三寒四温のうちに、校庭の花のつぼみもふくらみ、桜の開花が待たれる頃となりました。
この、よき日に、卒業生、在校生、保護者、来賓の皆様、教職員一同相集う中、本校の栄えある、第二十五回卒業証書授与式を挙行できますことは、このうえない喜びでございます。
本日、保護者の皆様には、本校入学以来お子様の心身の健やかな成長を願い続けた日々を思われ、ここに、たくましく成長されたお子様の晴れ姿を目にされて、喜びもひとしおと存じます。心から、お祝い申し上げます。
また、この間、本校教育の充実と発展のために寄せられましたご理解とご協力に対しまして、厚く御礼申し上げます。
ご来賓のみなさま、本日は公私何かとお忙しい中、本校の第二十五回卒業証書授与式にご臨席を賜り、誠にありがとうございます。高いところからではございますが、心より御礼申し上げます。また、三年間地域で子どもたちを見守り、育んでいただきましたことに、深く敬意を表したいと思います。
さて、卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
今、一人ひとりに卒業証書を手渡しました。この証書は三年間の課程を終えたという証明であると同時に、皆さんが本校の歴史に輝かしい1ページを書き加えたことの証でもあります。
これまで皆さんが作り上げてきたよき伝統は、在校生が、しっかりと引き継いでいってくれるはずです。
そして、今日、皆さんが胸を張って巣立ってくれることをうれしく思います。これからは、この義務教育九年間で身につけたことを生かして、自分の力で歩んでいってください。
皆さんの門出にあたり、私から少し話をしたいと思います。皆さんのこれからの人生は可能性にあふれ、前途洋々としています。そして、前途洋々とした人生も、実は「今」の連続でできているのです。
だから、今をがんばる、ということはたいへん大切なことだし、何より、今をがんばることが、充実した人生につながっていくのだと思います。
イチロー選手は知っていますね。
日本では七年連続首位打者、アメリカでは九年連続二百本安打と世間では彼の功績をたたえますが、言い換えれば、彼はヒット一本打っただけではないのですか。
この一球、このひと振り、このヒット一本だけが彼の今やるべきことですよね。
打撃面での彼の目標は、今がんばること、つまり目の前のヒットを一本打つことだけです。言わば、それを毎試合、毎打席、やったからすごいんです。
つまり、イチロー選手は「今」という瞬間をがんばりきったということです。その連続が九年連続二百本安打だったのです
彼はインタビューでこう答えています。「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています。」
今をがんばる、というのは小さいことかもしれないけれど、積み重ねれば大きなことにつながるということだと思います。
今がんばる、というのは、時には焦りを生むものです。
シドニーオリンピックマラソンの金メダリスト、高橋尚子さんは、こういう言葉で焦りを克服してきたといいます。
「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く。」
花が咲かない寒い日でも、根を伸ばすというがんばりはできるのです。
たとえ結果は出なくても、今がんばる、ということはできるのです。
しかし、今をがんばっても、失敗することがあるかも知れません。
でも失敗から学べば、いつしか成功につながります。
言いかえれば、今をがんばれば、いい失敗ができるし、より高い成功を手に入れることができる、ということです。
だから、今がんばる、ということが大切です。
今をがんばっていれば、それは必ず未来の自分を支えます。
すなわち、未来の自分への応援団となるのです。この応援団は一生の財産だし、これほど力強い応援団はまたとありません。
みなさん、今日から、あなたが今がんばれることをしっかりとがんばってください。
そして、皆さん一人ひとりの人生が、よりすばらしいものとなることを、心より願っています。
今がんばることは十年後の笑顔、
今がんばることは二十年後の自分へのプレゼント、
今がんばることは未来の自分への応援団。
平成二十二年 春 弥生