ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第八話「偽りのココロ」

ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第八話「偽りのココロ」

竹内「もしもし・・・。」

???「・・・・よう。どうやら無事にこの施設を出る事が出来たみたいだな。」

電話の向こうから聞こえてくる声は,低くドスの聞いた男の声であった。

竹内「お前,一体何者だ・・・?」

???「俺か?俺は,お前らを狩る為に送り込まれた存在・・・・ハンターの一人だ。」

竹内「・・・・・。」

???「そんな事はどうだって良い。お前,この携帯の持ち主か?」

竹内「ああ・・・,そうだ。」

???「という事は,『スナイプ』を殺ったのはお前だな?」

竹内はその言葉に、改めて自分が人殺しをした事を実感した。やはり、あの男は死んだ・・・いや、竹内がナイフで殺したのだ。

竹内「そうだ・・・。」

竹内はかすれた声でそれだけ答えるのがやっとだった。どうやら『スナイプ』の死体のある場所からハンターの一人が電話している様である。

???「くっくっく・・・!やはりな・・・・。そうか・・・・,お前のようなガキが『スナイプ』を殺ったか!!こりゃいい!!はっはっは!!」

竹内「!??」

竹内は電話の男が何故笑っているのか理解できなかった。男が自分たちの仲間が殺されたのにそれを全く気にもしていない様子であったからだ。

???「そうだ・・・,それでいい!死にたくなければ抵抗してみせろ!その方が俺たちもハンティングを真剣にヤレると言うものだ。」

竹内「・・・・ハンティングだって・・・!?」

???「そうだ、俺たちハンターがお前らを狩る。お前たちは死に物狂いで逃げる。何処に行こうとも,必ず仕留めてやる・・。」

竹内「ふ・・・ふざけるな!」

男の言葉に竹内は電話ごしに怒鳴りつける。

すぐ横で竹内と男のやり取りを聞いていた花桜梨は、いきなり竹内が怒鳴った事に驚いて、びくっと身体を振るわせる。

???「ふざけちゃいないさ・・・・。生きるか死ぬか・・・。命をかけたゲームなんだよ・・・・。現に,お前は『スナイプ』を殺ったじゃないか。その調子で、俺たち全員を殺すつもりで抵抗してもらおうか。」

竹内「冗談じゃない!もう俺たちは施設内には入るつもりなんてないぞ!!」

???「ふふふ・・・。このゲームを放棄して逃げるつもりか?・・・良いだろう。だが、お前らが無事に施設の外の森を抜けられるかな?」

竹内「・・・・!」

確かに,施設を囲んでいる森は何処まで続いているか全く解らない。下手に歩き回ったところで脱出できるとは考えにくい。

???「ちなみに、俺たちがここに送り込まれた際に乗ってきた上陸艇がある。それを動かすにはカードキーが必要だ。カードキーを五つ集めれば,自然と上陸邸の位置も解るだろうし、オート操縦システムによってお前たちが帰りたいところまで運んでくれるだろう。どうだ?これで少しはやる気が出てきただろう?ここから脱出したければ,カードキーを奪ってみろ!力ずくでな!!はっはっはっはっはっ!!!!」

ブツッ・・・

電話はそこで切れてしまった。

竹内「・・・・・・・。(『逃げる事は許されない・・・。』最初にあの不気味な声の主が言っていたのはそういう事か・・・・。)」

花桜梨「竹内君・・・,誰からだったの・・・・・?」

花桜梨が不安そうに聞いてくる。

竹内「・・・・ハンターの一人と思われる奴だった・・・。ここから脱出したければ,ハンターを全滅させてカードキーを奪えって・・・。

そうすれば,あいつらが乗ってきた上陸艇が動かせるらしい。乗った後は勝手に望むところまで運んでくれるそうだよ・・・。」

智「じゃあ、そのハンター達からカードキーさえ奪えばいいんだな?」

匠「そういう事になるね。」

美幸「そのハンターって人たちに〜何とかお願いして〜、カードをちょうだいって頼んでみたら・・・・ダメかな〜?」

美幸が見当違いの天然ボケをかます。

匠・智「・・・ぷっ!・・・わはははははは!!」

そのボケに匠と智が思わず爆笑してしまった。

それまで張り詰めていた空気が美幸によって一瞬和んだかのように見えた・・・が、竹内はそんな三人の様子を見て・・・。

竹内「ふざけるな!!!

