逮捕しちゃうよっ!!名雪&香里

第四報告書 「化物強盗をぶっ飛ばせ!!」



コツ コツ コツ コツ


「すっかり遅くなっちゃった、ここら辺最近物騒だから嫌なのよねぇ。」と、一人の女性がぼやきながら歩いていた。

ぺた ぺた ぺた ぺた


 その彼女の後ろで奇妙な足音が近づいてくる。

「だ、誰っ!?」
後ろを振り向き、怯えた表情で誰何したその時。

ウギャアアアオオウゥゥゥゥゥ


「きゃああああああああっ。」


 ハエのような顔に長い舌を垂らした化物が彼女に襲いかかった・・・







 所変わって華音署交通課。 

「このように化物の格好をして、夜中に一人歩きの女性を狙って金品を強奪し悪戯をする事件が起きている。」 と、柳也が交通課の面々に説明をしている。

 神妙に説明を聞いている面々の中で一人だけ違った反応をしている者がいた。




「きゃあああっ、嫌、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ。化物はいやぁぁぁぁぁぁぁ。」
「お、お姉ちゃんいくら仲良し姉妹でも私にはそっち方面の趣味はないです〜〜。えう〜、にくたらしいお姉ちゃんのふくよかな胸が私の顔を蹂躙してますぅ〜〜〜〜。」

「栞ちゃん後生だ、俺と変わってくれぇぇぇぇぇぇぇぇ。」
栞にひしと抱きいて泣いて騒いでいたのは香里であった。

 栞も香里にしがみつかれてパニくっていて、その後ろでは北川が羨ましそうに泣きながらトンチンカンな事をほざいてた。


 香里なら化物くらい平気でぶっ飛ばしそうだと思ってたのでかなり意外だ。

「うるっさいわねっ。あたしは理論で説明できない理不尽な存在って苦手なのよ。」

 顔を真っ赤にして涙目で抗議する香里。物凄くらぶりぃである。時々この手の話を作って泣かせたろ。





「ふふふっ、そんな事したら後でどうなるか、分かっててやるんでしょうねぇ?」

 ごめんなさいごめんなさい。できるだけ作りませんから、にこやかにそのとげとげがとっても痛そ〜なナックルちらつかせるのやめてくだせぇ〜。

「だったら最初から言わない事ね。」

   はい、以後気を付けま〜す。

「香里、漫才やってるところすまないが話を続けて良いか?」
柳也が言うと

「あ、すみません柳也さん話を続けてください。」
ちょっとばつが悪そうに赤くなりながら香里は答えた。



「こんな卑劣な強盗を放って置く訳にもいかないんでな、交通課と刑事課合同で捜査を行う。秋子課長の了承も得てるからよろしくな。」


「うん、分かったよ柳也さん。わたし頑張るね」
と元気に返事する名雪と

「う、嘘でしょ?嘘だと言ってよバーニィ?」
とガンダム0080知らないと理解できないボケをかましつつパニくっている香里であった・・・










 その日の夜、事件が頻発している地域を刑事課と交通課の全員が捜査している。

「うう〜こんなの嫌いだって言ってるのに・・・」
と現場でまだぼやいてる香里。

 普段夜歩く事は平気なのだが、今回は化物が出るって事でかなり警戒しているようだ。
 なんせナイトビジョンゴーグルなんか頭に乗せてるのだから。

「ねぇ香里、そんなに怖い〜?」
「どうしてあんたはそんなに平然とできるのよ?」
「う〜ん私はあんまり妖怪とかお化けとかって漫画に出てくるような可愛いのを連想しちゃうんだよね。それにお母さんの特性ジャムの方が目に見えるぶんよっぽど怖いよ〜。」
と、青い顔で答える名雪。

 自分で言っていて怖くなったようだ。さもありなん。

「謎ジャムに関しては同意できるけど、やっぱりあんたの感覚って微妙にずれてると思うわ。」
「ひどいよ〜。それはそうと香里、両腕に付いている箱みたいな物ってな〜に?」
と名雪は香里の両腕を指差して聞く。

