3日目




<にゃ〜月んな〜日> 午前0時00分



 ついに作戦の時間が始まろうとしている。
 2時間30分前、僕はあらかじめなゆきさんの部屋に侵入して、身を隠していた。
 その10分後にはなゆきさんがやってきて、そのまま眠りに付いてしまった。

 全く問題がない、これならジョニーの野望も無事に果たせそうだ。

 北の大地といっても今は夏。なゆきさんの部屋の窓は網戸だった。
 網戸をカラカラと開けると、家の外にはジョニーがいた。
 僕たちはなゆきさんが起きないように、小さな声で会話をした。

「(よおぴろ公、作戦はうまくいってるじゃねーか)」

 そう言って彼は部屋の中に侵入した。

「(うん、簡単だった。君こそ何持ってるの?)」

 僕はジョニーが背中に何か黒いものを背負っているのが目に付いた。

「(これか?これはな、俺様手作りの覆面マスクだ。お前がこれをかぶってくれ)」
「(ええっ、なんで僕が!?)」
「(バカヤロウ、もし俺様が告白に失敗してなゆきたんから警察とか呼ばれてみろ。顔とか覚えられたらおしまいじゃねーか)」

 近頃の警察は猫ですら指名手配するのか、これは参ったもんだな・・・・。

「(そこでだ、俺は完全に顔を覚えられてしまうが、お前だけでも顔を隠しておけば警察から顔を覚えられずにすむだろ?)」

 そうか、ジョニーは僕をもしものことがおこっても、無事であるようにと気を遣ってくれたのか。

「(・・・・・・ありがとう、ジョニー!)」
「(おいおい、オスに抱きつかれても・・・・・・・・・・・・ってぬをっ??!)」


 僕がジョニーに抱きついた時、僕たちはバランスを崩してそのまま目覚まし時計がたくさんある机の上に落下した。
 さらにその振動で目覚まし時計がボトボトと机から落下して、床に叩きつけられた。
 その衝撃でほとんどの目覚まし時計は誤作動を起こし、やかましい音を立て始める。

『ジリリリリリリリ!』

『ドガガガガガガ!』

『ちゅどどどどどどど!』

『ゲコゲコゲコゲコ』

『ぴこぴこぴこぴこ』

『朝だよ〜、朝だよ〜』

『起きろ!起きないと撃つぞ!』

 ベルの音やら、道路工事のドリルみたいな音やら、爆発音やら、カエルの音やら、聞いたことの無い生物の音やら、なゆきさんの肉声やら、脅迫じみたボイスやら・・・

「(う、うわっ!やべぇ)」
「(は、早く消さないと!)」

 そう言って僕たちはバラまかれた目覚ましのスイッチを全て消していった。
 音が収まったところで僕たちはまず天井にある蛍光灯の明かりをつけた。
 そしてなゆきさんの顔へと近づく。

「(くはぁぁ・・・、なゆきたんの寝顔は天使みてぇだ・・・)」
「(あんな音立てても寝てるなんて・・・あきこさんから麻酔でも打たれてるのかな?)」

 悶絶するジョニーと疑問が止まらない僕。
 そう思っていた時、眠っていたなゆきさんに動きがあった。

「んぅ〜、ゆういち〜〜」

 そう言っていきなりなゆきさんは両手で僕に抱きついてきた。
 というよりも、僕をあんなヘンタイ君といっしょにしないでほしい。
 でも抱きしめられていると、なんだか甘ったるいような香りがして、あたまがぼーっとするような・・・

「(あーっ!コノヤロウ・・・・・なに1匹でウラヤマシイことしてんだ!!)」

 となりで肩を震わせながら怒りをあらわにするジョニー。

「(し、しかたないよ・・・なゆきさんの方からいきなり抱きついて来たんだから・・・)」

 僕は情けない言い訳を開始する。抱きしめられた状態のまま。
 しかしなゆきさんの抱きしめる力はとにかく強かった。背中がとても痛い。
 このままでは若いのに腰痛持ちになってしまう。背中にサロンパスなんて張られたくない。

「(ジョニー、とにかく助けてよ・・・・このままじゃ僕・・・)」
「(なんでぇ?このままじゃ悶絶死しちまうってか?)」
「(違うよ、背骨がイカれる・・・・)」
「(ったくしゃーねぇな・・・。その代わり俺も楽しませてもらうからな)」

 楽しませてもらう?どういうことだろう?
 そう言うとなゆきさんの首の部分にかかっている薄い布団の中をジョニーは潜っていった。
 そしてなにやら彼女の胸の部分で彼はゴソゴソと動いている。

