中編






 学校に到着すると、大多数の女子生徒の目が赤くなっていた。
 彼女達は私と違って、前日に夜更かしをしてチョコレートを作ったのだろうから、その原因は寝不足とみて間違いない。
 廊下を歩いていると、数人の女子生徒が男子生徒にチョコレートを渡している光景がちらほらと見られた。

「そこまでせっかちになる必要はあるんでしょうか…」

 そんなことを呟きながら、私は教室に向かう。
 しかし数分後、私は苦笑する。
 先程あんなことを呟いていたにも関らず、教室に着くまでの間、ずっと相沢さんを探している自分がいたから。

「…私もあまり変わりませんね」

 そんなことを思いながら、私は教室に入った。








 一時限目が終わると同時に、私は早速2年生の教室が並ぶ2階へ向かった。
 そこには、私以外にも数人の1年生がいた。相手は違えども、その目的は私と同じだろう。
 廊下を歩いていると、私は運良く相沢さんを見つけることが出来た。

「あいざ……」

 そこまで言って、すぐに口を塞ぐ。
 相沢さんは、女子生徒にチョコレートを貰っている最中だった。その人は私も知っている人だった。

 水瀬名雪さん。確か陸上部の部長で、相沢さんの従兄弟で、一緒に同居している人。

 その光景を見て私は少し落ち込みそうになったが、すぐに持ち直す。
 従兄弟なのだから他意はない。そう思うことにした。
 いつの間にか前向きになっている自分に少し驚きながら、私は元来た道を引き返す。
 休み時間は短いから。





 しかし、その次の休み時間も相沢さんは女子生徒と一緒にいた。しかも今度は2人。
 相手は先輩2人、しかも結構有名な、倉田先輩と川澄先輩。
 悪いとは分かっていたが、私は隠れて覗き見してしまっていた。
 流石に話している内容までは分からないが、どうやら相沢さんにチョコレートを渡しているようだった。

(……また空振りですね)

 正確には『空振り』ではないのだが、そう思い、私は教室に戻る。
 休み時間はまだあるし、それに昼休みだってあるのだから。



 しかし、そんな私の希望はすべて『空振り』になってしまう。
 3時限目後の休み時間は北川さんと一緒に話しているし、昼休みは中庭で私服の女の子にチョコレートを貰っている。
 5時限目後の休み時間は教室移動があったので、そんな時間がなかった。

 そして、遂に下校の時間になってしまった。


 続く

                                   後編へ続く



                  
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