ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第拾参話「力の代償」
時間は午前3時・・・。疲れ果てた花桜梨たちは静かに眠っている。
だが、施設内では・・・・。
ウェポン「そろそろハンティング再開の時間だな。」
ナイト「夜は俺が実力を発揮するのに最高の時だ。今から,外に出てガキどもを狩って来るとしよう・・・。」
『ナイト』が満足げに笑うと、早速待機場所を出て行こうとしたが・・・・。
トラップ「そいつは止めた方がいいな。」
ナイト「何故だ?夜は俺の独壇場だぞ?」
トラップ「今,『ナイト』一人であいつ等全員を狩る事は簡単だ。だが、それじゃ面白味に欠けるだろう?」
ウェポン「・・・確かに、『ナイト』一人だけ楽しむと言うのも気に入らねぇな・・・。」
『トラップ』の言葉に『ウェポン』がなるほどといった感じで同意する。
ナイト「・・・・・では、どうしろと言うんだ?」
トラップ「今夜は夜が明けるまでハンティングは中止にするんだ。」
ナイト「何だと?そんな事をしてどういう意味がある?」
トラップ「ふふふ・・・。今から面白い事が起きる。それからが『ナイト』と『ウェポン』、お前たちの出番と言う事さ。」
ウェポン「面白い事だと・・・?・・・・なるほどな。さっきのお前の考えが読めてきたぜ・・・。」
ナイト「くくく・・・!!・・・わははははは!!そうか!そう言う事か!!・・・いいだろう!今夜のハンティングは中止だ。朝が楽しみだな!はははははは・・・!!」
トラップ「分かって貰えたみたいだな。(・・・・さあ、竹内。お前の出番が近いぜ・・・。)」
ウェポン「しかし、お前は相変わらずやる事がエグイよなぁ・・・。お前がハンターじゃなかったら、真っ先に狩られるタイプの人間だぜ?」
トラップ「ふふふ・・・。ま、それが俺のハンティングスタイルだからね。(お前の働きに期待しているぜ・・・。竹内・・・。)」
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その頃,竹内は・・・。
竹内「凄い・・・。『トラップ』がくれた地図の通りの場所に武器が置かれている・・・。これだけあれば・・・。」
彼は『トラップ』から得た情報を元に、さまざまな武器を収集していた。
ショットガンに弾薬、つばの無い日本刀・・・つまり映画でヤクザが持つような長ドスに、ライフル、短銃、ボウガンなどありとあらゆる武器が見つかった。
竹内「まるで,ここは武器庫みたいだな・・・。戦争でも始められそうなくらい多くの武器が置かれている・・。」
その後,しばらく竹内は武器を回収していたが、持ちきれなくなって一旦皆の所へ帰ることにした。時間は午前5時。
ここに来て武器を収集し始めたのが4時くらいだったので、何時の間にか1時間も武器を集めていた事になる。
竹内「そろそろ戻るか・・・・。」
そう言って,竹内は体中に武器を背負うと施設の通路を進んでいった。
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花桜梨「う・・・・ん・・・。」
花桜梨は朝日の光によって目を覚ました。辺りはすっかり明るくなっている。
自分の腕時計を見ると,時刻は朝7時だ。
花桜梨「(もう朝になったんだ・・・・。)」
周りを見渡すと、昨日の疲れが残っているせいか、まだ皆は眠っている。
とりあえず、花桜梨は目をこすりながら立ち上がって施設の方を見た。
