祐一君・・・・・

誰だろう、この名前・・・・・

ボクはどこにいるんだろう・・・・・







あゆとタイヤキ






 ボクは目を開けた。

 周りにはゴミや残飯が散らかっている。

「ボク、どうしてここにいるんだろう・・・・・」

 そこは昔、見たことのある場所・商店街の路地裏だった。

「ボク、今まで何をしてたのかな・・・・」

 今まで何をしていたのか、記憶がない。そう、木から落ちたあの日から・・・・・


グゥ〜


「うぐぅ・・・・お腹減ったよぅ・・・・・」

 なぜか、お腹が鳴った。今まで、食べてなかったのだろうか?何も思い出せなかった。

「うぐぅ・・・・お腹減ったよぅ・・・・・」

 ボクはまず、体を起こした。

「どこかに食べるもの、ないかなぁ・・・・」

 ボクは食べ物を求めて、商店街のほうに入っていった。

「うぐぅ・・・・食べ物ないかなぁ・・・・」

 ボクはお腹を鳴らせながら、商店街を歩いていると、いい匂いがしてきた。

「このおいしそうな匂い・・・・タイヤキ?」

 そう、この匂いには覚えがあった。

 “タイヤキ”という名前のこの匂い。忘れることのできないこの匂い。

「タイヤキ〜」

 ボクはタイヤキの匂いのするほうまで走っていった。

「どこかなぁ・・・・・あれかな?」

 目の前にある屋台には“タイヤキ”の字が書かれていた。

「み、見つけた〜!!」

 ボクは大急ぎでその屋台まで駆け寄った。

「おじさん、タイヤキを袋いっぱ〜いください」
「あいよ!!今新しいのができたばかりだから、暖かいぞ」

おじさんはそう言いながら、慣れた手つきでタイヤキを袋に入れていった。

「はい、嬢ちゃん。代金は・・・・・」
「え!?そんなに高いの!?うぐぅ・・・・どうしよう・・・・」

ボクはお腹が減っていたために“袋一杯”と言ってしまった。さらに、財布がないことにも気づいてしまった。

「あの・・・おじさん・・・・」
「ん?どうした、嬢ちゃん?」
「うぐぅ・・・・・ごめんなさい!!」

 ボクはそう言うと、タイヤキの入った袋を持って走り出した。

「ま、待て、タイヤキ泥棒〜!!」

 おじさんはボクの後を追いかけてきた。

「おじさん、ごめんなさいぃ。後でお金は払うよぉ」

 ボクは必死で逃げた。






 どのくらい走っただろうか、周りには木々が生い茂っていた。

「あれ、ここ・・・・・」

 その場所を、ボクは懐かしいと思った。

 奥に入って行ってみると、そこには開けた場所があった。真ん中あたりには大きい切り株がある。

「ここ、どこかで見た覚えがあるような・・・・」

 確かにそこは昔に見たことのある場所だった。


グゥ〜


「うぐぅ、お腹が・・・・・そうだ、さっきのタイヤキがあるんだ!」

 ボクは今までその存在を忘れていたが、タイヤキの袋のことを思い出した。

 一つ取り出してみると、まだ暖かい。

「お腹も減ったし・・・・食べよう」

 ボクは屋台のおじさんを思い出したが、忘れて食べようと思った。

「暖かくておいしい・・・・・」

 ボクは味わうようにタイヤキを食べた。食べているうちに、一つの疑問が浮かんだ。

「そうだ、お母さん達はどこにいるんだろう?」

 ボクはお母さん達がどこにいるのだろう、と疑問に思った。

「・・・・・家に一度行ってみようかな・・・・」

 ボクはタイヤキを食べ終えると、すぐに家に向かった。







 ボクは家に着いた。しかし、表札を見ると別の人の名前がついていた。

「お母さん達、どこに行ったんだろう・・・・」

 ボクは急に寂しくなった。お母さん達はどこに行ったのか。ボクはなぜあの場所に居たのか。すべてがわからなくて、ボクは寂しかった。


「お母さん・・・・」


 ボクはお母さん達がいないという寂しさと疑問をすべて抱え込み、さっきまでいた場所に行った。

 その晩はそこで過ごした。

「お母さん達、どこに行ったんだろう・・・・」

 ボクは寂しさでいっぱいだった。

「今晩はここで寝よう・・・・・」

 ボクは寂しさを忘れるように静かに眠った・・・・







 目を覚ますと、ボクの背中のバックに雪がついていた。

「昨日は雪が降ってたのか・・・」



グゥ〜



 またボクのお腹が鳴った。

「うぐぅ・・・・昨日のタイヤキは全部食べちゃったし・・・・」

 ボクは悩んだ。お金がない。でも、タイヤキを食べたい。

「うぐぅ・・・・困ったよ・・・・・」

 ボクは悩みに悩んだ末、ある結論にたどりついた。

「あの屋台のタイヤキが食べたい!!」

 まったくお金に関係のない結論が出た。

「あそこのおじさんに謝って、タイヤキをもらうよ!」

 どうしてそう思うのかわからなかったが、脳が食べたいと言っていた。

「善は急げ、だよ。早速商店街に行くよ!」

 ボクはお腹が鳴るのを少しだけ気にしながら、商店街に向かった。







 ボクは商店街に着くと、すぐにあの屋台を探した。

「どこかなぁ、あの店・・・」

 昨日の場所が思い出せなかった。

「昨日は匂いがあったから行けたけど・・・・」

 今日はさっぱり匂いがしなかった。

「うぐぅ・・・・どこにあるんだろう・・・・」

 もう三十分も探しているのに見つからない。いったいどこにあるのか・・・・

「あ〜、あった〜!!」

 やっと屋台を見つけた。

 探していた目的も忘れて、タイヤキの匂いに誘われてしまった。

「おじさん、タイヤキ10個!!」
「あいよ!!」

 おじさんは昨日のことを忘れているようだった。

「はいよ、嬢ちゃん」
「ありがとうおじさん」
「嬢ちゃん、代金は・・・・」
「そ、そうだった・・・・」

 ボクはすっかり忘れていた。

「ど、どうしよう・・・・」
「どうしたい?嬢ちゃん」

 屋台を探している時は謝ろうと思っていたのに、忘れてしまっていた。

「お、おじさん・・・・」
「どうした?」
「うぐぅ・・・・・ごめんなさい!!」

 ボクはタイヤキの入った袋を持って、走り出した。

「あ、待て〜!!」

 おじさんが追いかけてくる。これでは昨日と同じだ。

「おじさん、ごめんなさい!!」

 ボクは無我夢中で走った。

 走っているうちに商店街の入り口が見えてきた。

「ま、まずは外に出ないと」

 ボクは入り口に向かって走った。

 すると、そこには男の人が立っていた。

「そこの人!」

 男の人はこちらを向いた。

「うぐぅ、どいて〜!」
「えっ!?」

 ボクと男の人は派手にぶつかった。

「うぐぅ、いたいよ・・・」

 こうしてボクと祐一君は再会した・・・・・



(終)

あとがき


・どうも、二作目としてこのSSを書いたgakekです。
 私としては、タイヤキやのおじさんの口調を覚えていなかったので、その部分はオリジナルです。
 最初にあゆが路地裏に現れたのもオリジナルですね。
 あゆの両親がどこに行ったのかはみなさんのご想像におまかせします。
 ヘッポコな小説ですが、皆さん読んでいただきありがとうございます。
 それではまた。


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