ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第拾話「Sacrifice」

ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第拾話「Sacrifice

施設内のある一室・・・

ウェポン「・・・・・『スナイプ』の奴、あんなガキどもの中の一人に殺られちまったのか。」

ナイト「あいつは獲物をすぐに殺さずに痛めつけて楽しむところがあったからな・・・。油断したところを殺られたんだろうな。」

『スナイプ』の死体を見下ろしながら、『ウェポン』と『ナイト』が話している。

ウェポン「全く,俺たちハンターの面汚しだぜ。こんな事が知れたら、他のハンターたちのいい笑いものになっちまう。」

ナイト「まあ、そう言うな。『スナイプ』が殺られた事で、このハンティングがより一層面白くなったじゃないか。」

ウェポン「・・・・そりゃそうだけどよ・・・。」

ナイト「既に『キング』が『スナイプ』を殺ったガキの携帯を見つけて本人と会話をしたらしい。」

ウェポン「ほう・・・・。」

ナイト「恐らく,あのガキどもの次に取る行動は一つ・・・・。」

ウェポン「何だよ,一体・・・。」

ナイト「俺たちが持つカードキーを奪いに来るという事だ。」

ウェポン「へっ!そいつは俺たちにとって好都合じゃねぇか。カードキーを奪いにのこのこ来たところを仕留めりゃ、それでお終いだ。」

ナイト「まあ、確かにな・・・。だが、どうも腑に落ちない点があるんだ。」

ウェポン「?」

ナイト「『スナイプ』の直接の死因はナイフによる腹部への刺し傷だ。『スナイプ』を殺ったガキはナイフなんかどこで手に入れたんだ?」

ウェポン「そんなもん、最初から持っていたに決まっているじゃねぇか!最近のガキはナイフを持つ奴が多いそうだからな。そう言う危険な奴を始末するために、俺たちはハンターとして訓練されて来たんじゃねぇか。」

ナイト「・・・・よく考えてみろ。ここにいるガキどもは全員連れてくる際に身体検査を行っている。その時に誰も凶器など持っている奴は居なかったんだぞ?」

ウェポン「!?」

ナイト「しかも、『スナイプ』はナイフなど使わないハンターだ。あくまでも、自分専用のボウガンと自分の怪力だけを武器にしていた。・・・これが何を意味するか分かるか?」

ウェポン「そ、それじゃ、この施設内のどこかにあらかじめ武器が用意されていて、『スナイプ』を殺ったガキが、たまたまその武器の一つを見つけて、それを使って『スナイプ』を殺ったと言う事か!?」

ナイト「そういう事だな・・・・。」

ウェポン「そんな事、俺たちは何も聞いていねぇぞ!?『キング』だってそんな事、一言も言わなかったぜ!?」

ナイト「慌てるな。いくら武器を持ったとしても所詮は普通の高校生のガキだ。プロの俺たちがマジになれば、いくらガキが武装したところで、それほどの脅威にはならんだろう。」

ウェポン「そ、そうだな・・・。」

二人がそんな事を話していると・・・。

???「だが、これで奴らは丸腰ではないと言う事が判明した。高校生だからと言って油断していると、お前たちも『スナイプ』のようになるぜ。」

ウェポン「!?何だと!?」

『ウェポン』が振り向くと,そこにはハンターの中では一番小柄(それでも身長170cmは軽く越えているが)な『トラップ』が、にやにやと笑いながら二人の後ろに立っていた。

