ときメモ2バトルロワイヤル風SS第弐話「日常との別れ」
放課後・・・
竹内「さてと・・・,今日も何事もなく終わったなぁ・・・。花桜梨さんを誘ってどこかに行こうかな・・・。」
竹内は花桜梨を見つけて早速声をかける。
竹内「花桜梨さん、今帰り?」
花桜梨「うん。竹内君は?」
竹内「俺も今から帰るところだよ。良かったら一緒に帰ろうよ。」
花桜梨「ええ、そうしましょう。」
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二人は共に学校から帰路についた・・・が!!
突然二人の前に黒い大型車が止まると,中から6人のこれまた黒い上下のスーツとサングラスをした、やたら体格のいい男達が出てきた。
二人は一瞬状況が飲み込めずに立ちすくんでしまう。
男A「竹内秀彰と八重花桜梨だな?」
竹内「は、はあ・・・。そうですけど・・・。」
男B「すまないが我々と一緒に来てもらおうか。」
そう言うと,男たちは竹内と花桜梨の脇に立って、有無を言わせない感じで二人の両肩を押さえ付けてきた。
竹内「なっ、何をするんだ!!」
男C「むっ!こいつ!大人しくするんだ!!」
竹内は即座に身の危険を察して、自分の両肩を掴んでいる男たちの腕を振り払おうとして激しく抵抗した。
竹内「花桜梨さんから手を離せ!!」
男D「!?」
竹内は花桜梨を捕らえている男の一人に頭から突進した。男は油断していたせいか、後ろに倒れこむ!
男D「ぐはっ!!こ・・このガキ!!」
花桜梨「竹内君!!」
竹内は花桜梨を助けるべく、もう一人の男にも飛びかかろうとした・・・が。
バシュッ!!
竹内「ぐっ!?」
竹内は突然背中に痛みを感じて振り向いた。そこには、まだ銃口から煙が出ているサイレンサー付きの拳銃を持った男の姿があった。
花桜梨「きゃあああぁっ!!」
花桜梨の悲鳴と同時に竹内は膝から崩れ落ちる。徐々に意識が薄れていくのが分かる。
花桜梨「竹内君!竹内君!!」
男A「その女も静かにさせろ。」
男たちのリーダーと思われる一番体格のいい男が仲間の一人に命令する。
と、同時に花桜梨の脇にいた男が花桜梨の鼻と口に麻酔薬を染み込ませた布をあてる。
花桜梨「うっ・・・・。」
花桜梨はすぐに意識を失い気絶してしまう。
竹内は薄れゆく意識の中で花桜梨が男たちによって車に運び込まれていく様子を見ていることしか出来なかった。
竹内「(クソッ・・・何も・・・出来ないなんて・・・・ちくしょう・・・・!!ちくしょう・・・・・!!!ち・・・く・・・・しょ・・・・う・・・・。)」
やがて、竹内も意識を完全に失ってしまった。
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どれくらいの時間が過ぎたのだろうか・・・。竹内は意識を取り戻すと、ゆっくりと起き上がった。今まで自分はベッドの上に寝かされていたようである。
竹内「うう・・・、ここは・・・・?・・・そうだ!花桜梨さんは・・・!?」
慌てて回りを見回すと,自分のベッドから少し離れた所にもう一つベッドがあり、その上には花桜梨が寝かされていた。
竹内「花桜梨さん!!・・・ぐっ!?」
竹内はベッドから降りると、すぐに花桜梨の元に駆け出そうとしたが、激しいめまいと頭痛によりその場に倒れこんでしまった。
竹内「確か俺は男の一人に撃たれて・・・あれは麻酔銃だったのか・・・・。くそっ、まだ頭がふらふらする・・・・。」
竹内は頭痛とめまいが収まるのを待って、ゆっくりと立ち上がった。
竹内「一体ここは何処なんだ・・・?どこかの施設みたいだけど・・・。」
その時,花桜梨も目を覚ましたらしく僅かに声を出した。
花桜梨「ううん・・・・。」
竹内「花桜梨さん!?」
花桜梨「・・・・あっ!竹内君!?良かった!!生きてたのね!!」
竹内「はは・・・何とかね・・・。麻酔銃で済んで良かったよ・・・。まだちょっと頭がふらつくけどね・・・。それよりも、花桜梨さんの方こそ怪我はない?」
花桜梨「うん、私は大丈夫。・・・それより・・・ここは何処なの?」
竹内「分からない・・・。俺たちはあの男たちに拉致されてここまで連れてこられたみたいだね・・・。」
