ときメモ2バトルロワイヤル風SS・エピローグ

竹内「・・・・はぁ・・・はぁ・・・。」

竹内は暗い山中を歩いていた。額からは出血がひどく、地面に赤い斑点を残していた。

身体中は無数の切り傷だらけで、血が付着している黒桜花を杖代わりにしてゆっくりとふらふらになりながら前に進んでいた・・・。

花桜梨は竹内がハンターを引きつけている間に上手く逃げる事が出来たようだ。

竹内「・・・う・・くっ・・・!」

竹内は地面のくぼみに足を取られて転倒してしまった。もはや、自力で起き上がる事は出来ない。

竹内は次第に自分の意識が薄れていくのを感じていた。

竹内「(・・・・花桜梨さんは無事に逃げる事は出来ただろうか・・・。ちゃんと家まで戻れていればいいんだけどな・・・。)」

あの森での死闘は1時間にも及んだ。

竹内は死力を尽くして『ソード』と『アックス』の二人を切り伏せる事が出来たが、自分もかなりのダメージを受けてしまった。

特殊ジャケットが無かったら、とっくに死んでいてもおかしくないほどの攻撃を幾度となく受け続けたからだ。

『ソード』と『アックス』が倒れた後で、『トラップ』は何故かあっさりと引き下がった。

竹内「(『トラップ』の奴・・・結局俺を操る事無く引き下がったな・・・。

俺がここまでぼろぼろになったから、連れ帰るのを止めたのかもしれないな・・・。

・・・・もう、歩けそうもないか・・・。俺もここまでみたいだな・・・。・・・・・まだ日本で死ぬ事が出来る分マシか・・・。)」

竹内は仰向けになりながら、自分の最期の時を意識した。

やるだけの事はやった。もう悔いは無かった。

だが、何故か目からは涙が流れてくる・・・。竹内も自分が何故泣いているのか分からなかった。

竹内「(・・・何で・・・俺は泣いているんだろう・・・?もう・・・二度と涙を流す事は無いって・・・そう思っていたのに・・・。)」

ゆっくりとまぶたを閉じる・・。それと同時に急に眠くなってきた。秋の終わりともなれば、夜の山はかなり気温が下がる。

このまま眠ればきっと楽に死ぬ事が出来るだろう・・・。

竹内はそのまま眠るようにして体の力を抜いた。

竹内「(・・・・花桜梨さん・・・さよう・・な・・・ら・・・・。俺の分・・・ま・・で・・・幸せに・・・なって・・・。)」

竹内が眠りに落ちたと同時に、空から白い雪が舞うように降り始めてきた。初雪だ。

雪は次第に勢いを増して、竹内の身体をゆっくりと覆い隠していった・・・。

竹内の黒いジャケットは雪の中で映えて見えた。

静かな夜の山中で誰にも知られずに一つの命が消えようとしていく・・・。

やがて、竹内の姿は真っ白な雪の中に同化していくのであった・・・・。

???「・・・君・・・竹・・・君・・!」

竹内「(・・・・・。)」

???「竹・・・君・・!・・・竹内君・・・!」

竹内「(・・・!・・・誰だろう・・・。俺を呼んでる・・・?)」

竹内は僅かに目を開けてみた。誰かが自分の顔を覗き込んで、必死に呼びかけている。

竹内「(・・・花桜梨さん・・・?いや・・・、違うか・・・。彼女がここにいるはずが無い・・・。俺・・・死んだんだよな・・・?)」

???「竹内君!お願い!!しっかりして!!竹内君!!」

竹内「(・・・!!)」

花桜梨「ねぇ!お願いだから・・・!!返事をして・・・!!竹内君!!」

竹内は自分の目を疑った。今、自分の目の前にいるのは間違い無く花桜梨だったからだ。

竹内「花桜梨さ・・・ん・・・・?」

花桜梨「・・・!!良かった!目を覚ましたのね!」

