君の思い出、遠い日の記憶となって・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『祐一君、栞ちゃんと幸せになってね!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


遠い日の歌

作者:閃光


 

「こんなときは、泣いてもいいんですよね?」

「泣いてくれないと、俺が困る」

「どうして」

「男が先に泣くわけにはいかないだろう」

「あは・・・・・・そうです、ね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの再開から、2ヶ月がたった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「祐一、祐一!」
「・・・んお?」

我ながら情けない声を出し、状況把握の為辺りを見まわす。

「んお、じゃないよ。もう学校終わりだよ」

隣には、呆れたような顔で立ってるいとこの少女。
ここは教室で、最後に覚えているのが5時間目だから、名雪曰く、どうやらHR中眠っていたらしい。
教室には2、3人生徒が残っているが、恐らくすぐにいなくなる連中だろう。

「ふぁぁぁぁ・・・・、何か用かぁ〜〜」

伸びをして立ち上がる。

「だから、祐一は帰らないの? って」
「今日は一緒に帰ってやれないぞ」
「そんなこと一言も言ってないよ。私は部活だし・・・」

まあそうだろう、名雪のスケジュールは大体覚えている。

「ま、取り敢えず、起こしてくれてありがとうな」
「うん、いいよ。じゃあ私、部活行くね」

そう言って、名雪は走り去った。

「それにしても・・・」

久しぶりに見たな、あゆの夢なんて。

 

俺は、忘れていた記憶の大体は思い出していた。本当にすこしずつ、この町に春が訪れ、雪が解けていくように、だが。

そして、あゆはもう死んだ。

俺の・・・好きだった女の子。勿論葬式には出たし、最近は行ってないが、たまに町外れの墓地に墓参りもしている。

ちょうど栞が病院で奇跡的に回復したとほぼ同時らしい。本人曰く、「夢の中にあゆさんが出て、「栞ちゃんは生きて・・・」って言ったんです」だそうだ。

正直、信じられなかった。だが、俺もその日、同じような夢を見ていた。

だから・・・俺は今あゆに言うなれば感謝に近い感情を抱きながら栞と付き合っている。

 

「さてっと」

そろそろ行かないと栞が怒るな・・・

そう思い、鞄をひっつかんで立ち上がる。

「っ・・・とと」

そこで、軽い立ちくらみ。寝てたからか・・・
おさまったところで校門めざし走る。

 

 

 

 


校門

 

 

 

「わるいわるい。寝てた」
「遅いです! 酷すぎます!! 30分も遅れてますよ!!!」

さすがは栞、俺のクラスのタイムスケジュールは暗記していて、毎日校門でピッタリの時間に待ち伏せしている。

 

ストーカーか、俺の彼女は。

 

「まあそう怒るな。アイス奢ってやるから」
「っ・・・・ゆっ許しません」

今一瞬戸惑ったのは気のせいか? まあいいが・・・

「あ、歌だ・・・」
「話しをそらさな・・・あ、この曲・・・」

ダメモトで話しを逸らしたのだが、やってみるものかもしれない。

「知ってるのか? 栞」
「はい、確か、遠い日の歌、だったと思います」

遠い日の歌・・・

「何か聞いた事あると思ったら・・・中学の時歌ったわ」
「そうなんですか? 私も歌いました。いい曲ですよね」
「まあな、一番人気の曲だったし・・・」

最初は相談で決めようとか言いつつ、最終的にはじゃんけんで決まってしまったと言う、まあ最近の典型的な決め方だ。
と言うか、相談でどうやって決めるんだって話だな。

「・・・・・・今日、あゆさんの夢を見たんです」

物思いにふけっていた俺に、唐突に栞が言った。

「あゆの・・・どんな?」
「どんな夢だった・・・とまでは覚えてないんですけど・・・」

栞が首をかしげる。

「あゆさん、とても嬉しそうで、寂しそうでした」
「嬉しそう、ねぇ・・・」

そう言えば俺の夢のあゆもそんな感じだったな。栞と幸せになれとかなんちゃらかんちゃら・・・

風向きが変わったのか、遠い日の歌がより鮮明に聞こえてくる

 

人はただ 風の中を

迷いながら 歩きつづける

 

その胸に はるか空で

よびかける 遠い日の歌

 

 

・・・・・あゆ、なんとなく分かった、お前の言いたいことが。

お前のことは忘れてしまって、栞と仲良くしてろってんだろ。

 

 

人はただ 風の中を

祈りながら 歩きつづける

 

その道で いつの日にか

めぐり合う 遠い日の歌

 

 

相変わらず無理しやがって、これは俺がしたいからしてる事なんだ。お前は別に心配することじゃあない。

栞だって同じだ。お前に命を助けてもらったんだ。感謝の気持ちくらい表すのは当たり前だろ。

 

 

人はいま 風の中で

もえる思い だきしめている

 

その胸に みちあふれて

ときめかす 遠い日の歌

 

 

おまえの記憶は、遠い日の記憶として、特別にとっておいてやるよ。

 

 

遠い日の歌が、最後のコーラスに入る。
もともとバッヘルベルのカノンがもとになってできた曲だから、ここが一番の盛り上がりどころだ。
ソプラノ、アルト、テナーの各パートが全ての力を出し合い、終わる。

 

「栞、今日はあゆのお墓参りに行こう」

「え・・・いいですね。 いきましょう!」

 

 

お前の好きな、この歌と一緒にな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・あいがとう・・・祐一君

fin


あとがき

どもす、閃光ゆうものです。この度はこんなもんを読んでいただき、誠にありがとざんす(しかも短い)

僕は、栞とあゆ萌えなので、2人が出てくるSSを書いてみました(栞、サブキャラっぽいけど)

ちなみに遠い日の歌は、僕が中学2年の時に、学校で3年を抜いて総合優勝し、市の公民館にいって10何年かぶりに2年が歌ったという記録を作らせてくれた曲です。

どんな曲か知りたい人はこちらへMIDIですが探しときました。いい曲ですよぉ〜。

あとですね、これは次処女作(なんじゃそら)つまり短編ではニ作品目にあたるSSですので、なんかあれば、ご指摘していただければ幸いです。

あゆがこの歌好きっていう設定は僕が付けました。いちお、最後にネタばらしって感じで(別になってませんが)書いてますのでそれもご了承の上で・・・原作やりなおして確認したりしないでくださいね(するか)

もういっこ、送信の際で手違いがありまして、もう一作品の「君の色」ってやつなんですが、本当にすみませぬ。このSSはお詫びの印としても送らせ
て頂きました。許していただければ、幸いです。

ではでは・・・・



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