花桜梨「(竹内君・・・・。あなたはもう私の前に現れてくれないんだよね・・・。)」
花桜梨たちは、まだ竹内が生きていると言う事を知らない。
物思いに耽りながらしばらく施設の方を眺めていると、入り口に所に何か人影のようなものが見える。
花桜梨「(あれ・・・・?施設から誰か出てくる・・・・。まさか!ハンターが来たって言うの!?)」
花桜梨はすぐに皆を起こし始めた。
花桜梨「みんな!起きて!!施設から誰かがこっちに来る!!」
一同「!!!」
花桜梨の一言で皆は慌てて飛び起きる。
智「本当だ・・・・。・・・・でも、何か様子が変だぞ?」
純「ああ、何か歩き方がぎこちないと言うか・・・、何か背中にたくさん背負っているみたいだな・・・。」
涼「どうやらハンターではないみたいだぞ・・・・?」
琴子「と、言う事は・・・・。」
花桜梨・光「竹内君!!」
二人が同時に叫んだ・・・と同時に駆け出していた。
人影はどんどん近づいてくる。それにつれて、シルエットが明らかになっていった。
智「そうだ!竹内だ!!あいつ・・・生きていたんだ!!」
純「おーい!!竹内!!!」
純も手を振って走り出した。
竹内「・・・・帰ってきたんだな・・・。俺は・・・。」
竹内はそう呟くと、今までの疲れがどっと溢れて来て、その場にそのまま倒れこんでしまった。
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竹内「・・・・う・・・うう・・・ん・・・。」
竹内が目を覚ましたのはそれから一時間後の事だった。
目を開けて見ると、自分の周りを皆が心配そうに覗き込んでいる。
花桜梨「良かった・・・あなたが生きていて・・・・本当に良かった・・・!」
竹内「・・・・・花桜梨さん・・・みんな・・・。ごめん・・・・,遅くなって・・・。」
花桜梨「遅すぎるよ・・・!!」
花桜梨はそう言うと,竹内に抱きついた。
竹内「か、花桜梨さん・・・!」
竹内は突然の事にどうしていいか分からずに戸惑う。
花桜梨「私・・・,あなたが殺されたって聞いて・・・もう二度とあなたに会えないって思っていたんだからね・・・!」
花桜梨はそう言って涙を流しながら竹内の背中に回している手を強める。もう,二度と離れたくないと言わんばかりに・・・。
竹内「・・・・本当にごめん・・・・。」
それしか言えなかった。泣きじゃくる花桜梨を目の当たりにして、竹内にはそのくらいしか言葉が見つからなかったのだ。
花桜梨はしばらく竹内に抱きついたまま泣き続けた。皆も、半分泣き顔になりながら竹内の生還を喜んだ。
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しばらくして花桜梨がようやく落ち着いたのを見て、竹内は花桜梨をそのままにしながら、自分に起きた状況を皆に話した。
ただ、『トラップ』の事だけは一言も話さなかったが・・・。
純「そうだったのか・・・・。大変だったな・・・。」
智「お前が走っていった通路から銃撃音が聞こえてきた時は、もうダメかと思ったぜ・・・。」
涼「それにしても、よくこんなに武器を見つけてこれたな・・・。小倉と穂刈が来た時は武器なんか見つからなかったって聞いてるけど・・・。」
竹内「ああ・・・,ちょっと武器庫のような所を見つけてな。そこから持ってきたんだ。」
智「拳銃にライフルに・・・ショットガン・・・。ヤクザの持つような長ドスまであるじゃないか!」
純「本当だな・・・・。一体,この施設は何なんだ・・・・。」
純がそう言って、施設の方を見た・・・・その時!!