「んんっ・・・・ゆういち・・・・そこはダメ・・・・・」
と、なゆきさん。

 どうやらジョニーは教育上不適切なナニやらをしているみたいだ。
 なゆきさんの胸あたりの布団からから「フヘヘヘヘ・・・・・」という変な声が聞こえたのが何よりの証拠だ。
 そのおかげで腕の力が弱まり、僕はなゆきさんの腕から逃げ出す事ができた。

 が、それも運の尽きだった。

 なんとなく僕がなゆきさんの顔を見てみると、彼女はゆっくりとまぶたを開けてしまったのだ。
 どうやらジョニーがやっていることが目を覚ますきっかけになったらしい。
 これを見て僕はこの間あったゆういちの時を思い出して、顔が真っ青になった。
 なゆきさんもじっと僕の方を見る。
 ちなみに僕はジョニーからもらった黒いマスクをつけたままだ。

「・・・・・・・・・へ、変態さんだよー!!私の胸を揉まないでよ!出て行ってよー!!」

 そういって彼女は起き上がってそこら辺にあるモノを投げ始めた。
 シャーペン、目覚まし、枕、消しゴム、ノート、猫の写真集、百花屋のおしながき・・・・などなど、いろんなのが超高速で宙を舞った。

「おおっと、こいつはやりすぎたな!ぴろ公、ズラかるぞっ」
「ああっ、待ってよジョニー!」
「ほらほら、油断してるとなゆきたんの投げるものに・・・・・・・・・・・・・・・・・・あべしっ!」

 大きなカエルのぬいぐるみが窓際にいるジョニーにヒット。その反動で彼は窓の外に吹っ飛ばされた。

「マ、ママぁーーーーーーーー!」

 弱々しい声で叫びながら、2階の外に放り出されたジョニーはそのまま落下していく・・・・。
 これはマズい。
 飛んでくるモノを避けまくりながら、僕も窓からなゆきさんの部屋を後にした。

 そのまま家の庭へと降りると、うつ伏せになって動かないジョニーがいた。
 ちなみにジョニーが落ちてきた衝撃で、周りの地面が少しめり込んでいる。

つんつん。

 つついても動かない。


・・・・・・・ただの屍のようだ・・・・・・・

(ああジョニー、君みたいなツワモノがこんなことで命を絶ってしまうなんて・・・・)

 そう思いながら僕は適当なところで穴を掘る。

(君のベラボーな生き様は僕が一生語り継いであげるから・・・)

 動かないジョニーをその穴まで引きずっていく。

(・・・・・・・・・・・・アーメン)




「・・・・・・・・・・・・・・・おい、ぴろ公」
「・・・・・・・・・・・え?」
「俺を勝手に殺さんでくれんか・・・?」
「あれ?ジョニー生きてたの?」
「てやんでぇ、あたりめーだ!なゆきたんのハートをゲットできずに死ねんわ!」

 とにかくジョニーは無事だった。
 しかし彼は体のカタさだけは一流だなぁ。

 結局僕は事が収まるまでジョニーのすみかに泊まらせてもらった。




 夜があけて朝になった。
 僕はすぐに家へと帰る。
 少し開いた窓から中へ入ると、リビングには3人の人がいた。
 なゆきさんとあきこさんとゆういちだ。

「本当に怖かったよ・・・・」

 と、なゆきさん。顔が真っ赤にはれて、余計なぐらいに涙を流している。

「あらあら、名雪も大変ね・・・・」

 と、あきこさん。いつものポーズをしているけれど、困った顔をしている。

「ったく、どこのどいつだんだ?」

 と、エロオヤジ。両腕を組んでいかにも怒っていそうな感じだ。

・・・・・・やっぱり謝ろう。あの時あったことを全部話そう。僕はそこまで悪人になれないし・・・・

「そいつが自ら名乗りを上げてきたら、鉄くぎバットでボコボコにしてやらんとな」
「ダメですよ祐一さん。先に私のジャムを試食してもらってからにしてください」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・前言撤回。やっぱり話すのやーめた。

 続く     

                                   4日目ヘ続く



あとがき


・はい、今回もいろいろと私なりに技をいれてみました。
 ところどころで「ツッコミOK」みたいなところがたくさんありますw
 この作品、なんだかんだで長くなってしまいましたな。理解しづらいところがあったならば、ごめんなさいです・・・・・・。

 PS:ちなみにこの作品に出てきた「ジョニー」という猫の名の由来は、ズバリ私の飼っている犬の名前です(爆


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