九州

山荘無量塔(むらたと読む) ★★★★★

 雪国から移築した民家が8軒はなれとして利用され、客室となっている。8客しか泊まれない。 湯布院盆地の山陰にひっそりとただズム隠れ家のような旅館である。 朝夕は小鳥の声が心地よい。つい最近までは網戸を使っていなかったそうだ。都会人には進入する虫に辟易させられ、やむなく 農家の障子の外側に網戸をつけたとか。外へ回るとたしかに無粋なものだが都会人には仕方がない。 一歩中へはいると、洋風の家具や道具類が暖炉のそばに並び、かと思うと中国か朝鮮の古い陶磁器が飾られた棚、板の間には いろりとなかなか忙しい内装になっている。この混交が不思議に調和しているところがおもしろい。民家の作りなので、 太い柱と高い天井ではあるが、室内は照明をすべてつけてもやや暗い。落ち着いていると言うべきか。華麗さはないが、 贅を尽くした旅館というべきだろう。不思議と落ち着いてくる。浴室は広く温泉でいつでもOK。濁りがなく、硫黄香の少ない 温泉は久しぶりだ。二人だけで泊まるのは最高の贅沢だろう。
 湯布院には長らく、次に記す玉ノ湯と亀の井別荘とが横綱格の旅館だったが、8年前にこの超弩級の旅館が 誕生したという。宿泊料も別格で最高で一泊お一人様6万円(税サ込みなら7万円を超す)。さすがにびびる価額だが、泊まると納得する。劇場用スピーカーのある バーでクラシックを聴きながら挽きたてのコーヒーを味合うのも乙なものだ。料理に合わせるには冷酒に限る。名酒を置いている。 鮎の解禁日から鮎料理に変わるのも心憎い。山里料理というべきものだろう。 心から満足した旅館である。仲居さん、バーテンさんは、物静かなしかし機転の利く相当な人を得ている。

           

        室内                              金鱗湖


由布院とは

 湯布院とも書く。別府から特急で1時間ほど、奇抜なというか、品のないというか、変わった形と色の列車が走る。 元々は山の中の静かな温泉しかない町だっただが、映画祭だの音楽祭だのとにわかに脚光を浴びるところとなった。 その代わり町は小さなおみやげ物点やブティックが軒を連ねて並ぶ若者の街になってしまった。いわく、空想の森、 オルゴールの森、蜂の巣などなど。町へ入る前に駅の案内書で散策地図を入手しよう。駅舎もなかなか変わっている。それほど いいものとは思わないが。
天気がよければ、霧のかかった由布岳が美しい。6月はさつきの季節だ。山肌が紅く染まっている。近くの唯一の名所は金鱗湖 であろう。 俗化していてどうしようもないが、観るところはここだけ。さっさと旅館に入り、ゆっくりと温泉を楽しむ方が良さそうだ。



湯布院玉ノ湯 ★★★★★
 
 玄関は長い木立の林の奥にある。客室は離れ形式になっており、寝室と居間は別になっている。十分ゆったりとして 居心地はよい。 旅館の宣伝文によると、雑木林の木漏れ日の下に花咲き、お湯わく旅館とうたっている。静けさの広がりというが、 渡り廊下に響く下駄の音は早朝は耳に付く。露天風呂が客室から離れているのでそこへ行く人の足音だ。下駄裏にゴムでも 貼って消音に努めた方がよいのでは。雨に濡れたときのタイルは滑りやすい。露天風呂がこの名旅館の面汚しになるほどの あんちょこな作りにはがっかりする。客室の浴室がかなり立派なのでなくてもよいのでは。このクラスになると、当今は 便座に温水シャワーが付いている。不思議とアメニティ品が少ない。白木のベットは気持ちがいい。ゆったりしている。
 冷蔵庫は居間から別室になっていて騒音に悩まされることがない。ミネラルウォーターは無料だ。こういうこまかいところ の気遣いが、名旅館の評判を得てきたのであろう。それならば到着時、フロントに人不在は残念だ。費用は4〜5万円。
土・日曜日はかなり込むので、のどかな田園の安らぎとはゆかない。7,8人でも団体は団体の喧噪があるから。






旅亭半水盧(はんずいりょと読む)  L★★★★★

 雲仙温泉旅館街を 少しはずれたところに位置する。あの普賢岳の噴火とほぼ同時期に開業したそうだから 老舗ではないが、手入れの行き届いた広大な庭園に、 一戸建て形式の数寄屋作り二階建ての客室を京都の宮大工50人が3年かけて作ったVIP級のお客向けとガイドに書かれている。客室はわずか 8棟14室しかない。宿泊した「有明」と名付けられた部屋は1階に14畳、12畳と次の間、縁側にも畳が敷いてある。2階は12畳のベッド ルームと8畳の部屋に次の間。二人で使うにはもったいない広さだ。各部屋には絵画や陶磁器などの美術品が飾られている。斜面に立てられている ので、入り口が2階で1階に下りると庭に面した広間があるという趣向。寝室と食事の間が全く別に取れるのは気持ちはいいが、L5★だなあと 思ってしまう。
 料理は京都吉兆で腕をふるった料理人が控えている。夕食の料理は今まで宿泊したどこよりもすばらしいと感服した。京都に住みながら吉兆へ は出かけたことがないので、おいしいものを食するにはそれなりにお金もかかるものなのだと、納得しそうだ。世の中にはこれほど贅を極めた 旅館もあるというよい見本か。一度来るとまた来たくなるという。確かにそれにふさわしいところではあるが。
 露天風呂と 共同浴場は東西2カ所にあるという贅沢さ、しかもトンネルのような1階の廊下づたいにゆけるから、 冬でも湯冷めの心配がないのはありがたい 。浴室備え付けのバスタオル類が高級旅館にしては安物だ。ホテルのようには出来ないのか?そういえばアメニティも月並みだ。部屋担当の人は サービスが悪いとか手抜かりがあるというわけではないが、どこか洗練されていない。すべてに旅館の格をそろえるのは難しいようだ。 ( 5万円/人 2002.5.11)
 


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ホテル日航博多  ★★★★
 九州は博多駅前という交通の要所にあるという点で地の利を得ている。一応の設備を整え、サービスもなかなかよい。 室内はスタンダードな設備で不満はないのだが、廊下の絨毯が古く色あせていて照明が暗いのはいただけない。博多では 古い方なので設備更新の時期にきているのかもしれない。ホテル内のレストランなどについての説明は不十分である。 テレビを最初につけたとき、「**様ようこそいらっしゃいませ」と挨拶を出す手間をかけるぐらいならば、述べたように 説明をちゃんとしてほしい。ビジネスやちょっとした観光に利用するには適当なところだろう。室料は「一休価額」で ツィン22000円。現実にはスタンダードではなく、1ランク上のスーペリアツィンを期間限定で使えるようになっていた。 他のインターネット料金の同額だった。ホテルへ直接アプローチしてみると同じ条件が出ていた。ホテルに着いて、わざと インターネットで予約するとき、直接と他の業者サイトと同額なのはなぜか、と尋ねたが、はかばかしい返事は得られなかった。 直接なら業者へ支払う手数料分安くできますとは、口が裂けてもいえないのだろう。こういう事情はこれに限らず、パック旅行 などの料金についてもいえることだ。勧進元の料金が一番高い。