施設から大柄の人影が出てくると、こっちに向かって走ってくるのが見えた。
純「おい・・・・,また施設から誰かが出てきたぞ・・・。」
智「待てよ・・・。あの体格には見覚えがある・・・。そうだ!!あいつは食料庫で俺たちを襲ったハンターの一人だ!!」
一同「!!!!」
智の言葉に一瞬で皆に緊張が流れる。
光「どうするの!?」
智「どうするもこうするも、あいつはすぐにマシンガンを乱射するとんでもない奴だ!!逃げるしかないだろう!」
竹内「(・・・・・あの姿は・・・『ウェポン』か・・・。)」
純「匠!お前は白雪さんや寿さんを連れて逃げろ!」
匠「純!お前はどうするんだ!?」
純「俺は智や涼と一緒に、水無月さんと陽ノ下さんを連れて逃げる!!」
智「八重さんはお前に任せたぞ!!竹内!!」
竹内「・・・・・・分かった。」
竹内はついにこの時が来たと思った。
竹内「(覚悟はとうに出来ている。そう、『トラップ』と出会って俺は変わったんだ・・・。逃げてはいけないんだ・・・俺は・・・ハンターと戦うんだ!!!)」
花桜梨「竹内君!私たちも早く逃げましょう!」
竹内「花桜梨さん,俺が持ってきた武器はどこに置いてあるの・・・・?」
花桜梨「えっ!?あそこにまとめておいてあるけど・・・・何をするつもりなの?・・・まさか竹内君・・・・。」
竹内「あそこか・・・。よし!花桜梨さん、走るんだ!!」
花桜梨「えっ!?」
竹内は花桜梨の手をしっかりと掴んで一気に走り出した。そして、森の中に入ると木の陰に隠れた。
竹内「ここならあいつにも見つからないだろう・・・。花桜梨さんはここでじっとしていて。すぐに終わるから・・。」
花桜梨「すぐに終わるって・・・。竹内君はあのハンターと戦うつもりなの!?無茶よ!殺されるわ!!」
竹内「俺は・・・既に一人のハンターを殺しているんだ・・・。だから・・・,あいつを殺せるのは俺しかいない・・・。」
竹内は静かにそれだけ言うと,一気に武器の置いてあるところに走り出した。
花桜梨「・・・・竹内君・・・,今何て・・・・?」
残されたのは、竹内の言った事が飲み込めずに、半ば呆然とした花桜梨だけであった。
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ウェポン「ちっ!ガキどもめ・・・。上手く隠れやがって・・・。どこに行きやがった・・・!?」
それまで竹内たちがいたところまで来ると,ウェポンは森の方を見回してマシンガンを構えた。
竹内はウェポンから15メートルほど離れた所に息を潜めていた。
竹内「(あいつは敵だ・・・・あいつは敵だ・・・、俺はカウンターハンターなんだ・・・・。殺られる前にこっちが殺らないといけないんだ・・・!!)」
その手には短銃が握られていた。手のひらは汗でじっとりとしている。
やがて、『ウェポン』は花桜梨の隠れている方に向かって歩き出した。
竹内「!!(まずい!花桜梨さんが隠れている方に歩き出した!!)」
竹内はこの場で後ろから『ウェポン』を狙撃しようとしたが、今まで拳銃など撃った事がない為、上手く命中させる自信が無い。
竹内「くっ・・・!」
やむを得ず,竹内は『ウェポン』に気が付かれない様に静かに近づく事にした。
匠や純、それに智たちはそれぞれ樹の陰に隠れて『ウェポン』の様子を伺っている。
花桜梨「(こっちに来る・・・!どうしよう!!)」
ウェポン「!?そこに誰か居るな!?出て来い!!」
花桜梨「・・・・・・・・・・。」
花桜梨が出てこない為、ウェポンは構えたマシンガンを花桜梨の隠れている樹に向かって乱射した。
ダダダダダダダダダダ!!!
バキバキバキ・・・!!!
凄まじい銃撃によって、花桜梨の隠れている樹がどんどん削られていく!!
花桜梨「(ひっ・・・!!竹内君・・・助けて・・・!!)」
花桜梨は樹の後ろにしゃがみこんで、耳を両手で塞いで必死になって恐怖と戦っていた。
智「(このままじゃ、八重さんが・・・!!どうすればいいんだ!!)」
ウェポン「さあ、大人しく出てきな!!」
花桜梨「・・・・。」
花桜梨はこれ以上隠れていても無駄だと悟り、ウェポンの前に姿を現した。
ウェポン「へへへ・・・!最初から大人しく出てくりゃいいんだよ。」
花桜梨「・・・・・・・・。」
ウェポン「おい、顔を良く見せな!」
『ウェポン』は花桜梨のあごを掴むと、ぐいと上にあげさせた。
花桜梨「ううっ・・・・。」
ウェポン「ほう・・・,なかなかの美人じゃねぇか。すぐに殺すには惜しいな・・・。」
純「(くそっ・・・!!何とかしないと・・・!!)」
純も樹の陰から、様子を伺っている。
ウェポン「殺す前に少し楽しませてもらうか・・・。」
『ウェポン』はそう言うと,花桜梨を地面に突き倒した。
花桜梨「きゃっ!!」
花桜梨は転倒して悲鳴を上げる。
花桜梨「嫌・・・、来ないで!」
ウェポン「へへへ・・・。いくら泣きわめこうが、誰も助けになんか来ねえよ!諦めな!」
ウェポンが花桜梨に掴みかかろうとしたその瞬間!!
