ときメモ2バトルロワイヤル風SS第参話「B計画の始まり」
竹内たち10人が大広間に集まってから5分ほどして,再びあの不気味な声が天井の方から聞こえてきた。
???「メンバーが全員集まった様なので、これから君たちにこれからの事を説明しよう。」
純「これからの事だと・・・・?俺たちに何をさせようって言うんだ・・・。」
智「さあな。だが、まともな事ではなさそうな事だけは確かじゃないのか?」
純の疑問に、智が眉間にしわを寄せながら答える。
???「今の社会に存在する少年少女は、もう腐りきっている。凶悪な犯罪を平気で起こし、反省などまるでしようとしない。このままでは近い未来,社会は君たち位の年齢の少年たちによって確実に崩壊するだろう。それを防ぐにはどうしたらいいのか?答えは決まっている。」
竹内「どうするつもりなんだ・・・?」
???「実に簡単な事だ。間引けば良いのだよ。将来悪性因子となるだろうと予想される者のみを選別、処理していけばいいのだ。」
一同「!?」
???「しかし、どうやって将来の悪性因子を見抜けば良いのかは現状では不明なのだ。そこで、我々はある計画を立てた。」
涼「計画だと・・・?」
???「人間は極限状態になると、個々の本性、性格を剥き出しにする性質がある。それを利用して,間引きの対象を選別させてもらう。」
花桜梨「狂ってる・・・。人間の考える事じゃない・・・・!」
花桜梨はぐっと握りこぶしに力を込める。
???「だが、極限状態と言うのはそう簡単に陥るものではない・・・。そこで、一つ我々が君達を極限状態にする手助けをしてあげよう。」
水無月「ふざけた事を言わないで!!何で私たちがそんな状態にならなければいけないのよ!!」
琴子が怒りをあらわにして天井に向かって怒鳴りつける・・・が、天井からの声は彼女の声を無視するかのように説明を続ける。
???「今から君たちには殺し合いをしてもらう。殺し合いと言っても、君たちがお互い殺しあう訳ではない。それは君たちだって嫌だろう?」
匠「一体何なんだよ・・・・・。」
???「だが、仲間同士で殺し合いは出来ないが,君たちの命を脅かすものが襲い掛かってきたらどうするかな?」
光「!?・・・・私たちの命を・・・脅かすもの・・・!?」
???「降りかかる火の粉は払いのけるのが当然だ。勿論君たちは死に物狂いで抵抗するだろう。その様子をじっくりと見させて貰いたいのだ。命をかけたB計画・・・そう、バトルロワイヤル・プロジェクトとして!!!」
一同「バトルロワイヤル・・・プロジェクト・・・!?」
???「さあ、今この瞬間から君たちの命を狙う者、『Br(バトルロワイヤル)ハンター』が5人ほど君たちのいる施設に侵入する。
彼らは君たちをハンティングする為に、血眼になって探してくるぞ。彼らに殺される前に,君たちが彼らを殺してハンター達の持っているカードキーを奪ってくれたまえ。カードキーは五つ全て揃わないと意味が無いようになっている。
カードキーを全て集めた時点で生き残った者がこの戦いの勝利者だ!何処に隠れても構わない。どんな手を使おうが構わない!
