始まり
それはある日の事だった……。
いつものように、栞が俺の家に遊びに来ていた。
「じゃあ俺、これからお茶を入れてくるな」
「分かりました」
そうして、お茶を煎れに台所へ降りた。
そして帰ってみると、何と栞がパソコンをいじっていた。
「わあ!! し……栞!! なにやってんだ!!」
うろたえるのも無理は無い。なぜならば、最近俺はそのパソコンゲームに、はまっていてだなあ……。その……つまり……
「祐一さん? 何ですか? このネコ耳でメイド服の女の子は?」
そう、俺は最近斉藤に借りた「D.C.」なるゲームにはまっていて、その登場人物の「鷺澤頼子」さんにぞっこんなわけである。
しかもCGをかなり集め、しかもディスクトップまで、彼女のCGを入れていたのである。
まさかパソコンのスイッチをつけて、いじられるとは……。
しかしコレはさすがにまずいよなあ……。
ええい!! 仕方ない、もうこうなりゃ自棄で答えてやる。
「あ……あ……これか「D.C」の鷺澤頼子さんだ。なかなかかわいいだろ?」
っと同意を求めたが……。
「ゆ……祐一さんに、こんな趣味があったなんて……。」
やっぱりそう来たか。
「祐一さん……浮気者です!!」
「な……何言ってんだ!! もちろん、お前のことが好きだぞ!! それにこれは架空のもので、実在しないんだぞ!!」
「なら何で、私の写真が入ってなくて、こんなネコ耳のメイド服女なんかの……」
「栞お前には、ネコ耳メイド服という、男のロマンが分からないのか?」
「そ……そんなもの、分かりたくもありませんっ。祐一さんのばかぁぁぁぁぁぁっつ!! ふぇーーーーーーーん!!」
そう言うと栞は身を翻して物凄い勢いで泣きながら、部屋から飛び出して行った。
「おーい、待ってくれよ栞〜」
といって追いかけたが、栞はもうすでに、俺の目の届かない所まで走っていっていた。
「はぁーーーついてないよなあ、今日は」
と俺は頭を抱えて、嘆くばかりだった。
数日後
あの事件以来、栞は口も聞いてくれない。中庭に行ってもいないし。
「さすがに、あの画像を200点も集めたのはまずかったよな。よし今度栞会ったら、ちゃんと誠心誠意をもって謝って、「俺はお前しかいないんだ」という旨を伝えよう」
等と呟きながら、家の扉を開けると……。
「お帰りなさいませ。ご主人様……」
っと三つ指を突いてる、ネコ耳のメイド服の女の子が一人出迎えていた……。
はあ?
もう一回見直してみると、その子は上目遣いで……。
「お帰りなさいませ。いかがなされましたか?ご主人様?」
………………………………。
うをおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!! 感情が高ぶるぜぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?!?
し……しかも、よく見ると、栞じゃないかぁぁぁぁっ!?!?!?
でもメイド服で、三つ指ついて出迎えるって、変じゃないかぁ…ってそうじゃなくてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?!?
「わあああああ!? なななななぁぁあぁぁぁっあぁっ!?!?」
っと言葉にもならないような、驚きを見せてると……
「どうしたんですか? 祐一さん」
そういって、栞は立ち上がって聞いてくる。
よく見ると、耳は赤み掛かった、栗色の大きなネコ耳で、頭と首筋にレースがかっていて、青っぽいエプロンで、腰の所にの黄色いリボンかあ……ん?
こ……これって「D.C」の、鷺澤頼子さんの服装、そのまんまじゃないかあああっ!?!?!?!?
「ど……どうしたんだ。そ……それは!?」
栞の服装を、シゲシゲ見ながら訊ねると……
「だって、祐一さんの趣味ですよね?」
とさらりと答えた。
「そーかなるほど、まあたしかに……じゃなくてぇっ!! 何でそんあ格好してるんだ!?」
「私も悔しいですよ。あんな女に、祐一さんのPCの画像で埋め尽くされるなんて……。これからは私のメイド服を見て、私の写真で、パソコンの画像を一杯に、飾らしてくださいね」
っと両手で俺の右腕の服を掴んで、にっこりと言った。
さ……さすが、俺の彼女といおうか……なんと言おうか……。
「まあ落ち着いて考えてくれ」
っと言いつくろうとしたが……
「いいえ、私ここ数日で、祐一さんに満足してもらえるように、必死で勉強したんですよ。だって……ゲームの女の子に、祐一さんを取られたくないですから」
「じゃあ何か? もしかして口を聞かなかったり、中庭に来てなかったのって……?」
「はいそうですよ。色々なゲームや漫画や小説を読んで、祐一さんに満足していただけるように、勉強していたんですよ」
なるほどな、道理で普通に出迎えずに「メイド服で三つ指ついて出迎える」という、ゲームでたまにある様な事をしてるわけだな。
てか、どんなゲームや漫画を参考にしたんだろうか?
聞こうと思ったが、怖いのでやめておこう。
「それに……」
「それに?」
「祐一さんに、反省してもらおうと」
ああなるほどな。さすがにパソコンを、頼子さんの画像で埋め尽くしたのはやばっかったよな。
「そうだよな……。悪かったな栞、これからはお前のことだけを見るよ」
そう頭を下げて謝った。
「はい祐一さん。ですから今日から祐一さんの、ご奉仕をさせてください」
は?
