ピーンポーン・・・

 とある少女が水瀬家のインターホンを押した。
 ショートボブの髪型に、色素の薄い髪、そして、大切そうに体に巻くストール・・・
 彼女の名前は美坂栞。今日はある目的のために水瀬家にやってきたのだ。

それは・・・



それぞれのバレンタインデー




 そう、バレンタインデーのチョコレートを作るためだった。

「あら栞ちゃん、待ってましたよ」
「お邪魔します。あの、それで、祐一さんは・・・」
「心配要りませんよ。名雪に頼んで、外に連れ出してもらっていますから・・・」
「そうですか。それを聞いて安心しました。ところで・・・」
「はい、なんでしょう?」
「秋子さんの隣にいる女の子は・・・?」
 秋子さんの隣には、小柄で大きなリボンが特徴的な、スケッチブックを大切そうに抱えている少女がいた。

「ああ、この子は、上月澪ちゃんって言って、私の知り合いの娘さんです」
『こんにちはなの』
「秋子さん、この子・・・」
「ええ、そうなんです。しゃべることが出来ないんです」
「そうですか。でも、スケッチブックがあるから、会話には困りませんね」

うんっうんっ!!

「えっと、澪さんでしたよね。」
『さんはいらないの』
「じゃあ、澪ちゃんって呼ばせてもらいますね」

うんっうんっ!!

 澪は嬉しそうに大きくうなずいた。

「で、澪ちゃんは、今日はどうしてここに・・・?」
『バレンタインのチョコを作るの』
「そうですか。なら私と一緒ですね」

うんっうんっ!!

「でも、澪ちゃんの近所には、料理の得意な人はいないんですか?」
『里村先輩がいるの』
「では何故、その里村先輩に教えてもらわないのですか?」
『里村先輩のは甘すぎるの・・・』
「そ、そうなんですか?」
『そうなの』

 栞は困惑した。  女の子は、大抵甘いものは好きな人が多く、普通の甘さではそんなに甘いと思ったりはしない。
 栞自身、その辺の甘味屋でも普通に食べられる。祐一はかなり辛そうだったが・・・
 それなのに、里村先輩と言う人の作るものは甘すぎると言うのだ。一体どんな甘さなのか・・・

「じゃあそろそろ作り始めましょうか」
「あ、はい。そうですね」
『作るの』

 こうして、3人のバレンタインのチョコレート作りが始まった・・・




数時間後・・・

「出来ました!」
『出来たの!』

 2人とも完成したようだ。

「2人とも、上手に出来ましたね」

 秋子さんが微笑んで言う。

「はい、秋子さんのおかげです。ありがとうございました!」
『ありがとうございましたなの!』
「澪ちゃん、バレンタインデー、頑張ってくださいね!」
『栞さんも頑張るの!』
「はい、ありがとうございます!」
「さあ、後はラッピングですよ」
「あ、そうでしたね」
『忘れてたの〜』

 2人はラッピングを済ませ、それぞれのチョコレートを手に自分の家へ帰って行った・・・




2月14日 バレンタインデー

「祐一さ〜ん!!」
「よお、栞じゃないか」
「今日が何の日か知ってますか?」
「あれか?お菓子会社の陰謀が渦巻く日か?」
「・・・素直にバレンタインデーって言ってください・・・」
「意味的に間違ってはないだろう?」
「それでもです!!で、はい、祐一さんにチョコレートです!!」
「お、サンキュー、栞。ありがたくもらうぞ」
「はい!祐一さんの好みに合わせて、ビター味にしてますから」
「おお、俺の好みを知っていたのか?」
「はい。だって、祐一さんですから・・・」
「栞・・・ありがとうな」
「はい!!」



一方、澪の方は・・・

くいっくいっ

「お、その呼び方は、澪か?」

うんっうんっ!!

「どうした?何か用か?」
『あのね』
『今日はバレンタインデーなの』
「ああそうだな。製菓会社の売り上げが一気に伸びる日だな」
『そんな言い方しちゃだめなの!!』

ばんっばんっ!!

「分かった、分かったから、スケッチブックで叩くのはやめてくれ」
『あのね、それでね』
『チョコなの!!』
「おお、俺にくれるのか?」

うんっうんっ!!

「ありがとうな。早速食べていいか?」

うんっうんっ!!

「じゃあ遠慮なく・・・うん、うまいぞ?」

『よかったの〜』
「こりゃホワイトデーにすごい奴をプレゼントしないとな・・・」
『たのしみなの♪』



 どちらも上手くいったようである。よかったよかった・・・



おまけ

「浩平・・・」
「お、茜か。どうした?」
「今日はバレンタインですね・・・」
「ああそうだな」
「・・・はい、私からのチョコレートです」
「・・・なあ茜。甘さは抑えてくれたか?」
「はい、ちゃんと抑えました・・・」
「そうか、じゃあいただくぞ」

ぱくっ

「・・・10倍の甘さに」








「ぐわあああぁぁぁぁぁ!!!」








おまけ2

「祐一さん」
「あ、秋子さん」
「今日はバレンタインデーなので、私もチョコレートを作ってみました」
「へー、秋子さんの手作りですか?」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。じゃあ後でいただきます」




「秋子さんの手作りか・・・どんな味なんだろうな・・・」

ぱくっ

「・・・・・・・・・・・・・・・こ、この味は・・・!!」

ばたっ

そして、『相沢祐一の非現実的な日々』へ・・・(続かん続かん)
―おしまい―



あとがき


AAA「ふう、このSSも完成〜」
栞「相変わらずすごい速さですね・・・」
AAA「さて今回は、ゲストに澪を呼んでいます」
澪『栞さん、こんにちはなの』
栞「あ、澪ちゃん、お久しぶりです」
AAA「今回は、どんな感じだ?」
栞「そうですね・・・思いっきり時期はずれと言う感じがしますが・・・」
澪『このSSを書いた時は、まだ10月なの』
AAA「仕方ないじゃん、思いつきで書いてるんだから」
栞「毎回思うんですけど、いい加減ですね・・・」
澪『プレゼントSSでそれをやったらいけないと思うの』
AAA「でも、だからといって、2月まで待ってもらうわけにもいかんだろう」
栞「それはそうですけど」
澪『無意味に待たせるのはいけないことなの』
AAA「さていかがでしたでしょうか700ヒット記念SS!」
栞「相変わらず長さの割に内容がありません!!」
澪『なのなの』
AAA「それを言うなって何回も言ってるだろうが!!」
栞「だって本当のことですし・・・」
澪『なの』
AAA「とにかく!ゆーとぴあさん、700ヒット、ありがとうございました!!」
栞「これからも応援していただけるとうれしいです」
澪『またキリ番踏んだら報告して欲しいの』
AAA&栞&澪『「それでは、さようなら!!」なの』




(思いつきとはいえ、よく毎回ネタが出ますね)
(自分でも不思議だ・・・)
(『ONEにも手を出すの?』)
(どうだろう・・・)



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