逮捕しちゃうよっ!!名雪&香里
第八報告書 「美しき人 その名はシュン(汗)」
華音署女子更衣室にて。
「ねぇ名雪、今日一人転属してくるって知ってる?」
「うん、男の人が来るんだよね?仲良くなれると良いな〜。」
「あら名雪、浮気宣言?」
「ち、違うよ〜。ただお仕事の仲間として仲良くしたいって意味だよ〜。」
「冗談よ、冗談。ほ〜っんと名雪ってからかいやすいわね〜。」
「う〜 意地悪。」
からかう香里にむくれる名雪。
「私はカッコイイ人だったら嬉しいですね♪」
「栞〜、あんた俗物過ぎ。」
「む〜良いじゃないですか、近くに好きな人が居る人や既にらぶらぶ〜な彼氏が居る人には独り身の寂しさなんか分かりませんよ〜だ。」
呆れた顔の香里に栞はべーっと舌を出して抗議する。
「あ、あたしは別に北川君とは・・・」
「お姉ちゃん、誰もお姉ちゃんと北川さんの事だなんて言ってませんよ〜? でも、そんな反応をするって事はやっぱりそうなんですねぇ〜♪」
「は、謀ったわね栞。」
「美坂香里は良いお姉ちゃんですけど、彼氏がいるのがいけないのです。」
「彼氏じゃないわよ。・・・まだ」
「何か言ったお姉ちゃん?」
「い、言ってないわよっ!」
と、某名台詞を交えた他愛ない姉妹喧嘩の横では・・・
「えぇ〜!? 確かにわたしは祐一とらぶらぶ〜だけど〜 はっきり言われると恥ずかしいよ〜♪」
と名雪は頬に両手を当てて照れりこしながら不思議な踊りを踊っていた。
それから数分後。
「こんにちは〜、失礼します。」と一人の女性が更衣室に入って来た。
見た目は栗色の髪を肩まで伸ばした、神秘的な雰囲気を持つ中性的な顔立ちをした美人である。
「私、今日から華音署に配属になりました氷上 シュンです。」彼女はそう挨拶した。
「女にしては、ずいぶんハスキーな声ねぇ?」
訝しがる香里。
「あ、ここのロッカー空いてますね。」
シュンは空いているロッカーに荷物を入れる。
「ねぇ香里、男の人じゃなかったの?」
「う〜ん、おかしいわねぇ?事前に入手した情報では確かに男って聞いていたんだけど・・・」
不思議がる名雪と納得がいかない様子の香里。
周りが騒いでいる中でシュンは着替え始め、上着を脱いだその時。
「「「「「うそっ、大きい!?。」」」」」
そう、シュンのバストは90cmを超えていたのである。
ちなみにこのお話における各主な女性陣のバストサイズはと言うと・・・
水瀬 名雪 86cm 美坂 香里 84cm 美坂 栞 80cm 水瀬 秋子 86cmである。
「ちょっと、なんで警察学校時代はあたしと同じ84cmだった名雪の胸が1年ちょっとで2cmもアップしてるのよ?」
「えっと、きっと祐一にいっぱい吸ったり、揉まれちゃったからかなぁ〜? えへへっ、今ならお母さんにも負けないよ〜♪」
「あらあら名雪、本当の色気って言うものは大きさだけで決まるものじゃないのよ?」
「む〜、でもでもきっとお母さんに追いついてみせるもん。」
「はいはい♪」
「くうっ、なんか悔しいわねぇ〜。」
「香里も、北川君に揉んでもらったらすぐに大きくなるよ〜。」
「なんでそこで北川君が出てくるのよっ。」
「そうよ香里ちゃん、愛する人からの性的刺激はバストの発育に良い影響を与えるのよ。」
「秋子課長までっ!!」
「えう〜、私ももっとバスト欲しいです〜。課長、同性では駄目なんですか?」
「そうねぇ。私はやった事が無いからわからないけれど、多少は効果があるかもしれないわね?」
「お姉ちゃんっ、私のバスト揉んでください。私もお姉ちゃんのバストアップに協力しますから。」
「あ、あたしは遠慮しておくわ(汗)。ってこらっ栞、胸揉むの止めなさいっ!あたしにはそんな気無いんだから、あんっ!」
もみもみ
