ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第五話「迫り来る死の恐怖」

ときメモ2バトルロワイヤル風SS・第伍話「迫り来る死の恐怖」

竹内「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」

竹内は狭い通路を必死になって走っていた。そのすぐ後ろには、巨大なボウガンを持ったハンター『スナイプ』が迫っていた。

スナイプ「くくく・・・!やっと見つけた獲物だ・・。そう簡単には逃がさんぞ・・・。」

スナイプは逃げる竹内の後頭部目掛けて、特注製のボウガンを構えると何のためらいも無く発射した。

ズシュッ!!

ボウガンから放たれた矢は竹内の頭をギリギリかすめて飛んでいき,その先の壁に鋭い音を立てて突き刺さった。

スナイプ「ちっ!外したか・・・。」

スナイプは舌打ちすると、そのまま竹内を追いかけながら次の矢を装填する。通常,ボウガンの矢と言う物は足を使って装填するものだが、彼の腕力は常人のそれをはるかに上回っており、自分専用に大型のボウガンを用意して扱っているのも、普通のボウガンでは彼にとって小さすぎるのと,手ごたえが足りないからであった。

竹内「うっ!(・・・・あいつ、やっぱり本気で俺を殺そうとしている・・・!このままじゃやられる・・・!どうすれば・・・!?)

竹内は、何とかしてハンターから逃れようと、必死で頭を働かせた。しかし、武器も何も持っていない竹内にはどうすることもできず,ひたすら出口の見えない通路を走り回っていた。

スナイプ「今度は外さんぞ!・・・・死ねっ!!」

スナイプは再びボウガンを構えると、今度はしっかりと狙って矢を放った!

矢が竹内の背中に命中すると思われたその瞬間!竹内は一つの部屋を見つけ,一気にドアを開けてその室内へ逃れた。

ズカッ!!

矢は、開け放たれたドアに深々と突き刺さる!!

スナイプ「何だと!?くそっ、運のいい奴だ!」

竹内は、すぐにドアを閉めると素早くカギをかけた。施設内の自動ロックシステムは解除されている為,簡単なロックしか出来ないが、時間稼ぎにはなるだろう。

竹内「これで、少しは時間が稼げるはずだ!今のうちに逃げ道を探さないと・・・!」

竹内は部屋の中を見回したが、どこにも通路は見当たらない。完全に行き止まりとなっている。

そうこうしているうちにも,外からはハンターによってドアがガンガンと蹴られている。今にもドアは蹴破られそうな勢いだ!

竹内は室内にあるロッカーに目をやった。ロッカーは全部で五つあったが、もしここに入ったとしてもいずれ見つかって、射殺されるだけだろう。

だが、このままでは確実に殺されてしまう事も確実であった。

竹内「くそっ!何か無いのか・・・何か・・!・・・・・これは!?」

竹内がロッカーの中から見つけた物は・・・・。

バン!

ついに、ドアが蹴破られてしまった。すぐに、『スナイプ』が部屋に入り込んでくる。

スナイプ「これまでだ!大人しく出て来い!!」

竹内「・・・・・。」

竹内はロッカーの一番左端に息を潜めて隠れていた。

ロッカーの中で,何故あの時・・・・最初のチーム編成で自分だけ一人で行動するように言われた時、素直にそれに従ったのか、それを考えていた。

竹内「(俺は・・・,皆の前で格好付けたくて単独行動を素直に受け入れた訳じゃない・・・。ただ、これは一つのチャンスかもしれないと思ったから・・・。何の刺激も無い日常に飽き飽きしていた俺は・・・,刺激を求めて・・・・,今考えてみると恐ろしい事だけど・・・・,何かスリルに満ち溢れた刺激が欲しかったんだ・・・・・。そんな中で,幸か不幸か・・・白雪さんの占いの結果によって、俺は単独行動という役を引き当てたんだ・・・。ちくしょう・・・!何であんな馬鹿な事を考えちまったんだよ・・・・,自分で半ば望んだ単独行動の結果がこれだ・・・!!これもみんな自業自得って奴なのかよ・・・・!!)

竹内は,ロッカーの中で激しい後悔の念にさいなまれていた。しかし、こうなってしまっては、もはやどうしようもない。ロッカーの外では部屋に入ってきたハンターの足音が自分の隠れているロッカーの前まで迫って来るのが分かった。

スナイプ「ふん・・・,どうせそこのロッカーのどれかに隠れているんだろう。一番右側から順番に撃ち抜いてやる・・・。」

そう言うと、スナイプは一番右端のロッカーに向けて矢を放った。

ズガァァン!

