○第3章
休み時間というのはどの学校でも変わらない。
授業中に溜め込んだ何かを発散すべく、行動する。
それはこの高校も例外ではなかった。
「おい祐樹。頼まれていたもの持ってきたぞ」
休み時間になってすぐ友人の相川が声を掛けてきた。手にはCDを持っている。
「ああ、悪いな」
祐樹と呼ばれた少年は礼を言いながら、差し出してきたCDを受け取った。
物珍しそうに、また期待に満ちた目でCDを見つめる。
「それにしてもこのCDよく手に入ったな。発売停止になっただろ、これ」
祐樹は隣りに腰を下ろした相川に聞いた。
「まあな、兄貴が初回限定品を買ったからな」
自分の手柄のように言ってくる彼に苦笑する。
「でもどうして発売停止になったんだ」
「なんでも聴いた人の中に、意識不明になる人が出たとかって噂だぜ…アルファ波が異常なほど出たのが発見されたとか…詳しくは知らないけどさ」
相川はさほど興味がなさそうに答える。
「それよりさぁ……」
彼は話題の種が尽きた事がないのが自慢だ、と言っていたのを思い出す。
祐樹本人も雑学の多さには少し自信があるが、相川は祐樹とは比べ物にならない程だ。
いささか閉口するときもあるが、それはそれである。
授業中とは一変し活気付いた教室内は、そのまま二人の会話を飲み込んでいった。
帰宅した祐樹はさっそく借りたCDを聴いた。
期待を裏切らない曲、良い意味で裏切ってくれる曲など、様々な形で聴いている人を引っ張り込んで行く不思議な魅力を持つ。
全体的に幻想的な曲が印象に残った。聴き終えた後の満足感と喪失感にしばらく身をゆだ委ねる。
2回目は歌詞を見ながらMDに録音することにした。
部屋に置かれた真新しいソファに学業に疲れた身体を埋め、音が作り出す不思議な世界に心を漂わせる。
学校が終わってすぐに帰宅したせいか、まだ夕暮れにもならない時間だ。
夕飯まではまだ時間がある。
そこまで考えたとき、突然意識が不明瞭になった。
「…ん?」
自分で眠気を理解する暇もなく、彼は眠りの中に落ちていった…。
第4章へ続く
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