Backpackers of the world unite
バックパックで回るイギリス&エディンバラ4
Stradford_upon_avon
☆ストラッド・フォード・アポン・エイボンに泊まる
〜Lovely Talks〜
駅前の通りから右に曲がるとそこはもうGrove通り。あっという間に「Hamlet House」は見つかった。
明るい感じのおばさまが、奥から出てきて私の名を呼んだ。「いらっしゃ〜い、寒かったでしょう?」
「まあ、その眼鏡とても素敵よ〜♪」とその時かけていたふちなし眼鏡誉めてくれた。
「普段はかけないんだけど、知らない街で迷わないために今日はかけてるの。」と言うと、
「普段からかけるべきだわ。」と彼女は言う。なかなか上手な彼女に私も負けずに
「貴方の眼鏡も、縁が赤くてとってもお洒落よ♪♪」と誉め返すと
素敵なアクセントで「あらあ、まあ、ありがとう♪♪♪」と答えてくださる。とまあ、こんな調子で、
初めからとても打ち解けた雰囲気(音符が何個あっても足りないぐらいだ)で始まった。
どうも彼女にとって日本人女性は、歓迎したい客らしく、非常にうれしそうであった。
ここはとっても静かで良い所ですね、とホテルの雰囲気を誉めると、
「数日前までは、ひどかったのよ〜!! カップルが泊まったんだけどね、夜中過ぎに帰ってきたかと思うと、
戸をバタン!バタン!ってうるさくてね〜全くお手上げだったわ。ホント、疲れたわ。」と彼女は苦笑いしながら答えた。
どうやら随分ラッキーなタイミングで来たらしい。神に感謝である。
「地球の歩き方」で見て来たのよと言うと、数ヶ月前、投稿してくれた女性がこの宿を尋ね、
本をプレゼントしてくれたのだと言う。彼女は奥の部屋から本を出して私に見せてくれた。
「"How to walk on earth"っていう本なんでしょ、嬉しかったわ〜。」と本を手に、感激していた様子であった。
部屋は白地に花柄のカーテン(レース付きである)と、お揃いのベッド・カバー。
室内に小ぶりな洗面台があって重宝した。花柄のインテリアはヨークのB&B同様、女性心をくすぐる。
ここのインテリアは、緑の多い周辺の雰囲気にとても似合っている。
ここも親切な宿で、リーフレットを取り出しては観光の説明をしてくれた。
彼女の説明は、とても細かくて行き届いている。
「Warwick Castleに行くバスが止まるのは、マクドナルドの前で、2ポンド75よ。」
とリーフレットにボールペンで書き込みながら説明してくれた。
「ここが映画館。それとチップスはここが安いわよ。」
とまあ、こんな調子で、英語も分かりやすく、安心して質問も出来る。
朝食時に指定の場所に座っていると、ぼんやりした顔で宿の奥さんが食事を乗せたお盆を持って現れた。
彼女は「ああ、ごめんなさい。冬の朝は寒いでしょう? なんだか疲れるの。」
と丁寧に私に詫びた。朝食を運んでくれる人はもう一人いて、私は彼女に朝の挨拶をした。
彼女も陽気で快活な雰囲気がある。
彼女は私のセーターを一目みると、
「まあ、素敵なセーターね♪」と誉めてくれた。
旅先では、セキュリティーの関係もあって、私はお世辞にもお洒落な格好はしていない。
その日着ていたセーターも、何年も前のものだった。
しかしやはりうれしくなり、おいしい朝食を頂くことが出来た。
人から誉められると、ついつい素直に受け取って喜んでしまう。
ここに泊まっている人は、韓国から来た留学生や、国内旅行を楽しんでいるらしいご夫婦、それに
イタリアから来たビジネスマンだった。
少々肩身の狭い思いをしたこともあった。
「君はなにしに来たんだね?」と聞かれて観光です、と答えると、ああそうか、とそれっきり。
イギリス人のご夫婦は韓国の男の子とお話に夢中になってしまった。
ご夫婦と言っても、喋っているのは旦那さんと男の子だけである。
保守的なビクトリア調時代に迷いこんだかと思った貴重な一瞬である。
この街は観光客が多いから、ひよっとするとウンザリしてる人もいるのかもしれないが、
「おっちゃんおっちゃん、そんな無視せんといてや〜」と思わず言ってしまいそうであった。
言ってしまっても、良かったのかも知れない。日本語で言えば、どうせ分からない。
イタリアのビジネスマンとは、田舎の美しさについて色々と話が出来た。