花桜梨「どうして、私たちが・・・・。」
竹内「・・・・とりあえず、このままここに居てもしょうがないし、出口を探してみようよ。」
花桜梨「うん・・・・。そうだね・・・。」
竹内は不安そうな花桜梨を励ますように微笑むと,出口を探し始めた。
花桜梨も竹内と同じように出口を探す。しかし、出口らしきものは一向に見つからない。
竹内「駄目だ・・・。何処にも出口みたいなものは見つからない・・・・。」
花桜梨「こっちも駄目・・・。見つからないわ・・・。」
二人が途方に暮れていると,突然天井の方から声が聞こえてきた。
???「ようこそ。健全なる少年少女よ。突然で驚くだろうが君たちは選ばれたのだよ。この施設でこれから行われる計画のメンバーとして。」
竹内「計画・・・?メンバー・・・?一体、何の事なんだ・・・?」
天井から聞こえる声は、低くて不気味な感じのする声だった。花桜梨は嫌な顔をして天井を見上げている。
花桜梨「何だか聞いてて悪寒がする声ね・・・・。」
???「今から君たちをその部屋から出してあげよう。君たちがいる部屋のベッドの下を見てみたまえ。」
竹内「ベッドの下・・・・?・・・・あっ!スイッチがあるぞ!」
???「スイッチがあるはずだ。そのスイッチを押せば,集合場所となる大広間へと通じる道が開ける。まずは、大広間に集まりたまえ。集合次第、再び連絡しよう。」
そこまで言うと,天井の声はぷっつりと途絶えてしまった。
花桜梨「集合場所って事は・・・・,私達の他にもまだ誰か居るって事なのかしら・・・。」
竹内「らしいね。とにかく、大広間ってとこまで行ってみよう。」
竹内はそう言ってスイッチを押してみた。すると・・・。
ガコン!
何かが外れる音がして,いきなり壁の一箇所が開いて道が現れた。
竹内「こんな所に通路があったのか・・・・。」
花桜梨「行ってみましょう・・・。」
花桜梨は無意識のうちに竹内の右手をしっかりと掴んでいた。恐らく,不安でたまらないのを必死でこらえているのだろう。
竹内もそれを察して、花桜梨の手をしっかりと握り返した。
竹内「よし・・・!行こうか・・・。」
竹内は花桜梨をかばうようにして先陣を切って歩き出した。通路は薄暗く、何だか黴臭い臭いがしている。
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しばらく二人は歩き続け・・・・。
花桜梨「何処まで続いているのかな・・・。」
竹内「う〜ん・・・・。・・・あっ!奥の方に僅かに明かりが見える!多分あそこが大広間だよ!」
花桜梨「えっ!?あっ、本当だ!」
竹内「よし、花桜梨さん、行こう!!」
花桜梨「うん!」
二人は急ぐ気持ちを抑えつつ、明かりに向かって突き進んだ。そして・・・・。
竹内「・・・・ここが大広間・・・。」
花桜梨「誰も来ていないみたいだね・・・。」
二人が長い通路を抜けると、灯りが幾つも燈った大広間にたどり着いた。部屋の中央には長いテーブルと椅子があり、天井にはシャンデリアが吊るされている。きらびやかな天井とは対照的に、部屋の感じは無機質な印象を受けた。
更に,部屋の外周には扉が四つあり、部屋の中からは開けられない仕組みになっていた。
竹内「何だか、バランスの取れていない部屋だなぁ・・・。天井にはシャンデリアで、豪華かと思えば部屋の中は殺風景だし・・・。」
竹内は素直に部屋の感想を呟く。花桜梨もそれに同調する。
花桜梨「本当ね・・・。明るくて最初の部屋よりはいいけど、何か不気味な感じがする・・・・。」
竹内「とりあえず、俺たち以外に誰か来るかもしれないから、ここでしばらく待ってみようよ。」
花桜梨「そうね・・・。」
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竹内達が大広間に来てから30分ほどして、大広間にある扉のうち一つがゆっくりと開かれた。
竹内・花桜梨「!?」
そして、その扉の向こうから現れたのは・・・・。
匠「やっと着いたみたいだね。疲れたなぁ・・・。って、竹内に八重さんじゃないか!二人もここに連れて来られていたんだ。」