花桜梨は竹内の胸に顔を付けて泣きじゃくり始めた。周りを見ると涼や智、匠と純の姿もあった。

竹内「・・・・みんな・・、どうしてここに・・・。」

智「俺たちが八重さんを探していたら、偶然八重さんが駅から出てくるのを見つけたんだ。

それで事情を聞いて急いで駆けつけたんだよ。」

純「もう大丈夫だ!すぐに助けが来るからな!」

竹内「!・・・駄目だ・・、俺の姿が公になったら・・・・!」

涼「安心しろ、助けに来るのは伊集院家の人達だから、お前の事は内密にしてくれるだろう。」

竹内「・・・・そうか・・・。すまない・・・みんな・・・。」

匠「気にすんなよ、それよりも礼を言うんなら俺たちよりも八重さんに言うんだね。

八重さんが僕たちにお前の事を話してくれたから、ここまで来れたんだからな。」

竹内「・・・そうだったのか・・・。花桜梨さん・・・本当にありがとう・・・。」

花桜梨「もういいから・・・、もう何も言わないで・・・!」

一週間後・・・

花桜梨「竹内君、怪我の方はもう大丈夫なの?」

竹内「ああ、おかげで大分良くなったよ。みんなや伊集院さんのおかげでこうして極秘に傷を癒す事も出来て本当に助かったよ。」

花桜梨「良かった・・。あなたを山道で見つけた時はもう駄目かと思ったんだよ・・。

雪でほとんど身体が埋まっていたし、身体も冷たくなっていたし・・・。」

竹内「あの時は正直、もう駄目だなって覚悟していたんだ・・・。ただ、花桜梨さんが無事に逃げてくれていればそれで俺は満足だったからね・・・。」

ここは、伊集院家が特別に用意した竹内の病室である。竹内は事実上死亡した事になっており、闇の世界に関わっている為に世間にはまだ出られない存在なのだ。当然、竹内の両親も竹内が生きている事はまだ知らない。

ここに竹内が居る事を知っているのは今回の事件に関わっている者たちのみである。

中でも花桜梨は学校と部活が終わってから、毎日竹内の見舞いに来るようにしていた。

竹内「・・・・だけど、これからどうなるんだろう・・・・。いつまでも伊集院さんにお世話になっている訳にもいかないし・・・。」

花桜梨「・・・・。」

メイ「その事なら心配いらぬぞ。」

竹内「!伊集院さん・・。」

病室に入ってきたのはメイであった。

メイ「どうだ?傷は大分良くなったか?」

竹内「おかげでこの通りさ。」

メイ「それは何よりなのだ。・・・竹内、今日はお前にいい知らせがあるのだ。」

竹内「いい知らせ?」

メイ「お前が話してくれた組織の事なんだが、我が伊集院家と国際警察の合同捜査によって組織を一網打尽にする事が出来たのだ。」

竹内「!!!・・・それは本当に!?」

メイ「うむ、間違いないぞ。お前が組織のアジトの正確な位置を教えてくれたおかげで、上手く事を運ぶ事が出来たのだ。

父上もとても喜んでいたぞ!」

竹内「そうか・・!・・・これでハンターも全員捕まった訳だな・・・。」

花桜梨「良かった・・・竹内君もこれでハンターに追いかけられる事もないんだね!」

メイ「・・・だが、一つ気になることがあるのだ・・・。」

竹内「気になる事・・・?」

メイ「お前を操っていた『トラップ』とか言うハンターなのだが、それと思われるハンターだけ見つかっていないのだ。」

竹内「!!・・・『トラップ』だけ見つかっていない・・・!?」

メイ「今も行方を探しているが、いまいち情報が入ってこないのだ・・・。」

竹内「・・・・奴らしいな・・・。恐らく、捜査をいち早く予測して逃走したんだろう・・・。(まさか・・それを考えて・・・俺を・・・?)