イタリアに来たら、訪ねてくるといいよ、と言うと彼はご自宅の住所を書いてくれた。
イタリア人の男性が親切というのは、どうやら本当らしい。
まあ、冗談は抜きにして、「マーマ・ミーヤ(Oh! My mother!)」という言葉がある通り
「イタリアでは本当に、息子は母親を敬愛しているんだよ」と、その人は笑いながら教えてくれた。
「僕も母を大事にしているよ。女性は皆素晴らしい。」と彼は言った。
女性を愛する術は、母親を敬うことから既に始まっているイタリアの男性は素敵である。
他の女性に目移りさえしなければもっと良いのだが。
色々と親切にしてくれた宿の奥さんにお礼をと、早朝の市場で買った水仙を購入。
「この時期、水仙はとても珍しいのよ〜。」と思いきり感謝されてしまった。
冬の始まりの水仙は、T.Sエリオット*の水仙娘もびっくりだろう。
*T.Sエリオット・・・・詩人。代表作『荒地』で戦後の荒廃した世の中をうたった。
「四月は最も残酷な月だ」の一節は有名。
「あの方に水仙を頂いてから、私は水仙娘と名づけられました」と娘が告白するシーンがある。
☆古城や博物館のオンパレード
エイボン川のほとりを歩く
ここストラッドフォードで私は一番多く写真を撮った。どこも絵になるからだ。
ここはシェークスピアの生まれた街であり、イギリスで最も美しいと言われるコッツウォルズの村々から近い。
その名に恥じぬ様、美しさと品性を保っているのが分かる。
北部にあるヨークとは違う可愛い街で、暖かい日の午後は、南部特有のほんわかとした空気が流れるエイボン川のほとりを歩いたり、
繁華街にあるアンティーク・ショップのウィンドウを眺めたり、ナショナル・トラストのお店に入ったりした。
Holy Trinity Church
ここホーリー・トリニティー教会にはキリストの3詩人と言われるMilton(ミルトン), Chaucer(チョーサー)
Caedmon(キャドモン)の肖像画があると聞いたので、
早速向かう事にした。
ミルトンは『失楽園』を、チョーサーは『カンタベリー物語』を書いたことしかしらないのだが
偉大な詩人の顔を拝みたくなったのである。
しかし普通は、シェークスピアのお墓を拝みに、ここの教会を訪れる。
ここの教会の裏側は良かった。こんな事書くと怒られそうだが、教会は緑に囲まれており、
森のなかを歩くような気分で、教会(裏側である)に向かって歩いていると、茶色のリスが突然の訪問者に
驚いてはすばしこく逃げていくのを目撃した。ここは格好の散策路なのだが、歩いて良かったのかどうかは未だに分からない。
出来れば是非、緑の中から入っていくことをお奨めする。
こういう古くて、世界的に有名な教会を目の当たりにすることは実に珍しい。教会には日本語のリーフレットがあり、
中に入った時に渡してくれる。綺麗な日本語で書いてあるが、「ホーリー・トリニチィー教会」の1文字が微笑みを誘う。
しかしこのリーフレットは優秀で、文章に従って行けば、一通り教会を見渡すことが出来る。
どうせなら、ゆっくり時間をかけて見たいものである。
Warwick Castle
1000年以上の歳月を超えて存在し続ける古城。ストラッドフォードからバスで40〜50分位で行ける。
お城の広さもさることながら、何に驚いたかって、ビクトリア調時代の貴族やバトラー生き写しの「人形たち」が佇む姿である。
図書室で歓談する4人の紳士。ピアノに合わせて歌う貴婦人にそれを鑑賞する婦人達(イメージに合わせて音楽が流れていた)
カード室で何やら噂話をしていそうな二人の紳士。午後の紅茶を楽しむ二人の婦人。ベッドルームで身支度を整える婦人に、バスタブを掃除する召使。
鏡に向かって身だしなみを整える立派な髭を生やした紳士。パーティードレスを着て鏡に振りかえる貴婦人.......。
すごいのは、今では人形になってしまったこの人々は、かつては全員存在したと言う事実である。
窓からこちらを覗く貴婦人の姿が目に入ると、一瞬誰もがはっとすることだろう。
パンフレットにはこう記されている。
「窓から外を覗いているのはメアリーことカーゾン夫人である。1898年の7月、彼女は妊娠数ヶ月である。」
そして人形全員の、それぞれ全員の名前と、彼等の人生について記されている。
