11日目
<にょ〜月にょ〜日>
日付が変わってから下では大きく騒ぎが起こっていた。
僕はもう寝ようと思ったのに、みんなが「まだ寝るな」って言って寝かせてくれなかったし、なゆきさんに関しては「えくすぷれっそ」とかいうコーヒーを12杯まで飲んで起きていた。
時計が12を指して、今日に入るとみんなが「あけましておめでとうございます」と言ってドンチャン騒ぎ。
・・・・・・・・・一体何をやってるのだろうか、さっぱりわからない。
ジョニーに会ったら聞いてみよう。彼ならきっと知ってるはずだ。
みんなに無理矢理起こされ続けて、結局寝ることになったのは真夜中の3時だった。
疲れきった僕はまことさんの部屋の中にある僕のすみかで丸くなって、目を閉じた。
ガタガタガタ・・・・・・・・チーン、ボフン!
変な爆発音が聞こえて、僕は目を覚ました。
時計は3時30分。たったの30分しか眠っていない。
爆発音の後でも物音は止まる事は無かった。
そして物音の中に「あぅ〜!」とか「うぐぅ〜!」とかいう人間の悲鳴も混じっていた。
「あぅ〜!」の主はまことさんだというのは知ってるのだけれど、「うぐぅ〜!」の主は誰なのか分からない。
もとい、こんな真夜中に爆発物を作るとはまことさんもマッドな人間になったもんだ・・・・・・
けれど作る時間帯が間違ってる。
昼間なら全く問題ないけれど、さすがに今は夜だ。これは注意しないといけないな。
僕が階段を下りていくと、キッチンの入り口で人間の影が見えた。
ゆういちとなゆきさんだ。
二人は入り口のドアをほんの少しだけ開けて、その中の様子を見ていた。
きっとキッチンの奥ではまことさんたちがシュワちゃんが舌を巻いて逃げるほどの強烈な爆弾を作っているんだろう・・・・
興味半分、恐怖半分で僕もドアの隙間から様子をうかがった。
中は明るく、別にどこぞやの研究室のように怪しい色や紫の煙でつつまれているようなことはなかった。
中にはまことさんともう一人の女の子がいた。
はて・・・あの女の子、どっかで見覚えがあるような・・・?
あ、思い出した。あの女の子はたいやき奪取作戦のときにレジのところにオヤジと一緒にいた人だ。
「なんであゆちゃんが家にいるのかなぁ?」
部外者がいることに、なゆきさんもビックリした様子だった。
「きっと排気口から侵入したんだろ」
「排気口・・・・・」
「そうだ。納得できたか?」
「うん。つまりあゆちゃんはボンドガールってことだよね?」
「甘いな名雪。あいつは女版ソリッド・スネークだ。」
なゆきさんはゆういちのデタラメに近い発言で違う方向で理解ができたらしい。
二人の会話に耳を傾けていると、キッチンのオーブンから音が聞こえた。
『チーン・・・・・・・ブホン!』
ベルの音の後、爆発音。
あゆっていう人が慌てふためいて叫んだ。
「うぐぅー!また夜食用のおもちが爆発しちゃったよー!」
そう言いながら黒い煙をモワモワと発するオーブンから取り出したのは、なんだか黒いかたまり。
どうやら爆発の原因はおもちを焼いていたことにあるらしい。
「じゃあもう夜食はあきらめようよ、いまからみんなをギャフンと言わせるようなおせち料理つくるんだから!」
「ほほぅ、あいつらおせちを作ろうとしてるのか・・・・早く阻止しなければ・・・」
「祐一だめだよ!がんばろうとしてるのをやめさせるの・・・」
「わかるだろ?ロクに料理もできない二人がおせちに挑戦だぞ。ヘタすればキッチンが爆発炎上する」
「き、きっと大丈夫だから!ここは見守ってあげようよ」
「う〜む・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・念のため祐一は消火器持っててね」
そう言ってなゆきさんは玄関にあった消火器をゆういちに渡した。
どうやら二人とも思いっきり心配のようだ。
確かに二人のあの腕じゃこの先が思いやられるかも・・・・
そしてまことさんとあゆさんの二人によるおせち料理作りが始まった。
・・・・・・・・・のだが、ここから先はあまりにも暴力的でグロテスクなシーンが含まれていて、僕には描写不可能だからゆういちとなゆきさんの言った言葉と効果音だけで書いておく。
「お、まずは魚をさばくのか」
「あんな大きい魚・・・・真琴ちゃんだけでさばけるのかな?」
「・・・つーかあいつなんで包丁を剣のように構えてるんだ?」
「あ、包丁を振りかざしたよ」
「あのまま一刺しか!?」
グサッ!
「ぐお・・・・なんて壮絶な一突きなんだ・・・・!」
「なんか真琴ちゃんふんばってるよ・・・・包丁が抜けないのかな・・・・」
「お、あゆにバトンタッチか」
「あゆちゃんどうやって包丁を魚からひっこぬくんだろう・・?」
グリュグリュグリュ・・・・
「うおおおっ、エグってるエグってる!」
「・・・・・・もう刺身とはいえないものになってるかも・・・」
「お、でも包丁はぬけたぞ」
「今度はどうやってさばくのかな・・・」
「おおっ、もう一個包丁を取り出して二刀流か!・・・・・・・って二刀流かよ!」
ダン!ダン!ダン!ダン!