白雪「竹内さんに、八重さんでしたか・・・。私たち以外にもやっぱり人がいらしていたんですね。私の占い通りです。」
何と,現れたのは坂城匠と白雪美帆であった。
竹内「匠!それに、白雪さんじゃないか!」
花桜梨「こんな時に不謹慎かもしれないけど、同じ学校の人で良かった・・・。どんな人が来るのか正直不安だったから・・・。」
匠「気にしないでいいよ。僕たちも同感だからね。・・・・まったく、いきなり変な奴らに拉致されたと思ったらいきなりこんな所に連れて来られるんだからなぁ・・・・。」
竹内「匠,お前も黒服の男たちに連れてこられたのか?」
匠「ああ、美帆ちゃんと一緒に下校してたらいきなりね。」
白雪「申し訳ありません。私がしっかりと帰りの道が安全かどうかを占っていれば・・・。」
花桜梨「まだ私たちの他にもだれか連れて来られているかもしれないわね・・・。」
竹内「そうだね・・・。まだこの部屋には開けられていない扉が三つ残っているし・・・。」
匠「少なくとも,あと三人以上は来るって事かもね。」
白雪「私の占いにもそう出ています。しかも、ここに来る方々は全員同じひびきの高校の生徒の様ですよ。」
竹内「ええっ!?ま、まさかとは思うけど、白雪さんの占いってよく当たるからなぁ・・・・。」
竹内が驚いた様子で美帆の方を見る。
・・・・その時、急に花桜梨が何か物音を聞きつけて口に指を当てる。
花桜梨「・・・・しっ!誰か来るわ・・・・。」
匠「・・・・本当だ。足音が近づいてくる。そこの扉の向こうから聞こえてくるよ・・・。」
竹内たちは匠の指差した扉をじっと見守った。足音はどんどん近づいてくる・・・。そして、扉が開かれた・・・・。
大広間に入ってきたのは穂刈純一郎だった。後ろには水無月琴子も一緒だ。
竹内「純!!水無月さん!!」
純「竹内!匠!それに白雪さんに八重さんまで・・・!みんなもここに来ていたのか・・・・。」
水無月「あなた達も、黒服の男たちに?」
花桜梨「ええ、下校中にいきなり・・・。」
匠「と、言う事は純や水無月さんも・・・・か。」
純「ああ・・・,一人で下校していたら水無月さんが連れ去られそうになっている所に出くわしてな。助けに入ったんだが,後ろから麻酔銃か何かで撃たれて気絶しちまったんだ・・・。」
竹内「そうか・・・。純も俺と同じ様に麻酔銃で・・・・。」
白雪「残る扉はあと二つ・・・。私の占いでは、あと四人の方がいらっしゃるみたいですね・・・・。」
匠「あと四人か・・・・。一体誰が来るん・・・。」
匠がその言葉を言い終わらないうちに、二つの扉が同時に開いた。
思わず、竹内たち一同に緊張が走る。
美幸「はにゃ〜。やっと着いたよ〜・・・。ごめんね〜、サトぽん。美幸のせいで一本道の通路で迷いそうになっちゃって・・・。」
小倉「気にするなよ、美幸。俺も不注意だったんだし・・・・って、ええっ!?」
美幸「あ〜!みんなもここに来てたんだ〜!」
二つの扉のうち、右側から現れたのは、寿美幸と同じクラスの小倉智だった。
竹内「ゆっきー!・・・・いや、寿さん!!それに智も一緒か。」
純「(智・・・・寿さんも一緒か・・・。)」
純は小倉智の姿を見て、一瞬で表情を曇らせた。なぜなら、純と智は同じ剣道部に所属しており、普段からお互いをライバル視している間柄なのだ。仲もあまり良いとは言えない。更に,智と一緒に寿美幸が来た事も純の感情を逆撫でした。
純は密かに美幸に対して好意を抱いていたのだ。
そして、最期の扉から出てきたのは、陽ノ下光と、秋口涼だった。
竹内「!?(涼!?それに光も一緒か・・・。)」
涼「・・・・・!(竹内・・・?八重さんも居たのか・・・。)」
今度は竹内が涼の姿を見た途端、表情が強張る。それは涼も同じであった。
涼とはクラスが違うが、同じバレー部に所属しており、純にとっての智と同じ様な間柄であった。
涼と竹内、それに純と智は、純粋にバレーや剣道の腕を競っているだけのライバルではなく、それぞれ同じ一人の女性を好きになってしまった者同士としてのライバルと言う訳だ。
つまり純と智、涼と竹内はお互いに恋敵という訳で,美幸はやや智の方に気持ちが傾いており、花桜梨に至っては、竹内の方に心を開き、既に恋人同士と言っても過言ではないくらいの仲だ。
