幻想水滸伝V

グラフィック・音楽
シナリオ等
操作性
熱中度
期待通りか?
総合得点
14点
17点
13点
18点
12点

74点


幻想水滸伝3・レビュー(ベストエンディング確認後執筆)

前説:コナミの人気シリーズ「幻想水滸伝」もついに三作目となりました。
今回の舞台はグラスランド・ゼクセン。
グラスランドの諸部族とゼクセン連邦の講和寸前に起こった抗争と、それを裏から糸を引くものたちについて、グラスランドの氏族の息子ヒューゴ、ゼクセン騎士団長クリス、そして第三者であるハルモニア辺境部隊のゲドという3人の主人公の視点を通して紐解いていくというストーリーでした。
ネット上でもすでに非難・賞賛入り乱れている作品について、なるべくネタバレをしない方針で私なりのレビューをさせていただきたく思います。

グラフィック・音楽
総合     :14点

グラフィック :6点
(CG・アニメ:4/5点 3D:2/5点)
音楽     :8点
(オープニング:5/5点 ゲーム中:3/5点)
(各10点満点)

少し甘いかな、という評価ですが、現在の3Dの技術水準を考えると、十分に見られる内容だと思います。
私の評価は、基本的に「技術的な限界を超えては厳しいことは求めない」という考えなので、不評が多かったポリゴンキャラデザインに関してはむしろ良く作りこんでいる、という気持ちが強かったです。
石川さん描き下ろしのキャラデザインは相変わらず趣味が入っていて良いです。

音楽に関しては、オープニングが素晴らしかっただけに、オープニングを越える音楽がゲーム中には乏しかったような気はします。
途中の有力ボス戦の音楽が、個人的にはとてもよかったですけれど、まぁ満点はつけられないかな、ということでこの評価に落ち着けました。

ただ、やっぱり最大の問題点は3Dカメラワーク。
特にダンジョンなどで、各地点において単一のカメラしか用意されていないことには不便を覚えました。
あとモノが隠れたり、フィールド上に何があるか分かりづらいなど、FF7を最初にプレイした時の分かりづらさを思い出すところもありました。

また、敵の攻撃や魔法発動時のアニメーション時に、どうしても一部のキャラがカメラアウトして、ダメージ表示が見づらくなるなどの欠点もありました。

//ここからは関係のない雑談//

ただ、ブラウン管という2Dの世界で3Dを表現するため、どうしても人間の情報処理とずれるがゆえの感覚のズレがあるのは、技術の限界という感じもします。

人間の視覚情報処理は、2つの眼で見たモノの大きさ、角度の違いから遠近感を得ているのですが、実はそれだけではなくて、眼を中心とした体の筋肉全体の動きを脳が把握して、現在の距離感覚、移動スピード、色の変化などを認識しています。 ところがコンピュータ上の3Dは、本来眼で見て判断する「遠近感」を擬似的に作り出しています。
人間が見たときの視覚情報を擬似的に作り出しているわけですが、ソレが「筋肉の動き」から得られた角度や作業の情報と幾分食い違うために、本来見ている立体感とは違う違和感を覚えることがあると考えられます。

今回も多くの人が「3Dのカメラワークに酔った」「目が疲れた」という感想を持たれたようですが、その点はカメラフレームのまずさ以上に人間の視覚情報処理とズレたことをしているが故の事態だと思います。
これは、技術云々よりもコンピュータによる3Dの限界を示しているものと個人的に思われるだけに、今後これ以上家庭用ゲームが3D化することには改めて疑問を感じることになりました。

//ここまで雑談//

シナリオ  : 17点

話の全体像 : 7点
話の展開  : 10点
(各10点満点)

話の全体像については、賛否両論でしょう。

ネタバレにならない程度で、私の感想を申し上げると、「シリーズ初めての人には謎が多すぎ、シリーズのファンには痛すぎる」話だと思います。
おそらくこれまでのファンに配慮して、前作とのつながりをもったストーリーにせざるを得ないうえで、初めての人にも分かりづら過ぎない程度で配慮したのでしょう。
ただ、2が1との関係を持たせつつ、全く初めての場所をプレイフィールドとして選んだがゆえに比較的無理なくまとまったのですが、今回は2の時点でネタふりが過ぎたがゆえに、結果として「消化不良」のような印象を受けました。
個人的には1の「暴君と戦う仲間」という古きよき勧善懲悪の雰囲気も、2の「暴君暴走」のあとに「悪人なき戦乱」となったやりきれなさも好きだったのですが、3の「種族間の意思の食い違いが引き起こす戦乱」の黒幕があまりにあっけなかったので、ちょっと拍子抜けでした。

ただ、TSS(トリニティサイトシステム)の採用によって、その謎を各パートから解きほぐすという面白さが、個人的には良かったと思います。

細かいところでのアラも目立ちますし、批判も多いので大甘を承知していますが、あえて10点の評価をつけます。

操作性   : 13点

通常マップ : 4点(操作性:2/5点 爽快感:2/5点)
戦闘シーン : 9点(戦争も含めた総合評価。じりじりする「制約」がむしろ面白い)
(各10点満点)

