ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第拾伍話『疑惑』

ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第拾伍話「それぞれの決意」

花桜梨が皆の所を飛び出して、施設に入ってから数時間が経過した。全員が、花桜梨はもうハンターに殺されているのではないかと半分思い始めていた。しかし、そんな中・・・。

智「・・・・!お、おい!!八重さんだ!!八重さんが戻ってきたぞ!!」

一同「えっ!?」

花桜梨「・・・・・。」

純「ほ、本当だ・・・!・・・でも何だか様子が変だぞ・・・。」

純が言う通り、花桜梨の様子は明らかに普通ではなかった。服はボロボロでその上に竹内の上着を着ている。足取りも重く,顔は深い悲しみに満ちていた。

光「八重さん!!一体、その格好はどうしたの・・・!?」

花桜梨「・・・・・・・・・。」

琴子「ほら!男子は向こうを向いてなさい!!」

琴子は花桜梨の服が破れて中から胸が見え隠れしているのに気付いて、すぐに智たちに後ろを向くように言う。

匠「あっ!!お、おい!後ろ向いてなきゃ!」

智「あ・・ああ!すまん!!」

純「・・・・・。」

涼「・・・・。」

琴子に言われて、智たちは顔を真っ赤にしながら慌てて後ろを向いた。

光「これって・・・・,竹内君が着ていた上着だよね‥?竹内君は見つかったの?」

花桜梨「うん・・・・。でも・・・。」

光「でも・・・・?」

花桜梨「竹内君は・・・・私たちの事をひどく憎んでいた・・・。今じゃ、私たちよりハンターの一人を心の支えとしている・・・。」

琴子「なっ!?敵と馴れ合っているって事なの!?」

花桜梨「そんなんじゃないと思う・・・・。けど・・・・今の竹内君にとって、私たちはただの裏切り者でしかない・・・・。」

光「そんなのって・・・・。そんなのって無いよ・・・!」

花桜梨「でも・・・・,私たちが彼を傷つけた事には変わりないわ・・・・。だから・・・,彼を連れ戻す事は出来なかった・・・。」

光・琴子「・・・・・・・・・。」

花桜梨の言葉に光も琴子も言葉を失ってしまう。

花桜梨「それと、これを・・・・・。」

花桜梨は二人の前に竹内の上着に入れておいた施設の地図とカードキーを出して見せた。

光「これって・・・・。あの施設の地図とカードキーだよね!?」

花桜梨「竹内君が上着と一緒に私に渡したの。これを持って二度と姿を見せるなって・・・・・。」

男子全員「何だって!?

花桜梨の言葉を聞くや否や、思わず男子は全員振り向いて大声で叫んだ。

琴子「後ろを向いてなさいと言ったでしょうが!!

男子全員「!!・・・・すいません・・・。」

琴子から一喝されて男子は再び後ろを向いた。

智「で・・でもそれは本当なのか?竹内が八重さんにそんなひどい事を言ったなんて・・・・。」

純「ああ・・・・,ちょっと信じられないよな・・・。」

智と純が、後ろを向いたままにわかには信じられないと言った様子で話す。

花桜梨「・・・・・竹内君は・・・,もうひびきのに居た頃の竹内君じゃなかった・・・。もっと早く彼の苦しみに気が付いていれば・・。」

涼「!!?・・・・八重さん,もっと早くってどういう事なんだ?」

花桜梨「竹内君は・・・・・さっき私たちを襲ったハンターを殺す前に、既に別のハンターを殺していたの・・・・。」

一同「!!!!!」

花桜梨「でも・・・,竹内君はそれを私たちに告げることが出来なかった・・。ずっと、独りで悩み苦しんでいたの・・・。理由はどうあれ、人を殺したと言う事実を嫌悪する罪悪感と、逆に自分を正当化する自己防衛心の二つに挟まれて葛藤していたの・・・。」

一同「・・・・・・・。」

花桜梨「でも・・・,私たちはその苦しみに気が付かなかった・・・・。」

匠「で、でもあいつは俺たちに一言も言わなかったんだよ!?何も言わなきゃ気が付かなくても仕方ないよ!」

花桜梨「違う!・・・・言わなかったんじゃない・・。言えなかったのよ・・・。もし竹内君が本当の事を話したとしたら、みんなは彼に対して普段通りに接する事が出来たって言い切れる?・・・・実際、竹内君がハンターを殺した時に、みんなは彼の事を恐れて声をかけようとしなかった・・・。私もそうだった・・・。それどころか、彼を避けるような態度を取ってしまった・・・。」

智「それは・・・・。」

花桜梨「みんな、本当に竹内君の事が心から怖くなった訳じゃないってくらい解ってる・・・・。でも・・・でも,結局あの時に取った私たちの態度が竹内君を追い詰める事になったのは間違い無いわ・・・。」

純「・・・・・・。」

花桜梨「だから・・・・,だから竹内君から憎まれても・・・,裏切られたと思われても仕方の無い事なのかもしれない・・・。」

美幸「たけぴーは・・・,たけぴーは美幸たちの事を怒っているんだよね〜・・・。あの時に冷たい態度を取っちゃった美幸たち全員を恨んでいるんだよね〜・・・!?だったら・・・・,美幸たちはたけぴーに心から謝らないとダメだよ〜!」

花桜梨「勿論,私から何とか許してもらえる様に頼んでみた・・・・。けど、それでますます竹内君を怒らせる事になっちゃった・・・。」

光「竹内君・・・。何て言ったの・・・?」

花桜梨「・・・・・都合のいい時だけ人を頼りにするなって・・。自分の都合のいい時だけ許しを請うなって・・。」

光「・・・・・・・・。」

花桜梨「私は何も言えなかった・・・。竹内君の言っている事は間違っていなかったから・・・。気が付かないうちに、彼に頼っていたんじゃないかって・・・・そう思えるの・・・。」