ありとあらゆる手段をもってハンターに挑んで欲しい。
もちろん、丸腰のまま戦えとは言わない。君たちのいる施設にはさまざまな武器があちらこちらに置かれている。
これより施設内の全てのドアのカギは開かれる。君たちのいる大広間に来る途中で入れなかったドアも開くようになっているだろう。そこから施設の外に出ることも出来る。無論、施設から出てハンター達と戦っても構わない。
ただし!この計画からは誰一人として外れる事は出来ないことだけは今のうちに教えておこう。ふふふ・・・,それでは健闘を祈る。」
それだけ説明すると、天井の声はそれっきり何も言ってこなくなってしまった。
美幸「い・・,嫌だよ〜・・・,美幸・・・殺し合いなんて嫌だよ〜!」
智「美幸,それは俺たちだって同じさ。だが、仮にあの声の言っている事が本当だとしたら、いつまでもここにいるのは危険だと思う。」
竹内「そうだな。だが、この人数でまとまって行動するのはかえって危険じゃないか?」
純「ああ。俺もそう思う。いくつかにメンバーを分けた方が正解だな。」
匠「けど、どうやって割り振りするんだ?」
美帆「それは私のお任せください。」
今まで黙っていた美帆が急に一同の前に進み出た。
美幸「みほぴょん!何かいいアイデンティティーがあるの〜?」
竹内「(・・・・アイデンティティ―って・・・。ずいぶん難しい言葉を使った言い間違いだね・・。)」
竹内は思わず突っ込みを入れようかと思ったが辞めておいた。
美帆「ええ、私が今から最善の結果が出るように皆さんを振り分けさせていただきます。」
美帆はそう言って,トランプを取り出して、9枚のカードを選び出すとそれらを良くシャッフルした。
竹内「これをどうするの?」
美帆「今から私が祈りを込めて一枚ずつカードを配ります。自分の手元のカードが絵柄以外の方々で一組,そして、絵柄を引いた方々で一組、そして、ジョーカーを引いた方は私と一緒と言う事になります。」
花桜梨「白雪さん、エースの場合はどうなるの?」
美帆「エースの場合は、ジョーカーを引いた方と必ずご一緒に行動する事をお勧めします。つまり、私と一緒のメンバーと言う事になります。もし、そうなさらなかった場合は・・・・。」
花桜梨「場合は・・・・?」
美帆「あまり言いたくないのですが・・・命に関わる危険な目に遭うと占いに出ています・・・。」
花桜梨「!!?」
美帆「ちなみに、このトランプには絵札を3枚、エースを一枚、そしてジョーカーを一枚、残りの4枚は通常のカードと言う様になっています。最終的には三つに分かれる事になりますわ。」
涼「よし、じゃあ早速分けてもらおうか。」
美帆は必ず四つの組み合わせになるようなトランプの選び方をしていた。つまり、誰がどのカードを引いても必ず上手く四つに分割される仕組みになっているのだ。
花桜梨「私は・・・・エースだわ。」
美帆「それでは,八重さんと私はご一緒と言う事になりますね。」
匠「僕は・・・・ジャックの絵札だね。」
純「俺は,普通の数字のカードだな。」
美幸「美幸は〜・・・,あっ、ほかりんと同じ数字のカードだ〜!」
美帆「それでは、穂刈さんと寿さんは同じ組と言う事になりますね。」
美幸「そっか〜!ふつつかなものですが〜、どうか〜よろしくね〜。」
純「うっ!・・・・・・・・。」
純は美幸のとんでもなく場違いな発言に、耳の先まで真っ赤になってしまった。
匠「あはは!相変わらず、純な奴〜。」
匠がそんな純を笑ってからかう。
智「チッ・・・・!」
智は純と美幸の二人が一緒のチームになった事が気に入らず,心の中で舌打ちした。
光「私は、クイーンの絵札だわ。」
匠「じゃあ、僕と一緒だね。光ちゃん、よろしくね!」
光「うん、こちらこそよろしくね。」
水無月「私は・・・あら、私も絵札ね。」
竹内「と・・言う事は,光、水無月さん、匠のチームが完成した訳か・・・。」
涼「俺は・・・通常の数字のカードだな。『スペードの7』だ。」
純「じゃあ、俺たちと一緒だな。」
智「俺は・・・・(ん?待てよ・・・・。今までに配られたカードはエース,絵札全て、数字のカード3枚・・・となると、俺と竹内のどちらかがジョーカーと言う訳か・・・。どうか、俺にジョーカーが来ていませんように!!)」
竹内「おい、智、どうしたんだよ?顔色悪いぞ?」
智「い、いや、何でもない。・・・・よし、見るぞ・・・!」
智は恐る恐る自分のカードを見てみた・・・・。智のカードは・・・・。
智「・・・・!?や、やったー!!数字のカードだ!!」
智の祈りが天に通じたのか,彼のカードは純たちと同じ数字のカードだった。
竹内「???・・・一体,何をそんなに喜んでいるんだ?」
智「へっ!?ああ、何でもないんだ。ははは・・・。」
美幸「さとぽんも美幸達と一緒だね〜!よろしくね〜!」