「ああ、これ?これはね・・・」

「おい、美坂〜。」

ポンッ



「ひっ!?きゃあああああああああっ。」

ズドドドドドドドドドドドドドドド

パンパンパンパンパンスパパパパパパパパン



「うぎゃああああああっ!?!?!?」


 香里は何者かに肩を叩かれた瞬間、両腕をその方向に突き出すと箱の中からロケット花火が大量に飛び出した。

「こんな風にロケット花火を撃ちして攻撃する3連ガトリング砲なの。これなら構える予備動作もいらないから咄嗟に反応できるしね。あるロボットアニメのビデオ見て思いついたのよ。それとね、このハンドバックも予備弾倉兼発射装置なのよ。」
と、ハンドバックも見せる。どうやら今までのボケ等ははガンダム0080を見ていたからのようだ。

 結構渋いな香里。

「良いじゃない、人の勝手でしょ?」

「香里ぃ〜それは分かったんだけど、今攻撃したの北川君だよ?」
冷や汗たらたらで香里に伝える名雪。一方攻撃された北川はと言うと・・・

「お、俺ってここでもこんな扱いなのか?ごほっ」  バタン



 まるでお笑いコントのように真っ黒けになって滂沱した後、前のめりに倒れた。

 すまん、そのうちいい思いさせてやるから今回は勘弁してくれ。

「その言葉忘れんなよ・・・ぐふっ」
「おいっ北川を安全なところへ運べぇ。」
「北川さん傷は浅いですしっかりして下さい。」
柳也や栞も大慌て。

こうして倒れた北川は名雪や柳也達に運ばれていった・・・

香里は、「あ、あたしが悪いんじゃないわ。そうよねっ?ねっ?」とその場で必死で弁解していた。



 ふと気が付くと香里は独りになっていた。

「え、ちょっと名雪、柳也さん、栞〜?」

「ねぇ返事してよぉ〜。ねぇ?こんな暗いところに独りで放って置かないでよ。」
と、言っても返事は無い。
「えう〜あたしを放って置く人達なんて嫌いです。」
妹の真似をしてみたりするけど、やっぱり状況は変わらず。

 「あ、そうだナイトビジョンゴーグルがあったんだわ。うん、これで明るくなったわ。」
ゴーグルを付けて顔を上げると・・・


シャゲェェェェェェェェ


 例の化物が目の前にいた、しかもゴーグルのせいで化物の姿がはっきり見えて不気味さ倍増。 「きゃあああああ。出たぁぁぁぁぁ。」

 絶叫し、ガトリング砲を撃とうとしたが・・・



パシュッ パーン カラカラカラカラ



一発出ただけで後は空しく空回りしていた。しかも最後の一発も大きく外れ、夜空に炸裂してしまった。

「た、弾切れ?ならこっちで・・・」 


ドスッ


 「くふっ!」

 慌ててハンドバックから撃ち出そうとしたが、それよりも速く強盗は香里の腹を殴って気絶させた。

「うほっ!?上玉だ。さ〜てどう遊ぼうかなぁ〜?」
不気味なマスクを脱いで下卑た笑い方をする強盗。香里の上着をめくろうと手にかける、香里貞操の危機。




「そうはいかないんだよっ!!」
「香里からその手を離してもらおうか?」
名雪と柳也が強盗の前に飛び出した。


「いくら鈍いわたしでもあの一発で香里に何かあったんだって分かるよ。」
「相手が悪過ぎたな化物強盗君。」

「があぁぁぁぁこれからって時に邪魔しやがって。」
慌てて香里を離して逃走する強盗。

「名雪追えっ!!」「おまかせだよ〜。」
柳也が指示し、名雪が追う。



ズドドドドドドドドドドッ



 爆走と呼ぶのにふさわしいスピードであっさり追いついた。

「ば、化物〜〜〜〜!?!?!?」
「あなたなんかに言われたくないよっ。」
名雪はむくれながら強盗の肩をがっしと捕まえ、それから頭上に抱え上げた。

「名雪っ、そのままこっちに思いっきりぶん投げろっ」
名雪の方に向かいながら柳也が叫ぶ。

「おっけ〜柳也さん。え〜〜〜い♪」

ブゥンッ



名雪は勢いをつけてから思いっきりぶん投げた。

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 矢のような勢いで地面と平行に飛んでいく強盗。そして、その目の前には腕を直角に曲げて待ち構える柳也。


