ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第拾壱話「嘘と真実・・・」
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ここは施設の出口から少し離れた所にある森の中・・・。花桜梨たちは、純と智の運んできた食料を食べていた。
だが、食事のペースは遅く,花桜梨と光,そして美幸は食べ物を一口も食べようとしなかった・・・。
智「・・・・美幸,お前さっきから何も食べていないじゃないか・・・。何か食べておかないと身体が持たないぞ・・・。」
美幸「うん・・・・。」
返事はするものの、美幸は一向に食べ物を口にしようとしない。
それは、花桜梨と光も同じであった。
純「陽ノ下さん、八重さん・・・。気持ちは分かるけど、ここで二人が身体を壊したら・・・・・。」
花桜梨「ごめんなさい・・・。今は・・・・何も食べたくないの・・・。」
光「私も・・・いい・・。」
純「・・・・・。」
智「・・・・・。」
智と純は顔を見合わせるとため息をついた。
皆一様に無口で、一言も発しようとしない。
確かに,仲間を一人失った直後に食事を取ろうとしても食欲が湧かないのも無理は無いことだった。
美帆「寿さん・・・、八重さん・・・・陽ノ下さん・・・。無理をしてでも何か食べなければ身体に毒ですよ・・。」
美帆が三人を諭すように言う。
美幸「・・・・美帆ぴょん・・。たけぴーは本当に死んじゃったの・・・?」
美帆「・・・・それは、私にも分かりません・・・。でも、きっと帰って来ると信じて待てば、必ず竹内さんは戻ってきますよ・・・。」
美幸「そうかな〜・・・。・・・・うん、美幸、信じてみるよ〜・・・。きっとあの中のどこかに隠れているって・・・。そうすれば,きっとたけぴーは帰って来るよね・・・?」
美帆「ええ・・・。そうですよ・・・。」
美幸は美帆の言葉に、少しだけ元気を取り戻したようだ・・・。だが、それを聞いていた花桜梨は・・・。
花桜梨「いい加減にして!!気休めなんか言われても全然嬉しくない!!」
美帆「・・・・八重さん・・・。」
花桜梨「信じていればきっと帰って来るだなんて・・・・,そんな訳無い・・・!!竹内君は・・・竹内君は・・・!」
美幸「や・・・八重さん・・・。美帆ぴょんは・・・・。」
美帆「寿さん、私は構いませんから・・・。」
花桜梨は今までのストレスが、美帆を怒鳴った事で一気に爆発した。張り詰めていた物が一気に溢れ出したかの様に・・・。
花桜梨「だいたい、白雪さんが最初にあんなメンバーの振り分けをしなければ、こんな事にならなかったのよ!」
匠「!・・・八重さん!」
匠が流石に言い過ぎだと思ったのか、花桜梨を止めようとしたが花桜梨は構わず言葉を続ける。
花桜梨「あなたの占いなんかで竹内君は一人で行動する羽目になって・・・,それから竹内君はおかしくなってた・・・!」
美帆「・・・・・・・。」
花桜梨「あなたがあんな事を竹内君に言わなければ、きっと竹内君は死なずに済んだはずよ!!」
智「八重さん!・・・・・その位にしておきなよ・・・。」
今まで黙って花桜梨の言う事を聞いていた智が、口を開いた。
智「竹内が殺されたのは白雪さんのせいじゃない・・・。俺のせいだ・・・。俺があいつを引き止めることが出来ていたら・・・。」
純「違う!引き止められなかったのは智だけの責任じゃない!・・・・俺だって同罪だ・・・・。」
花桜梨「・・・・・・・。」
智「ちくしょう・・・!俺が食料庫なんかを見つけなければハンターなんかに出会わずに済んだのに・・・!!」
涼「それは違う。二人が食料庫から食料を見つけてくれたおかげで、俺たちは食料を手に入れることが出来たんだ。小倉が気にすることじゃない・・・・。」
光「!!・・・秋口君は竹内君よりも食料の方が大事だって言いたいの!?」
涼「・・・・それは違うよ・・・。」