ナイト「『トラップ』か・・・。お前,何時の間にここに来た?」

トラップ「さあね?お前が腑に落ちないとかどうのこうの言っていた時くらいかな?」

ナイト「!?(そんな時からずっと俺たちの後ろに居たと言うのか?俺たちが気付かないほど気配を消す事が出来るとは・・・!)」

トラップ「それよりも、あいつらもなかなかやるじゃねえか。油断していた所を突いたとは言え、ハンターを倒すとはね・・・。しかもたった一人でだ・・・。」

『トラップ』は心から楽しそうにしている。まるで相手が強ければ強い程、狩り応えがあるとでも言うように。

ウェポン「ふん!俺は『スナイプ』とは違う!必ず仕留めてやる!!」

トラップ「上手く行くといいがな・・・。くくく・・・。」

ウェポン「何がおかしい!?てめえ、俺をバカにしてんのか!?」

『ウェポン』が『トラップ』の人を小馬鹿にした態度に腹を立てて、『トラップ』の胸倉を掴む。

だが・・・。

ナイト「いい加減しろ!!ハンター同士で言い争っている場合か!?俺たちの仕事はガキどもを仕留める事なんだぞ!」

ウェポン「くっ・・・,・・・ちっ!分かったよ!」

『ウェポン』は舌打ちすると、渋々ながら『トラップ』の胸倉を掴んでいる手を放した。

トラップ「ふん・・・,やれやれ・・・。」

ナイト「それでは、ハンティングを再開するぞ。最初に『キング』の提案通り、それぞれ個別にガキどもを狩るんだ。」

トラップ「おっと、ちょっと待ちな。あと3時間で今日のハンティングの時間は終わる。それまで、俺一人にやらせてくれないか?」

ナイト「お前一人で・・・か?」

トラップ「ああ、ちょっと面白い事を考えたんでね。いいか、よく聞けよ。・・・・・・・・。」

ナイト「・・・・・なるほど。確かにそれはいいアイディアだな。」

ウェポン「・・・・・・。(悔しいが、こいつの考えは完璧だ。ただムカつくだけの奴じゃないって事かよ・・・。)」

トラップ「反対する奴が居なければ、残りの三時間、俺が一人でハンティングをやらせてもらうぞ?」

ナイト「ああ、いいだろう。『キング』には俺が説明しておこう。」

ウェポン「ちっ、好きにしな!」

トラップ「じゃ、決まりだな。お前たち二人は先に待機場所に戻っていてくれ。後で連絡するからな。」

ナイト「分かった。だが、俺たちが待機場所に向かう途中でガキどもを見つけたら、その時は遠慮無く仕留めさせてもらうぞ?」

トラップ「ああ、構わねぇよ。」

ナイト「よし・・・・。・・・『ウェポン』、行くぞ。」

『ナイト』はそう言って『ウェポン』を連れて、どこかへと去って行った・・・。

トラップ「へへへ・・・。お楽しみの始まりだな・・・。」

一人残った『トラップ』は冷酷な笑いを浮かべると,二人とは別の通路を通って行動を開始した。

一方、竹内・純・智の三人は・・・・。

竹内「あそこにも部屋がある。中に入って武器があるかどうか探してみよう。」

智「ああ。」

彼らは、ここまで歩きながら、幾つもの部屋に入って武器を探して来た。・・・・だが、武器は一向に見つからなかった。

智が、匠から預かった手帳にここまでの道筋を書きながら進んできたので、道に迷う心配はないのだが・・・。

純「・・・・どうだ?見つかったか?」

智「全然ダメだ。何も見つからないな・・・。」

竹内「・・・・こっちもだ・・・。」

竹内はふと腕時計を見る。時計の針はもう夜の8時を指していた。施設に入ってから、既に四時間が経過していたようだ。

(今頃・・・,俺や皆の両親が心配しているだろうな・・・。だけど・・・,俺は・・・もう・・・。)

そんな事を竹内が考えていると・・・。

智「おい!!二人とも来てみろよ!!」

智が何かを発見したようだ。大声を出して竹内と純を呼んでいる。

純「どうしたんだ?何か見つかったのか?」

智「見てみろよ!食料があるぜ!」

竹内「・・・・本当だ。でも、何故こんな所に食料が・・・・?ひょっとすると、施設の食料庫ってことかもしれないな・・・。」

智「とりあえず、折角見つけたんだ。持てるだけ持っていこうぜ。何も食っていないから空腹だからな。」

純「そうだな・・・。缶詰や災害時に食べるような乾パンばかりで毒が入っているとも思えないし、皆の分も持っていこう。」

智「何で毒が入っていないって言い切れるんだ?」

純「ハンター達は直接俺たちを殺す事が目的なんだろ?だとすると、こんな所にわざわざ毒入りの食べ物なんか用意している訳がないだろ?」

智「なるほど・・・。確かに、俺たちが毒で死んじまったら最初からハンター何か居なくてもいい事になるもんな・・・。」

竹内「・・・・じゃあ、俺の上着を使って食料を可能なだけ包んで運び出そう。」

智「俺の上着も使ってくれ。」

三人は、竹内と智の上着を風呂敷代わりにして缶詰や乾パン等を運ぶ事にした。

純「よし、こんなもんだな。あまり多く持ちすぎると敵に見つかった時に逃げ切れなくなるしな・・・。」

竹内「じゃあ、そろそろ戻ろう。あまり遅くなりすぎると、皆心配するだろうし・・・。」

智「そうだな。ここまでの道筋も完璧に書き写しておいたし、これを何枚か複製すれば道に迷う心配は消えるな。」

食料品を持った彼らは,今まで来た道を引き返す事にした。

しかし、彼らを最大の不幸が襲う事になってしまった・・・。

竹内「純、次はどっちに曲がるんだ?」

純「そこは・・・左だな。」

竹内「左・・・・っと。・・・・!!!」

竹内が曲がり角を左折した直後!