現代とは全く違った時の流れ方をしながらも、現実に適応している過去の時限空間なのである
時の流れを、5分でいいから止めて、ここの空気を吸ってみていただきたい。
ちなみに、この城には「ゴースト・タワー」という、見るからに気持ちの悪そうな塔がある。
ここはグレーヴィルという貴族が、召使の一人であるヘイウッドと口論の末、ナイフでさされた場所である。
はっと我に返ったヘイウッドがその刃を自分に向けた。結果、2人共この世から去ってしまったという。
お化けとして出るのはグレーヴィルの方らしい。
悪い気を感じやすい私にとっては、現場を見るだけでも、頭痛と吐き気のする場所であったが、
それでもスピーカーから大音量で流れているナレーションの、おどろおどろしいうめき声には、ちょっとだけ笑ってしまった。
効果音の無い方が、反って怖いかもしれない。早々に脱出を試みた。ここの空気は吸わない方がいい。
ちなみに、このウォーリック城は、夏になると野外コンサート会場になるらしい。
夏に寝そべったら気持ちが良さそうな芝生が、戸外には敷き詰められていた。
城を見学した後、ウォーリックの街を散策してみたらどうだろう。
カフェの窓際で、ひなたぼっこをしながら飲む午後の紅茶は格別であるし、
お店をあちらこちら覗いたりしていると、あっと言う間に日が暮れていくことだろう。
だが、帰りのバスには十分気をつけて欲しい。
私の場合はと言うと、気がつくと辺りは真っ暗だった。
ふと向かいの道に目をやると、目の前にInn(イン)を見つけた。
インと言うのは、1階がパブで、その2階が宿泊者用に宿を提供する「パブ件ホテル」のことである。
今ではすっかり減ってしまったらしいインが、目の前にあったのだ。
ということは、ここはかなりな田舎で、ひょっとするとバスはもう来ないかもしれない。
森の中の様に暗くなっていく帰り道を少し歩いたが引き返し、
もう一度、バス停の時刻表を確認してみる。
「ほんとにこの時間通りに来るのかなあ????」
しかたなく、今1つ信じ難いバスを待っていると、
城に見学に来ていたらしい子供が、団体用にチャーターされたバスの中から、
私に向かって大きく手を振って「さようなら!」と叫んでいる。
余りの可愛らしさに一瞬不安が消え、ハンサム坊やに手を振り返したりしていた。
あんな小さな子が帰る位だから、大丈夫だろうと思った私は
のんびり待つ事にした。すると、それから5分も経たないうちにバスはやってきた。
あの時の安堵感を思い出す度に、歩きつかれた足の感覚までが蘇ってきそうである。
Jubilee Walk
アン・ハザウェイの家に行くまでにさしかかる、可愛い小道の事を、「ジュビリー・ウォーク」と言う。
Jubilee Footpath(フットパス)とも言うらしいが、「じゅぅびりぃー・うぉうく」と、小さなぅやぉがついた様なイギリス人のアクセントが
この道の雰囲気をよく表していて、私はこの呼び方が好きだ。
ここを歩きながら、通りに面する家々の庭を是非眺めて欲しい。道路にせり出した緑が朝露に濡れて、光っていることだろう。
イギリスでは庭と道路の境界線が少し曖昧である為、それぞれの家で育てている草木がのびのびと育っている。
「まあ、ジュビリー・ウォークまで歩いたの?あそこはとても素敵な散歩道よ♪」と宿の奥さんはそう言って喜んでくれた。
アンにプロポーズしたウィリアム(シェイクスピア)。その時どんな気持ちでここを歩いたのだろうか。
Other places
そしてアン・ハザウェイの家や、シェイクスピアの生まれた家などにも勿論行って来たが、
観光案内書を見れば分かることなので、ここでは割愛させていただきたい。
Bath
☆バースに泊まる
〜賑やかな夜〜
ストラッドフォードからバーミンガム経由で来たように思う。
申し訳ないが、バースまでの道のりは全く覚えていない。
ロンドンに戻る前にここの評判を聞き、予定を変更してYMCAに予約を入れた。
YHが駄目だったので、ここにした。とにかく街の雰囲気を少しでもいいから味わいたかったのだ。
ストラッドフォードでは必ず目撃した日本人観光客は、やや少ないように感じる。
私は、ここのスタッフ2人とパブのはしごをした。したくてした訳ではない、連れて行かれたのである。