「・・・・・・・骨ごと輪切りにしてる・・・・・・」
「魚の血がまわりに飛び散ってるぞ」
「・・・・・あゆちゃん・・・なんだか顔が般若(はんにゃ)みたいに引きつってるよ・・・・」
「・・・・・・・・地獄絵図だ・・・・・・」
「あ、真琴ちゃんがお鍋の湯を沸かしてるよ。お雑煮作るのかなぁ?」
「あいつは味噌汁風呂つくった経験があるからな。結構期待ができそうだな」
「・・・・・・・・ねぇ、今真琴ちゃんがお鍋に入れようとしてるあの赤い液体って・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・秋子さんお手製の謎ヂャム・・・・・・だよな?」
「・・・・・・・・・冗談、だよね・・・・・?」
ドボドボドボドボ・・・・・・
「ゲゲェェ!!!大量に入れやがった!」
「・・・・・香里のところでおせち食べよ・・・・・」
ゴボゴボゴボゴボゴボ・・・・・
「なんか・・・・お鍋がピナツボ火山みたいに噴火してるよ・・・・?」
「ヂャムの相乗効果か?」
「わわわ・・・・どんどん紫色に変色してるよ!」
「あのヂャムの成分は一体何なんだ!」
ズザザザザザザ・・・・・
「フツー塩を1袋丸ごと入れるか?」
「祐一、あれ砂糖だよ・・・・」
「・・・・こりゃ見てるだけでもう『ギャフン』だな・・・・」
「うん・・・・・・・・・・」
・・・・・・そんなこんなで時間が過ぎていき、ついに朝になった。
ゆういちは「北川と初詣行ってくる」と言い、なゆきさんは「香里と約束があるから」と言って朝早くから家を出てしまった。
「まぁ・・・二人とも用事があるんだったらしかたないね」
「うぐぅ・・・でも食べてもらいたかったな・・・」
そう言って二人は残念がっていた。
そして残った僕と、あきこさんの前にまことさんとあゆさん手作りおせち料理がズラリと並んでいた。
紫色のお雑煮、酢酸スメルを放つかずのこ、生魚の輪切り、塩の利いた黒豆、黒こげのおもち・・・・などなど、目や鼻やさしくない。
「あら、二人で作ってくれたの?」
そう言ってあきこさんが目の前に座っている二人にたずねた。
「うんっ、ボクたちが夜中に一生懸命作ったんだよ!」
と、あゆさんが自身ありげに答える。
「・・・・・・・・味見、したの?」
「ううん、量が減ると困るから味見はしていないの」
まことさんが答える。
「そう・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう言ってあきこさんは窓の方を見る。
外は雪が積もったところが朝日の光を反射して、なんとも美しい光景だった。
だというのに、僕とあきこさんはこの家で、魂を削ってまでこの危険な果実たちを食べなければならないとは・・・・・・・・・・・・・・・神様、助けてください、ホント。
「でも、私はまだおなかが減ってないから、ちょっと散歩してきますね」
・・・・・・・・・・あ、一家の主が逃げた。
そして残ったのは僕とまことさんとあゆさんの3人になった。
「うぐぅ・・・・・・みんな用事が重なってるみたい・・・・・・・・」
「う〜ん・・・・・それなら、私たちだけで食べない?」
「えっ?」
「私たちで作った料理なんだから、自分が作った料理はきっとおいしいと思うよ。みんなには悪いけど・・・・このまま残しておくのも悪いと思うし」
・・・そうは言うけれど、実際食べさせた方がみんなに悪いと思う。
「うん。祐一くんに『ボクのつくったおせち、おいしかったよ〜』って自慢できるしね!」
結局、あゆさんもまことさんの案に賛同した。
「「それじゃ、いただきま〜す!」」
威勢のいい声と共に、二人は紫のお雑煮の中にあるおもちをはしでつまんで、そのまま口のなかにほおばった。
何度かむぐむぐと噛んで・・・・・飲み込む。
互いに向き合って、2人ともクスッと笑った。
・・・・そして顔がみるみる青くなっていく・・・・・・
・・・・・・・ぱたっ。
二人同時に後ろに力なく倒れていった。泡を吹きながら。
「あは、あはは・・・・・あのツボは・・・・いいものだぁ〜・・・・・・」
「空が・・・・・・空が・・・・・・堕ちてくるよぅ〜・・・・・・」
倒れたまま二人は意味不明な言葉を唱えながら、全く動こうとしない。
・・・・結局、僕も怖くなって家から逃げ出し、家の中にはたった二人の廃人同然の女の子だけが残ってしまった。
続く
12日目ヘ続く
あとがき
・あけましておめでとうございました(過去形
今回の作品ですが・・・・・
いや〜・・・・・・・
・・・・・・
微妙にオチてませんね(どーん
さすがに急ごしらえで作った作品ではあまり面白くないようですな・・・(製作時間:最短記録の2時間)
「今頃正月ネタかよ!」ってつっこまないで下さい(涙
さて、次回は名雪と祐一を中心に書いていきたいと思います。
激甘激ラブで萌え萌えな(?)お話を書いていこうと思いますが、私はこういうのやったことがないので、あまり期待しないほうがいいかと思います(汗
それでは失礼いたします
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