三寒四温のうちに、校庭の木々の新芽もふくらみ、春の訪れを感じる頃となりました。 この、よき日に、卒業生、保護者、来賓の皆様、教職員一同相集う中、本校の栄えある、第十七回の卒業証書授与式を挙行できますことは、このうえない喜びでございます。
  保護者のみなさま、お子さまのご卒業おめでとうございます。今、たくましく成長されたお子さまの姿をごらんになり、感慨もひとしおと拝察いたします。また、今日まで本校の教育に寄せられましたご理解とご協力に対しまして、厚く御礼申し上げます。
 ご来賓のみなさま、本日は公私何かとお忙しい中、本校の卒業証書授与式にご臨席を賜り、誠にありがとうございます。高いところからではございますが、心より厚く御礼申し上げます。
 卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。ただいま、中学校三カ年の課程を修めたという卒業証書を、二百十二名のみなさんに手渡しました。
今日は、三年間の中学校生活を終えると同時に九年間の義務教育を終える日でもあります。これからは、自分で選んだ道を旅していくのです。それは長く、時には厳しい旅でもあります。
 今日は、新たな旅を始める卒業生の皆さんに、志の話をしたいと思います。
 志という言葉があります。文字通り、心がある方向を指し示すことです。皆さんは今、志をもっていますか。志とは社会のため、人のため、そして自分のために、今後どう生き、何をしていくのか、といった大きな目標です。現在のような変化の激しい時代であるからこそ、しっかりとした志を持つことは、非常に大切なことだと思うのです。
頃は幕末天保六年、一八五三年、高知城下の下級武士の家に一人の男の子が生まれました。坂本龍馬の誕生です。彼は、二十八歳で土佐藩を抜け、江戸へ行きます。当時は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどの欧米の列強国が、アジアに植民地を求めて血眼になっておりました。龍馬は、このままでは、これらの列強国にたちうちできなくなると考え、そのためには、江戸幕府をやめて日本を近代化する必要があると考えました。龍馬は、そういった大きな志を持って、当時非常に仲の悪かった長州藩と薩摩藩を連合させて、幕府に対抗する一大勢力を作り上げました。また、将軍徳川慶喜から天皇に政権を返させるという大政奉還を立案し、成功させました。「薩長連合も大政奉還も龍馬が一人でやったことさ」と、勝海舟をして言わしめたほどでした。
皆さんは、坂本龍馬からなにを学ぶでしょうか。私は、志をもって生きることの大切さをぜひ、学び取ってほしいのです。
 幕末にも匹敵するほどの変化の激しい今の時代、志を持って生きることは非常に大切です。しっかりとした志を持っておれば、社会の変化に流されることなく、道を切り開いていくことができましょうし、様々な壁にぶつかったときに乗り越える力ともなりましょう。
 志があれば、学ぶことの意味や生きることの意味さえも自ずと自覚できていくのではないかとさえ思うのです。
 そして、どういう方法で社会に貢献し、自分をどう生かしていくのかといった志を果たすために、日々努力を重ねていくことは、誠にすばらしいことであると思います。
今の日本は、若い力と個性的な発想を必要としています。ぜひ大きな志を持って、進んでいってほしいと思います。
 
  卒業生の皆さん、元気で旅だってください。皆さんの限りない前途を祝福いたします。

最後に、歌手の中嶋みゆきの歌の一節を朗読して、式辞を閉じたいと思います。

 行く先を照らすのは
    まだ咲かぬ見果てぬ夢
    はるか後ろを照らすのは
    あどけない夢
ヘッドライト テールライト
旅はまだ終わらない
    ヘッドライト テールライト
   旅はまだ終わらない

      平成十五年三月十四日