三寒四温のうちに、校庭の花のつぼみもふくらみ、桜の開花が待たれる頃となりました。

 この、よき日に、卒業生、在校生、保護者、来賓の皆様、教職員一同相集う中、本校の栄えある、第二十六回卒業証書授与式を挙行できますことは、このうえない喜びでございます。

 本日、保護者の皆様には、本校入学以来お子様の心身の健やかな成長を願い続けた日々を思われ、ここに、たくましく成長されたお子様の晴れ姿を目にされて、喜びもひとしおと存じます。心から、お祝い申し上げます。

 また、この間、本校教育の充実と発展のために寄せられましたご理解とご協力に対しまして、厚く御礼申し上げます。

 ご来賓のみなさま、本日は公私何かとお忙しい中、本校の第二十六回卒業証書授与式にご臨席を賜り、誠にありがとうございます。高いところからではございますが、心より御礼申し上げます。また、三年間地域で子どもたちを見守り、育んでいただきましたことに、深く敬意を表したいと思います。

 さて、卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

今、一人ひとりに卒業証書を手渡しました。この証書は三年間の課程を終えたという証明であると同時に、皆さんが本校の歴史に輝かしい1ページを書き加えたことの証でもあります。

これまで皆さんが作り上げてきたよき伝統は、在校生が、しっかりと引き継いでいってくれるはずです。

そして、今日皆さんが胸を張って巣立ってくれることをうれしく思います。

ここで卒業生の皆さんに二つのことをお話しします。

 

その一、一生涯勉強し続けること

  現在は、社会の変化が激しく、一生涯勉強し続ける必要性が非常に高い時代だと言えます。私の世代では、一度身につけた知識や知恵は、三十年間は使えました。今は知識の耐用年数は五年ももてばいいほうであると言われています。

つまり、現在はいわば知識や技術の消費期限がうんと短くなっているのです。ドラッカーという学者は「今日ではいったん学習した知識を毎年七パーセントずつ新しいものに入れ替えていかなくてはいけない」といっています。

  生涯にわたって知識や技術を勉強し、新しいものに入れ替えていけるかどうかが、自分の将来、ひいては日本の将来を決めるのだと思います。

 ひとつの例をお話ししましょう。現在我が国の経済はよくない状態が続いています。日本はアメリカに次ぐ世界第二位の経済大国の座を長年維持してきましたが、今年この第二位の座を中国に明け渡すことが確実になったという報道がありました。

そして高校や大学を出た人の就職内定率(つまり就職が決まった人の割合)が過去最低水準であるとの報道もあります。そのなかで、海外からの留学生、特にアジアからの留学生が数多く日本の企業に就職しているという事実があります。つまり日本人ではなくアジアの留学生などを雇う企業が増えているのです。なぜでしょうか。日本の企業の人事担当者は、外国人やアジアの留学生の方が、日本人よりやる気があって優秀だから、と口をそろえて言います。皆さんはこの事実をどう考えますか。

あなた方はこれから、勉強して勉強して勉強して勉強して優秀な能力や技術・知識を身につけて、世界を相手に勝負しなければならないのです。そういう意味でも、一生涯学び続けなければならない時代に入ったといえます。学校の勉強だけで通用する時代は終わったのです。

あなた方若い人たち一人一人が一生涯勉強し続けて、世界を相手にしていかないと、やがて日本は立ち行かなくなるかもしれません。皆さん、これからの日本をどうかよろしくお願いします。

 

その二、困難を乗り越えること

   ワインというものがあります。ワインはブドウから作られるのですが ワインになるぶどうは野生の状態にちかいもののほうがよいのだそうです。砂利まじりの土地で、気温も低い恵まれない自然条件の中で、そういった悪条件に耐えて必死に育ったブドウだけがよいワインになるというのです。まさに「やる気を見せたブドウ」がワインの品質を決めるといってよいのです。

  皆さんは今後、友人関係、勉強または仕事のことなど様々な困難と出会います。

  そのとき、このワインの話を思い出してほしいのです。苦しみに耐え、さらに意欲を出しやる気を見せたとき、ひとりの人間としての本当の魅力、本当の美しさが現れるのです。

あきらめないで、くじけないで一歩でも半歩でも前に進もうとすることが大切です。それが時には遠回りであるかもしれません。でも、少しでも前に進もうというやる気を持つ限り、一時の遠回りは、やがてより大きな幸せをあなたにもたらすに違いありません。

今日から、人生の長い旅を始める皆さんが、やる気と元気であらゆる困難を乗り越えていかれることを固く信じています。

 

 今日は卒業のはなむけの言葉として、一生涯勉強し続けること、と、困難があっても前に進み続けること、という話をしました。

 

  卒業生の皆さんの、今後の活躍を祈念いたしますとともに、洋々たる前途を祝し私の式辞といたします。

 

            平成二十三年三月十一日