「う〜、姉妹なのにこの差はなんなんですかぁ、悔しいですぅ〜。こんなおっぱいなんかこうしてくれます〜。」
もみもみもみもみ
「あんっ、やんっ、栞止めて〜。」
とまぁバストサイズについてはこんなやりとりがあったそうな。
ちなみに彼女たちの他のサイズはと言うと・・・
「こらっそこのナレーター何公表してんのよ? 前話であんだけぶっ飛ばしたのにま〜だ懲りないわけ? だったら・・・」
(またもやメリケンサック一ミリ秒で装備)
「衝撃のファーストブリッドッ!」
ドゴォッ
「もげっ?」
「撃滅のセカンドブリッドォォォォォォッ!!」
ゴガァァァン
「めぎょっ?」
「抹殺のラストブリッドォォォォォォッ!!!」
ドガグシャズガーン
「うわらばぁ〜!?」
「まぁあたしはアルターなんて使えないから台詞だけよ、感謝しなさい。」
「た、例えアルターが使えなかったとしてもあなたにメリケンサックで三連発されたら充分に逝けますって・・・。しかも全然違和感無いし。」ぴくぴくぴくぴく(ただ今痙攣中)
「何か言ったかしら?」
「い〜え滅相もございません。がくっ(@_@;)」
「これからは女の子の秘密をばらすつもりならそれ相応の覚悟をする事ね。」
肝に銘じておきますぅ。
「あらあら、私は別に構わなかったんだけど?」
「わたしも良いよ〜?」
自信があるのか気にも留めてないのか嬉しくもとんでもない事をのたまう水瀬親子。
「あんた達は例外中の例外よ。全く。」
これには呆れる以外に無い香里様であった。
話が大幅に横道にそれたが、交通課では水瀬親子が一番大きくそれ以上の人はいなかったのである。
「うわぁ〜、大きいねぇ〜。」
「うぅ〜、羨まし過ぎです。」
「どうやったらそんなに大きくなるのかしら?」
それぞれが感想を言い合っていると、シュンの胸元からコロンと何かが落ちて来た。
「あっ、これパッドだよっ。」
「な〜んだパッドだったんですね。」
「にしてもずいぶん大きなパッドを使ってるわねぇ。」
そう、シュンの巨乳はパッドによるものだったのだ。
「あっ、ごめんなさい。それ私のです。」
下着姿のシュンが香里達の方を振り向いたその時、「え゛っ!?」「うにゅっ!?」「えうっ!?」3人の動きが止まった。
そしてその3秒後・・・
「「「「「うっきゃ〜〜〜〜!?!?!?」」」」」
着替えをしていた女性署員全員が大絶叫を上げた。
そりゃそうだろう、シュンの下半身には男性特有の『もっこり』があったのだから・・・
「いやん♪(ぽっ)」
下半身を押さえて恥らうシュン。ちなみに下着も女性用を使っていたので女性陣のショックは3倍増しであった。
それはそ〜と「いやん♪」じゃないだろ〜〜〜〜(ナイアガラ滝汗)
場所は変わって交通課。
「ごめんなさいね、シュン君にはちゃんと注意していたんだけど。」
といつものポーズに困ったわねぇという表情で秋子課長は香里、名雪、栞の三人にそう言った。
「シュン君、彼女・・・じゃなくて彼は元々こうだったわけではないの。以前に痴漢逮捕の為に囮役をやってもらって、見事に大役を果たしてくれたんだけど、それを上層部が気を良くして何回もやらせてたら・・・」
「こうなっちゃったって訳ですね(汗)」
「そうなの。本人も女性警察官扱いで構わないからって聞く耳を持ってくれないし。それであなた達に彼の事をお願いしたいんだけど。」
「・・・あらあら、どこへ行く気かしら三人とも?」
こそ〜っと逃げようとする三人だったが、他の人ならいざしらず秋子課長から逃げられる訳が無かった。
「まぁ課長直々の命令だからしょうがないわね。とにかく彼女、じゃなくって彼を男らしくさせる作戦立てるわよ。」
「「お〜♪」」
「あ、あの〜美坂さん、水瀬さん。私は別に男らしくなんてなれなくて良いのだけど?」
「さて、どんな作戦を立てようかしらねぇ?」