光「だってそう言う風にしか聞こえないよ!今の言葉は!!」
琴子「光!止めなさい!彼だってそんなつもりがあって言った訳じゃ無い事ぐらい分かるでしょう!?」
光「そうだけど・・・・。」
純「二人ともいい加減にしろ!!」
花桜梨・光「!?」
今まで女性に対して一度も怒鳴った事の無かった純がいきなり二人を一喝した。
純「八重さんも陽ノ下さんも、竹内の気持ちを全然理解していない!!」
花桜梨「!!・・・・私たちが・・。」
光「竹内君の気持ちを理解していない・・・?」
純「そうだ!!何故あいつが自分の命を賭けてまで、俺たちにみんなの所へ食料を持って行かせようとしたのか分からないのか!!」
花桜梨も光も黙って純の言う事を聞いている。
純「それは、みんなの事を第一に考えての事じゃないか!!みんなの事を考えていたからこそ、あいつは自分からハンターの囮になったんだ!」
智「純の言う通りだ・・・。竹内の命を代償にしてまで手に入れた食料だ・・・。それを無駄にする気か・・・?美幸・・・,八重さん・・・,陽ノ下さん・・・。」
美幸「・・・・。」
花桜梨「・・・・・。」
光「・・・・・。」
智「竹内の事を少しでも考えるなら、運んできた食料を無理にでも食べるんだ・・・。それは竹内の為でもあるんだよ・・・。」
智は静かにそれだけ言うと、再び座り込むと缶詰と乾パンを食べ始めた。
純も、それ以上何も言わずに黙って食料を食べ始めた。
残された三人は、しばらくその場に呆然として立ち尽くしていたが、やがて三人共座ってそれぞれの食料に手を付けた。
光も花桜梨も美幸も泣きながら食べている。
花桜梨「・・・・。(この悔しさ・・・。この味・・・。絶対に忘れない・・・・!)」
花桜梨は自らの涙で湿った乾パンを口に運びながら、悲しみと怒り,そして悔しさの入り混じった食事の味を胸に刻み込んだ。
それは他の二人も同じだった。
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食事が済んで,花桜梨は美帆の所に言って謝罪した。
花桜梨「あの・・・,白雪さん・・・。さっきはひどい事言って、本当にごめんなさい・・・。私・・・,自分の事しか考えていなかった・・・。誰だって気持ちは同じなのに・・・。それなのに私は・・・。」
美帆「いいんですよ・・・。八重さん・・・。あなたが竹内さんの事を一番に考えているのは分かっていましたから・・・。それに・・・。」
花桜梨「それに・・・・?」
美帆「あなたのおっしゃる事も分かるんです・・・。私が最初に振り分けたメンバーによって、竹内さんは一人で行動する事になってしまいました・・・。私を恨むのはもっともだと思います・・。」
花桜梨「・・・・・白雪さん・・・。」
美帆「私は、自分の占いが多くの方の手助けになると思っていました・・・・。でもそれは思い上がりだったんだって、今分かりました・・・。」
花桜梨「・・・・・・。」
美帆「私の占いによって、竹内さんは八重さんと離れ離れになってしまい、その挙句は・・・・。謝るのは私の方です・・・。」
花桜梨「・・・!」
花桜梨は、美帆が泣いている事に気が付いた。学校では決して笑顔を絶やさなかった美帆が泣いている・・・・。正直、それは花桜梨にとってショックだった。
美帆「申し訳ございません・・・。私ったら・・・。」
花桜梨「白雪さん・・・,もういいの・・・。もういいから・・・。」
花桜梨はそれ以上言葉が見つからなかった。どうしようもないくらいにやるせない思いが花桜梨の心に重圧となって圧し掛かってくる。しかし、それを乗り越えなければ竹内の犠牲を無駄にする事になってしまう。
花桜梨「(竹内君・・・・・,あなたが私に遺してくれたこの想い・・・。絶対に無駄にはしないからね・・・・!)」
花桜梨は静かに涙を流す美帆の肩を抱きながら、決意を胸に秘めて誓うのだった・・・。
そう・・・,必ず全員が生きてここから脱出すると・・・・。
<第拾壱話・完>