ついに旅が終わってしまうという事実に思いきり憂鬱になっていた私にとっては、良い処方箋であった。
この言葉を聞くまでは。
「君、いつ帰るの?」「明日よ」
「飛行場はどこ?」「ヒースローよ」
「ヒースローで火災があったらしいよ。君明日帰れないよ。」「うそだーー!!!」
帰れないかもしれない。だからと言って、パブをはしごして良いと言うわけでは決してない。
お酒に余り強くない私は、朝からの疲れのせいもあって、飲みだしてしばらくすると頭痛が始まった。
早くヒースローに電話をしたい、ホントに燃えたかどうなのか確認を取りたい。
近くで、腕立て伏せの力自慢をしてる人がいる。皆、かなり飲んでいる。
「もう帰る!」「え〜!?まだいいじゃん」
「帰るったら帰る!!!!!!」
悪ふざけの過ぎるスタッフとはさっさとおさらばしようと、部屋に戻ったのはもう夜中過ぎであった。
まあそれでも、ここは悪くない。静かな室内に入ると、近くの教会の鐘の音が聞え、すぐそばには冬のクレセント・ムーン(三日月)が
窓越しに見える。なかなか良い眺めである。
時間も時間なので、ヒースローに連絡を取るのは、明日の朝にする。
シャワーを浴びた後、私はスタッフとの会話を思い出していた。
「仕事紹介するよ、なんてどこまで本気なんだかわかんない人だったなあ。」
だが旅の終わりに一人、どこまでも落ち込んでいるよりは、ずっとましな夜だったと無理やり結論づけた。
早朝、ヒースローに電話を入れてみた。ボヤ騒ぎがあったらしいが、予定通り飛行機は飛ぶと言う。
安心したのと同時にほんの少しだけがっかりした。
☆1日で見てまわるバース
Roman Baths Museum, The Pump Room
急いでいる貴方へ
ローマン・バス・ミュージアムは急いで見てまわっても1時間はかかることだろう。
でもそれでは入場料がもったいない。
そういう時は、開き直ってじっくり時間をかけて見学する事がお薦めだ。
その代わりに、他を見て周る事は潔く諦めてしまおう。
そして空いた時間に、パンプ・ルームでサンドイッチと紅茶を頼み
ピアノの演奏に耳を傾けながら、ゆったりした時間を優雅に過ごそう。
バースの穏やかな空気に、心の底からそっと旅情が沸いてくる。
末裔貴族の話「ブライトヘッドふたたび」の贅沢な世界は、ここでも十分味わえると思う。
Be There
ミュージアムの入り口で、蒼のアラブ服に身を包んだパフォーマーが
カセットテープのBGMにあわせまるで人形の様にぎこちない動作をしていた。
全身も青色のその男は彫りが深く、少しだけアラビアのロレンスに似ていた。
男をぼんやり眺めていた。
ふとコートのポケットに手を入れると
そこには返したはずのリバプールの鍵が入っていた。
鍵を奪ったままの私は、早速ホテルに電話をし
慌てて速達で送った。
不良娘に鍵を預けてくれた、優しい老夫婦へのお礼を添えて。
be there
written by Hazuki
壁にもたれたまま
パフォーマーを見つめている
日が暮れようとしている この旅の終わりに
いつも強気なあなただって
ほんの少し黙っている
手のひらの中には 返すはずの・・・
苦笑いと共に送る Messageを添えて
これから一体 どこへ 行くのだろう
何かを抱えたまま 移っていく季節
I can't get enough nothing to be clear
I 'm so sorry that tears falling down
これから一体 どこへ 行くのだろう
何かを抱えたまま 移っていく季節
So?
私にははっきりとひとつの終わりが見えた。
本当に小さく、取るに足りない旅だったかもしれないが
20代最後の旅が同時にここで終わりを告げた。
私の場合は、そうだった。
私は知らなかった、沢木耕太郎*が「ワレ・トウタツセズ」と友人に電報を打った訳を。
実は道の、半分もまだ歩いていない事を知ったのは
なにしろつい最近のことなのである。
*沢木耕太郎.......作家。代表作にユーラシア大陸を一周した旅の様子を描いた『深夜特急』がある。
(C)Hazuki. 2002
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