第七話(作者・RAIZEN伍長さん)




「・・・何だコレ?」

 飛び出してきたのはモコモコとした物体だった。
 最初の頃は飛び出して転がり続けていたので全く分からなかったが、回転が止まって次第にその形状が明らかになっていく。

「わー、祐一さん、これ猫のぬいぐるみですよ!」

 ベンチから立ち上がると、栞はそのぬいぐるみのほうへ走っていった。
 そしてそのぬいぐるみを拾い上げる。
 白い毛で覆われたそのぬいぐるみの顔には、かわいらしい大きな目が二つついていた。

 栞は突然現れたぬいぐるみを疑う事をせず、アイスクリームを持っていない方の手で抱き上げ、ベンチの方へと戻っていった。

「祐一さ〜ん、見てください、こんなにかわいいぬいぐるみが降ってきましたよ」

「降ってきたという表現は適切じゃないぞ」

 ゲラゲラ笑いながら祐一は答えた。
 それを見て栞は、頬を膨らませながらこう言った。

「ちがいますよ、これは神様が私たちにくれたものです!ドラマチックな展開じゃないですか。それに・・・・」

 顔を真っ赤に染めながら、彼女はさらに口を開いた。

「・・・・・きっと神様が私たちの関係を祝福するためにこのぬいぐるみを送ってくれたんですよ・・・・・・・」

 今度は祐一が赤くなる番だった。

 今日の栞はとても大胆で、学校でいつも顔をあわせているため、彼女のいろはを知りつくしていると思っていた祐一でさえこのことにたいしてはどう対処すればいいのかわからなかった。

 結局どう言葉を返せばいいのか分からなかった祐一はベンチから立ち上がる。
 そして栞がソフトクリームを食べている左手の手首をつかんで、引っ張った。

「よ、よし!栞、次の所へ行くぞ!どこがいいんだ?」
「わわっ、祐一さん!まだソフトクリーム食べ終わってないです〜!」

 そう言って栞は祐一のなすがままに引きずられていった。
 もちろん右手には栞曰く『神様から送られてきた』ぬいぐるみがしっかりと抱かれていた。

 しかし、そのぬいぐるみの目の瞳孔が「キュィ、キュィィィィィン…」という不吉な音を立てて不気味に動いていることを、栞は全く気づかなかった。







 二人が立ち去ったベンチの後ろの藪から、二つの影が現れた。

「栞ちゃん、ちゃんと持っていってくれたね」

 そう言ってクスクスを笑う名雪。

「小型CCDカメラ付きのぬいぐるみとはな…一体誰が作ったんだよ?」

 ビックリ顔で名雪に問いかける北川。

「もちろんお母さんだよ」
「ハハ、水瀬の母さんはやっぱスゲェ人だよ・・・・」



 続く     

                                   第八話ヘ続く

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あとがき


 初めまして。月本 樟です。
 実話を元に書きましたが大分長くなりました。すいません。
 次回も頑張るつもりなんでよろしくお願いします。



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