編曲家デビューしました

 
吹奏楽を専門とする楽譜出版社ティーダより 2009年9月発売
 
J.S.バッハ 作曲  藤原亮祐 編曲
「フーガの技法 BWV 1080」 より 『 第1番 』 (主要主題による4声の単純フーガ)
 
Johann Sebastian Bach (1675〜1750)  arr / Fujiwara Akihiro
 Contrapunctus 1 (Einfache Fuge über das Thema in seiner Urgestalt : fierstimmig) auch DIE KUNST DER FUGE BWV 1080
 Contrapunctus 1 (Simple Fugue on main thema : 4 voice) from THE ART OF FUGA BWV1080
 
ご購入の際はティーダさんのホームページからお願い致します。
 
3種類の編成で編曲しました。
混合四重奏 「フーガの技法 第1番」 (TKG 4001)  価格1,900円
 Cla.(B), Trp.(B), Tn.Sax.(B), Bs.Cla.(B) MIDI
 
音色の不統一こそが狙いの編成です。
フーガの面白さは各声部の独立性であると考え、その立場から導いた解答の一つとしての編成です。寧ろフーガの演奏に於いて音色が統一される事は、聴き手にとって各声部を聞き分けるという点では難しい筈です。
デモ音源を御用意致しました。無機的な演奏ではありますが、充分各声部の動きを聞き分けて頂ける筈です。聞き込むほど、各声部の動きを明確に掴む事が出来る様になります。どうぞお聞きなすって下さい。
またこういった事をお勧めするのも何ですが、動画投稿サイトさんでピアノによるフーガの技法の演奏等、多数寄せられていますのでね、是非お聞き比べください。
 
一見特殊な編成ですが、非常に編成が容易です。
と言いますのも、クラリネット、トランペット、テナーサックス、は演奏者人口が非常に高いからです。
バスクラリネットにしてもソプラノサックス奏者を探すよりは容易ですから、サックス四重に比べれば編成はきっと容易です。 よねぇ。
また或いは、部員数が揃わない小さな吹奏楽部の方で、アンサンブルコンクールに出場したいのにクラリネット四重奏や(B♭管3本とバスクラとの編成にしろ、B♭管2本とアルトクラリネット、バスクラとの編成にしろ)、サックス四重奏混合八重奏も組みにくい、といった事情の方々に、より容易にアンサンブルコンクール出場の機会を得て頂く事に貢献するものと存じます。
B♭管クラリネット、B♭管トランペット、テナーサックス、バスクラリネットと、全てB♭管であるのはたまたまです。
 
クラリネット四重奏 「フーガの技法 第1番」 (TCL4004)  価格1,900円
 1st Cla.(B), 2nd Cla.(B), Al.Cla.(E), Bs.Cla.(B) MIDI
 
おこがましくも自信作「混合四重奏版」の実演に至る事、期待するや切であります。
が、アンサンブルコンクールでしばしば目にする編成が実演の機会でより恵まれるであろう事は私も大いに認めるところであります。
というわけで、クラリネット四重奏版も御用意致しました。
とは言いながら、このクラリネット四重奏版では、第3声部の音域の問題に因りB♭管クラリネット3本とバスクラリネットの編成に出来ませんでした
広く演奏される機会を得るには少々不利ですが致し方在りません。
 
しかし!ものは考えようですよ、アルトクラリネットを吹いている皆さん。特にクラリネット四重奏と言えばB管3本とバスクラの編成ばっかりで除け者にされているような気がしている貴方。この曲はアンサンブルコンクールに出る格好の口実なんですよ。
周りのお友達を是非お巻き込みなさい。
しかし、いいですか。ここが肝要なですが、余っているクラリネット奏者をいくら集めてもバスクラが確保出来なければ出られないんですよ。バスクラの子を味方につけるのです。
 
 
サクソフォン四重奏 「フーガの技法 第1番」 (TSX4008)  価格1,900円
 Sp.Sax.(B), Al.Sax.(E), Tn.Sax.(B), Br.Sax.(E) MIDI
 
サックス四重奏版も御用意出来ております。
 
サックス四重奏版の音源につきましては、ティーダさんからCD「アイ・ラブ・アンサンブルVol.2クラリネット&サクソフォン編」が10月20日より全国一斉発売されております。(定価1,200円)
是非お買い求め下さい。
 
 
 
 
 