匠・智・美幸「!!!」

突然,竹内が大声で怒鳴った。

匠・智・美幸はぽかんとした顔で竹内を見ている。

竹内「お前ら,今どういう状況なのか分かってんのか!!?これはお遊びゲームなんかじゃない!!夢でも幻でもない!!

全て現実の出来事なんだ!!命を賭けた戦いなんだ!!相手は俺たち全員を皆殺しにするのが目的のイカれた集団なんだぞ!!

そんなふざけた事を言って馬鹿笑いしている場合じゃないだろうが!!!

あまりにも緊張感が足りない彼らの様子が、命がけの戦いをしてきた竹内の神経を逆撫でしてしまったのだ。

純「お、おい竹内・・・。気持ちは分かるが言い過ぎだぞ!寿さんだって、何もふざけて言った訳じゃ・・・。」

琴子「そうよ、あなたの言った事は確かに正論だけど、今のは言い過ぎよ。」

純の言葉に琴子も同調する。

しかし、二人の言葉がいきり立った竹内の神経を更に刺激する事になってしまった。

竹内「何だと!?」

純「だいたいお前らしくないぞ!いつものお前は少しの事でそんなにいらつかないじゃないか!」

竹内「ああ!いつもの俺ならな!だが、お前は勘違いしている!今は普段と同じじゃいけないんだよ!!今俺たちが居る所はひびきのじゃない!!戦場だ!!それも生き残れるか分からないくらいヤバ過ぎる地獄の様な戦場だ!!そんな事も分からないのか!?」

純「何だって・・・!?竹内・・・、お前・・いい加減にしろよ・・・!」

光「二人とも止めて!!もし、ここが竹内君の言うように地獄の様な所だったら、内輪もめなんかしている場合じゃないでしょ!?

竹内「・・・・・・。」

純「・・・・・。」

まさに一瞬即発の状態になった二人を光が何とか仲裁する。

花桜梨「(違う・・・。こんなの竹内君じゃない・・・。)」

匠「光ちゃんの言う通りだよ。とにかく、脱出方法が見つかったんだからどうやってカードキーを入手するか考えるのが先決だね。」

竹内「・・・・そうだな・・・。すまん・・・,いきなり大声出したりして・・・。寿さん、智、匠、許してくれ・・・。」

智「ああ、気にするなよ。お前が真剣に考えていることを察しなかった俺たちも悪かったんだ。」

匠「僕も気にしていないからいいよ。それに、竹内が携帯を落としたおかげで結果的に脱出方法が見つかったんだしね。」

竹内「そう言ってくれると助かるよ・・・。」

美幸「あの〜・・・,美幸が変なこと言っちゃったせいで〜・・・,みんなに迷惑かけちゃったね〜・・・。ごめんね〜・・・。」

美幸は自分の何気ない一言が竹内を怒らせた事をかなり気にしている様子だった。

涼「寿さん、そんなに自分を責めるなよ。竹内だって誤っているんだ。これでこの話は終わりにしよう。」

美幸「う・・・うん・・・。でも〜・・・。」

竹内「寿さん,本当にもういいから。悪いのは俺なんだから・・・。」

竹内はそう言って,にっこりと微笑んだ。

美幸は竹内の笑顔を見て、ようやく元気を取り戻した。しかし、そんな竹内の様子を見ていた花桜梨は・・・。

花桜梨「(違う・・・。竹内君・・・,心から笑っていない・・・。表面上では笑っているけど・・・あんなのただの作り笑い・・・。)」

花桜梨だけは、直感的に竹内の雰囲気が変わってしまってしまった事に気付いて、胸の痛みを覚えていた・・・。

まるで以前、心を閉ざしていた花桜梨自身の姿が竹内に重なってならなかったから・・・。

 

<第八話・完>

                             (第九話に続く・・・)

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