ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第九話「心を殺して・・・」
智「さて・・・これからどうするんだ?」
純「どうすると言ってもな・・・・。」
匠「ここを脱出する方法はたった一つ・・・。」
涼「竹内が言った様に、ハンターとやらを全てぶちのめしてカードキーを奪うしかないな。」
竹内「そういう事だ。」
光「でも、どうやって・・・。」
琴子「それを今から考えるのよ,光。」
美帆「私や秋口さん、それに花桜梨さんもハンターを一度だけ見ています。とても、背が高くて大きな鉄砲を持っていましたよ。」
智「げっ!ハンターって奴は銃まで持っているのかよ!?だとしたらまともにぶつかってもこっちがやられるだけだぞ!?」
匠「こうなったら、ハンターの隙を突いて、上手く気絶させるか何かしてカードキーを奪うしか道は無いね・・・。」
美幸「で、でもどうやって気絶させるの〜・・・?」
匠「えっ!?そ・・,それは・・・。」
美幸の当然の質問に、流石の匠も答えが見つからずに考え込んでしまう。
一同の間に沈黙が流れる・・・。
沈黙がしばらく続いていたが、やがて竹内が口を開いた。
竹内「一つだけ心当たりがある・・・。」
一同「えっ!!?」
竹内「最初,俺たちがここに連れてこられた際に、大広間で不気味な声に説明を受けたよな?」
純「ああ、そうだったな。」
竹内「思い出してみてくれよ。あの声が言っていた事を・・・・。『この施設にはさまざまな武器が置かれている。』確かに、そう言っていた。」
智「竹内・・・,まさかお前・・・。」
竹内「そのまさかだ。今から何人かがこの施設にもう一度入って、何か使えそうな武器や道具を集めて来るんだ。勿論,迷わないように、目印を壁などに残すか,何か書くものに通ってきた道順を書いていけば出口への地図作りながら進むんだ。」
涼「なるほど・・・。確かに,この状況ではそうするしか方法は無いな。」
光「でも、一体誰が中に入るの・・・?」
一同はそこで黙り込んでしまう。しかし・・・。
竹内「俺が行くよ。」
光「ええっ!?竹内君が?」
竹内「ああ、さっきは皆に随分とひどい事言っちまったからな・・・。せめてもの償いだ・・・。(それに・・・,俺はもう人を一人殺している・・・。)」
光「償いだなんて、そんな・・・。」
竹内「いいんだ。俺が自分で決めた事だ。」
智「・・・・竹内一人じゃ危険だ。俺も一緒に行こう。」
竹内「いいのか?死ぬかもしれないんだぞ?」
智「どっちにしろ、このままじゃ死ぬんだ。だったら、何かして死んだ方がマシだよ。」
智の顔は真剣だった。それを見た竹内は智に礼を言いながら頭を下げる。
竹内「そうか・・・,ありがとうな、智。」
純「俺も行こう。二人より三人の方がいいだろう。」
純も、施設内に行くメンバーの役を買って出た。同じく,純の表情も智同様に真剣そのものであった。
竹内「純・・・。・・・すまん。」
智「女の子たちはここに残った方がいいな。みすみす彼女たちを危険な目に遭わせる訳にはいかないからな。」
純「ああ、そうだな。それと、もしここにハンターが責めてきたら彼女たちを守れるように、涼と匠は残った方がいいな。」
涼「分かった。それじゃ、悪いけど頼んだぞ。ヤバくなったらすぐに逃げて来いよ。」
智「分かってるよ。こっちもそう簡単には死にたくないからな。危なくなったらすぐに引き返してくるさ。」
竹内「よし、じゃあ出発しよう。」
竹内の声で智と純は同時に頷くと、再び施設に入るべく歩き出そうとした。
しかし、三人が残りのメンバーに背を向けた瞬間・・・。
花桜梨「待って!!」
竹内・智・純「!?」
花桜梨が大きな声で三人を引き止める。
