お見舞い






 今日は祐一さんの家へお見舞いです。
 祐一さんが風邪で寝込んでしまったので、私の特製のお弁当を祐一さんに食べさせてあげるんです。
 でも祐一さんもだらしないです。たかだか雪合戦を一日中して、そこでスケッチのモデルになってもらった位で風邪を引くなんて・・・。
 これは張り切って、体力のつく食べ物を食べて貰わないと、いけませんね。
 私は一生懸命お弁当を作りました。祐一さんもきっと喜んでくれるはずです。



 そうこうして出かけようとすると、お姉ちゃんが腕を組みながら

「あなた、そのお弁当、本当に相沢君に食べさせるつもりなの?」

 と聞いてきたので

「勿論食べてもらいますよ」

 と両手でお弁当を持ち上げて、笑顔で答えました。

「そ・・・そう・・、きっと相沢君も喜ぶわよ。でもね彼は病人だから、少し量を減らさないと駄目よ」

 と少し弱い口調で言ったので、

「だめです。これは私と祐一さんしか食べたらいけないんです。誰にも上げません」

 と強い口調で答えました。

 何かと理由をつけられて、お姉ちゃんにお見舞いの邪魔されたくありませんからね。

「それじゃあ行って来るね〜」

 元気に玄関を飛び出しました。

「はぁ〜〜、相沢君も災難ね。これじゃあ、結婚してから大変ね」











 途中転んだりして大変でしたが何とか、祐一さんの家に着きました。

 これでまた祐一さんと甘いひと時が・・・楽しみです。

 早速祐一さんの家のチャイムを鳴らします。

「はい水瀬ですが・・・」

 玄関から出てきたのは、秋子さんでした。秋子さんは私がお姉ちゃんの次に、目標とする女性です。あの年齢なのに、秋子さん位のスタイルと気立てがあったら祐一さんに子供扱いされないのに・・・。
 私はそんな秋子さんを、少しうらやましそうに見ながら

「あっ!! こんにちは、美坂ですが、祐一さんのお見舞いに来ました。祐一さんは元気ですか?」

 と元気よく訪ねると、少し深刻そうな顔で、

「あっ!! 栞ちゃんね。祐一さんは重い病に伏せっていて、かなり辛そうよ。今救急車を呼んだところなの」

 と少し深刻そうな顔で、少し慌て気味に答えました。

 ええ!! そんな!? 祐一さんが、祐一さんが、嘘ですよね? また離れ離れになるんですか? 私のせいで祐一さんが・・・

「え!! 祐一さん大丈夫なんですか? 大丈夫なんですか!? 」

 私は慌てて、秋子さんに飛びつき、秋子さんに詰め寄って尋ねました。
 すると秋子さんはいつもの笑顔に戻り、左の頬に左手を当てて

「ごめんなさい。冗談よ。ほら・・・栞ちゃん泣かないで」

 とポケットからハンカチを出して、私の顔に当てました。

 私泣いていたんですね。

「ひどすぎますよ秋子さん!! 冗談でも悪質すぎます!! そんな人嫌いです!!」

 と顔を上げ、秋子さんの両腕を強く掴み、力一杯に秋子さんを非難しました。

 本当にひどいですよ。本気で心配したじゃ無いですか!!

「ごめんなさいね。ちょっとからかって、みたかっただけなの」

 と申し訳なさそうに答えました。 

「もうそんな冗談やめてくださいね、秋子さん」
「本当にごめんね栞ちゃん」

 次やったら、本気で怒りますからね、秋子さん。
 でも祐一さんが、重病で無くて本当に良かった。早く祐一さんの看病をして・・・

「でもまさか栞ちゃんが、そこまで取り乱すとは思わなかったわ。それだけ祐一さんにお熱なのね?」
「そ・・・そんな事無いです」

 と小さく首を振りました。

 あ・・・秋子さん、なんて事いうんですか。恥ずかしいじゃ無いですか〜。

 すると秋子さんは、サッと後ろに向いて

「あら違うの? なら祐一さんには、名雪のお婿さんになってもらおうかしら?」
「そ・・・そんなの駄目です!!」

 と私は秋子さんの腕を後ろから掴んで、力いっぱい答えました。
 すると秋子さんはすかさず振り返って

「あらどうしてなの? 好きでも無いんでしょ?」

 と少し意地悪そうに聞いてきました。

「そ・・・そんな事・・・」

 と頭を下げて、小さく呟くと

「じゃあ、祐一さんが好きなの?」

と秋子さんが頭を優しく撫でながら聞いてきたので

「そ・・・そんな事・・・言えません」

 と頬を赤らめて、口ごもりました。

「あらあら、無理しないで栞ちゃん。顔が真っ赤よ。今日は愛妻弁当ね」

 といつものように微笑み、私の顔を手で上げながら言いました。

「あ・・・秋子さん意地悪です。そんなこという人、嫌いです」

 と顔を膨らまして、答えました。




 それから私と秋子さんは家の中に入り、

「さあ、栞ちゃん上がって。二階で祐一さんがお待ちかねよ」

 と秋子さんに階段まで招かれて、私を案内してくれました。

「それじゃ、二階に上がりますね。秋子さん」

 と言って二階に上ろうとすると、秋子さんが私のそばに寄ってきて、

「でもね、祐一さんは病気なんだから、この前みたいに、祐一さんを興奮させては駄目ですよ〜」

 と耳元でささやきます。

「な・・・何言ってるんですか!? そ・・・そんなわけ無いじゃないですか!?」

 と慌てて反論します。

「ふふ冗談よ。でもかなり慌てているようよ。本当にオアツイカップルね」

 と私の顔を向いて少しウインクして立ち去っていきました。
 ま・・・まさかこの前の祐一さんの・・・その・・・あの現場を見られていたんでしょうか?
 祐一さんのおっしゃる通り油断ならない人ですね。

