Very Very Bridget Jonesy
『ブリジット・ジョーンズ』を今さら(2015)語る
1997年のクリスマス、イギリスではベストセラーになっていた
『ブリジット・ジョーンズの日記』
この本を手に取ったのはリバプールの大きな本屋さんだった。
モダンな明るく広い店内で、ベストセラー本らしくコーナーが
設けられていたのを昨日の事のように覚えている。
その後何年も経って映画化された時にはすごく驚いた。
この本を読んでいたのは自分だけでは無かったのだという
当たり前な事実に驚愕したのだ。
アメリカ人がブリジットを演じると聞いてさらにビックリした。
丁度、同時多発テロの直後で悲しい気分に満ちていたから
その悲しみをぬぐうような気持ちと、懐かしい友達に会う様な気分が
入り混じった感覚で観ていた。
というか、馬鹿笑いしていたように思う。
何年も経ったのだから、さっさと完結して、
めでたしめでたし、でそこから先は世界の果てになっていて
崖になっていようがどうしようが、忘却の彼方に放っておいても
おそらくナショナル・トラストから苦情すら来ないだろうに
それから映画はご丁寧に続編も出て、賛否両論だの
本の方は色々修羅場(マークが死んだり)を迎えたり
今度は映画化されてまた色々あったり(マークが生き返ったり)
そんな様子で、彼女の人生を思うと気が散ってしょうがない。
正直、原作と出会ってから、当時の私の語学力でも愉快に読破して
主人公と彼女を取り囲む二人の男性のイメージに想いを馳せていた
経緯を考えると映画で固定化されたイメージを
ピリピリと思い切り引きはがしたい衝動にかられる
原作を読んだ方ならきっと、ブリジット・ジョーンズは実はそれほど太っていなくて
(60kg前後でダイエットを決意して、53kgでやつれていると言われているけど
多分イギリス人で小柄と言うと160cm以下という事は可能性は少ないだろうから
想像に過ぎないけれど、おそらく164-165cm位じゃないかと思う)
せいぜいぽっちゃり体型。それで割と頭の回転も速いように思うことだろう。
ただその彼女がちょっとうっかりさんで、学歴もあるしキャリアもあるのに
どことなく天然というか、憎めないレベルでのボケっぷりが魅力といった
ところだろう。
私もそんな彼女が好きだし、そういうキャラだからこそ、マークとかダニエルとか
「なんでそんないい男が近寄ってくるわけ!?」という状況が生まれるのだと
勝手に類推していた。
だから映画を観ていると、主演女優の体重増量な佇まいに少しがっかりすることがある。
綺麗な女優さんだから(足だけは真に太っていない事を証明している)勿体ないとも思う。
そこまでやらなくても・・・とか色々考えさせられる事もある。
けれども時折、なんというかつい出来心で観てしまう、私にとってはそんな類の映画だったりする。
ダニエルみたいな上司とどうにかなりたいとか、マークみたいな彼がどうのこうのとか
そういう色っぽい(俗っぽい)気分にはなかなかならないが、
つい観てしまう、その理由は:
(1)1では、俳優達が、役になりきっているのが分かるから。
(2)ロンドンの街(というかパブ)が懐かしいから
(3)ああもう一度、パブで皆でわいわいやりたい
(4)そこにはジュードやシャロン、トムのモデルがいる
なのである。
この映画を観るたびに感じる英国の街の匂い、人の気配、
それが未だに私を捉えて離さないように思う。
たぶんきっと
おそらくまた時折、これからの人生の中でもふとこうした瞬間が湧き出てきて
ふらっと旅するようにこの映画を観るのだと思う。
(でもそれって、極度に緊張した状態に置かれた時に聴く、シド・ヴィシャスの
『マイウェイ』みたいなものかも。ラットの実験みたい。)
それと、英国のテレビでその当時、夜やっていた番組で、
『貴方の願いを叶えます』みたいな企画物があったのだけど、
ある女性が『白馬の王子様にプロポーズされたい』みたいな事を言って
テレビ局のはからいで、その女性の彼氏がホントに白馬に乗ってスタジオに
きてプロポーズしたのを目撃したのを覚えている。
さすが英国だなあと妙に感心したものだ。
朝の番組『Big Breakfast』と朝食が懐かしい。
やはりブリジットは英国のものだ。
彼女はあの街の匂いと共に目覚め
今でもどこかのパブで友人達と語り合い人生をタフに生きている。
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