3Dシステムを採用したことでこれまでのシリーズと一番変わったことは、「町が不必要に広く感じる」ことだと思います。
3Dの採用によって、キャラやフィールドにリアリティが生まれたということはすなわち「距離感覚」にもリアリティが生まれたということです。
このため、2Dであればディフォルメであるがゆえに簡単に移動できた街の移動が、3Dになっために苦痛なほど時間がかかるようになりました。
これもまた、3D化がもたらした致命的な欠点だと思います。
上の評価は3Dの限界点を感じたうえでの評価であって、もしこれが2Dで同じような苦痛を味わっていた場合は、容赦なく操作性、爽快感共に1点をつけたと思います。

戦闘はバディシステムという前後列を1グループとして考えるシステムが採用されました。
このシステムについても賛否両論でしたが、私はベターなシステムと考えました。
確かに回復アイテムが他のバディに対して使えないとか、炎系などの味方を巻き込む魔法が使いづらいなど批判点が非常に多いですが、わたしの見る限りリアリティの追求という点でこのぐらいの制約があるほうが良いのかもしれない、と思いました。
大まかな作戦は立て、キャラにはある程度詳細に目標を指示しつつも、肝心の部分はそれぞれのキャラ任せ。
距離のある敵に攻撃を加えれば攻撃回数は減少する。
魔法やアイテム使用に科せられた時間設定。
攻撃を一度行えば、当然ながら隊列は散開し、予想外の後列攻撃を浴びる。
プレイヤーからはある意味歯軋りするような「制約」が逆に戦闘の緊張感を生み出しているような気がします。
3Dにしたことで追求したリアリティを、無理すぎない形で実現したのが今回の戦闘と考えています。
批判の多いシステムですが、私は高得点をつけます。

今後の発展を期してあえて10点とはしませんでしたが気持ちとしては10点に近い9点です。

おまけ・戦争イベントについて

今回の戦争イベントは、シリーズ中もっとも「戦争らしくない」戦争でしたが、一方でもっとも「戦術を要求される」戦争でした。

このゲーム、RPGでありながら戦争を取り扱い続けているので、どうしても軍同士の戦闘シーンを演じざるを得ない宿命を持ってます。
ただ、RPGファンが必ずしも戦略シミュレーションファンでないため、これをどう描くかで歴代作品もずいぶん苦労しています。
1の「ジャンケンシステム」は、ある意味潔くて良かったです。
ただ2があまりに中途半端なスタイル(その上軍師シュウのいうがまま)で、存在そのものが疑われた戦争シーンでしたが、今回は軍師シーザーの介在が少なかったために、皮肉にもそれなりの戦略性を要求されることになったため、そこそこ良かったと思います。
ただ、戦略シミュレーション苦手な人には、これでもきつかったかもしれませんが、私はこれぐらい歯ごたえがないと面白くないと感じました。

ホントはもっと作りこんで欲しいのですが、まぁ人選やキャラの鍛え方次第でどうにでもできる今回はベターかな…と思います。

熱中度   :18点

ゲーム本編 :8点(最後までプレイできるが再プレイはどうか)
本編以外  :10点(レベルアップの面白さや劇場だけでも10点以上)
(各10点満点)

最近のゲームは、あまりにもシナリオ重視のため、レベルアップの要素をずいぶんと簡素にしているものが多いです。
シナリオ絶対で、戦闘はある意味付属に過ぎない。
これまでの幻水シリーズも、多少そういうところがありました。
しかし、今回はなかなか敵が強く、ボスも手ごわいです。
ちゃんとレベルアップして、頭を使って戦術を立てないと本当に勝てません。
でも、それがRPGゲームの面白さの一つと私は考えています。
その意味では、今回のスキルシステムによる鍛え方やボスの強さは、ゲームとしてのバランスを満たしています。
ボスを倒すことでたくさんのお金やアイテムを得られるシステムも、なかなか意欲をそそるシステムでした。
ただ、アイテムの宝箱が、最初は言われないと気づかないのがマイナスですが(苦笑)

TSS(トリニティサイトシステム)によるプレイの展開は、それぞれの考え方に応じて進め方が違うので一概に言えませんが、まずまず狙ったとおりの結果を出していると判断しています。

ただ序盤のドキドキ感に比べると、後半のシナリオの展開が駆け足になりすぎたかな、という嫌いがあるので1点減点としました。
あと…初めてプレイした時はやたらとちんたらしてちっとも熱中できないところがありましたが、その原因の大半が操作性の悪さによるものと思います。
それだけに、操作性に慣れてからの中盤以降の熱中度を考えると、それだけでむやみに減点できないと思い、そのぶんの減点は操作性のところに加えました。

