ときメモ2バトルロワイヤルSS・第六話『淘汰される意識』

ときメモ2バトルロワイヤルSS・第六話『淘汰される自我意識

竹内「はぁ・・・・はぁ・・・,はぁ・・・・。」

竹内は肩で息をしながら、自分の目の前に倒れている男の姿を見下ろしていた。その男の腹部からは血が流れ出しており,もう身動き一つしない。つい数分前まで自分を殺そうとして、襲い掛かって来ていた事がまるで嘘のように感じられる。

竹内は身体中、傷だらけで顔にはあざが幾つも出来ている。両腕や両足も擦り傷だらけだ。

自分の右手には、血で真っ赤になったナイフが握られていた。その血は他の誰の物でもない,倒れている男のものであった。

ロッカーから飛び出した後、自分は何をしたのか・・・・?今の竹内にはそれを思い出せなかった。

ただ、必死になって抵抗した。殺されるのが嫌で,死に物狂いで戦ったのだ。それから・・・・。

そこからは無我夢中だった。

竹内は呼吸を落ち着かせて、気持ちを必死に鎮めようとした。

冷静になるに従って,さっきまで一時的に失われていた感情が一気に湧き上がってくる・・・。

竹内「(俺は・・・・,ヒトを・・・・殺したのか・・・・・?)」

倒れているハンターの側に近寄って,その胸に手を当ててみる。

・・・・心臓の鼓動が感じられない。確かに死んでいる。

竹内「う・・・,うわあああぁぁっ!!

自分のした事が恐ろしくなった竹内は,ナイフを投げ捨てると、その場から全力で逃げ出した・・・・。

スナイプ「くっ、こ、こいつ!?」

竹内はボウガンを撃ったばかりで隙だらけの『スナイプ』に向かってナイフを構えて頭から突進した!

竹内「うおおおおぉぉっ!!!」

スナイプ「ちっ!」

ナイフが『スナイプ』の腹部に突き刺さる瞬間!『スナイプ』は素早く身を翻すと、竹内の突進を回避した。

竹内の捨て身の攻撃は『スナイプ』の腹部をかすめて、細い傷を付けるだけにとどまってしまった。

竹内「・・・っ!?」

スナイプ「この・・・ガキがぁっ!!」

ドガッ!!

スナイプは体勢を崩した竹内に力一杯蹴りを食らわした。

竹内「がはっ!!」

振り向きざまに腹に強烈な蹴りを受けた竹内は数メートルほど吹っ飛んで、壁に叩き付けられてしまった。

竹内「げほっ・・・!」

背中の骨がバラバラになるかと思うくらいに凄まじい痛みが全身を襲う。

スナイプ「全く,驚かせやがって・・・・。」

竹内「うう・・・・・・・ぐっ!」

痛みだけではなく,吐き気も襲ってきた。腹部に強烈な打撃を受けたためだろう。

スナイプ「このまま簡単に殺したんじゃつまらんな・・・・。少し遊ばせてもらうか・・・。」

『スナイプ』はそう言うと、ボウガンを手放して首と両手をゴキゴキと鳴らした。

竹内「(・・・・俺は・・・・なぶり殺されるのか・・・。)」

竹内は瞬間的に自分のこれからの運命を感じ取り,絶望の念に駆られた。

スナイプ「俺はな・・・,ボウガンのような飛び道具を使うだけのハンターじゃないんでね。腕力にも自信があってな・・・,お前のようなガキの骨ぐらい簡単に圧し折れるんだよ。くくく・・・!」

『スナイプ』は笑いながらそう言うと,ゆっくりと竹内に近づいて来た。

スナイプ「ほら、おねんねするにはまだ早いぜ。俺をもっと楽しませてくれないとなぁ!!」

竹内「ぐあっ!!」

竹内は頭を『スナイプ』の右手で鷲摑みにされて、そのまま高々と持ち上げられてしまった。

『スナイプ』は竹内の顔を自分の顔に近づけると、ニヤリと笑った。その瞬間!

ズダァァン!!

竹内「がっ・・・・!!」

堅い床に背中から叩き付けれて、竹内はうめいた。凄まじい痛みによって、一瞬意識が遠のく!

しかも背中へまともに衝撃を受けたため,呼吸が出来なくなってしまい,身体が動かない。

スナイプ「おらっ!!まだまだ!!」

バキッ!!