パァァン!
ウェポン「うぐっ!?」
背後から一つの銃声がしたかと思うと、ウェポンはそのまま前のめりになって倒れ込んでしまった。
花桜梨「(一体何が・・・!)」
花桜梨が顔を上げてみると、そこには拳銃を構えた竹内が立っていた。
花桜梨「竹内君・・・!」
純・智「あ、あいつ・・・・!!」
竹内「・・・・・・・。」
竹内は黙って拳銃を下げると花桜梨に近づいた。
花桜梨「・・・・・。」
花桜梨も突然の出来事に言葉が出ない。
竹内「・・・・これで二人・・。」
竹内はそれだけ呟くと、倒れている『ウェポン』の上着を調べ始めた。
竹内「・・・・これだな。」
やがて、中からカードキーを見つけ出すと,竹内はそれを自分の上着の内ポケットに仕舞い込んだ。
竹内「花桜梨さん、怪我は無い?」
竹内に聞かれて、ようやく花桜梨は冷静になりつつあった。
しかし・・・・。
花桜梨「!!竹内君!!後ろ!」
竹内「!!」
花桜梨が指差したところを見ると,撃たれて倒れていた『ウェポン』が起き上がった。
ウェポン「てめえ・・・・、不意打ちとはなかなか、なめた真似するじゃねぇか・・・。」
竹内「・・・・何だと!?」
確かに弾は命中したはずだ。だが、奴は平然としている。
ウェポン「残念だったな。俺の着ているジャケットは防弾、防刃、防熱、防電加工が施されているんだよ!そんな拳銃くらいで俺を殺せるとでも思ったか?」
竹内「くっ!」
ウェポン「お返しはたっぷりとさせてもらうぜ・・!!」
そう言うや否や、『ウェポン』はマシンガンをいきなり乱射してきた!!
ダダダダダダダダダ!!
竹内「!!」
竹内は反射的に茂みに飛び込んで姿をくらます。
ウェポン「逃がすか!!」
マシンガンの銃撃が竹内が飛び込んだ茂みに向けられる。
ウェポン「ひゃははははは!死ね死ね死ね死ね!!死ねえぇぇっ!!!!!」
ウェポンは大声で笑いながら辺りを掃射する。
だが・・・。
ダァァン!!
ウェポン「ごふっ!?」
さっきの銃声よりも更に大きな銃声がして、それと同時にウェポンががくっと膝を落とす。
ウェポン「な・・・・,何だと・・・!?」
後ろを振り返ると,竹内がショットガンを構えて無表情で立っていた。
ウェポン「貴様・・・・!何時の間に俺の後ろに回りこんだ・・・・!?」
竹内「・・・・・。」
竹内はその質問には答えず,ショットガンを連射した。トリガーを引く度に竹内の身体は衝撃で揺れる。
ダァァン!!
ダァァン!!
ダァァン!!
ウェポン「がふっ・・・・!!!」
流石にショットガンを連続で撃ち込まれれば、特殊なジャケットを着ているとは言え、衝撃は肉体にまで伝わる!
