
〜魔の北海道編Part2〜

Pre-sent
部屋に戻ってから、今日のことをお互いに話し合った。
夕食時、彼は高い所に連れて行ってしまったことを謝ってくれた。
ちなみに、彼なら、10分で帰ってこれるコースだったわけであり、低地でのんびり滑っている私を
見ていて、これなら大丈夫と思ったから連れて行ったわけである。
無茶をさせたくなかったに決まっているのだが、彼も私も心身共に疲労しきってしまった。
明日は、無茶せずに低地でのんびり滑ろうねと約束して、お土産屋へ向かった。
疲れた体を引きずるように、近所の土産物屋へ赴き、お世話になりっぱなしの人たち、両親などに
あげるものを時間をかけて物色した。
人にあげるおみやげを必死に探していたのだが、
思わず可愛いカップ&ソーサーを見つけてしまい、見とれてしまった。
白地に黄色の葉っぱの柄と、青色で驚いた表情のお魚の柄。そして若葉色のソーサー
随分悩んだ末に2つ購入してしまった。旅はこういうことがあるのがうれしい。
ちなみに彼も帰りの空港でラベンダーのネオグリーンのポットを購入することになる。
この日はさすがに疲れており、早々に部屋に戻って眠る支度をした。
朝がきた
「さむい」という彼に、上着をかけ、暖房のスイッチを入れてから、なんとなくふと
朝風呂に直行してみた。朝は掃除してると言っていたから、駄目かもと思い覗いてみた。
掃除直前の状態で、誰にも知られないうちに、熱いお湯をかぶってすっきりと目覚めた。
今日は最終日で、半日しか滑ることが出来ない。昨日のことはよい経験として受け止めて、
残りの時間を楽しもうと思った。朝ご飯を食べる時間が来て、ウェアに着替えて、出発。
さっきまで眠っていた彼がこういう時だけは異常にすばやい行動を示すので、ドキッとする。
一段階上の、ファミリーリフトで登って滑降、また登って滑降、ああ、楽しい。
その日、修学旅行生達が大勢集まり、講習を受けていた。始めからすいすいターンできる子は
ごく一部で、ほとんどの学生が昨日の私と同じ状態だった。リフトに上手に乗れない子の為、
徐行運転したりして、急停止するたびにドキドキした。
でもきっと、高校生は上達が早いに違いない。これから、何度だってチャンスはあるから、
若いっていいなあと、思ってしまった。雑念が浮かぶほど、滑ることに余裕が出てきたのである。
昨日と違って、一度も転ばず、余分な体力を消耗しなかった分だけ、快適であった。
これも辛抱強くつきあってくれた彼のおかげとでも言ってしまおうか。
そして出発
あっという間にお昼近くになり、名残惜しそうな彼を説得してペンションに戻ることとなった。
ペンションは既に10時チェックアウトだったが、乾燥室と、お風呂が使えたことは、大変
有りがたいことだった。スキーをしたあとの、暖かいお湯につかる一時は最高である。
こういう幸せを知らなかったな〜と訳もなく感謝感激であった。
ドライヤーを持参しなかった為、生乾きのままペンションを後にした。
そして、バスが来るまでに昼食用弁当を買い求め、バスの中でむしゃむしゃ食べた。
外は雪景色。今年最後の雪がざあざあ降っていた。
熟睡しては途中休憩ではしっかりN.Y サンドなるフライドチキン入りのナンを食べ、
「一億円」で有名な人工ピアノが奏でる音色のすぐそばにあるトイレ(このセンスはすごい)
に入り、バスに戻ってまたも眠り続けた。
新千歳空港についてから、ウィンドウショッピングに一時間ほど費やし、
彼が気に入ってしまったネオグリーンを購入したり、北海道プリクラを撮ったりした。
ところで、このネオグリーンとは、普通の小鉢に小さな草が茂り、紫に色付けされた
ラベンダーが何本も生えているものだが、長期保存可能な「水と光を必要としない」
テクノロジーによって開発された人工植物である。
ガラス工芸品に目を奪われ、ゆっくりしすぎた為、飛行機の搭乗時に意外な
ハプニングが待ちうけていた。
夕刻時の行列
なんと夕方ということもあってか、搭乗ゲートには行列が出来ていた。
「だいじょうぶなんじゃない?」と呑気な私に彼は言った。
「飛行機が離陸するまでにあと数分なんだぞ、大丈夫なわけがない」
事の次第をスチュワーデスさんに説明して、優先してゲートを通過させてもらい、
ものすごい勢いで旅客機の入り口まで走った。途中、チケットを改札機に入れて
走り抜けると、スチュワーデスさんは「こちら、後2名、そちらへ向かっております」
と、即座にレシーバーで応答していた。彼女達が女神に見えた。
私達の前にも一人、必死に走っている男性がいた。まるで、ブルースウィリスか
キアヌリーブスの映画の様に、あたかも後ろに魔の手が迫っているかのような
速さにぜいぜい言いながらも、機内へ辿りついた。私達は汗だくだった。
座席についた彼に、空港社員の対応の良さを語ると、彼は「恥ずかしかった」と、
ぽそっとつぶやいた。私は心のどこかでこの非常事態を楽しんでいた。
(ご迷惑をかけた皆様方、ごめんなさい。もうしません)
ただいま
「アッという間だったね」とみやげ物などの整理をしながら彼と話をしていた。
飛行機とは便利なものである。その後、バスに乗り、ゆらゆら揺られてついに
帰途についた。
今回の旅行について、私にとってはとてもいい経験が出来たように思う。
そして雪が降ったらまた行きたいなと思った自分の気持ちに一番驚いた。
色々と彼やその他の人たちにも感謝したいと思う。
(と、言った方がいいだろう。後々のためにも。)
そして、心は前向きながらも、筋肉痛と風邪をひきずる日々が数日続くという
オチまでついた今回のスキーツアーであった。
(C)Hazuki. 2000