○エピローグ
風呂上りの火照った身体をそよそよと心地よい風が撫でている。
半月よりも少し肥えた感の月がぼんやりと夜空に引っ掛かっていた。
時折聞こえてくる虫の声がいつもよりうるさく聞こえるのは気のせいだろうか。
喪失感だけが胸を支配していた。
何故そうなるのか…自分ではハッキリとした答えが出なかった。
ただ、彼女からの手紙だけは何度も読み返した。
それが切り離された世界への扉のように思えたから…。
そして今、扉を開ける鍵を左手に持っている。
彼女の綴ったラブレターの返事。ノートを破って作った粗末な便せんに書いてある。
ただの自己満足なのだろう。そんな事はわかっている。
彼女を少しでも知りたいと思い、幾度となく読み返した手紙から読み取れる事は、あまりにも大きく…少ない。
左手に持った紙切れ。それは、今の自分に出来る全ての事。そして、全ての思い。
自分が全て知っていたいというのは傲慢なのだろうか。しかし、知っていたらもう少し変わっていたはずだ。何故、気付いてあげられないのか。
後悔する事は簡単だ。大事なのは…。
…死後の世界があるのならそれはこの澄みきった夜空のどこかなのだろう。
胸を締め付ける。
やっと、決心したように両手を動かす。
シュッ…
右手に持ったライターを擦る。ノートの端にそれで火を付ける。
何の音も立てずに、自分の心を込めて書いた文章を飲み込んでいく炎。
ペンで書いた文字は炎で歪みすぐに火に包まれ、小さな灰となって風に乗る。
こうすれば、彼女のところまで届くような気がしたのだ。
徐々に勢いは増し、これ以上持っていると火傷をしてしまうというところまできた時、突風が吹いて手から紙を奪っていった。
落ちた涙は闇に吸い込まれ…紙は火の粉と灰を従えて夜空へ舞い上がる。
「俺は何も、何も分かってあげられなかった…」
それは天高く舞い上がり、呟きと共に儚げに消えていった…。
THE END
後書き
・どうも、そろそろ髪型を変えたいと思ってる要です。
初のオリジナル作品、ということでいささか緊張気味でもあります。
この物語を書こうと思ったきっかけは、2つ年下の僕の彼女の妹です。
ここではお話しはしませんが、聞きたい方がいましたら、チャットで聞いてくれれば話しますよ。
それにしても重くなってしまいました。人の『死』を扱うと、どうも重くなっちゃいますね。
読みやすいように、飽きにくいように1話の長さは短くしましたが、どうでしょう。
セリフも少なめにしてあります。こうなるとやっぱり僕っぽくない…。
まあ初なので、こんなもんでどうでしょうか。個人的には70点くらいあげたいです。(謎)
主人公の『杉浦優美』と『猪之原祐樹』。この2人の名前には意味は特にありません。
もしこれを読んだ方の中で同性同名の方がいたら…ごめんなさい。m(_ _)m
それから友人の相川君。これは単純です。
『相沢+北川÷2=相川』ということです。気付いた方もいるかもしれませんが。
物語には出てきませんが、彼のフルネームは『相川潤一』の予定でした。(爆死)
次回からは気を取り直して頑張ってSS書こうと思います。原典、メインキャラはまだ決めていません。
それでは皆さん、またどこかで会いましょう。(謎)
2003.5.13 New Sensation(水樹奈々)を聴きながら
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