矢はスチール製のロッカーを突き破ると,凄まじい音を立てて内部の壁まで突き刺さる!

特注製ということもあり、『スナイプ』の持つ大型ボウガンの威力は、射程・貫通力共に、通常のボウガンよりも上であった。

スナイプ「一番右はハズレか・・・。ならば,次は二番目だ・・・。」

竹内「(こ、殺される・・・。このままじゃ・・・何も出来ないまま殺される・・・。)」

竹内は、すぐそこまで来ている『死』の恐怖に震えていた。

ズガァァン!!

二番目のロッカーが撃ち抜かれた。

竹内「(嫌だ・・・,俺はまだ死にたくない・・・・!死にたくない・・・!)」

スナイプ「二番目もハズレか・・・・。」

ズガァァン!!!

しばらく間を置いて,真ん中のロッカーが撃ち抜かれる音が室内に響き渡った。

次第にロッカーを撃ち抜く音が大きく聞こえてくる。次の次が竹内の隠れているロッカーが撃ち抜かれる番だ。

竹内「(嫌だ・・・!死ぬのは嫌だ・・・・!嫌だ・・・!嫌だ・・・・!!)」

竹内は、震えながらもロッカーに隠されていたナイフをその手に握り締めていた。

スナイプ「残るは二つか・・・・。さて・・・,そろそろ決まりだな・・・。くくく・・・。」

スナイプはにやりと笑うと、ゆっくりと矢をつがえて竹内のいるロッカーのすぐ隣に狙いをつけた。

竹内「(俺が死んだら・・・・花桜梨さんにも、皆にも二度と逢えなくなるのか・・・。嫌だ・・・・そんなのは・・・絶対に・・・・。)

ズガァァン!!!!

ついに竹内の潜んでいるロッカーのすぐ右隣が撃ち抜かれる!!それとほぼ同時に・・・・!!

バン!!

左端のロッカーの戸が開かれて,その中から両手にしっかりとナイフを持った竹内が飛び出した!!

竹内「うわああぁぁっ!!!

自分に迫り来る死の恐怖と精神的圧迫感、そして極度の緊張状態によって、半ば狂乱状態となった竹内は、絶叫しながら矢を撃ったばかりで隙だらけの『スナイプ』に向かってナイフを構えて突撃する!!

スナイプ「くっ!?こ、こいつ!!」

花桜梨「・・・・っ!」

涼「どうしたんだ?八重さん。」

花桜梨は急に妙な悪寒を覚え、思わず立ち止まった。虫の知らせというやつだろうか・・・?

花桜梨たちはハンターの一人、『ウェポン』から逃れる為に身を寄せた部屋から、そのまま通路を通って移動中であった。

花桜梨「今,何か寒気がしたの・・・。もしかして、竹内君の身に何かあったんじゃ・・・・!さっき電話に出なかったのは敵に襲われていたからなんじゃ・・・!どうしよう・・・・!!」

涼「八重さん,落ち着いて!この施設はかなり広いんだ。そんな簡単にハンターと遭遇する訳無いよ。」

花桜梨「でも・・・,私たちだってついさっきハンターの一人に見つかりそうになったじゃない!」

涼「・・・確かにそうだけど,もしも仮にそうだとして、今の俺たちに何が出来る?今ここで騒いでも何も状況は変わらないんだ!」

花桜梨「・・・・・!」

涼の言葉に花桜梨は言葉を失う。確かに、仮に竹内がハンターに襲われていたとしても自分には現状では何も出来ないのだ。

涼「それに、今は人の心配をするよりも,自分のことを第一に考えないといけない。さっきの奴がまたいつ襲って来るか分からないんだし・・・。冷たい様だけど,そうしないとここから生き残れないと思う・・・。」

花桜梨「・・・・・。」

美帆「元気を出して下さい・・・。竹内さんを信じていれば、きっと生きて再開出来ますよ・・・。」

美帆が花桜梨を気遣って励ました。

花桜梨「(竹内君・・・・。きっとまた逢えるよね・・・。)

それぞれの思惑をよそに、時間だけはゆっくりと過ぎて行くのであった・・・。

<第伍話・完>  

                              (第六話に続く・・・)

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