「みんなで一生懸命考えればきっと良い考えも出て来るよ〜。」
「そうです、3人寄らば文殊の知恵です。」
「あの〜、聞いてくれてます?」
シュン君、あ〜なった三人は誰にも止められないからあきらめたまえ。
「そ、そうですか・・・(泣)」
先ずは香里の提案。
「そうねぇ、銃でも撃たせてみれば男としての自覚も戻ってくるんじゃないかしら?」
「それは良いアイデアだね〜。」
「それなら早速実行です。」
と言う訳で署の射撃場で拳銃を撃たせてみたのだが・・・
パンッ
「きゃんっ。」
ドタッ
「いった〜い。」見事にのけぞり尻餅をついた。
「それニューナンブでしょ?」
ジト汗流す香里。
「私でもそこまでは無いです。」と栞。
ちなみに警察の使用しているニューナンブには撃った反動で尻餅つけるほどの衝撃は無い。
「これは失敗ね。次行くわよっ次っ。」
お次は名雪の提案。
「格闘技やらせたら漢の魂が揺さぶられるかもしれないね?」
「「なるほど。」」
「と言う訳で北川君、氷上君の相手して頂戴。」
「いっ!?俺がかぁ?」
今度は署の道場で柔道をやる事に。
道場で柔道着に着替えて対峙する北川とシュン。
「美坂たっての頼みだからな、遠慮なく行くぞぉ氷上! うおりゃああああああっ。」
勢い良くシュンの胸倉を掴み掛かったが、「きゃあ、嫌っ、乱暴しないでっ。」とシュンは胸元を隠すような仕草でしゃがみ込み、泣きそうな顔で北川を見上げた。
「い、いやっ別に乱暴するつもりは・・・」
「ひどいです、北川さん。」
真っ赤になって弁解する北川と半泣きのシュン。
「いや、その、あの、わ、悪かったな。」
とシュンの手を取って助け起こす北川。
「潤さんって優しいんですね。ぽっ。」
「ええっ!?そ、そうかなぁ〜。いや〜そんな事は〜。」
と男相手に照れる北川。これを見ていて面白くない女性が一人。
ぷちっ
「こんのぉ、節操無しの淫乱色魔ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ガシッ ブゥン ドッターン
「のわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?」
香里が神速のスピードで北川に近づいて見事な一本背負いを決める。そして、さらに>
「美人だったら男でも良いって訳?もうっ馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」
ギリギリギリギリギリギリ
「痛い痛い痛い美坂ぁぁぁぁぁギブギブギブアップ〜。」
「わっ背負い投げからの見事な腕ひしぎ逆十字固めへの連携だよ〜。」
「お姉ちゃんかんっぺきに怒ってますね。(激汗)」
「あ、あの〜香里さん?もうそのくらいでやめてあげた方が〜?」
「ほっといて頂戴。これはあたし達の問題よ。なによ北川君なんて北川君なんてぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
グキグキグキグキグキ
今度はキャメルクラッチの体制で北川にお仕置きする香里。
「わ〜お姉ちゃん北川さんをお尻に敷いちゃってます。 なんだか二人の将来を暗示しているみたいです〜。」
「う〜ん、そ〜だねぇ〜。」
とのんきな感想を述べる二人。
「名雪さん、栞さん、止めなくて良いんですか?」
シュンが気遣うも。
「「無理だよ(です)。」」
秋子課長の一秒了承にも負けないくらいの即答であった。
「だ、誰でも良いから助けてくれえぇぇぇぇ〜。」
こうして香里の身体を無自覚に押し付けながらの北川へのお仕置きは30分程度続いた。
後に鼻にティッシュを詰めた顔で北川はこう語った。
「俺はこの世の天国と地獄の両方を一度に味わった。」
痛い目に遭ったというのにちょっぴり嬉しそうだった。
君もしかしてM?