一呼吸する間もなく,立て続けに顔面に蹴りを喰らってしまい,そのまま竹内はゴロゴロと床の上を転がった。

竹内「(・・・ちくしょう・・・!ちくしょう・・・・!!)」

全身と顔に走る痛みと、ハンターへの恐怖、・・・・・そして、何も抵抗出来ずにただ痛めつけられているだけの自分への悔しさに目からは涙が流れる。

スナイプ「悔しいか?悔しいよなぁ?何にも出来ずに、ただ虫けらの様に殺されていくんだからなぁ!!」

『スナイプ』は、竹内の頭に足をかけながら嘲り笑う。

竹内は屈辱感に歯を食いしばりながら,必死で痛みに耐えていた。

スナイプ「さてと・・・!少々心残りだが、そろそろ遊びもここまでにしないとな・・・・。他のガキどもも狩らないといけないんでね。」

竹内の顔に足をかけたまま,『スナイプ』は再びボウガンを手に取ると、手早く矢をつがえた。

竹内「(このまま殺されてたまるか・・・!!)」

竹内は最後の力を振り絞って『スナイプ』の方を見上げた。すると、相手のジャケットの中に無数にボウガンの矢が用意されているのが見えた。

竹内「!!(・・・・あれは・・・。)

スナイプ「これで楽にしてやるよ。じゃあ、あばよ!」

竹内の首筋に狙いをつけると、スナイプは矢を放とうとした・・・・その瞬間!!

竹内は一気に右手を伸ばすと、スナイプの上着からボウガンの矢を一本毟り取った。そして、その矢を『スナイプ』の太腿部に深々と突き刺した!!

グサッ!!

スナイプ「!!?ぐああっ!!

スナイプは竹内の思いもよらぬ抵抗に、大きくひるむと竹内の顔から足をどかしてしまった。

竹内はそのまま這いずる様にして落ちていたナイフを拾うと、足を怪我して動きが鈍くなった『スナイプ』目掛けて全力で走り出した!

竹内「おおおおおおっ!!!」

竹内は涙を流しながら絶叫して、『スナイプ』にナイフを構えて突撃する。その姿には鬼気迫るものがあった。

スナイプ「ちくしょう!!このクソガキがあぁっ!!」

スナイプは怒鳴りながら突進してくる竹内の心臓に狙いを付けようとした・・・・が、足を怪我したために、上手く狙いが定まらない。

足に力が入らない為,どうしても巨大なボウガンを持つと重心のバランスが取れずにふらついてしまうのだ。

竹内「!!!!!!!!!!

スナイプ「死ねえっ!!

ビシュッ!!

『スナイプ』は、狙いが定まらないまま矢を放った。

ズガァァン!!

しかし、放たれた矢は竹内のすぐ左脇をすり抜けて,奥のロッカーの一つに突き刺さった。

スナイプ「何っ!?し、しまった・・・!!」

竹内はそのまま走るスピードを緩めずに,一気にスナイプに身体からぶつかって行った。

グサッ!!

竹内の両手に、鈍い感触が伝わってくる。ハンターの腹をナイフで突き通す、生々しい感触だ・・・。

『スナイプ』の腹には、ナイフが深く突き刺さっている。傷口からは真っ赤な鮮血がほとばしり、竹内の顔や服にもかかる!

スナイプ「ごふっ・・・・!!」

スナイプは口から血を吐くと,自分の腹を手で抑えながら後ろへ二・三歩後ずさりをして、苦しそうにうめいた。

竹内「はぁ・・・!はぁ・・・!はぁ・・・!」

竹内は両手に血の滴るナイフを持ちながら、肩で何度も息をしながら、『スナイプ』の方を呆然と見つめる。

スナイプ「・・・・くそっ・・・・!こんな・・・・ガキ・・・に、こん・・・な・・・,ガキ相手に・・・俺が・・・。」

それだけ言うと,『スナイプ』は膝から崩れ落ちる様に床に倒れこんで,動かなくなった。

やがて、『スナイプ』が倒れこんだ所から真っ赤な血が流れ出して周囲の床を満たしていく・・・・。

竹内「はぁ・・・・!はぁ・・・!はぁ・・・・!」

その瞬間から、竹内の正常な意識が彼自身でも気がつかないうちに失われていく事になるのであった・・・。

もう立ち止まる事は・・・・・・出来ないのだ・・・。

<第六話・完>

                                (第七話へ続く・・・)

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