ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第七話「静止した心」

ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第七話「静止した心」

花桜梨「あっ!あれを見て!!」

涼「あれは・・・!!やった!出口だ!!」

美帆「やりましたね!」

花桜梨たちは、何とか施設の出口にたどり着いた。途中、ハンターの一人に見つかりかけたが、それ以降は特に何も起こらずにここまでやって来れた。

涼「よし、ここを出たらすぐに助けを呼びに行こう!」

花桜梨「そうね、まだ中にいる皆の事も気になるし、早く外に出ましょう。」

三人は、揃って施設の外に飛び出した。

そこには・・・・。

涼「な・・・,何だ・・・?ここは・・・・。」

涼が呆然としながら呟く。

花桜梨「そんな・・・,そんな事って・・・。」

花桜梨も絶望的な表情でその場にしゃがみ込んでしまう。

何と,施設の外はすぐに森・・・ジャングルのようになっており、助けを呼ぼうにも道が全く分からなかった。もし闇雲に歩き回っても、遭難して飢え死にするのがオチだろう。

美帆「仕方ありませんね・・・。他の出口が無いか探してみましょう・・・。きっとまだ道はあるはずです。」

美帆が表面上では、一生懸命に二人を励まそうとしたが二人はショックで立ち上がれない。

花桜梨「(折角ここまで来たのに・・・。)」

そう思うと,同時に忘れていた疲れがどっと押し寄せてきた。

今までは,出口に行けば助かるだろうという、僅かな希望があったからここまで頑張れた。しかし、その頼みの綱であった出口がこれではやる気も失せると言う物だ。

涼「くっそおぉぉっ!!」

涼が地面を叩きながら大声で叫ぶ。

花桜梨「(これじゃ、外に出ても何の意味も無い・・・・。どうすればいいの・・・。・・・!!そうだ!竹内君にもう一度電話をしてみよう!)」

花桜梨は気を取り直して竹内の携帯に電話をしてみた。

しかし、呼び出し音はしているようだが、電話に竹内は出ない。

花桜梨「(どうして・・・!どうして出ないの・・・!?竹内君!お願いだから出て!!)」

花桜梨は必死の思いで竹内が出るのを待ち続けた・・・。しかし、結局竹内が電話に出ることは無かった・・・・。

だが、花桜梨が肩を落として落ち込んでいると・・・。

???「お〜い!!八重さ〜ん!!美帆ちゃ〜ん!!涼〜!!」

不意に聞きなれた声が施設の出口から聞こえてきた。

美帆「あの声は・・・・。」

匠「みんな無事かい!?」

中から現れたのは、匠・光・琴子の三人であった。

涼「坂城じゃないか!それに陽ノ下さんや水無月さんも・・!」

光「やっと出られたね〜!」

琴子「随分と歩き回ったけど、何とか脱出成功ね・・・。」

美帆「よかった・・・。皆さんご無事で何よりです!」

美帆が嬉しそうに言う。

しかし、花桜梨の表情は暗いままだ。

涼「坂城,穂刈たちや竹内には遇わなかったか・・・?」

匠「いや、残念だけど遇えなかったよ・・・。けど、一度寿さんから電話が来たよ。」

光「道に迷ったからどうしたらいいかって聞いてきたんだよね。」

涼「それで、何て言ったんだ?」

匠「とりあえず、そのまま通路に居たんじゃハンターに見つかるかもしれないから一番近くの部屋に入るように言っておいたよ。」

涼「そうか・・・。それなら、今もどこかの部屋に隠れているって事だな・・・。」

光「竹内君はどうしているのかな・・・?」

花桜梨「さっきから何度か電話してみたんだけど、全然出ないの・・・。もしかしたら彼の身に何かあったのかもしれない・・・。」

光「そんな・・!」

琴子「もしかしたら、ハンターに遭遇して電話にも出られる余裕が無かったって事かもしれないわね・・。」

光「琴子!!変な事言わないで!」

光が不吉な事を言う琴子に文句を言った。

匠「とりあえず、ここからもう一度外部と連絡を取ってみようよ。施設の外がこれじゃあね・・・・。」

匠は周りのジャングルを見回しながらそう提案した。

皆もそれに賛成して、各自外部と連絡を試みたり、美幸や竹内に電話をかけてみた。

美帆「駄目みたいです・・・。ここからでも外部との連絡は取れませんわ・・・。」

美帆が肩を落としながら皆にそう告げる。