「んな訳あるかぁっ!!」
「も〜香里が男らしくなってどうするんだよ〜? この作戦も失敗だね〜。」
「うう〜。」
後になって恥ずかしくなったのか香里の顔は苺のように赤くなり、涙目になって頭を抱えていた。
そして栞の提案。
「そうですねぇ〜、服装から意識改革をしてみてはどうでしょうか?男性警察官の服を着せてみれば何か変化があるかもしれません。」
「それじゃコスプレみたいじゃない。」
「でも、やってみる価値はあるかもね?」
ってな訳でシュンに男性警察官の服を着せてみたのだが・・・
「「「に、似合わない(汗)」」」
元から線が細く女顔だったせいか、まるで男装の麗人のようにしか見えなかったのである。ある意味女性には受けそうだ。
「やっぱり私には女性警察官の服のほうが良いです。」
とシュン。
「服装による意識改革も失敗みたいね。」
「う〜良いアイデアだと思ったのに〜。でも、これはこれで倒錯した雰囲気があっても良いかも?」
「やめなさいって。」
「これは他の方法を考えるしかないよね。」
「「「はぁ〜〜〜」」」
溜息をつくしかない三人であった。
それから警邏の時間になったので今回は4人でトゥデイに乗り込みパトロールを開始した。
「ねぇシュン君、どうして男の人なのに女の人になりたいって思うの?」
パトロール中のトゥデイの中でシュンに名雪が尋ねる。
「おかしいですか?」
「ううん、わたしはそういう事は本人の自由だって思ってるんだけど、どうしてなのかなぁ?って不思議に思ったから。」
「そうですね、最初は確かに囮捜査の為って事でしょうがなくやっていたんです。でも、女性の事を理解する為に女性がやっている事を一通り勉強してみました。」
「例えば?」
「お茶に生け花、お琴に日本舞踊を習って、料理教室にも通いました。そうそう、エステで肌の手入れの仕方や着物の着付けとかもやりましたね。」
「うわぁ〜、そんなに沢山?わたしも女だけどそこまでやってないよ〜。」
「えうぅ〜、女として負けてますぅ〜。」
「そして、そうやって女性への勉強を続けているうちに女ってなんて素敵なんだろうってそう思うようになっちゃって。それから女性になりたいって想いが強くなったんです。」
「ふぅん、そっかぁ、それならしょうがないかもね。」
「名雪、納得しちゃだめでしょうが。」
「でも、一生懸命頑張っている人を無理矢理変えるのは、わたし気が進まないよ〜。」
「ねぇお姉ちゃん。私もなんだかこれで良いような気がしてきたよ。だってシュンさん女以上に女らしいんだもん。」
「あら、そんな(ぽっ)」
(う〜ん、良くも悪くも真面目なのよね。これは一筋縄ではいかないわ。)
トゥデイを運転しながら名雪達の会話を聞いていた香里はそう思った。
と、まぁそんな風に一人真剣になっている香里の横では・・・
「でねでねっ、この街の百花屋さんのイチゴサンデーすっごくおいしんだよ〜♪」
「あっ、名雪さんバニラアイスを筆頭にアイスクリームだってすっごくおいしんですからね。」
「そうなんですか? それは是非食べに行きたいです。」
「それじゃあ今度皆で一緒に食べに行きましょうよ?」
「ええ♪」
「わ〜、楽しみだよ〜♪ いっちごいっちごイチゴサンデー♪」
すっかり和んで仲良くおしゃべりしていた。
(名雪と栞はもうあてにできないわね、あたしがなんとかしなくっちゃ。)
香里が新たに決意を固めて警邏を続けていると、前方に暴走族の物らしき違法改造車が見えた。