 
演奏の難度は容易な部類で、演奏時間は=60なら2分半程度です。 自作のデモは=50で3分16秒です。
実際の演奏例では、ゲーベル/ムジカ アンティカ ケルンの録音で2分57秒です。=50〜60あたりが標準的なテンポではないでしょうかね。 
ティーダさんの紹介にある「演奏時間 1:30」とは  =100くらいの演奏ですが … ち と 速 す ぎ の き ら い が あ り ま す か ね …
 
 

さてここで演奏テンポの解釈について勝手な事を述べまーす。

何と言ってもバッハのフーガ演奏で代表的な音楽家と言えばグレン グールド(1932〜1982)ですね。
そしてまた動画投稿サイトなんですが。グールドの録音がようけ聴けるんですよ。或いは見れる。良い時代になりましたね。(私が見たのはYTのでした)
この第1番(Contorapunctus 1)については、グールドの1981年録音のピアノ演奏では4分45秒くらいの演奏時間です。
コンピュータだから出来る設定ですが=33くらいです。 一応拍子ですので。 メトロノームだと =66設定での演奏という事になります。
試しにその=33設定のデモを一通り聞いてみましたがね。堪らん間延びっ振りです。…    お聴きになりますか。 MIDI
 
このテンポは機械の演奏ではさっぱり駄目ですね。
すさま集中力で且つ、全声部を一人で統制出来る鍵盤楽器での演奏でなければ、聞くに足る演奏として成立せんと思います。
動画の演奏はCDの録音のものよりも更に迫力がありました。驚いた。あれ欲しいですね。テレビ放送のものでしょうか。売られているんでしょうかね。
この動画を見ておりまして、初めの第1,第2声部を右手だけで弾いている間の左手のフルフルとした動きにデビュー当時の鬼束ちひろの左手を彷彿しました。どちらも神懸かりに音楽を奏でるのだと感心致しました。   平井堅の右手は別の種類のものと考えています。あれは音程を探っているんですね。
このテンポで、そして各声部を別々の演奏者が担当する形で、あれほどの緊張感を生み出すのは極めて困難事でしょう!!
                           クロノスカルテットくらいならやって見せますかね。
まぁ。 それはともかく。
演奏に5分弱もかかる非常に遅いテンポですが、フーガ主題に絡む対旋律を美事に聞かせおり、これでこそこの曲の美しさは充分に表現されるのです。
更に。
これでこそ、終盤の全休後の1拍だけの総奏、また全休、そして終結への流れに於いて、必要にして不可欠なたっぷりとした間を作る事が叶う。これは良いですねぇ。素晴らしい。素晴らし過ぎです。
因みに、1962年録音のオルガンでの演奏もありますが、これは速めで、=60くらい、2分40秒の演奏時間です。各声部の弾き分けは勿論一流ですが晩年の録音ほどの感銘はやはり受けませんでした。
第1番は遅くたっぷりとしたテンポでこそ幽玄さを表現し得るのだと私は思いますね。
 
更に因みに。
グールドは1981年録音のピアノ演奏でも第2番(Contrapunctus 2)では、速めのテンポで演奏します。その方が付点リズムが生きますね。そういう事もあるんですなぁ。
 
一方。同じく動画投稿サイトに、第1番について実際に=100くらいのテンポで、演奏時間が1分40秒くらいのピアノ(の音)での演奏がありました。 (静止画でしたので実演奏か、コンピュータによるものかどうかは分かりません )
これの場合、特にフーガ主題ばかり強調しながら疾走するんですが、フーガ主題でない旋律が全く軽んじられていて、少なくとも私の好みではありません。 これは一例ですが、丁度投稿されたものがあったので挙げました。
 
ちょいとフーガから外れた例え話になりますが、私の最も好きな対位法を用いた作品の一つはホルスト第1組曲マーチでして、マーチ主題トリオ主題が重なるのが堪らなく好きなんですが、あれの場合、どちらか一方の主題をおざなりにしては台無しです。
私はフーガに於けるフーガ主題と対旋律の関係でも同じであろうと思います。
フーガ主題の外の旋律が疎かにされて
何の為の対位法なのか。 
と言う事で、フーガの面白みを最も効果的に表現出来る手段として、各声部が他の声部と混同されぬ様に、対旋律がフーガ主題に負けずに主張出来る様に、各声部が異なる音色を以て演奏されるというのも有りだ!!という発想を得るに至りました。
その一つの形が混合四重奏版という事なんですが。
まぁバッハのオルガン曲の管弦楽編曲や吹奏楽編曲の例は多くありますけれども、室内楽規模のアンサンブルの演奏に於いてこれをする例が多くなかったという点で一石を投じる事になるんではないかなぁ。 と。 何となれば、管楽器の範疇での混合アンサンブルとは言わず、弦楽器をも含んだ混合アンサンブルであっても勿論良いのです。
 
