・まえがきとか
こんにちわ。最近は特にバイトが忙しくなっている要です。
今回はSSでなく、完全オリジナル作品にしてみました。
時代背景は現代。舞台はとある田舎町。物語の主役は2人の高校生という設定です。
この物語は数日前まで書く予定はまったくありませんでした。
しかし僕の周りで最近、とてもショックな出来事が起こりました。
それがきっかけです。詳しくは後書きを読めば判ると思います。
けれども『人の死』が関わってくるので、そういう重いのが嫌だという人は後書きを読まない方がいいと思います。
2003.5.12 翼を広げて(DEEN)を聴きながら
○第1章
不自然なほど白い室内の中で3人の人間が静かに向かい合っている。
「病状は…悪くなっていく一方です」
視線を外しながら、沈んだ声で白衣の男は言った。神経質そうにも見える細い顎がためらいがちに開かれている。
「娘は…娘は助からないのでしょうか!?」
弾かれたようにヒステリックな声を上げる中年の女性。その顔は痛痛しいほどにやつれている。
彼女の後ろで同年代くらいの男性が複雑な表情で立っている。閉ざされた口は簡単には開きそうもない。
それらを見て、白衣の男は何かを決心したように口を開いた。
「手術をしましょう。このまま何もしないで手遅れになるよりは、可能性のある方に賭けた方がいい」
なにかを思案するように、短い沈黙が訪れる。
そして、中年の夫婦は口を開いた…。
ガチャ…
なんの前触れもなく、病室のドアが開く音がした。
手元の紙の上で動いているペンが止まる。
それとほぼ同時にベッドのまわりを覆うカーテンが開かれる。
彼女は手元の便せんから視線を上げた。
「杉浦さん、体調はどう?」
そこにはよく知った顔がある。
「あッ、おはようございます」
いつも通りの挨拶。こんな何気ない事があるからこそ、朝が来たという実感がわく。
「おはよう。はい、体温計。ところで…何してるの?」
看護婦はいつもと違う事をしている彼女が気になったのだろうか、手もとを覗き込んでくる。
「あ…後でお願いしようと思ったんですけど、これを出しておいてくれませんか?お母さんにはちょっと頼めなくて…」
彼女は少し頬を赤らめながら言った。
「ふふ、わかったわ。これは最重要極秘任務ね」
看護婦は彼女に優しく微笑み、そして快く承諾してくれた。
「それよりお相手は誰なのかしら?」
訊かれるとわかっていても、彼女の心拍数は上がってしまう。そして顔が熱くなる。
「あら、これじゃ正しい体温が計れないわね」
看護婦は笑いをこらえながら困ったような顔をする。
「もう……」
彼女は赤くなった顔で笑った。
彼に会ったのは2年前にさかのぼる。
だから彼はおそらく覚えてはいないだろう。
それでもいいのだ、彼女の中では大切な思い出なのだから…。
第2章へ続く
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