| 1 はじめに | |
| 2 品詞変換処理概要 | |
| 2.1 副詞→形容詞 | |
| 2.2 名詞→動詞 | |
| 2.3 形容詞→副詞 | |
| 2.4 動詞・形容詞→名詞 | |
| 3 節から句への変換 | |
| 3.1 節から名詞句への変換 | |
| 4 変換困難な例 | |
| 5 おわりに | |
| 参考文献 |
現在我々は、日英翻訳システムALT-J/E[1]と協調して動作する 広域直接翻訳[2]の開発を進めている。 広域直接翻訳の目的の一つは、原言語と目的言語で大きく構造が異なる訳対を取り扱うことであり、 そのために、意味解析型の翻訳システム[3]と パタンマッチによる翻訳を融合する仕組みを導入した[4]。 パタンマッチによる翻訳は、構造が異なる訳対の骨格部分を担当し、 意味解析型翻訳で翻訳された葉の部分が骨格に接続される。 この時、骨格の構造が日英で変化しているから、接続すべき葉の品詞も変化すべき場合がある。 広域直接翻訳の実現のためには品詞変換を取り扱う処理が必要である。 本稿では、広域直接翻訳が備える品詞変換処理について述べる。
日本語は動詞中心の言語であり、 英語は名詞中心の言語であると言われる[5]。 そのため、主として、従属節から名詞句への変換や、それを実現させるために動詞から名詞、 副詞から形容詞への変換などが必要となる。
これらの品詞変換は常に適切とは限らず、 例えば複雑な構造の従属節を名詞句に無理に変換してもわかりにくい訳文が得られてしまう。 品詞変換が困難な場合には すべての翻訳を意味解析型翻に任せて直訳の訳文を出力することが可能であるから、 無理な変換はしない方針で設計を進めた。
訳対パタンの記述を簡潔にするため、広域直接翻訳では特に変換部ルールを設けず、 品詞変換の指定は生成テンプレートの中に埋め込む構成をとる。 例えば、図2の生成テンプレートの概念図は、 動詞paintに対する補語が変数Dの意味解析型翻訳の結果を形容詞変形したものであることを 指定している。
実際の変換は、翻訳の原言語側で行う方法と目的言語側で行う方法が考えられる。 適切な選択は、変検の種類によって異なり一概に決定することはできない。 広域直接翻訳では、原言語側と目的言語側の双方に品詞変換部を設け、 変換の種類と変換対象表現によってどちらかで品詞変換を行う(図1)。
以下、主な変換について処理内容を示す。
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動詞中心の日本語構造を、名詞中心の英語構造に変換する場合、 その修飾要素の副詞を形容詞に変換する必要がある。 また、補語に形容詞を取る英語に対応する日本語は副詞句で表現されていることが多く、 この場合にも副詞から形容詞への変換が必要である。 例えば“〜を青く塗る”に対して“paint 〜 blue”を訳出するためには、 副詞“青く”から形容詞“blue”への変換が必要である。 副詞から形容詞への変換では、 この例のように日本語副詞に対応する英語副詞がない場合も多いため、 まず日本語での変換を試み、不可能な場合には英語副詞から英語形容詞への変換を試みる。
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「行う」や「する」などの機能勁詞はヲ格に動作性名詞をとり、 これらの表現を英語にする場合には、 ヲ格の名詞を主用言にした方が適切な英語が得られる場合が多い[6]。 そのため、動作性名詞を動詞に変換する機能が必要である。 例えば“検討を行う”に対して“cxamine”を訳出するためには、 名詞“検討”から動詞“examine”への変換が必要である。 この変換の場合には、日本語がサ変名詞の場合には日本語字面での動詞への変換を試み、 そうでないならば英語名詞の動詞派生語を辞書から取り出す。
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上記の機能動詞は日本語の動作性名詞を動詞として訳出する。 そのため、動作性名詞を修飾していた形容詞を副詞に変換する必要がある。 例えば“詳細な検討を行う”に対して“examine in detail”を訳出するためには、 形容動詞“詳細な”から副詞相当の前置詞句“in detail”ヘの変換が必要である。 この場合にも日本語で副詞に変換し、意味解析型翻訳の副詞翻訳結果を訳語とする。
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次節で述べる節から名詞句への変換を実現するためには、 動詞・形容詞から名詞への変換が必要である。 この変換では、意味解析型翻訳で得られた英語に対する名詞派生語を訳語としている。
前節は単純な構造の変換について述べたが、 品詞変換を要求する要素が構造を持っている場合もある。 日本語から英語への変換で特に要求されるのは、従属節から各詞句, 動名詞句, to不定詞句などへの変換である。 広域直接翻訳が用意する変換のうち、ここでは名詞句への変換を考える。
名詞句への変形では、文型, 格要素・修飾要素の種類, 動詞の種類などによって分類された変形規則が、現在51ルール組み込まれている。 各ルールは前節の変換などを組み合わせて変換を行う。 例えば、“匂いが強かったので彼は目覚めた”に対して図5の規則を適用した場合、 “匂いが強い”が“strength of smell”と変換され、 “The strength of the smell woke him up”を得る。
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組み込まれたルールで変換できない例外的な変形に関しては、 広域直接翻訳のパタンで直接記述する。 例えば、“鐘が嗚ったので目覚めた”から、“The bell woke me up”を得るためには、 図6の規則が記述できる。
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前節とは逆に名詞句から節などへの変換を行いたい場合も有り得る。 例えば、“〜に踏み切る”から“decide to 〜”を訳出したい場合などである。 名詞句内の格関係を十分な精度で解析することは困難であり、この変換は実現されていない。
本稿では広域直接翻訳が備える品詞変換処理について述べた。 現在、広域直接翻訳ルールの収集を進めている。効果は次の機会に報告する。