後編




 4月。外は満開の桜が咲き乱れ、最も春を感じさせる季節。
 私達は全員受験に合格し、今月の中旬あたりからはそれぞれの進学先に通うことになっている。


 そんな時、七瀬さんから電話が掛かってきた。
 今度の日曜に身内だけでお花見に行こうという誘いの電話だった。
 発案者は彼だったのだが、こういうことの幹事を彼に任せると心配だと思って七瀬さんが電話を掛けて誘ってるらしい。
 彼が言うには、みんなの新しい門出を祝って、らしいのだが、七瀬さんは『アイツがそんなこと考えるわけない』と笑っていた。
 卒業して以来はなかなかみんなに会える機会はなかったので、私はもちろんOKした。


 参加する予定のメンバーは私、七瀬さん、里村さん、柚木さん、繭、澪ちゃん、川名先輩、深山先輩、氷上君、そして彼だった。
 当日は現地集合で、お弁当は私と里村さんが作ることになった。

 最初は私1人で作ろうと思っていたのだが、人数が多いので里村さんと2人で作ることになった。
 10人分ともなるとかなりの量になり、弁当箱の数も今まで見たことないくらいになった。
 2人で持って行くのは無理だったので、誰か助っ人を呼ぶことにした。
 まず彼の家に電話したのだが、彼は電話に出なかった。
 もう昼近いので流石に寝てるとは思わなかったので、既に出掛けたと思い、他の人を呼ぶことにした。
 七瀬さん、柚木さん、氷上君を呼ぶことにしたのだが、それでも1人分の持つ量は結構あった。
 それでも七瀬さんや氷上君がかなり頑張ってくれたので、何とか持って行くことが出来た。
 待ち合わせ場所に行くと、もう既にみんな到着していた。たった1人を除いて。
 どうやら彼は今も寝ているらしい。ついでに起こしてこれば良かったと、少し後悔。
 しかもここで予想外のことが起こってしまった。
 繭が大きな袋一杯にテリヤキバーガーを入れて持ってきたのだ。
 ただでさえ多めにお弁当を作ったのに、これで更に量が多くなってしまった。
 これは流石に余るだろうなと思ったが、深山先輩が少し笑いながら『大丈夫』と言っていた。
 彼を待っているといつになるか分からないので、とりあえず私達は一足先に始めることにした。
 彼がいなかったら恐らくは出会わなかったであろう人達が今ここで笑いながら一緒に食事をしている。
 こんな光景を作り出せるのも、彼の人徳なのかな、と少し思う。


 そして約1時間半が過ぎた頃。ようやくお弁当やテリヤキバーガーもなくなりかけた頃だった。
 川名先輩以外は箸を動かすのを止め、それぞれがそれぞれに話をしている。しかし彼はまだやって来ない。
 私は仕方なく彼を呼びに行くことにして、立ち上がった。
 そしてみんながいる場所から数十メートルほど離れた場所だった。
 不意に後ろから声を掛けられる。
 聞き間違うはずもない、彼の声だ。
 私は大きな溜め息をつきながら振り返る。
 すると急いで走って来たのか、息を切らせている彼がそこにはいた。
 みんなに少し悪いかなとも思ったが、私は彼と少しの間だけ会話する。
 予想通り、やはり寝坊したらしい。
 こんな時にまで寝坊するなんて、いかにも彼らしいと思い私は笑った。
 そんな他愛もない会話が、何となく嬉しかった。
 そしてみんなが聞いていなかったからなのか、それとも自然になのか、私は少し恥ずかしくなるような言葉を言う。
 途端に私も彼も真っ赤になる。
 少しだけ沈黙が続く。
 その沈黙を彼が破る。
 私は頷き、彼と一緒にみんなのいる場所に向かった。
 みんなが一斉に彼を見る。
 繭や澪ちゃんが彼に飛び付く。
 呆れたように笑いながら、みんながそれを見ている。
 こんな光景がこのまま続くといいなと思う。
 でも私は、その時『永遠に』という言葉は使わなかった。
 何故なら、彼がそれを望んではいないだろうから。
 それに、私自身も望んではいないから……。


 Fin...

                               