ナイト・ウェポン「!!!・・・お、お前らは!!」

何と,事もあろうに待機場所へ戻る途中のハンター二人組と鉢合わせになってしまった。

智「どうした?竹内・・・!!!・・・こいつらは!!」

竹内「純!!智!!そいつらはハンターだ!!逃げろ!!!!!

竹内が叫ぶと同時に,三人は一気に逃げ出した。再びさっきの食料庫に飛び込むようにして駆け込んだ。

すぐに二人のハンターも竹内たちを追いかけて、食料庫に駆け込んできた。

だが、三人の姿はどこにも無い。

ウェポン「どこに隠れやがった!!出てきやがれ!!」

『ウェポン』は、マシンガンを構えると,所構わず部屋のあちこちに乱射した。

ダダダダダダダダダダ!!!!

弾が次々と食料の入っている袋などに着弾し、撃ち抜かれた缶詰などが宙を舞う!!

竹内たちが隠れている所にも、撃ち抜かれて穴の空いた缶詰が転がってくる。

智「(ヤバい!!このままじゃ俺たち揃って撃ち殺されちまうぞ!!)」

竹内「(くそ・・・!)」

純「(何とかして逃げられないか!?)」

竹内「(見ろ・・・,部屋の一番右端に出入り口がある。あそこからここを脱出するしかない・・・!)」

智「(だけど、この食料品を持っていたら仮にここを出たとしても逃げ切れるか分からないぜ・・・!)」

純「(残念だが、食料はここに置いて行くしかないな・・・。)」

竹内「(・・・・・・俺が行く・・・。二人は食料を持ってあいつらが俺に気を取られているうちに、最初に入ってきたところから皆のところまで戻ってくれ。)」

智「(バカなこと言うな!!そんな事したら、お前が撃ち殺されるぞ!!)」

純「(そうだ!・・・そんな事になったら八重さんだって・・・・。・・・おい!竹内!!)」

純がまだ喋り終わらないうちに、竹内は身を潜めていた食料袋の間から飛び出すと、一気に走り出した!

ナイト「・・・!!!おい!こっちにいるぞ!!」

ウェポン「待ちやがれ!!」

竹内は部屋の右端の出入り口まで来ると、そのままドアを開けっ放して食料庫を飛び出していった。

当然,二人のハンターも竹内の後を追って食料庫を出て行く。

智「(あいつ・・・!!何て無茶なことしやがる!!)」

純「(どうするんだ!!このままじゃ、竹内が・・・!!)」

智「(決まってんだろ!このままあいつを見殺しになんか出来るかよ!?)」

二人が竹内の後を追いかけようとして、出入り口のドアに近づいた瞬間!!

バララララララララ!!!!

マシンガンの凄まじい銃声が二人の耳に飛び込んでくる!

智・純「!!!!!!!!」

二人は銃撃音を聞いて,身体を固くする。

すると、奥からハンターの声が聞こえてくるのが分かった。

ナイト「(殺ったか!?)」

ウェポン「(ああ!!手応えはあったぜ!!)」

智・純「!!!(竹内が・・・殺された・・・・!?)」

二人はしばし呆然としていたが、やがて・・・・。

純「・・・・智,皆のところへ戻るぞ・・・。」

智「何だって!お前は竹内を見捨てて行くつもりか!!?」

純「お前も聞いただろ・・・,竹内は・・・竹内は・・・・殺され・・・。」

智「黙れ!!・・・俺は・・俺はそんなの信じねぇからな!!」

智は純を怒鳴ると,自分も銃声のした方に走り出そうとした。

純「待て!!どこへ行くつもりだ!」

智「決まってんだろ!!竹内を助けに行くんだよ!!」

純「バカな事を言うな!!お前まで殺されるぞ!!」

智「バカはお前だろうが!!お前、何時からそんな冷たい人間になったんだ!!」

純「!!!」

バキッ!!

智「ぐっ!!」

純が智の横っ面を思い切り殴り飛ばした。智は勢いで床に倒れこむ。その口からは一筋の血が流れていた。

純「・・・・・。」

智「純!何しやがる!お前は竹内が殺されても何も感じないのかよ!!」

純「・・・智,俺は竹内がやられて何も感じない奴だと思うか?・・・仲間を殺されても悲しまない様な人間とでも思うか!?」

智「・・・・!?」

純「俺だって今すぐにここを飛び出して行きたいさ・・・。・・・だが、それで殺されちまったら、竹内の気持ちを無駄にしちまうじゃないか!!」

智「!!」

純「竹内がどんな思いで奴らのおとりになったのか考えてみろ・・・!俺たちを逃がして、皆の元に無事に食料を運ばせる為・・・,そして何よりも,俺たちや仲間全員の事を考えての事だろう!!今ここで引き返さなかったら・・・,竹内の犠牲が無駄になっちまうじゃないか!!」