その時香里の頭の中でピキーンと何かが閃いた。
(そうだわ、彼等に協力してもらいましょう。氷上君には悪いけどもう手段を選んでなんかいられないわ。)
ブロロロロロ キキッ
「ねぇ氷上君、あの人達取り締まってもらえないかしら?」
と、トゥデイを止めて香里はシュンに言った。
「はい、分かりました。」
シュンは答えて暴走族の一団に向かった。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん。あれってここらで最もタチの悪い暴走族の紅奇死(あかきし)じゃない。危な過ぎるよ。」
「そうだよ香里。シュンちゃん怪我させられちゃうよ〜。」
「もう四の五の言っていられないの、極限状態にまで持っていけばさすがに男として覚醒するかもしれないでしょ?」
「「でも〜。」」
「いざとなったらあたし達がフォローすればいいだけでしょ?」
「「やっぱりそうなるの?」」
さも当然と言った顔の香里にがっくりうなだれる名雪と栞であった。
そんな彼女らをよそにシュンは違法改造車へ近づき話しかけた。
「あの〜、その車は整備不良で運転できませんよ?」
「あぁ〜ん?うるせーんだよぉ。オマワリだからってエラソーにすんじゃねーよ。」
頭の悪そうな顔をしている運転席の男が文句を言う。
「別に警察官だからって威張ってる訳じゃ無いわ、ただ周りの人に迷惑だからやめて欲しいだけよ?」
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜それがウルセエってんだよ。んっ!?」
族の男がシュンを見て何かに気づく。
「その低い声とかすかに見えるのど仏。てめぇカマだろう?」
「ええっ!?」
「マジカヨ!?」
「うっわ気色悪ぅ。」
「ヒャッハッハッハッハ、ケーサツも女が足りねぇからって男に女装までさせてんのかよ〜?」
「ぎゃはははははっ、腹痛ぇ。」
思いっきりはやし立てる男達にさすがのシュンも怒り出す。
「気安くオカマオカマって言わないで欲しいわ。だいたい男だったらオカマの一人くらい受け入れる度量を持った方が良いんじゃない?」
「おおっ!?」
あまりのシュンの剣幕にたじろぐ族達。
「だいたい女性が男性の格好をしても何も言われないのに、男性が女性の格好をしたらあれこれ言われるなんて男女同権の今の世でナンセンスでしょう?それにオカマなんて古いわよ、ニューハーフって言葉知らないの?」
なおもまくし立てるシュンに族の男達もキレてきた。
「ごちゃごちゃうるせーなっカマはカマだろうが?ニューハーフだかなんだが知らねーがオカマに人権なんて認められてねーんだよっ!!」
「あなた達っ!」
あまりにも時代に逆行した物言いにシュンは手を振り上げ、無礼な男に平手打ちをかまそうとしたその時・・・
ゴンッ、
グシャッ、
バキッ
「ひでぶっ!?」
名雪の垂直肘打ちと、香里のメリケンサックによる右ストレートと、どこに隠し持っていたのかは分からないが栞のハンマーがお馬鹿な男の顔面や頭に同時に突き刺さった。
「いい加減にしなさいっ。いくらなんでも言い過ぎよっ!」
「そうだよっ、わたしだって怒る時は怒るんだよ!」
「そんな時代遅れな事言う人嫌いです。」
普段温厚な名雪さえ怒髪天状態である。
「て、てめーら逃げるんじゃねーぞっ。すぐにお礼をしてやっからなぁ。」
情けない捨て台詞を残して車は走り去って行った。
「ふんっ、白亜紀から出直してらっしゃい。」