花桜梨「・・・・竹内君・・・。」

竹内「あいつが捕まっていない以上、俺はまだ表の世界には出られない・・・・。あいつに操られたら俺は逆らえないんだ・・・・。」

メイ「うむ、しばらくはここにいた方がいいのだ。SPを多めに配置させておくから、安心して傷を癒すのだ。」

竹内「・・・ありがとう、伊集院さん・・・。・・・あと、俺が持っていた刀は・・・?」

メイ「あの刀は一応調査をするために地下金庫に厳重に保管してあるのだ。」

竹内「そうか・・・・。あれは危険な武器だ・・・。下手に人が持たない方がいいかもしれない・・・・。」

花桜梨「竹内君はもう充分に戦ったよ・・・。だから、これ以上あなたが戦う必要は無いわ・・。」

竹内「・・・伊集院さん、あの刀・・・『黒桜花』は一通り調べ終わったら破棄してくれないか?」

メイ「分かったのだ。父上にはそう伝えておくのだ。それでは、メイはこれから用があるので失礼するぞ。」

竹内「ああ、いろいろと面倒をかけるけど頼むよ。」

メイはしっかりと頷くと病室を出て行った。

竹内「・・・・まだ完全に事が終わるまで時間がかかりそうだな・・・。」

花桜梨「・・・大丈夫だよ・・・、伊集院さんを信じて最後の一人が捕まるのを待ちましょう。」

竹内「そうだね・・・。」

花桜梨「・・・・・・。」

竹内「・・・・・・。」

花桜梨「・・・・ねぇ、いきなりだけど・・・・あの時私にしてくれた約束・・・覚えてる?」

竹内「えっ?」

花桜梨「・・・・卒業したら・・・って約束。」

竹内「あっ、・・・うん、もちろん覚えているよ。・・・でも、一緒に卒業は出来そうも無いみたいだけどね・・・。」

花桜梨「・・・でも、それで約束は無効になったりしないよね・・・?」

竹内「花桜梨さん・・・それって・・・・?」

花桜梨「・・・例え一緒に卒業出来なくても・・・ってコト。」

竹内「・・・も、もちろん・・・俺で良ければ・・・。」

花桜梨「良かった・・・。」

竹内の返事を聞いて、安心したのか花桜梨は嬉しそうに竹内を見ながら微笑む。

竹内「・・・・花桜梨さん、俺が堂々と外に出られるようになったら・・・・・どこかに行かないか?」

花桜梨「えっ?いいけど、何処に行くの?」

竹内「・・・・そうだなぁ・・・、海なんかどう?」

花桜梨「うふふ、いいけど・・・それじゃあ夏までおあずけだね。」

竹内「あっ、そうか!・・・ま、それはその時に考えようよ。」

花桜梨「ふふ・・、そうね・・・。・・・・ねぇ、竹内君・・・。・・・ちょっと目を閉じて。」

竹内「え?何?」

花桜梨「いいから・・・ね?」

竹内「・・・これでいい?」

竹内は不思議に思いながらも目を閉じてみる。

そこへ・・・。

花桜梨「・・・・・ん・・。」

竹内「・・!・・・・・。」

花桜梨はゆっくりと竹内の唇に自分の唇を重ねる。一瞬、驚きはしたが、竹内も黙ってそれを受け入れた。

そして、二人の身体はそのまま倒れるようにしてベッドに横になる。

この病室で・・・誰にも邪魔されない二人だけの時間がゆっくりと流れ始めるのであった・・・。

BR計画演習・・・最終報告・・・

第一次派遣ハンター

『スナイプ』・・・死亡

『ウェポン』・・・死亡

『ナイト』・・・死亡

『トラップ』・・・生死不明及び消息不明

『キング』・・・死亡

第二次派遣(増援ハンター)

『マインド』・・・死亡

『ライン』・・・死亡

第二次派遣ハンターは全滅、第一次派遣ハンターも一人を除いて皆死亡・・・事実上の全滅と見られる。

計画選抜メンバー(男子)

穂刈純一郎・・・生還

坂城匠・・・生還

秋口涼・・・生還

小倉智・・・生還

竹内秀彰・・・生還(表向きは死亡)

(女子)

陽ノ下光・・・生還

水無月琴子・・・生還

白雪美帆・・・生還

寿美幸・・・生還

八重花桜梨・・・生還

白水美月・・・死亡(後に正体がハンター『ライン』と分かる)

計画選抜メンバーは全員生還・・・

最終生存者10名・・・。

 

 

<ときメモ2バトルロワイヤル風SS・完結>

 

あとがき

・・・・やっと完結しました・・・。長かった・・・とっても長かった・・・!!最初は弐拾話くらいで終わるつもりが、いつのまにやら予定を軽く超えてしまい・・・、気が付けばエピローグ合わせて参拾壱話・・・。(汗)

我ながら、よくもまあここまで書けたものだと思います。(^^;)

描写の理由により、一般公開が出来ない話もあって(この話も本来お蔵入りの予定でした)、管理人さんには大変ご迷惑をおかけしてしまいました・・・。m(__)m

それでは、最後にここまでお付き合いして頂いた読者の皆様には大変感謝の念を表すと共に、厚く御礼申しあげたいと思います。本当に、今までありがとうございました!!

 

                                    2001年 2月17日 ATF


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