あとがき


・さて、後書きですね。
 最初に言っておきますが、今回の後書きも少し長くなると思うので覚悟してください。(爆)
 前書きにもあるように『締め』みたいなものなので凄く短くなっちゃいました。まあそれはそれでOKということで。
 これだけでも1つの作品として成り立ってる気もするので、いきなり後編を読んでもOKっぽくなってるし。
 でも中編で前振りのように『明日は文化祭』と書いているにも関わらず、いきなり春になってるというのはどうでしょうね。
 あとそれぞれのキャラの進学先は僕の勝手な解釈です。まあこんな感じじゃないかな、と。
 改めて書くと、瑞佳、浩平、みさき先輩、詩子、住井以外はみんな大学です。澪と繭はまだ高校生。
 つまり七瀬、茜、佐織、氷上あたりは大学に進学したってことです。
 繭は迷ったんですけどね。だから正確な年齢は書いてません。まあ高校2年生ぐらいじゃないかな?(予想)
 あと瑞佳は専門学校、みさき先輩は家事手伝い、住井は就職ですね。
 浩平はどうしたかと言うと、フリーターってことになってます。あの時期から勉強しても進学も就職も厳しいでしょうし。
 茜は料理学校っていう手もあったんですけどね。まあ面倒ですし、料理学校って何をやるか知らないのでw
 つか氷上出てるのに住井は出てないし。可哀想だけど、それが男性サブキャラってもんです。
 ああ、佐織もいませんね。印象の薄いサブキャラの悲しい定め、ですね。(汗爆)
 と言うか誘いがあっても行かないでしょう。瑞佳や浩平とは少し気まずくなっちゃうでしょうし。
 それでも主要キャラは全員出したぞ! どうだ!! 参ったか!!!(謎爆)
 あとは…みあも出てない。髭も出てない。みあは少し出したかったかも。髭はどうでもいいけどw
 あと『柚木さん』と書くと何故だか詩子だって分かりにくいのはどうしてでしょうか。
 普段は名前で呼んでるから、とも思いましたが、『里村さん』はすぐに茜だって分かるしなぁ。
 原作では実際にそう呼ばれることがないからかな。『里村さん』は出てくるし。多分、そうだね。
 あと分かりにくい部分がラスト。『永遠』を瑞佳や浩平が望んでないって書いた部分ですね。
 これは『この光景が永遠に続くことを望んでいない』わけじゃないんですよ。
 『永遠という『言葉を使うこと』を望んでいない』ってことです。分かりにくいかな?
 ちなみに全員の立ち位置、と言うか座り位置(?)は下の図のような感じになってます。
 頭の中にキャラを重ね合わせて想像してみてください。ちなみにかなり悩みました。(^^;
 キャラとキャラの関わりとかをいろいろ考えた結果なんですが…それなりに納得出来ません?
 隣同士で座らせておくべきペアはちゃんと座ってるでしょ?
 個人的には『浩平と氷上が隣りなら面白そう』とか『雪見と繭を隣りなら雰囲気的に合いそう』とかいろいろ思ったんですけど。
 でも繭はこの位置で固定でしょう、やっぱり。(爆死)

    折原浩平  長森瑞佳
柚木詩子 椎名繭

里村茜 弁当とか 七瀬留美

上月澪 氷上シュン
 川名みさき 深山雪見

 さて、どうせだから『ONE〜輝く季節へ〜』という作品について少し語っちゃいましょうか。
 この作品が後のゲーム業界に与えた影響とか、そういうのは言いません。
 とにかく様々な意味で『凄いゲーム』ですね。その一言に尽きます。
 僕にゲームとして初めて衝撃と感動を与えてくれた作品だと思ってます。そしてそれは今でも変わりません。
 その絵やゲーム画面、そして印象的なセリフなどを見たり聞いたりするだけで、初プレイ時の衝撃が蘇ってくるほどです。
 今まで様々なゲームをやってますが、これほどの感動を与えてくれたゲームは前にも後にもありません。
 後に続くゲームはありましたけど、それでもこの作品には勝てないと思ってます。
 そしていろんなものを感じ出させてくれるゲームですね。
 『強さ』『優しさ』『暖かさ』『勇気』『友情』『愛情』『孤独』『恐怖』『回帰』。そして『乙女』(爆死)
 勿論、感じさせてくれることは他にもありますけどね。
 それからKanonやAirなどONEの流れを組む新しい作品が出てきました。
 これらの作品から入ってくる人達の中にはONEを知らないという人も稀にいます。
 勿論、これらの作品も自分にとってかけがえのない作品であり、凄い作品であると思ってます。
 しかし、それらがあってもONEは決して色褪せることのない、凄い作品だと思います。
 もしこれを読んで未だにONEをプレイしたことがない人がいるのなら、少しでもいいので是非触れてみて下さい。
 PCに始まり、PS、小説、ドラマCD、OVAといろんな形で発売されています。
 きっと…いや、必ず貴方に今までにない衝撃と感動を与えてくれるでしょう。
 あ、でもOVAだけは最初に入っても意味が分からないまま終わると思うので、OVA以外からw
 さて、この辺りでこのSSについての後書きに戻りましょうか。
 作中の期間が期間なので、話自体は短いですけどね。つかいいタイトルが思い付かなかったなぁ。(^^;
 あと今回はセリフ有りになってます。この話はセリフなしにする必要がないですしね。
 だって浩平は戻ってきてるわけだから、シリアス感を出す必要はあまりないし。
 まあ後日談ってのは『if』の話として書いてるので、これでもいいかなと。
 今回は瑞佳ですが、書こうと思えば全員分書けますね。みさき先輩とか書きたいなぁ。
 次回作はどうなるかまだ分かりませんが、またシリアス系になることは確かだと思います。
 たまには鍵系以外の作品でもいいかも。メモオフ2とかめちゃ書きたいし。たるたる〜♪(壊)
 ああ、そういえばバトロワ風のSSも書いてるんだよね。それは完成はず〜っと先だろうけど。
 オリジナルもいいかも。でもオリジナル書くと恋愛物じゃなくなる確率が高いんですよね、僕の場合。
 でもそろそろAirのSSも書かないとなぁ。多忙だなぁ、いろんな意味で。(爆死)
 まあいいや。今後のことは今後考えるということで。
 最後に一言。今回もこんなつまらない作品を最後まで読んでくださって有難う御座います。
 そしてこんなに長い後書きもきちんと読んでくださって凄く嬉しいです。その反面、少し恥ずかしいけど。(^^;
 次回作、期待はせずにお待ちくださいね。(ぉぃ)


2003.5.11 このままがいいよ(OVA版ONE〜輝く季節へ〜 長森瑞佳キャラクターソング)を聴きながら      

                       
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