一方,美幸に連絡を取っていた匠は・・・。

匠「こっちは繋がったよ。今、細長い通路を歩いているんだって。横には水路があって、どこかに流れているって言っていたよ。」

涼「水路なんて、俺たちの通った道には無かったけどな・・・。」

匠「僕たちの通った道にもなかったよ。どうやら、純たちはかなり特別な場所に居るみたいだね・・・。」

光「八重さん,竹内君には連絡出来た?」

花桜梨「ううん・・・,やっぱりダメ・・・。」

光「・・・・・そう。」

光と花桜梨はがっくりと肩を落としてうつむく。花桜梨と光の心中に、竹内はもう既にハンターに殺されてしまったのではないかという恐ろしい考えがよぎる。

花桜梨はその不安を振り払うかのように、頭を横に振ると何気なく施設の出口の方に目をやった。

すると・・・・。

花桜梨「・・・・!?」

光「あの人影は・・・!?」

匠も涼、美帆や琴子も施設の出口に目をやる。

花桜梨「竹内君!!」

竹内「・・・・・・。」

中から出てきたのは紛れも無い、竹内であった。彼はゆっくりと花桜梨たちの居る所に歩いて来る。

花桜梨と光の表情が一気に明るくなった。

そして、喜びを抑えきれない様子で竹内に向かって走り出そうとした・・・・が。

花桜梨・光「!!!!!」

竹内の凄まじい姿に二人は思わず立ち止まってしまった。

竹内「・・・・・。」

竹内の顔はあざだらけで,あちこちに擦り傷が出来ていた。ボロボロになった服とあざだらけの頬はハンターの返り血を浴びて赤くなっており、特に頬に付いた血は既に乾いていて、固まりとなった血がこびり付いていた・・・。

両腕の服の袖から腕の辺りも血で赤く染まっている。

一同は変わり果てた竹内の姿に声も出ない。

竹内は皆のそんな様子を気にも留める素振りは見せず,黙って歩いてくると地面に腰を下ろした。

彼の目は魂の抜けた人形のそれのようであり、実際に竹内の瞳は何者も映してはいなかった・・・。

皆は,下手に詮索しない方がいいと思ってあえて竹内に声をかけないでいた。

けれども花桜梨だけは、恐る恐る竹内に近づいて質問した。

花桜梨「竹内・・・君・・・・。何があったの・・・?」

花桜梨の質問にも竹内は何も答えない。

花桜梨「さっきから何回も電話したんだけど、全然出ないから・・・私,それですごく心配になっちゃって・・・。」

竹内「・・・・・・。」

花桜梨「それで・・・,もしかして携帯電話を落としたのかもしれないってずっと不安だったの・・・。」

竹内「・・・・・。」

いくら花桜梨が話し掛けても竹内は押し黙ったきり、相変わらず何も答えようとしない。

花桜梨「ねぇ・・・,竹内君・・・,聞いてる・・・・?」

竹内「・・・・・くれないか。」

花桜梨「・・・えっ?」

竹内「少し・・・俺のことは放って置いてくれないか・・・・?」

花桜梨「・・・・!!」

竹内は花桜梨に向けて、冷たく一言だけそう言い放つと再び下を向いて黙り込んだ。

花桜梨は、予想もしていなかった竹内の言葉に悲しそうな顔をしてうつむいてしまった。しかし、何とか顔を起こすと精一杯言葉を選んでこう言った。

花桜梨「・・・・ごめんなさい。私・・・、あなたと再開出来たのが嬉しくて・・・つい、いろいろと喋りすぎたね・・・。気を悪くしたのなら、本当にごめんなさい・・。」

竹内「・・・・・・・・。」

花桜梨「それじゃ・・・,何かあったら声をかけてね・・・。」

花桜梨はやっとの思いでそれだけ言い切ると、走り去るようにその場から離れた。

それを見ていた涼は・・・。

涼「おい、竹内。何だ,今の態度は・・・・。」

涼が竹内の態度が気に入らず、竹内に詰め寄る。

竹内「・・・・・・。」

しかし、竹内は相変わらず黙り込んだまま下を向いたままである。

涼「おい!聞いているのか!?」

竹内が何も言わない事に対して、ますます腹を立てた涼は思わず口調が荒くなる。

皆はそんな二人の様子を黙って見ているしか出来なかった。

竹内「・・・・・・・・。」

熱くなっている涼とは対照的に,竹内は沈黙を守っている。

そんな竹内にとうとう涼の怒りが爆発する!

涼「お前,いい加減にしろ!!中で何があったか知らないけどな!!八重さんを傷つけるような事だけはするな!!お前が居ない間,彼女,どんな気持ちでいたか分かってんのか!!?ずっとお前の事を心配し続けていたんだぞ!?」

