校庭の木々にも新芽が伸び、うららかな日差しのなかに春の訪れを感じる頃となりました。このよき日に、卒業生、保護者、教職員一同相集う中、多数のご来賓のご臨席を賜り、本校の栄えある第十六回の卒業証書授与式を挙行できますことは、この上ない喜びでございます。

卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
ただいま、みなさんには中学校での学習をすべて終了したことを認めた卒業証書をひとりひとり手渡しました。みなさん方は国が決めている九か年の義務教育を無事終えることができたのです。特に、中学校三年間の皆さんひとりひとりの努力を心より讃えたいと思います。
保護者のみなさま、本日はお子さまのご卒業おめでとうございます。たくましく成長されたお子さまの姿をご覧になり、本日のお喜びもひとしおであろうと拝察いたします。また三年間のPTA活動を通じて本校に寄せられましたご理解とご協力に深く感謝申し上げます。
来賓のみなさま、公私とも何かとご多忙の中、本校の卒業式にご臨席を賜り、誠にありがとうございます。高いところからではございますが厚くお礼申し上げます。
卒業生の皆さん、皆さんは義務教育の九年間を今終えたわけですが、この九年間は多くの人々の支援のもとに学校生活を送ってきました。これからは、自分で選んだ環境のもとで生活することになります。大切なことは、自分で選んだのですから、その結果についても自分で責任を負わなければなりません。これからの生活は、すべて自分の責任のもとに行われていくのです。義務教育の九年間は、そうした生活ができるような基礎を培ってきました。 九年間の学習を終えた皆さんは、自信を持って新しい道を進ん
でいってほしいと思います。
私は、巣立ちゆく皆さんにはなむけとして、二つの話をした
いと思います。
一つ目は、生涯学び続けるということです。
現在は、社会の変化が激しく、生涯学び続ける必要性が非常に高い時代だと言えます。私どもの世代では、一度身につけた知識や知恵は、三十年間は社会や人生の荒波を乗り切るに耐えました。今日では知識の耐用年数は五年ももてばいいほうであると言われています。いわば知識や技術の賞味期限がうんと短くなっているのです。名著「断絶の時代」を書いたドラッカーは「今日ではいったん学習した知識を毎年七パーセントずつ新しいものに入れ替えていかなくてはいけない」といっています。
生涯にわたって知識や技術を学び足し、新しいものに入れ替えていける態度や方法を身につけているかどうかが、自分の将来を決する時代に入ったとさえ言えるのです。このような時代には
「なにを学ぶか」と同時に「いかに学ぶか」が大切なのです。学校を卒業したら学ぶことは終わり、ではなく、生涯にわたって意欲的に学び続けてほしいと思います。

二つ目は「困難や苦しみを乗り越える」ということです。
ワインというものがあります。ワインはブドウから作られる
のですが ワインになるぶどうは野生の状態にちかいもののほう
がよいのだそうです。砂利まじりの土地で、気温も低い恵まれない自然条件の中で、必死に育ったブドウが、そういった悪条件に耐えたブドウだけがよいワインになるというのです。まさに「やる気を見せたブドウ」がワインの品質を決めるといってよいのです。
皆さんは今後、友人関係、勉強または仕事のことなど様々な困難や苦しみが、時としてやる気を失わせるかもしれません。そして大人になっても、さまざまな困難と出会うでしょう。
そのとき、このワインを話を思い出してほしいのです。苦しみに耐え、さらに意欲を出し、やる気を見せたとき、ひとりの人間としての本当の魅力、本当の美しさが現れるのです。あきらめないで、くじけないで一歩でも半歩でも前に進もうとすることが大切なのです。それが時には遠回りであるかもしれません。でも、少しでも前に進もうというやる気を持つ限り、一時の遠回りは、やがてより大きな成果をあなたにもたらすに違いありません。今日から、人生の長い旅を始められる皆さんが、やる気と元気であらゆる困難を乗り越えていかれますことを固く信じてやみません。

卒業生の皆さんの、今後のご活躍を祈念いたしますとともに、洋々たる前途を祝し私の式辞といたします。

平成十四年三月十二日