フーガ全般の演奏に於ける理想的な楽器の選択、或いは編成を論じているのではありませんでした。
 
グールドのテンポ解釈とそれ以外のテンポ解釈との比較を論じるべきだったのですが、フーガ演奏に於いて、特に統一された音色を以て演奏される際、演奏テンポの決定と、各声部の価値、と言いますか、平たく言えば音量ですけれども、聴衆に対してより浮き上がらせて聞かせる旋律を選び出して見せる事、またそうする時、どの程度行うべきかという事との問題の延長上に、異なる種類の楽器によるアンサンブルの是非は検討するべきものであると考えるものですから、つい話を逸れさせてしまいました。
 
話の逸れついでに。
私が「フーガの技法」にロマンを感じる様になったのは学生時代に、磯山雅『J.S.バッハ』 ( 講談社現代新書 ISBN4-06-149025-7 ) を読んだのが契機です。 ( '93年10月.第6刷発行のでした )
氏は、第6章「数と象徴」に於いて、バッハは作品中に神や人間、教会を象徴させる数を織り込んだと考えられる、と述べています。
また、ルードヴィヒ プラウチュの著作『汝の御座に今ぞ我進み出て』を紹介し、「フーガの技法」も同様に、各曲が旧約聖書詩篇第1から第18までを表現しているという甚だ興味深い説を我々に教えてくれています。
「フーガの技法」には深遠な謎が含まれている可能性が有るって言うんですからロマンが有るでしょう。
私は特別宗教やオカルトに傾倒してはいませんが、その様な要素を盛り込まれている物語なんかが決して嫌いでもないのです。 
このページを御覧になられている方で『ダ ヴィンチ コード』は面白く読めた、と仰る方にはこの1章だけでもお勧めです。宗教に取材した暗号解きを主題とししている、或いはその可能性が考えられるという点で共通する魅力があるのではないかなと申し上げているだけでして磯山氏のこの著作には秘密結社は出てきません。
蛇足ながら、暗号解きが面白いという点で江戸川乱歩のデビュー作『二銭銅貨』もお勧めですよ。これは純粋暗号解読推理短編の傑作です。
 
話を各声部の均衡へと移しまして。
磯山氏はまた同書第7章「バッハ演奏はいかにあるべきか」に於いて、ブランデンブルク協奏曲やロ短調フルートソナタを例にとって、各パートの音量のバランスの重要性を説いています。
ここでは、バロックトランペットを現代のトランペットに、フラウト トラヴェルソ(キー機構を持たない木製フルート)を現代の金属製フルートに、(バロック時代の)チェンバロをモダンチェンバロに替えた場合、バッハが意図した音量のバランスが損なわれている弊害について指摘されています。
これを一つの根拠として、私はフーガ演奏に於ける各声部の均衡は図られるべきであるとの発想の源を得たのですが…
しかし、一方で氏はミュンヒンガーの各声部を均一に保つ演奏の面白くなさを指摘します。そして、バッハの作品にも「幹になる音と副次的な音があり、(中略)それらが意味深く使われ、(中略)正しいアクセントづけと細部表現のめりはりが必須である。均一は、それを無視することにほかならない。」と。
更に、重要な要素にリズムの躍動があり、その好例として、グールドカール リヒター(1926〜1981)、加えて「第1章バッハに親しもう」に於いてジャック ルーシェが挙げられています。そして概ねテンポは速めであると。
 
これらを要約すると、バッハ演奏は速めのテンポでリズムを躍動させ各声部は不均衡であるべきで主たる声部と副たる声部の選択が肝要である、というのが、氏の主張だと私は読み取っているのですが。
しかしだからと言って、「フーガの技法 第1番」に於いても、速いテンポでフーガ主題のみを前面に押し出しただけの演奏が良い演奏である事にはならん筈です。
グールドの演奏ではフーガ主題に絡む対旋律を美事に聞かせおり、それ 
 
 
最後にアンサンブル編曲版の練習番号につきまして。
全パートの楽節が同時に区切れる小節がなかなか無いというのはフーガならではですので、基本的にフーガ主題が登場する小節毎に打っております。例外となる箇所もありますが。