三人も倒すとは・・・・!まるで予期していなかった事態です。」

役員B「しかも、現地に派遣したハンターの一人からこのビデオの人物をハンターとして推薦するという証言を受けております。かなり熱心な勧め方で、私自身驚いております。何でも・・・,ハンターとしては最高の資質を持っているそうで・・・。」

委員長「何だと・・・!?この少年はそこまで現役のハンターを唸らせるほど素晴らしい資質を持った存在だと言うのか・・・?」

役員B「しかし、この少年に関してはつい先ほど、ハンターの一人と戦った際に行方が分からなくなっておりまして、現在施設の中をくまなく調べて行方を追っています。」

委員長「宜しい。では、この少年を推薦してきたハンターはその後何か連絡をよこしているのか?」

役員B「いえ、あれ以降連絡はありません。」

委員長「そうか・・・。確か・・・、現地に派遣したハンターはあと二人のみだったな・・・・。」

役員A「はい。状況によっては、残りのハンターが倒された時を想定して、補充として新たにハンターを派遣するのも止むを得ない処置かと・・。」

委員長「そうだな・・・。よし、いいだろう。今から12時間後に、新たにハンターを送り込む事にする。あの少年たちにはすまないが,この計画の演習メンバーとして選ばれたからには生かしておく訳にはいかないからな・・・。」

役員A「ええ、何としても彼らには全員死んでもらうしかありませんからね・・・・。まあ、問題の少年は別ですが・・・。」

委員長「その通りだ。よし、補充要員として、ハンターコードネーム『マインド』と『ライン』を派遣待機させるようにハンター派遣部門に連絡しておけ。」

役員A・B「はっ!」

役員C「・・・・・。(この組織は恐ろしい計画を実行に移すべく、ここまで準備させていたのか・・・・。そろそろ・・・戒めの時かな・・・。)」

一方、花桜梨たちと離れ離れになってしまった涼は・・・。

涼「・・・・おい、大丈夫か?動けるか?」

純「ああ・・・、何とか体が動かせるようになってきたみたいだ・・・。」

智「俺もだ・・・。それより、竹内たちはどうなったんだ!?ハンターは!?」

涼「・・・・・ハンターは死んだよ・・・。竹内がハンターの隙を突いて八重さんを助ける事に成功したんだが・・・。」

智「だがどうしたんだよ・・・。」

涼「もみ合いの末に、ハンターは自分で腹に刃を突き刺して死んだが、その時に竹内も肩を大きく切り裂かれて・・・・。水路に転落しちまったんだ・・・。」

純「何だって!?」

涼「俺も助け出そうとしたが、水路が思ったより流れが速くて助ける間も無く、竹内はすぐに流されちまったんだ・・・。それを見た八重さんも竹内を助けようと水路に飛び込んで・・・。」

智「そんな・・・・,じゃあ竹内と八重さんは二人とも水路に落ちて流されちまったって事なのかよ!?」

涼「そうだ・・・。」

純「早く二人を探さないといけないな・・・!」

涼「だが、あの水路がどこに続いているか全然分からないんだ・・・。どこに流れているか分からないと助けようが無い・・・。それに・・・,あの水流ではもう・・・。」

智「そんな訳が無い!!俺は竹内たちが死んだなんて思えねぇ!絶対どこかで助けを待っているはずだ!!」

純「俺もそう思う。まだ諦めるのは早いんじゃないか?」

涼「穂刈・・,小倉・・・・。そうだな・・・。まだそう決まった訳じゃないよな・・・。」

智「俺たちもやっと身体が動くようになって来たし、一旦みんなに連絡をしよう。」

純「ああ、残るハンターはあと二人だ・・・。だが、恐らくさっき現れた『トラップ』って奴は俺たちを襲ってこないだろう。だから、実質俺たちの敵は一人ってことになる・・・。」