竹内「と・・・すると、残された俺のカードは・・・・。」
竹内はそう呟きながら自分のカードを表にめくってみる。やはり、絵柄はジョーカーだった。
それを見た美帆の表情が一瞬で険しくなる。
匠「よし、これでチーム編成は決まったみたいだね。」
竹内「ああ、皆で協力して何とかしてここを脱出しよう。携帯も何故か使えるみたいだし、必要な時は連絡しようぜ。」
竹内の言葉に皆は頷くとそれぞれに行動しようとした。
だが、それを美帆が急に引き止めた。
美帆「待って下さい!!実は・・・先ほどは言いにくい事でしたので、私,皆さんにウソをついてしまいました・・・。」
純「嘘?」
美帆「先ほど数字のカードを引いた方の中に『スペードの7』を引いた方がいらしたと思います。その方は、私とご一緒に行動しなくてはいけないのです。」
涼「スペードの7を引いたのは、俺だが・・・。」
匠「じゃあ、竹内、涼,八重さん、美帆ちゃんの四人と言う事になるの?」
美帆「いいえ、違うんです・・・。ジョーカーを引いた方は・・・・。」
光「ジョーカーを引いたのは・・・・確か、竹内君だったよね?」
竹内「ああ、ジョーカーは俺に当たったけど・・。」
匠「まさか、竹内だけは一人で行動しろって事だったりして・・・。」
竹内「おいおい、匠〜、脅かすなよ。」
匠が半分冗談のつもりで竹内をからかう。しかし、美帆は・・・・。
美帆「その通りです・・・。」
一同「ええっ!!?」
竹内「!?」
花桜梨「そ、そんな!それは一体どういう事なの?」
美帆「このまま隠し通したままにしようかとも思ったのですが・・・,やはり皆さんの安全のことを考えると・・・。」
竹内「・・・・白雪さん。俺は構わないから,教えてくれないか。」
竹内の真剣な表情に、美帆は少し迷ってから、意を決したかのように口を開きだした。
美帆「ジョーカーを引いた方は、その方が単独で行動しないといけないと出ています。特に,エースを引いた方と行動を共にすると、『スペードの7』のカードを持つ者と必ず衝突する事になります。更に,ジョーカーのカード持つ者が他のカードを持つメンバーと行動すると,そのチームの方々に非常に危険な事が起きます。」
光「そんな・・・・,じゃあ竹内君はこんな危ないところを独りきりで移動しなきゃいけないって事なの!?」
美帆「はい・・・。」
竹内「・・・・・・・・・・。」
竹内は下を向いたまま黙り込んでしまった。しかし、やがて・・・・。
竹内「わかった・・・。俺は独りで行動する。涼、匠,純、智、花桜梨さんや光、寿さん達を頼む・・・・。」
光「竹内君!!そんなこと気にしないでいいよ!私たちと一緒に行こうよ!」
光は竹内を引き止めようと訴えかける。
花桜梨「そうよ!こんな所を独りきりで動くなんて自殺行為よ!!」
花桜梨も珍しく感情を表して,竹内を必死に引き止めた。
だが、竹内は・・・。
竹内「いや、本当に俺は平気だよ。白雪さんだって好きでこういう割り振りをした訳じゃないんだ。それに、白雪さんも最初に言ったじゃないか。最善の結果になるようにって。だから、俺は信じてみるよ。この割り振りを・・・,自分の運命を・・・!」
花桜梨も光も、竹内の決意が固いことを見て取ると、それ以上何も言えず黙り込んでしまった。
竹内「さてと・・・!そろそろ行かないと、ハンターとやらが来るかもしれない。まずは俺から行くよ。」
純「お、おい、竹内!」
竹内「じゃあ、また後でな!」
竹内は、そう言い残すと一気に扉の一つを開けて大広間を後にしてしまった。
花桜梨「竹内君!」
花桜梨がはっとした様に竹内の後を追いかけようとしたが,竹内の出て行った扉はまったく開かない。
どうやら,大広間からは開けられなくなってしまっているようだ。
花桜梨「そんな・・・・。竹内君・・・。」
花桜梨は、こんな割り振りの原因になった美帆を一瞬恨んだ。しかし、ここで内輪もめを起こしたら、誰一人として無事にここを脱出出来るはずがない。
(皆が協力していかなくてはいけない・・・!)
そう思うことで、花桜梨は必死に心を落ち着けた。
涼「八重さん・・・冷たい様だけど、これは竹内自身も決めた事なんだ・・。俺たちも行こう・・・。」
涼が花桜梨に諭すようにして、ここを出るように促す。
智「そうだな・・・。今は何としても全員が生き残る事だけを考えなきゃな・・・・。竹内だって、それは判っている筈さ。あいつを信じようぜ・・・。きっと生きて再開するってな。」
智の言葉に,皆はやがてチームごとに動き始めた。
花桜梨「(竹内君・・・・お願い、無事でいて・・・。)」
匠「じゃあ、何かあったらすぐに連絡するからな。」
純「ああ、分かった。」
涼「よし、それじゃあな。」
こうして、四組に別れた竹内たち一同はそれぞれの道を進み始めた。
<第参話・完>