「香里さん、名雪さん、栞さん。」
「ごめんね氷上さん、あなたは最後まで女であろうとした。振り上げた手も平手だったものね。もう無理強いはしないわ。あなたは体は男でも心は女以上に女だって分かったわ。」
「そうだよ、これからはシュンちゃんって呼ばせてもらうね♪」
「これからは女の子として仲良くしましょうシュンさん♪」
「ありがとう、みんな。」
三人の言葉に涙ぐみながら微笑むシュン。
「うんうん、これぞ女の友情だよね。」
と和やかに終われれば良かったのだが・・・
ブロロロロロン
グゥオングゥオン
パラリラパラリラッ
「そこの女性警察官共。よくも俺のダチをいたぶってくれたなぁ。今からその代償を払ってもらうぜ、その体でなぁ。」
リーダー格の男が香里達に戦線布告をした。
「うへへへっ、美人ばっかりじゃん? 楽しみだなぁ〜。」
「一人はカマだけどなぁ〜」
「グヒャヒャヒャヒャヒャッ」
それに続いてもっと頭の悪そうな奴らが騒ぎ立てる。
「まぁ馬鹿につける薬は無いって言うしね、でもお灸をすえる事はできるわ。こうなったら徹底的に行くわよっ名雪、栞。」
「うん、わたしの本気を見せてあげるよ〜。」
「私荒事は嫌いだけど、でも降りかかる火の粉は払わなくちゃ駄目だよね?お姉ちゃん。」
「その通りよ栞、ふふふふふふふ。女の恐ろしさたっぷり思い知らせてあげるわ。シュンちゃんは車に乗って出て来ないように。それと皆急いで耳を塞いで。」
そう指示を出しつつ自分は耳栓を付ける香里。
「行くぞっ、てめえらぁ〜。」
「おぉぉぉぉぉぉっ。」
ドドドドドドドドドドドッ
時の声を上げて十数人が鉄パイプやら何やら持ってトゥデイに向かって殺到して来た。
後数十センチと言うところで、「出力最大、喰らいなさいゴッドボイスッ。」
知っている人が聞いたら思わず「ラァァァァァァイ」とか「ゴォォォッド・ラ・ムゥゥゥゥゥ」とか言いたくなりそうな技の名前を叫ぶ香里。
キィィィィィィィィィィン
「ぎゃあああっ耳が耳がぁぁぁ?」
「鼓膜が破れるぅぅぅぅぅ。」
至近距離にいた数名が耳をおさえて悶絶する。
ゴッドボイスとはパトカーのスピーカーとマイクを近づける事によって生じるハウリングを生かした凶悪な音波攻撃である。そりゃ耳もイカれるだろうな〜。
「次はわたしの番だよね?いっくよぉ〜、ごっどあろ〜♪」
と今度は名雪が取り締まりに使うチョークを手裏剣のように投げつける。
ヒュン
ドカカカカカ
ビシッ
ブスッ
コキンッ
「ぎゃあっ。」
「ぐえっ。」
「のおぉぉぉぉぉっ。」
チョークは眉間や頬やら股間やらに次々と突き刺さっていった。
名雪のフルパワー故に下手な武器よりよっぽど強烈であろう。
「私だって負けません。栞特性お薬爆弾です。えいっえいっえいっえいっ。」
と丸薬を投げまくる。丸薬は地面に着弾した途端猛烈な勢いで煙を噴出し始めた。
「ぎゃあああ、目がイテェェェェ。」「鼻がいかれる程臭いぃぃぃ。」「口がぁぁぁぁぁぁぁ猛烈に辛いぃぃぃぃ。」「しびしびしび痺れるぅぅぅぅぅ。」「うがぁぁぁぁぁぁぁ、なんじゃこりゃああ!?」と煙を吸い込んだ男達はあちらこちらで悶絶しまくる。
栞ちゃんそれって一体何?
「え〜っと痺れ薬に、マスタードに、コショウに唐辛子、催涙効果のある薬とか秋子課長の謎ジャムを粉末状にした物とかを沢山ブレンドした護身用の爆弾ですよ〜♪」
・・・・・・それって既に立派なBC兵器なんじゃない?