智「・・・。」

智は、純の言葉を聞いて、ぐっと唇を噛み締めると下を向いた。

智「・・・・分かったよ。」

純「竹内の気持ちを無駄にしないためにも・・・・、早く皆の所へ戻ろう・・・!」

智「ああ・・・。」

二人は、一気に走り出した。食料庫を飛び出すと、純が地図を走りながら見て智を導く。

それから、どれくらいの時間が経ったのだろうか・・・・。

気が付くと、二人は施設の出口の前に立っていた。

純「・・・はぁ・・・,はぁ・・・,何とか戻ってこれたな・・・。」

智「ああ・・・,ふぅ・・・ふぅ・・・,何とかな・・・。」

智は、ぜいぜいと息を吐きながら、腕時計をみる。時間は9時半・・・,食料庫に来た時が8時だったから、既に一時間半が経過していたのだ。

純「皆が待ってる・・・,行こう・・・。」

智「・・・・でも・・・,俺たち花桜梨さんに何て言えばいいんだよ・・・・。」

純「・・・・・・・・・・。」

純も智も泣きそうな顔になっていた。

自分たちのすぐ近くで竹内がやられるのをどうする事も出来なかった・・・。それが二人の心に深く圧し掛かっていた・・・。

光「・・・あっ!!みんな!!竹内君たちが戻って来たよ!!」

花桜梨「えっ!!」

それまでずっとうつむいたきり、何も喋らなかった花桜梨が光の言葉に顔を上げる。

匠「良かった!!無事だったんだね!!遅くなっても戻ってこないから心配していたんだぜ!」

智・純「・・・・・・・・・」

匠の言葉にも二人は何も返事をしない。

匠「どうしたんだよ?無事で何よりじゃないか。」

智「・・・・じゃねえよ・・・。」

匠「えっ?」

智「全然無事なんかじゃねえよ!!!

匠「!!!」

美帆「そう言えば、竹内さんの姿だけ見えませんが・・・、どうしたのですか・・・?」

涼「・・・・小倉,一体中で何があったんだ・・。」

涼が静かな声で尋ねる。

智「・・・・竹内は・・・竹内は・・・。」

花桜梨「・・・・・・。」

花桜梨は二人の様子がただ事ではない事に気付き、じっと智の方を見ている。

智「・・・竹内は・・・・。」

智は必死で中での出来事を話そうとするが声が出ない。口の中は乾燥して声がかすれる。喉もカラカラだ・・・。

智はそれ以上言葉が出なかった・・・。

純「・・・・あいつは・・・,竹内は・・・俺たちを逃がす為に囮になって・・・ハンターに・・・・・・・・・・・・殺された・・・。」

智がそれ以上言えない事を見て取った純が、智に代わってこの悲しい知らせを皆に告げた。

一同「!!!!!!

その場に居た者全員に衝撃が走る。

光「そんな!!・・・・・嘘でしょ!?竹内君が殺されたなんて・・・!ねぇ!嘘なんでしょ!!」

琴子「光!落ち着きなさい!!・・・穂刈君,小倉君、それは確かなの・・・!?」

純「ああ・・・,ハンターの二人組がそう言っているのを、俺たちは確かに聞いたよ・・・。」

花桜梨「そんな・・・竹内君が・・・・殺された・・・・?(・・・嘘よ・・・嘘よ!・・・・そんなの絶対に嘘よ!!何かの間違いに決まってる!!!)

花桜梨は竹内が施設に入ろうとした時に、何か嫌な予感を感じていた。その時の不安が、まさかこのような形で現実になるなんて夢にも思っていなかった。

美幸「さとぽん!!たけぴーは死んじゃったの!?嘘だよね〜!?・・・ねぇ!さとぽん!!

美幸は半べそをかきながら智の腕を掴んで必死で竹内が殺されたと言う事が嘘であると言う返事を求めた。

智「美幸・・・,・・・・すまん。」

智はそれだけ言うと,美幸の手を振り払って森の方へと走り去ってしまった。

花桜梨「穂刈君・・,竹内君が殺されたなんて・・・・嘘だよね・・・?私たちを驚かそうとしているだけなんだよね・・・?」

純「・・・・・・・・・。」

花桜梨「そんな・・。嫌よ・・・!そんなの信じられない・・・・!」

純「八重さん・・・,嘘じゃないんだ・・・。竹内はハンターに・・・・。」

花桜梨「止めて!!聞きたくない!!そんなの嘘よ・・・!嘘よ・・・!・・・・いやあああぁぁっ!!!!

花桜梨の悲しみに満ちた絶叫が、夜になって暗くなった辺りに虚しく響くのだった・・・。

 

(第拾話・完)

                               <第拾壱話に続く・・・>

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