「喰らいやがれぇぇぇぇぇぇ。」


ゴキャッ



「あがあ。」


ベチャッ


 柳也の強烈なアックスボンバーが強盗を撃墜した。

「ぐえぇぇっ、ヒイッヒイッ」
しかし、強盗は気を失っておらず這いつくばってなおも逃げようとする。

「逃げんなコラッ。」
襟首を掴もうとすると、怪物の襟首がびよんと伸びた。

「は、離しやがれぇぇぇぇ。」
強盗はじたばたするがしょせん無駄な足掻き。

「なるほど全身ラバー性のボディスーツを改造して作っていたのか。こりゃ面白い。」

 柳也は二、三度繰り返して引っ張り、それからいたずらを思いついた悪ガキような顔でニヤリと笑う。

「化物の格好が好きなら希望どおりにしてやるぜ。」
「もがっ!?」
強盗に化物のマスクを被せ直す。


「名雪こっち来〜い。」
「柳也さんな〜に?」
「ちょっと耳かせ。」
「うにゅっ?」



「・・・でこうやってお仕置きしようと思ってな。」
「うん、それ面白いねっ♪」

 名雪を呼び寄せて耳打ちすると楽しそうにに話し始めた。
 柳也の話を聞いた名雪も面白そうに笑いだした。


「それじゃお仕置きの時間だっ♪」「いっつしょ〜たい〜むだよっ。」



「それじゃあ柳也さんしっかり支えていてね。」「おう。」

「それじゃ行っくよ〜♪」


ギュッ ビヨ〜〜〜〜〜ン

 化物のマスクを思いっきり掴み、思いっきり引っ張って距離を取る。
 マスクは限界まで引っ張られて離した時の破壊力は計り知れない。

「3・2・1・・・ぜろ〜〜♪」
そしてカウントダウンの後ぱっと手を離す。


パ〜〜〜ン




「むがげがごぇ〜〜〜!!」

 マスクの中で強盗は声にならない悲鳴を上げる。

「これで終わったなんて思うなよ。名雪今度は俺の番な。」
「うん、その次はまた代わってね。」
と今度は柳也が引っ張って離れる。

「汚ねぇ手使って女いたぶったんだ、簡単に解放されると思うなよ?」
「しかも香里にまで手を出したんだからね、香里の分まで懲らしめてあげるからね。」



パ〜〜〜ン





「◎×△※〒д☆〜〜〜!!」

と、強盗は昔のお笑いコントでやってたようなお仕置きを10回程繰り返されてからようやく解放された。もっともその時には完全に気絶してしまっていたが。








「香里、香里っ?」
名雪が香里を揺り起こす。

「うっ?あれあたしどうしたの?」
「良かったぁ〜気が付いたよ。大丈夫?」
「ええっ、ありがと名雪。ところで化物は?」
「安心して良いよ。わたしと柳也さんで捕まえたからね。ねっ、柳也さん。」
「おっ、香里気が付いたか?」
と柳也が名雪の後ろから顔を出す。

 その時、柳也は気絶した犯人を背負っていたので香里の目の前に化物の顔が突き出される。香里の顔がみるみる青くなったかと思うと・・・



「きいぃやあああああああああっ!!」

 夜空をつんざくような大絶叫を上げ、ハンドバックから直接ロケット花火をぶっ放した。





ひゅ〜んひゅ〜んひゅ〜んひゅ〜んひゅ〜んひゅ〜ん


パパパパパンスパパンスパパンスパンスパンパーン


「わ〜凄いよ〜。」
「うむっ壮観だな。」
「嫌〜嫌〜いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」





こうして化物強盗事件は無数のロケット花火と香里の悲鳴に彩られて幕を閉じたのである・・・




「やっぱり化物なんて大っ嫌いよぉぉ〜。」

 次回に続くよ〜

                                   第五報告書へ続く



                     
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