智「何で『トラップ』って奴は俺たちを襲わないって思うんだ?」

純「あいつは、竹内を仲間に引き込もうとしていた。竹内をハンターにさせるのが目的なら、一旦は引き下がったとしても、俺たちに構わずにすぐに竹内の行方を捜し始めるだろうからな。」

智「なるほど・・・。」

涼「よし、じゃあ俺が坂城に連絡を取ろう。」

匠「・・・・!もしもし、秋口か?何かあったのか・・・!?」

涼「ああ、色々あってな・・・。それより・・・、少しまずい事になった・・・。」

匠「まずい事・・・?」

涼「竹内と八重さんが行方不明になった・・・。」

匠「何だって!?」

電話の向こうで匠の声が大きくなる。

涼「ハンターから八重さんを助ける際に格闘になって、その時に怪我をしてそのまま水路に・・・・。ハンターは倒す事には成功したんだが・・・その結果、穂刈と小倉もハンターとの戦いで負傷した・・・。あと、もう一人ハンターがいたんだが、そいつはどこかに逃走した。」

匠「竹内と八重さんが行方不明で、純と智が怪我・・・。何てことだよ・・・。」

涼「俺は穂刈と小倉が動けるようになり次第、竹内と八重さんを探して施設を探索するから、坂城たちはそのまま外で待機していてくれ。」

匠「・・・・・・。」

涼「また何かあったらこっちから連絡する。それじゃ、切るぞ。」

涼は用件だけ告げて、電話を切ろうとしたのだが・・・。

匠「待てよ・・・。」

涼「何だよ?何かあるのか?」

匠「・・・・水臭い事言うなよ・・。」

涼「え・・・?」

匠「お前たちだけで全部背負い込むなよ・・・。竹内だけじゃなく八重さんまで行方不明になって・・・その上、純と智まで怪我をしたんなら、俺だってこのまま外で黙って見てる事なんて出来る訳ないだろ!」

涼「しかし・・・,そとには陽ノ下さんや白雪さんが・・・。」

涼の言葉に、突然電話の声が匠から変わる。

光「もしもし!?秋口君!?今の話・・・全部聞いてたよ・・・。もし、今の話が本当なら、もうこのまま黙って外で待ってなんかいられないよ!」

涼「陽ノ下さん・・・。」

光「竹内君や八重さん・・・それに秋口君たちだけが戦って・・・私たちだけ安全な所にいるなんて・・・もう我慢出来ない!」

涼「・・・・・・・。」

光「だから・・・!だから、私たちも今からそっちに行こうと思ってる。」

涼「!!」

光「止めても無駄だからね!それに・・・、私や坂城君だけじゃない・・・・!琴子に白雪さんや寿さんだってその気になってるんだよ!だから・・・・、私たちも戦う!!」

涼「ま、待つんだ!まだ姿を見かけていないハンターが一人いるんだ!このまま来るのは危険過ぎる!」

涼が慌てて光を止めようとしたが、それより前に電話は一方的に切れてしまった。

純「おい、秋口・・・。どうしたんだ・・・?」

涼「陽ノ下さんたちが・・・こっちへ来るそうだ。」

純「何だと!?陽ノ下さんたちが・・・!?」

涼「ああ、止めようとしたんだが、電話が一方的に切れちまって・・。」

智「・・・・だが、残るハンターはあと一人だ・・・。だったら、ここは合流して固まって行動した方がいいかもしれないぞ。」

涼「それはそうだが・・・・。」

純「それに、もう陽ノ下さんたちを説得しても無駄だと思う。一度俺たちも出口の方に戻って、少しでも早くみんなと合流しようじゃないか。」

涼「・・・・そうだな。分かった。」

智「じゃあ・・・・行こうぜ・・・!」

涼・純「おう!!」

智と純は立ち上がってから刀を拾って腰に収めると涼と共に出口に向かって歩き出した。

新たなハンター到着時刻まであと11時間30分・・・・。

<第拾七話・完>

                             (第拾八話に続く・・・)

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