智「八重さん、どうしたの?」
花桜梨「・・・・竹内君は・・・竹内君はここに残って。」
智・純「えっ!?」
竹内「・・・・・・・。」
花桜梨「こんな事言ったら小倉君と穂刈君に悪いって判ってる・・・。・・・でも!お願い・・・。竹内君だけはここに残って!」
声の大きさ自体はそれ程でもないが,その言葉にはかなり強い意志が込められていた。それは、その場に居た誰もがそう感じる程であった。
純「竹内・・・。」
純が竹内の方を見る。
竹内「・・・・・。」
黙っている竹内に対して、花桜梨は構わず言葉を続ける。
花桜梨「竹内君・・・,この施設から出てきてからずっと変・・・・。まるで別の人みたいになってる・・・・。」
光「・・・・。(そう言えば・・,どことなく雰囲気が変わってる気がしていたけど・・・。)」
花桜梨「それに・・・,今ここで竹内君が施設に入ったら・・・・何か嫌な予感がするの・・・竹内君が竹内君じゃなくなる様な気がしてならないの!」
花桜梨はすがる様に必死になって竹内を引き止めようとした。それを見た智は・・・・。
智「・・・竹内、ここは俺と純に任せて今回はここに居ろ。」
智が花桜梨の心中を察して、竹内にここに残るように言った・・・が。
竹内「いや、最初に言い出したのは俺だ。言い出しっぺが残る訳にはいかないよ・・・。それに、まだ確実に死ぬと決まった訳じゃない。」
花桜梨「・・・・そんな!」
竹内の言葉に、花桜梨の表情は一気に青ざめる。
花桜梨「(どうして・・・どうしてなの・・・?どうして竹内君はそんなに死に急ぐ様な事をしようとするの・・・?・・・自分の心を殺してまで・・・。)」
竹内「大丈夫だよ、花桜梨さん・・・。俺はきっと戻って来る。約束するよ。」
花桜梨「・・・・・。」
竹内は一方的にそれだけ言い残すと花桜梨の返事を待たずに,後ろを向いて真っ先に施設に向かって歩き出した。
智「お、おい竹内!」
それを見た智と純も慌てて竹内の後を追いかける。
花桜梨「・・・・。」
花桜梨はただ呆然と三人の後姿を見ているしかなかった・・・・。
純「おい、竹内!いいのか?八重さんのこと・・・・。」
智「そうだぜ、八重さん、お前の事本気で心配しているぞ?戻らなくてもいいのかよ。」
竹内「・・・・いいんだ。(もう、俺と八重さんは別の世界に生きる者同士のような位置関係なんだ・・・。ただ・・・、あの時に真実を伝える事が出来ていたら・・・。)」
それだけ言うと,後は二人が何を言おうとも黙って施設の中に一番に入ってしまった。
智と純も、こうなっては竹内の後を追う様にして中に入るしかなかった・・・。
竹内はこの時に、ある覚悟をしていた。
だが後に、その覚悟が竹内自身を追い詰め、あろう事か仲間をも追い詰める事になろうとは、竹内自身も予想だにしていなかった・・・・。
花桜梨「・・・・・・竹内君・・・・・・・うっ・・・うぅ・・・うっ・・・。」
花桜梨は三人の姿が見えなくなると,その場にへたり込むと両手で顔を覆って泣き出してしまった。
花桜梨が人前で泣いた事は今までに一度も無かった。花桜梨が泣き出した事に一番驚いたのは光であった。
光「(八重さんが泣いてる所なんて・・・・初めて見た・・・。そこまで八重さんは竹内さんの事を・・・・。)」
美帆「八重さん,お気持ちはわかります・・・・。ですから、どうか泣かないで下さい・・・。竹内君を信じて待ちましょう・・・。」
美帆が花桜梨を優しく慰める。
涼「(・・・・竹内。お前は一体、どういうつもりなんだ・・・・。)」
涼は、ぽろぽろと涙をこぼして泣いている花桜梨に何も出来ないまま、ただ胸を締め付けられる様な思いで見つめるしかなかった・・・・。
竹内に対する複雑な感情を抱きつつ・・・。
<第九話・完>