Knight Rider


ナイトライダーの尽きぬ魅力

それは大胆不敵なアクションものが流行っていた時代であった。
「チャーリーズ・エンジェル」「白バイ野郎・ジョン&パンチ」
「特攻野郎Aチーム」などだけでなく、
日本でも「太陽に吠えろ」「西部警察」が人気を博していた。
確かに「太陽に吠えろ」は好きだったが、曲も覚えていたが、
ボン刑事のファンだったが、
カーチェイスやアクションが好きなわけでは無かった。
そんなワタシがナイトライダーにはまった理由をあげてみよう。


1.登場するお姉ちゃんの80年代ファッションが懐かしくカッコよい。

2.本来は無機物であるはずの車が何故かひどく人間臭く、
主人公とのやり取りにユーモアのセンスを感じさせる。

3.その当時の番組の「ノエビア化粧品」のCMが、
異様に格好良かった(今でもそうか)。


まあ、この位あげれば十分じゃないかと思う。
まずは、1から見ていこう。
80年代ファッションは、今見てもかなり新鮮で面白い。
太くてギラギラしたベルトを
真っ赤なワンピースに締め、白いハイヒール(赤ではなく断然白)
を履いた美女は、パーマをきつくかけてワイルドに仕上げた
フワフワ・モシャモシャのブロンドで
目には濃いブルーのアイシャドウに真っ赤な口紅をつけている。
これがまた、独特なんだなー、
ワタシはそういった美女が登場する度に
MTVで見ていたロックのプロモ・ビデオを思い出して
ワクワクしてしまう。
(念のため、私にはその筋の趣味はありません)
ただただ、あの奇抜で、それでいてイマイチ垢抜けない様子が
うれしいのである。

そうそう、北条司さんの漫画「シティー・ハンター」に出てくる美女達が
丁度あんな感じだと思う。(北条司さんはきっと、
海外ドラマのファンに違いない
「キャッツ・アイ」だってチャーリーズ・エンジェルの感じがするしね)
ちなみに、主人公マイケルのいでたちも、なかなか泣かせますね
あれだけワイルドなのに、敢えてシャツのボタンを外して
胸元の「ギャランドウ
を見せているのが・・・

個人的には、趣味ではないが、キャラクターとしては、
アクの強さが面白いと思う。
何度危険な目に遭遇しても死なない。何故なら彼は、
スーパーヒーローだからである!
「いくらなんでも、それはやばいだろー」と思うような
危ない橋を幾度も渡り
キットの言う事も聞かず、猪の様に突き進んで行く
熱血サラリーマンの様な彼が存在したのは
やはり怖いもの知らずの80'sドラマだからでしょうか。
車もどんどん燃えてヘリコプターも爆破され、
鉄橋も粉塵の後となり、
それでも、それでも、マイケルだけは生きている
キットと共に来週も新しい危険に立ち向かって行く
女性とのデートもぬかりなく遂行して。


そして2の、このドラマには欠かす事の出来ない(当たり前か)
ドリームカー、ナイト2000について。
他に類を見ない優れものの車は
車内で時限爆弾だって処理できる(爆発後に立ちこめた粉塵を
吸引して元に戻す事も簡単に出来るんだぞ)のに
どことなく品の良い受け応えをする。それもその筈
キットの頭脳にはイギリス紳士の(これはデボンの趣味なのか?)
精神がプログラムされているからだ。
「ケチって、安いガソリンを入れないで下さいね。
貴方だって、いいもの食べているんでしょう。」
なんてマイケルにお返しする皮肉のセンスだってある。
他にも、宿題を見てもらえる、クイズの答を教えてもらえる
ちょっかいを出してくる車を飛んで追い越してもらえる
など彼の性能は、人間にとって夢の様な環境を実現する。
そう、小気味良いキットの受け応えも
人間の求める素質の一つなのである。人間と渡り合う為の
洞察力を備えた車が登場する日は来るのであろうか。
もしもキットとマイケルのキャラクターが同じようなものであったら
このドラマはかなり面白くないものだったろう。
キットはマイケルを導く良きナビゲーターなのである。
彼のお陰でマイケルはご飯が食べられると言っても過言ではない。
そこで、彼等の間には友情が育まれていく。

一度だけ、キットが大手術をせざるを得ない緊急事態が発生した。
あれは可哀想だった。
「助けてー」と叫びながら、溶けていくキット。
科学者達がナイト財団に力を結集して
何日もかけて彼を再生し、外見だけは元通りになったのだが
トラウマを背負った彼は前の様な実力が出せなくなる、
という筋書きだ。
キットはマイケルの期待に答えようと必死になる。
再生するには時間がかかったが
マイケルの励ましによってトラウマを克服していくことが出来た。


アメリカのナイトライダー関連サイトを訪れると
キットそっくりの車を作っては
自分とその車の記念写真をホームページに貼っている人々がいる。
車が好きな人は、長年乗った愛車に特別の愛着を沸かせる人が少なくない。
マイケルとキットの友情には、そうした愛着がベースとなっている。
初めてこのドラマを見た学生時代とは
また違う面白さを今感じる事が出来るのは
私が運転する通称「ミドリガエル」に対する愛着からかもしれない。


さらに3だが、ノエビアのCMはかなり格好良い。私が知る限りでは
シーナ・イーストン、ジョージ・ベンソンなどのBGMに乗って
女性がセスナ機やヘリコプターに乗って操縦している。
自立した女性のイメージは学生時代の憧れの対象とまではいかないが
まあ、兎に角格好良いのだ。
最近のではフー・ファイターズの曲が流れている。
なかなかセンスの良い曲選びに感心する。

とまあ、色々挙げてはみたが、完全懲悪物を見てワクワクするのは
何も私に限ったことだけではあるまい。
あの亡き淀川長治さんも、特攻野郎Aチームを見ると
かつて見た痛快活劇を思い出すと語っていた。
良い人vs悪い人の構図がはっきりしている筋立ては
正しい事と悪い事の区別がつかなくなりそうな
現代社会のあやふやさを一掃してくれる清涼剤なのである。
そしてその物語の主人公こそが
現代人の求める理想の姿とあっては
今夜もこのドラマを見逃すわけにはいかないだろう。

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