竹内「・・花桜梨さんが・・俺を・・・心配していた・・・?」

涼「そうだ!!そこまでお前の事を想っていてくれた八重さんに対して、何なんだよ!!あの冷たい態度は!!」

竹内「そうか・・・・、俺を心配してくれていたのか・・・・。そうか・・・,そうか・・・。」

竹内は我に返ったかのように、何度も自分の中で繰り返し頷くと、ゆっくりと立ち上がった。

涼「・・・・おい!何処へ行く気だ!?話はまだ終わっていないぞ!!」

竹内「・・・・花桜梨さんに謝ってくる・・・。」

竹内はそれだけ言うと、涼に背を向けて花桜梨の元へ歩いていってしまった。

涼「・・・・・。」

残された涼は拍子抜けしてしまい、それ以上何も言えなかった。

光も花桜梨の元へ向かう竹内の後ろ姿を身ながら,もどかしい思いを胸に抱いていた・・・。

光「(・・・・竹内君。)」

花桜梨は皆から少し離れた所で一人でいた。うつむいたその頬には一筋の涙が流れている。

竹内「・・・・花桜梨さん・・・。」

花桜梨「!?・・・・あっ、竹内君・・・。どうしたの?」

花桜梨は今まで自分が泣いていた事を隠そうとして、手で慌てて涙を拭うと無理に笑顔を作って竹内の方を振り向いた。

竹内「花桜梨さん・・・,泣いていたの・・・?」

花桜梨「えっ!?・・・ううん!そんなこと無いよ!・・・それよりも、どうしたの?」

竹内「その・・・,さっきはあんな冷たい態度を取っちゃってごめん・・・。」

花桜梨「あ・・・,うん、いいよ。あんな事があったばかりだからちょっといらいらしていただけだよね。私は気にしていないから、竹内君もそんなに気にしないで。」

花桜梨はそう言うと,にっこりと優しい笑顔を見せてくれた。

竹内「花桜梨さん・・・・。」

竹内は、自分があの施設で何をしたか話そうか迷った・・・。だが、花桜梨の笑顔が失われるのではないかと言う恐怖から、結局言い出せなかった。しかし・・・・・。

花桜梨「竹内君・・・。」

花桜梨が急に真剣な顔で竹内の方を向いた。

竹内「えっ・・・、何?」

花桜梨「あの中で一体何があったの・・・・?あなたのその姿・・・,どうみたって普通じゃない・・・。」

竹内「それは・・・・。」

花桜梨「顔中傷だらけだし、それに、服に付いているのは・・・・血でしょう・・・?」

竹内「・・・・・。」

花桜梨の質問に竹内は言葉を返す事が出来ずに,下を向く。

花桜梨「お願い、私にだけは隠さないで本当の事を教えて。」

花桜梨の真っすぐな目で見つめられて,竹内は自分の心が痛むのを感じた。

竹内「(俺は・・・・、俺は人を殺したなんて・・・・そんな事、花桜梨さんに言わないといけないのか・・・?出来ない・・・,それだけは出来ない・・・!きっと花桜梨さんに・・・・いや!花桜梨さんだけじゃない!匠や純、それに光にだって見放されるに決まっている!)」

花桜梨「ねぇ・・・,何があったの?」

竹内「お・・・俺は・・・・。」

花桜梨「うん・・・・。」

竹内「俺は・・・,俺は・・・・ハンターに遭遇して・・・・。」

花桜梨「うん・・・・,それから・・・?」

竹内「ハンターと格闘になって・・・・俺は・・・俺は・・・・。(駄目だ・・・,言えない・・・!)」

竹内は自分でも気がつかないうちに話しながら震えていた。

花桜梨「竹内君,落ち着いて・・・。慌てないでもいいからゆっくり話して・・・。」

そんな竹内の様子を見て、花桜梨は竹内を静かに・・・そして優しくいたわる様に抱きしめると、竹内の耳元で囁いた。

竹内「(花桜梨さん・・・・,何て優しくて暖かいんだろう・・・・。花桜梨さんなら・・・花桜梨さんならきっと俺のことを解ってくれるに違いない・・・。)」

花桜梨「・・・・落ち着いた?」

竹内「うん、ありがとう・・・。花桜梨さん・・・。」

竹内が落ち着いたのを確認すると、花桜梨はゆっくりと竹内から身体を離した。

竹内は覚悟を決めると、自分がしたことを全て花桜梨に話そうとした・・・・。

その時!

匠「お〜い!!純たちが来たぞ〜!!」

匠が大声で叫んでいる。

どうやら、純・智・美幸の三人も無事に合流出来たらしい。

花桜梨「寿さんたちも、無事に出てこられたみたいだね・・。」

竹内「そうみたいだね。」

匠「お〜い!竹内、八重さ〜ん!何してるの〜!?早くこっちへ来なよ〜!」

花桜梨「皆が呼んでるみたいだし、行きましょう。」

竹内「そうだね・・・。」

竹内は結局、中での出来事を花桜梨に伝えられなかった・・・。

こうして、何とか竹内たち10人は再会を果たした。しかし、その時花桜梨の携帯に着信が・・・。

花桜梨「あれ?・・・誰からだろう・・・。!!?竹内君の携帯からだ・・・・。」

花桜梨の言葉に、皆いっせいに花桜梨の方を見る。

匠「竹内・・・,お前携帯は?」

竹内「えっ?・・・・そう言えば・・・,無くなっている・・・。どこかに落としちまったかも・・。」

智「じゃあ、今竹内の携帯を使っている奴は・・・・・。」

智の言葉に、その場に緊張感が漂う・・・・。

花桜梨「どうしよう・・・?」

竹内「俺が出るよ。」

花桜梨「えっ!?平気なの・・・・?」

竹内は軽く頷くと、花桜梨から携帯電話を受け取ると電話に出た。

竹内「もしもし・・・。」

<第七話・完> 

                              (第八話に続く)

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