 そう思いながら、暫く秋子さんが去っていくのを呆然と眺めて居ました。





 それから2階に上った私は、『祐一の部屋』と書かれたプレートがあるドアに行き、ノブを回しました。
 開けた先には祐一さんが寝ているベッドがありました。

 祐一さんは寝ているようですね。寝ているのを起こすのは可哀想ですから、そっとしておきましょう。でも・・・

 祐一さんは顔から寝汗を掻いて、少し苦しそうです。

「祐一さん。栞です」

 と祐一さんのベッドのそばに来て、タオルで祐一さんの顔の寝汗をふき取りました。

「う・・・うーーーん」

 なんだか辛そうです。

 もし風邪をこじらせて、死んでしまったらどうしよう。

 という焦燥感が募りました。

 ただの風邪なのに・・・風邪なのに・・・

 あの時の祐一さんも、こんな気持ちだったのかも知れませんね。

 などと考えるていると、無意識のうちに祐一さんの左手を握っていました。
 すると祐一さんがおぼろげながらに、

「うーーーんし・・・おり」

 と呟き少し安らかな表情に戻りました。

 そうです!! 過去の事はもう忘れないといけないです。
 もう私も祐一さんも何処にも行かないんですから・・・。


 そう考えていると無意識に、祐一さんの布団に顔を当てていました。

 暖かいです。この際、風邪が移ってもへっちゃらです。

 等と考えながら、暫くうっつらうっつらしていました。





「栞・・・起きろベットの上に体を乗せるなよ」

 どれ位の時間が経ったのでしょうか? 部屋は真っ暗です。聞き覚えのある声がします。

「う・・・ん? 祐一さん?」

 と目を擦って訊ねると

「ああ祐一さんだ。重たいからベッドから離れてくれないか?」

 と私の頭を撫でて言いました。

「ひどいです!! 重たくなんて無いです!!」

 と右手を上げて抗議します。

「あ・・・ああ分かった。悪かったって。でもお願いだからどいてくれ。少し辛いから」

 とベッドから半分起き上がり、いつもより優しく言いました。

「ごめんなさい。いつもの癖で。でも良かったです。元気になってくれて」

 と祐一さんのそばによります。

「でもいつからお見舞いに、来てくれたんだ?」

 と私の頭を撫でながら訊ねました。

「えーーと昼からですよ。」
「それは悪かったな。どうせなら、起こしてくれたら良かったのに」

 と頭をかきながら、申し訳なさそうに答えました。

「すみません。つい辛そうな祐一さんを起こすのが、怖くなったんです」
「ん? どうしてだ?」

 と不思議そうに訊ねます。

「え・・・そのもし起きなかったらどうしようと、もう・・・お別れなんて嫌ですから」

 と小さく呟きました。

 すると祐一さんはあははと笑いながら、

「安心しろ栞。お前みたいなドジでノロマな子供を置いて、あの世へ行くわけ無いだろ」

 と答えました。

「祐一さんひどいです!! 私もう大人です!! そんなこと言う人嫌いです!!」

 すると祐一さんは、私の両肩に触れて、私を真正面から見ながら

「それにだな、死んだらお前の弁当が、食べれなくなるだろ」

 と答えました。

「な・・・何言ってるんですか〜。恥ずかしいじゃないですか」

 と顔を赤らめて、顔を伏せて答えると、

「だから何処にも行かない。だからお前も過去の事はなるべく考えずに、未来を見ような!!」

 と強く私の肩を握りました。

「まあ未来とは・・・こういう事だ」

 と祐一さんは右手で私の頭を押さえながら深〜いキスをしてきました。







 突然の出来事に私は、暫く呆然としました。

「ゆーういちさぁーーん突然なんて事するんですか!?
恥ずかしいじゃないですか!?」

 かなり恥ずかしかったので、照れ隠しをしながら、祐一さんの胸を何度も叩きました。

「わ・・・悪かった。許してくれ。でも痛いからもうやめてくれ」

 と私の肩から手を離して言いました。

「もーーー」

 と顔を膨らまして拗ねます。


 でも本当はうれしかったです。


「いてて・・・さすがに叩きすぎだろ。これでも一応病人なんだぞ。少しはいたわれ」

 とベッドに沈み込みます。

「すみません。少し強すぎましたね」

 と謝り祐一さんの胸の辺りを、さすります。

「ああ・・・おかげで一日風邪が治るのが遅くなったぞ」

 と再びベッドから起き上がり、いつもの表情で答えます。

「そんなわけ無いでしょ!! 怒りますよ?」

 と抗議の目で訴えます。

「でもな、できれば今日一日看病してくれないか?でないと治らん」

 と祐一さんが私をベッドに手で連れ込んで聞きました。

「はい!! でもお弁当は食べてもらいますよ〜。冷めてますけどね」

 といつもの笑顔で元気に答えました。

 祐一さん!! 今日は一日中、あ・な・たの看病をしますよ〜。



 そのあとどうしたかは企業秘密です〜。

(終わり)

後書き


・ふーーまた下手な作品を世に送り出してしまった。(苦笑)
 アイディアって中々浮かばないのもですね。
 実は秋子さんをうまく絡ませたり、澪とかを出したかったのですが、こんな平凡な形になってしまいました。
 次回はもっと長編で行きたいと思います。
 こんなヘタレですがこれからもよろしくお願いいたします。


トップへ      戻る