美帆「八重さん・・・・。」

花桜梨「だから・・・,だから・・・・,もう・・・・私には竹内君を説得する事なんて出来ない・・・。ううん・・,そんな資格なんて無い・・・。」

花桜梨はそこまで言うと,うつむいて黙り込んでしまった。

光も琴子も、匠も純も智も何も言えない。だが・・・・。

涼「・・・・それで・・・・,それで八重さんは本当にいいのか?」

花桜梨「!!!」

涼「一度あいつに拒絶されたからって・・・,それだけで全てを諦めていいのか!?それで八重さんは本当に満足なのか!?」

花桜梨「それは・・・・。」

涼「竹内の事を本当に想うんだったら・・・・,それだけで諦めんな!!拒絶されたらもう一度説得してみればいい!!それでも駄目だったら再び説得すればいい!!何回失敗してもその度にあいつに心からぶち当たってみるんだよ!!」

花桜梨「!!」

涼「実際,あいつだって好きで八重さんにそんな事言う訳が無い!!絶対にまだ説得する方法はあるはずだ!!」

花桜梨「でも・・・私は・・・。」

涼「まだ何もしていないのに諦めんな!!行動する前から駄目だって決め付けるな!!」

花桜梨「・・・・・!!」

花桜梨は思い出した。以前、竹内にも同じ様な事を言われた事を・・・。

花桜梨「・・・そうだよね。うん・・・,そうだよね・・・・!まだ一度しか竹内君と話していないのに・・・それで諦めちゃダメなんだよね・・・!」

涼「そうだよ!粘り強く話せば、きっとあいつだって解ってくれるさ!!」

花桜梨「うん・・・!ありがとう・・・秋口君・・・。私・・・・竹内君に会ってもう一度話をしてみる!!・・・ううん!何回でも話してみる!!」

花桜梨は涼の話を聞いて、その顔にようやく笑顔が戻った。今までの迷いは完全に消えていた。

絶対に諦めない・・・!竹内に許してもらえるまで何度でも・・・・何回失敗しても諦めないと心に誓ったのであった。

涼「そうと決まったら,竹内を探し出さなきゃな!それに・・・あいつばっかりにハンターと戦わせる訳にはいかないからな。」

涼の言葉に皆は一斉に頷いた。

智「よし、八重さんが持ってきた地図を紙に何枚かに書き写してそれを頼りに施設に突入しよう。」

純「ああ、それと中に入るメンバーを決めよう。」

智「俺は絶対に行くぜ。一度あの中には入っているから地図を見なくても道はある程度覚えているからな。」

純「俺も行こう。俺も智同様、既に施設内を探索しているからな。」

涼「俺も行かせてもらうぜ。」

花桜梨「私も行くわ!竹内君を必ず見つけ出して説得してみせる!!」

匠「僕も・・・・。」

純「匠はここで残った女の子たちを守ってやってくれ。全員で施設内に入る訳にはいかないし、かと言って女の子だけを残して行く訳にもいかないだろ?」

匠「ちぇっ!解ったよ・・・。」

純「それに・・・,もしもハンターと遭遇した場合,真っ先に狙われるのは彼女たちだ。施設内に入るのは危険過ぎる。」

純は女子には聞こえないように,小声で男子全員に告げる。

智「そうだな。八重さんはともかく、あまり多くの人数で入るのもかえって身動きが取れなくなって危険だしな・・。」

涼「あと・・・・,もしもハンターに出会ったら,場合によっては戦わなければいけない・・・。その時は俺たち全員が人殺しをしなくちゃいけないかもしれない・・・。その覚悟はしておこう・・・。」

純・智「・・・・・ああ。」

涼「よし・・・・,じゃあ竹内が持ってきた武器をそれぞれいくつか持っていこう。丸腰のままじゃ戦おうとしたって無謀だからな。」

純「ああ、そうだな・・・。」

智「まあ、俺と純はどの武器を持っていくかは決まっているけどな・・・。」

純「そういう事だ。俺たちは剣道部だし、自分の扱いやすい武器と言ったらこれしかないだろうな・・・。」

そう言うと,二人は武器の中から長ドスを選んで手に取った。

純「まさか、心身を鍛えるつもりでやっていた剣道がこんな事に役立とうとはな・・・。」

智「ああ・・・,皮肉なもんだな・・・。」

涼「俺は・・・,これを持っていこう。」

涼は、拳銃を選ぶと上着の中にしまい込んだ。更に,ナイフもポケットの中に忍ばせた。

花桜梨「私は・・・。」

純「八重さんは武器を持たなくてもいいよ・・・。」

花桜梨「えっ?・・・・でも・・・。」

智「その分、俺たちがフォローするさ。」

涼「八重さんは竹内を説得する事だけ考えてくれ。」

花桜梨「・・・・うん、分かった・・。」

智「よし・・・,じゃあ行くか・・・。」

純「ああ。」

涼「坂城、彼女たちを頼んだぞ。」

匠「OK!任せてよ!」

美帆「どうか、皆さんお気をつけて・・・・。」

美幸「きっと・・・きっと帰ってきてね〜!美幸、待ってるからね〜!」

琴子「いい?絶対に死ぬんじゃないわよ!」

光「八重さん、必ず竹内君を連れ戻してね!・・・・大丈夫!きっと八重さんなら出来るよ!!」

花桜梨「陽ノ下さん・・・。うん、ありがとう・・・。私,頑張るね・・・!」

こうして、四人は施設に向かったのだった・・・。

それぞれの決意を胸に秘めて・・・。

<第拾伍話・完>

                            (第拾六話に続く)

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