「そんな事言う人嫌いです。か弱い女の子が身を護る為です。大目に見て下さい。」
絶対過剰防衛だと思うな〜僕。
「今度はこれよっ、ロケット花火ガトリング砲(第四報告書参照)。」
スパパパパパパパパパンッ。
「ぐわぁぁぁぁぉ。」
香里のガトリング砲で尻に火を付けられ逃げ惑う男達。
「わたしも行くよ〜。真空飛び膝なゆキーック。」
ドッゴーン
「「「うぎゃああああああ」」」
名雪必殺の飛び膝蹴りで数人が宙を舞う。
「今度はワライダケの粉末爆弾ですよ〜。」
ボムボムボムボム
「ぎゃはははははは笑いが止まらねぇぇぇぇっ」
「笑いすぎで苦しい〜。」
そんな感じで乱闘は香里達の一方的な攻撃で族の男達は一人また一人と地に伏していき、とうとうリーダーの男だけになってしまっていた。
「な、なんなんだよ手前らわよぉっ。」
すっかり怯えた表情ではあったがそれでもまだ虚勢を張って木刀を持って突っ込んで来るリーダーの男。
「名雪、栞、止めにあれやるわよ? はいコレ。」
と香里は交通整理の時に使うライトを渡す。当然このライトも普通のライトではなく、香里が特殊樹脂で外回りをコーティングし、警棒以上に強力な武器に改造されている。
「どう、二人とも準備は良い?」
「こっちは準備おっけ〜だよ香里。」
「私も行けますお姉ちゃん。」
「それじゃあ、これで終わりよっ!」
「「「レーザーブレード」」」
3人はそう叫びライトにスイッチを入れる。ライトはさながら紅く光の刃のように輝く。
ダダダダダダダダダッ
3人は一斉にリーダーに向かって走り出した。
「まずは私ですっ。しおりんダイナミック。」
栞が上段にライトを構えた後に唐竹割りの要領で縦に斬りつける。
ガインッ
「うげぇっ。」
「次はあたしよっ。かおりんクラァァァァッシュ。」
今度は香里が飛び上がった後に袈裟懸けにライトを叩きつける。
ゴスゥッ
「ブギャッ。」
「最後はわたしだよっ。なゆちゃんブルーフラァッシュッ。」
トップスピードから名雪が横一閃に力任せに降り抜いた。
ドッゴォォォォォォォォン
「ぶぐぎゃあああああああっ!!」
リーダーは5m位真横に飛ばされた後、転がりながら後地面に叩きつけられた。
「決まったわね、美人警察官連続斬り。」
「うんっ♪」
「女を舐めた罰です反省して下さい。」
しかし、宇宙刑事知らないと理解不能なネタかもね〜この技。
「作者さんの年齢がバレるね〜♪」
い、言わないで(T_T)
そして、彼女達は自業自得の暴走族を一纏めに縛り上げた後また警邏に戻って行った。
それから警邏終了後の交通課にて。・・・
「・・・という訳で氷上君、いえ氷上さんは女性警察官扱いで良いと思います。更衣室の使用は時間差で使えば良い事ですから。」
香里は秋子さんにそう報告した。
「了承♪(一ミリ秒)」
今だかつてないスピードで秋子課長は了承した。
秋子さん本当に良いんですかぁ?
「あら、面白くていいじゃありませんか?これからますます楽しくなりそうね♪ それじゃあ皆もそれで良いわね?」
「「「「「異議なーし♪」」」」」
なんだかんだ言ってノリが良い交通課の面々であった。
「それじゃ、シュンちゃん改めて自己紹介して頂戴。」
「はい課長。私の名前は氷上シュン。高校時代はバスケット部と軽音楽部を掛け持ちしていました。体は男ですけど心は誰にも負けないくらい女のつもりです。これからも全力で頑張りますのでよろしくお願いします♪」
と頭を下げた。
パチパチパチパチパチ♪
交通課のあちらこちらから歓迎の拍手が鳴り響いた。
こうして華音署交通課に色々な意味で強力なメンバーが加わる事になったのである。
次回に続くよ〜
第九報告書へ続く
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