第3話



 考えごとをしている内に眠りこけてしまったらしい。
 枕もとの目覚まし時計は、まだ一時を指していた。
 いくらなんでも早すぎる。
 もう一度寝なおそうと思ったが、強いノドの渇きを覚え、一階に向かう。
 冷蔵庫から昼間買っておいたコーラを取り出し、プルトップを開ける。
 あおるように飲み込むと、口の中に炭酸の快感が広がる。
 シュワシュワと炭酸の泡が舌の上で踊る。
 その泡が弾け飛ぶように、さっきの夢がよみがえる。
 俺が子供の頃の夢だった、と思う。
 特定できないのは、行動の決定権が当事者の俺になかったからだ。
 子供の俺に意識だけが入り込み、傍観しているような感覚。
 ものを見ているのも、言葉を発しているのも確かに俺の目と口なのに、その自由はなかった。
 そう、丁度この間、北川が話していたゲームみたいだ。
 あいつ、ついにアノテのゲームに手を出したか…。
 いや、それは良い。
 良くない気もするが、別にどうでもいいことだ。
 ただ、一緒のときには話題にして欲しくないなぁ…。
 ともかく、何かヘンな夢だった。
 自分の記憶を強制的に見せられているような…。
 寝る前に秋子さんに聞いた話のせいだろうか。
 あの夢が俺の記憶とするならば、俺は確かに猫を拾ってきたはずだ。
 それも、生まれて間もない仔猫を。
 そして、あの頃の俺は小学生ぐらいと考えて間違いない。
 なら、あの仔猫は現在もここにいるはずだ。
 それとも、里親が見つかったのか。
 いや、それは名雪がいるから考えがたい。
 となると…。
 どちらにしろ、続きが気になる。
 部屋に戻り、布団をかぶる。
 一度起きてしまうとなかなか寝られないものだが、今はすんなりと寝られそうだ。
 徐々に睡魔が俺のまぶたを下げる。
 続きは見られるのだろうか。
 



 続く

                                       第4話へ続く



                     
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