本筋以外の面では…とにかく劇場面白いです。
前作の料理対決や釣り対決といい、今回の劇場といい、こういうちょっとした本筋以外のところが妙に面白いのがこのシリーズの特徴です。
これは是非プレイしてご覧ください。いろいろキャラを変えて、笑えること必死です。

期待通りか      :12点

ゲームとしての面白さ :8点
前作との関連     :2点
原作水滸伝との関連  :2点
(ゲームとしての面白さは10点満点。その他5点満点)

ここまでいろいろこのゲーム批判してきましたが、ゲームとしては確かに面白いです。
これは評価します。

ただ、今までのような「水滸伝らしい爽快感」はかなり欠けます。
これまでの幻水シリーズは「梁山泊っぽい感じ」をあくまで大切にしていたように思いますが、今回は108星最後まで一同に会さない点や予想外の人物にも108星を割り当てているなど、どうにも「らしくない」面が目立ちます。

個人的には、108星一同に会して強大な力に挑んでこその水滸伝だと思うので、その伝統とはやや外れています。

登場キャラにしても、これまでシリーズを支えてきて今回も出てくると思われたキャラが名前すら出なかったり、(ネタバレなので詳しく言いませんが)あまりにも予想外の登場を果たしたキャラがいたりと、どうにも納得いかない点が多かったです。
キャラ集めや戦闘時のキャラ選択(これも後半までできない)などの面白さは相変わらずですが、よくも悪くも今回は普通のRPGになってしまったような気がするのが残念です。

ただ、天魁星(水滸伝の頭領宋江の星)の人選は、ある意味これまでの中で一番天魁星にふさわしい人物であったと思います。
なんといいますか、原作の宋江以上に仁徳と慈愛にあふれた人物で、「この人になら賭けていい」と思えるオーラが漂っていたと思います。

総合得点 :74点
単純に集計した点数ではありますが、「名作」には一歩とどかない惜しいゲームかな、という感じです。

まぁいろいろ文句のいいたいことやツッコミどころは満載ですが、それらを承知した上でこのゲームは「面白かった」といえると思います。
ただ、これをもって他の人に「オススメです!!」と胸をはっていえるか…それは難しいかなと思います。
もし「幻想水滸伝3興味あるけど、どう?」と聞かれれば「良いゲームだよ」とは答えますが「絶対面白いよ」とは答えないでしょう。

そもそものゲームの設定、シナリオ、そしてシステム面と、どう考えてもこれはプレイヤーを選ぶゲームです。
不満に思う人がいても全くおかしくない点が多いだけに、万人受けはしないでしょう。

ただ…私個人としては、良いゲームだったと思います。開発者側が挑戦したあらゆることが、全て成功だったといえないにしても、良くここまで作られたなぁと感慨を持っています。

完成度はちょっと甘いです。でも個人的には良いゲームだと思います。
ただ…リアルがゆえにシナリオのボリュームに比してプレイ時間が膨大になります。
そこだけは覚悟しておいてください。

//ここからはまた雑談//

このレビューは、正直とても難しかったです。
個人的には「良いゲーム」だったのですが、プレイする中で「残念だけどこれは万人受けはしない」という気持ちが強くなってきました。
特に、これまでの幻水シリーズの良さを「プレイの爽快感」に上げている人にとっては絶対に「裏切られた!!」というイメージを持つに違いない、そう感じていました。
そして、その最大の問題点が今回の作品の最重要変更点である「3D化」と「トリニティサイトシステム」にあると私は考えています。
私がこのレビューを書いたのは、あちこちの掲示板やサイトを見る限り、あまりにも今回のシステムに対する不満や怒りが渦巻いており、その多くが極めて感情的に論じられていることを危惧したからです。
だからこそ、私はこのゲームが「これからプレイしたいと思う人にしっくりくるかどうか」ということを自ら判断する材料としていただきたいと思い、筆を取りました。

正直このレビューの評価はゲームの完成度と比して甘いです。
ただそれは「私にとって良いゲームだったから」甘くなっているということをご理解ください。

・3Dについて

今回は、良くも悪くも3Dシステムの問題点がモロに出ていて、それがゲームとしての評価に悪影響を及ぼしたと私は思っています。
キャラクターからダンジョン、街なども3Dにするということは、全てにおいて「リアリティ」を追求するということです。
それは、「本物らしい」臨場感やプレイ感覚を突き詰めた結果、これまでディフォルメされていた「距離感覚」とそれに付随する「時間軸」まで「本物らしく」してしまったということです。
そして「時間軸」が本物らしくなったことが、プレイのすっきり感を奪ってしまったような気がします。 またカメラワークのまずさや違和感も、「距離感覚」のズレによる面が少なくないと思います。

多くの人が文句を言っていた「キャラのポリゴン化」については、多分そのうちにもっと本物らしい「キャラクター」になると思います。
しかし、3D化が持つ「リアリティ化」の根本的な問題は、はたして解決できるのでしょうか…。

文責:とぅるーすたでぃ(「TrueStudy」「大吉倶楽部」管理者)

とぅるーすたでぃさん

 

投稿ありがとうございます!!

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