『ウェポン』は血を口から吐き出して、大きく仰け反った。
花桜梨「・・・・・うっ!」
その凄まじい光景に、花桜梨は目を両手で覆い隠す。
竹内は相変わらず無表情だ。それはまるで,血の通っていない人形の様な目つきに見えた。
しかし、ショットガンを連続で喰らいながらも『ウェポン』はまだ倒れない。口から血を流しながらも不気味な笑いを浮かべて再びマシンガンを構えようとした。
ウェポン「くっくっく・・・!!無駄だ!!いくらショットガンだろうとも、このジャケットは貫く事は出来ん!!」
竹内「・・・・・何てタフな奴だ・・・。」
ウェポン「この特殊ジャケットを貫くには、『スナイプ』の専用ボウガンくらいの貫通力が無いと無理なんだよ!!」
竹内「・・・・・だったらこれでどうだ・・・。」
ダァァン!!
ウェポン「ぐっ!!?」
残っていた最後の一発を撃つと同時に、竹内はウェポン目掛けて走り出した。
いくら致命傷には至らないとは言え、ショットガンを連続で身体に撃ち込まれれば、動きが鈍くなる。
その隙を突いて,竹内はショットガンの銃身を絶叫しながら『ウェポン』の右膝に力一杯叩き付けた!!
竹内「うおおおおおおっ!!!」
バキャッ!!グシャッ・・・・!!
ウェポン「ぐぎゃああああぁっ!!!」
骨が砕ける嫌な音と感触を残して,ウェポンの膝は完全に砕けてしまった。
ウェポンは絶叫に近い悲鳴を上げて、その場に転倒した。
いくら身体を丈夫なジャケットで守られていようと、何のガードも無い膝への攻撃には無防備に等しい。
竹内「・・・・ジャケットの無いところに銃弾を撃ち込んだら・・・・どうなるんだろうな?」
竹内は再び短銃を取り出すと,倒れたウェポンの右腕を踏みつけて押さえつけると躊躇無く手のひらに銃弾を撃ち込んだ。
パァァン!!
ウェポン「!!!!!」
更に,今度は左腕も右腕同様に足で押さえると、そのまま手のひらを撃ち抜いた。
パァァン!!
ウェポン「ぐうううううぅぅっ!!!」
『ウェポン』は痛みに顔を歪めながら竹内の方を見上げるとこう叫んだ。
ウェポン「貴様ぁ・・・・!!俺にこんな事をしてただで済むと思うなよ・・・・!!他のハンターが必ず本気になって貴様とその仲間どもを皆殺しにするぞ!!!」
しかし、竹内はそんな言葉にも全く動じない。
竹内「それは俺にとって好都合さ。お前ら五人の他にもあと何人ハンターが来るか知らないが、出てきたら出てきた人数だけ狩らせてもらうまでだ。」
ウェポン「な・・・何だと・・・!!俺たちハンターを『狩る』だと・・・!?」
竹内「・・・・俺は,俺は生まれ変わったんだ・・・。もうただの高校生なんかじゃない・・・。俺は・・・・。お前たちハンターを逆に狩る存在・・・・。」
ウェポン「な・・・んだ・・・と・・・!?」
竹内「『カウンターハンター』だ・・・。」
ウェポン「か・・・『カウンターハンター』・・・・!」
竹内「もう、お前のうるさくて汚い声には聞き飽きた・・・。これで・・・・終わりだ。」
ウェポン「ま・・・待て!・・・俺を殺したら・・・!!」
パァァン!!
最期まで喋る事が出来なかった。竹内によって額を撃ち抜かれたからだ。
『ウェポン』は額から血しぶきを上げると地面に頭を横たえて動かなくなった。
竹内「・・・・・・・ようやく死んだか・・・。あと、三人・・・。」
竹内は虚ろな目でそう呟いた。飛び散った血が自分の顔や胸にかかっている。しかし、それを気にする様子も無く竹内は短銃を自分の上着の中にしまい込んだ。
竹内は『冷酷な心』という名の大きな力を得る代償に、今までの人間の感情を捨て去る事になってしまったのだった・・・。
花桜梨は目の前で平然と殺人を犯す竹内を、どうする事もなく見ているしかなかった・・・・。
それは、花桜梨以外の者全員も同じであった。
<第拾参話・完>