涼は、一年の頃から竹内の様に花桜梨に積極的に話しかけてはいたものの、あまりにも強引過ぎた為か、花桜梨の心を捉えることは出来なかった。勿論,涼にも自分が強引過ぎた事は分かっていた。
だが、どうしても自分の気持ちが抑えきれなかった事と、なかなか花桜梨が自分に心を開いてくれない事の歯がゆさ、そして状況を変えられない自分自身への苛立ちによって、手段が多少強引になってしまったのだ。
傍目には、竹内と花桜梨の間に割り込む余地など無い様に見えており、涼自身にもそれは充分過ぎるほど判っていたのだが・・・、理屈じゃない何かが涼の中にあった・・・。無論、涼は花桜梨への想いを未だに捨て切れないでいた・・・。想いを捨て切れていないのは、純も同じであったが,涼の花桜梨に対する想いは純のそれを凌いでいた。
そんな関係の彼らが仲の良いはずもなく・・・・。
光「竹内君!!琴子!!みんなもここにいたんだね!!」
琴子「光!あなたまで・・・。」
涼「よう・・・,竹内。」
竹内「ああ、こうやって部活の時以外で、面と向かい合って話すのは久しぶりだな・・・・涼・・・。」
涼「そうだな・・・。八重さんとは上手くやっているのか・・・?」
涼のあまりにも突っ込んだ質問に、一同はぎょっとする。だが、竹内はそんな事を気にも留めない様子でただ一言、こう答えた。
竹内「ああ、勿論だ。」
涼「そうか・・・。」
涼はそれ以上何も言わずに,黙って竹内に背を向けると一同の輪から外れて広間の椅子に座り込んだ。
皆、唖然とした様子で二人のやり取りを見ている。
竹内「・・・・・・。」
竹内は涼の様子を黙って見ていたが、やがて自分の表情がきつくなっている事に気付いて慌てて表情を緩めた。
光「(竹内君・・・・。)」
竹内のあまりにも不自然な様子を見て、光が竹内に話しかけようとした・・・が、それよりも早く花桜梨が竹内に心配そうに近寄っていった。
花桜梨「竹内君・・・。」
竹内「あ・・・,花桜梨さん・・・。ごめん・・・、何か恥ずかしいところを見せちゃって・・・。」
花桜梨「ううん、いいの・・・。それよりも、秋口君の事だけど・・・私のせいだよね・・・。私が彼の事を避け続けていたから・・・,それが結果的に彼を傷つける事になっていたんだと思う・・・。ごめんなさい・・・,あなたや秋口君を苦しめる事になってしまって・・・・。」
花桜梨は涼に聞こえないように気を使いながら、竹内に謝罪した。
竹内「いや、花桜梨さんが誤る事じゃないよ。あいつとは一度俺がしっかりと決着をつけないと・・・。」
竹内はそう言って,花桜梨に向かって笑いかけた。花桜梨もその笑顔を見て,ようやく影を落としていた表情に笑みを浮かべた。
花桜梨「・・・・・・・。」
竹内「・・・・・・・。」
二人は黙って見つめ合っていたが、周りで皆が自分たちの様子に注目しているのに気が付くと、花桜梨は赤面しながら慌てて目線を竹内の顔から外した。
竹内も赤くなりながら下を向いて頭をかく。
そんな二人の様子を皆は苦笑しながら見ていたが,光と涼だけは別だった。
涼は椅子に座ったまま、我関せずと言った感じで、下を向いて考え事をしているようだった。
光はと言うと、二人の様子を見ながら苦笑しつつも、花桜梨に対する嫉妬と憧れの入り混じった感情を抱いていた。
そして、竹内たちの見えない所から大広間を隠しカメラで監視している者の姿があった。
???「(さて・・・、今回のメンバーが集まったみたいだな・・・・。当初の予定であった20名よりも,人数が半分の10名になってしまったが、仕方ない・・・。まあ、半分も集まれば計画は問題なく遂行できるだろう・・・。)」
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それぞれの思惑をよそに、いよいよ竹内たちの身に恐るべき計画が発動しようとしていた・・・。
白雪「・・・・・私たちの未来を占うと先ほどから同じカードばかり引き当ててしまいますね・・。しかも、そのカードが死神のカードだなんて・・・。妖精さん・・・,どうか私たちを守って下さいね・・・。」
<第弐話・完>