0日目




 僕の名前はピロシキ。あだ名はぴろ。
 近頃こうやってご主人であるまことさんから目を盗んで日記を書いているんだな。
『猫の記憶というものはとても曖昧で、すぐに忘れる』と猫仲間のジョニーが言っていたんだ。
 日記をつけてさえいれば、記憶がなくなった後でもいい思い出として残るしね。


 今日は初日ということで、朝の事をちょっと捉えながら僕の周りの人を評価してみる。  寝起きは最悪だった。なんでかっていうと、まことさんが俺の上に覆いかぶさったまま眠っていたら、「あぅ〜、肉まん〜」とか寝言を言いながらじたばたと動くんだ。
 まったくもって迷惑極まりないってもんだよ。
 こっちが「まことさん、イタイって!」と言ってみるものの、全く効果が無かった。
・・・・というか猫語は理解できないのかな?


 まあとにかくベッドから降りて階段を下りてみる。
 キッチンにつくと、いつもごはんを作ってくれるあきこさんがいた。
 僕はその人に「おはよう」といってみた。そしたらあきこさんも「ぴろちゃん、おはようございます」って言ってくれたんだ。
 どうやらこの人には猫語を理解する事ができるという便利な能力があるらしい。つくづく安心だ。


 ソファーでくつろいでいたら、まことさんが「ゆういち」って呼んでいる人がやってきた。
 ここにいる人にとって、ゆういちは信頼できる人みたいだが、どうも僕にとっては危険な匂いがする。
 だってこの人、何度もまことさんが入浴している風呂場にいきなり入ってくるエロオヤジなんだよ。
 それにこの間の冬なんか、まことさんと一緒に湯船にいた僕を湯船に沈めて殺そうとした人なんだ・・・。
 この殺猫エロオヤジは僕の敵だ。


 ドアから「うにゅ〜・・・」とか言ってやってきたのは日頃まことさんや僕の敵、ゆういちが「なゆき」って呼んでいる女の子だ。
 なゆきさんはとっても僕に親切。僕がいるとすぐに「ねこ〜」とか言って僕のほうに近づいてきて、僕を手でゆっくりとなでてくれる。
 僕はその手がとても気持ちよくて、すりすりと体をこするのが大好きだ。
 でもこの人、何で鼻を赤くしながら涙を流しているんだろう?そんなに切ない態度は取らないでほしいなぁ・・・・・・。


 結局を言えば僕の周りにいる人はみんな個性が爆発しているっていうわけだ。
 こんな人たちがこの町にはゴロゴロしている、と仲間のジョニーが言っていたのだからなおさらすごい。この町は楽しい事がいっぱいで、全く僕は飽きないんだ。


 今回は紹介みたいなつまらない事書いちゃったけど、また面白い事があったときにはこの日記に書き込みたいと思う。

<にゃー月うにゅう日>









(ぴろの寝床の裏に隠されていたものを名雪が発見。秋子の力により直訳に成功)



 続く     

                                   1日目ヘ続く



あとがき


・な、なんじゃあこりゃあああぁぁ!
 ち、ちなみにこの小説のコンセプトは「日記からSSを構成する」というもので、ほんの少し実験的なものだったのですが・・・・初作からこのデキとは・・・・一体・・・・○| ̄|_
 まあ今回はぴろの観点から水瀬家を紹介しただけなので、「0日目」という事にしてみました(苦しい言い訳)
 長く書いていくと思いますので、このノリについていける人はヨロシクお願いします・・・(滝汗



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