俺は呆気に取られた。
「いやまて、それはさすがにヤバイ!!」
「どうしてですか、祐一さん? これからは、私の事だけを見るんでしょ? だから私もこうやって、祐一さんの趣味に合わせようと……」
とネコ耳をピョコピョコさせながら、答えた。
おおお可愛すぎるぞ!! ネコ耳ぃぃぃぃっ!!!
かわいいぞお〜、だきしめたいぞおおお……ってキャラが違うっ!! と……とにかく説得せねば!!
「そ……そうだ、名雪ももうすぐ帰ってくるから、そんな格好はやめてくれ」
「今日は名雪さんは、お姉ちゃんのうちに、泊まるんですよ〜」
「何ぃ!?」
「ああそうそう、これからは祐一さんを、ご主人様と呼ばせてもらいますね」
おお!! な…なんて、素敵な響きなんだああぁぁぁっ!?!? ……て……断じて違うぞぉぉぉマジだぞぉぉ
「なあ、栞……そのご主人様って言うの、やめてくれないか……? いくらなんでも……それは」
そういうと栞は、俺の両手を握って目に涙を貯め、すがるように上目遣いで……
「そ……そんな。ご……ご主人様。わ……私、解雇なんですか……?」
と不安げな表情で答えた。
ああ、すっかりメイドさんに、なりきってしまった御様子。
「あ……いや、そうじゃなくてだなあ……」
困惑してるとさらに栞が
「お……お願いです。ご主人様、どうか……私を捨てないでください。ご主人様に捨てられたら行く所が無いんです。もう私ご主人様なしでは、生きていけないんです」
と涙を流しながら、抱きついてさらに俺に迫ってきた。
む……胸がぁぁぁぁぁっ!!
うをおぉぉぉ!? かわいすぎるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?!?!?!?!?!?
こ……このままでは、俺の精神が持たないぃっ!!
どうやら栞は、メイドさんの勉強を、かなりしたようだ……。
なんて、従順で可愛い彼女を持ったんだあ!! 俺は幸せだああ!! 栞を抱きてえぇぇ……
じゃ無くて……説得しないと!! さすがにコレはまずいぞ!!
「あ……そ……。そ……そうだ!!! 秋子さんが、こんな事を許すはずが無い!!」
俺は、何とかわずかに残った理性を振り絞り、秋子さんのいる台所へ行って、この行為をやめさせようとしたが
「了承」
いつものように即答された……。
な……なんで、了承するんですかぁぁぁぁぁ!?
「あ……秋子さん、何考えてるんですか!?」
「良いじゃないですか。栞ちゃんが大好きな、祐一さんの為に頑張ってるんですよ。もちろん応援しますよ」
全くこの人はあ……。
と……とにかく……
「いや大有りです!! 第一メイド服やネコ耳なんて、どこで購入したというんですか!? それだけでも問題ありです」
と反論すると……。
「あら私が作りましたけど」
即答された。
ま……まあこの人ならやりかねないよな……。
「何でそんなもの作るんですか!!」
「あら? 栞ちゃんが頼んだからよ。栞ちゃんって、本当に祐一さん思いですね。私もそんな子を見ていると、応援したくなるんです」
「……………………」
さらに秋子さんは続ける
「だから腕によりをかけて、ネコ耳メイド服を作ったんですよ。祐一さん栞ちゃんを、大事にしてあげてくださいね。応援してますよ。それとですね、ネコ耳は楽しい仕掛けを施してあるので、楽しんでくださいね」
といつものように、ニコニコしながら答えた。
「と……とにかくですね」
俺は何とかして、秋子さんを思い留まらせようとしたが、
「ところで祐一さん」
「はい」
「祐一さんは、大変Hなゲームが、お好きなようですね」
「え……えぇええ!?」
「祐一さん。もし栞ちゃんの、ご主人様になってくれなかったら、祐一さんの趣味が、町内に広がる事になるかもしれませんが、それでもよろしいですか?」
とにっこりと言った。
な……何考えてんだぁぁ!! このひとはぁぁぁぁぁっ!?!?!?!?
しかし秋子さんに逆らう事は出来ない。もし逆らおうものならば、町内どころか日本国中に俺の趣味が伝わるだろう。そういった事態だけは、なんとしても避けたい。
「わ……わかりました。なります!! なります!! なります!! どうか、栞のご主人様にさせてください」
そう俺があわてて答えると……
「ふふよかったわね栞ちゃん」
後から来た、栞に秋子さんは答えた。
「はい!!これからよろしくお願いしますね。ねっ!!ご・しゅ・じ・ん・さ・ま(はぁと)」
そういって、ペコリと頭を下げた。
こうして俺は、秋子さんの脅迫(?)に屈して、ネコ耳メイド服の栞のご主人様となってしまった。
実にうれ……いやいや、これからどうなるんだろうか?全く先が思いやられるよ。
―続きますよ―
その1へ続く
あとがき
・そういうわけで「ネコ耳しおりんシリーズ」スタートです。
管理人は某ゲームの某キャラに物凄くはまりまして(分かってるって)、今までろくでもないような短編を数作しか作ってないのに、いきなり長編に挑むという無謀な事をしようとしています。
ところで最初の「パソコンいじって……」という話は実話です。彼女というのは、例えゲームキャラであっても嫉妬しますので、皆さんも自宅に彼女が来たときは十分に注意してくださいね。(尤もこの手のゲームをやってるだけで、別れることもあります)
それでは出来ればご希望のシチュエーションやネタを提供して下されると、管理人は喜びますのでぜひともよろしくお願いいたします。
今後の展開は「栞」と「名雪」にでも暴走してもらいましょうかね。ネコ耳を最大限に利用させていただきます。
ではまたの機会に会いましょう!!
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